ロードスター&ロードスターRF&124スパイダーの比較試乗レビュー!どれが一番?

     2017/03/12

ロードスターベースの似た3台、「マツダ・ロードスター」「マツダ・ロードスターRF」「アバルト・124スパイダー」すべてに試乗したので、違いを詳しくまとめました。あなたはどれが欲しいですか?

デザイン&ボディは3種類

現在日本で販売されているロードスター系は3種類あります。

上からロードスターRF,ロードスター,124スパイダー(縮尺統一)

中央の赤が最もベーシックなマツダ・ロードスター。そしてそれを電動ハードトップ化したのが上のマツダ・ロードスターRF。そしてロードスターとシャシーや多くの部品を共有しつつ、フィアットが販売するのがフィアット/アバルト・124スパイダーです(国内はアバルト版のみ)。

イギリス仕様のスペックを元に、加速性能と最高速度をまとめました。

ロードスター ロードスターRF 124スパイダー
1.5L 0-100 km/h 8.3 秒 8.6 秒
最高速度 204 km/h 203 km/h
2.0L 0-100 km/h 7.3 秒 7.4 秒
最高速度 214 km/h 216 km/h
1.4Lターボ 0-100 km/h 6.8 秒
最高速度 232 km/h

強調されていないものは日本未発売。

ロードスターとロードスターRFで比べると、加速性能は重いRFの方が少し悪く、最高速度は空気抵抗に優れるRFの方が少し良い(ただし1.5Lは逆転)となっています。走行抵抗の要因からすると当然の結果ですね。

日本で販売されている3台では、[ロードスター < ロードスターRF < 124スパイダー]という単純な性能構図です。

マツダ・ロードスター

最も標準的なモデルがソフトトップ版ロードスターです。

ロードスターRFとは幌部分とエンジンを除く大部分が共通しています。124スパイダーとは外観(特にフロント・リア)は異なりますが、幌機構はまったく同じですし内装もほとんど共通です。

マツダ製1.5L自然吸気エンジンを搭載しています。スカイアクティブのひとつ、「SKYACTIV-G 1.5」です。

最もバランスが良い

軽快という言葉をそのまま表現したような走りです。実際3台の中では最も軽い(MTで990~1,040kg)です。

現代の車の中でおそらく最もライトウエイトスポーツカーという名にふさわしい走りです。軽い吹け上がりの小排気量エンジン、軽やかな走り出し、軽めのロールを許容しつつも高い回頭性、FRらしい動きなどなど、ボディサイズに最も適合した動きをするのがソフトトップ+1.5Lのロードスターです。

何より素晴らしいのが交差点を一つ曲がるだけで面白いと思えることです。マツダ・ロードスターの他にこの境地に達している車を他に知りません。「山道を走れば」「アクセルを踏み込めば」「速度を上げれば」「サーキットに持ち込めば」なんていう条件付けはありまにん。

使い勝手やデザインといった要素を一切排除すれば、最も良い動きなのはコレでしょう。サイズ、エンジンパワー、足回りが全体に最もバランスされています。

「良い車を作る」というのは、コスト、走り、環境性能、デザイン、実用性、サイズといった様々な要求を高度にバランスする作業でもあります。コストや環境性能を無視すれば良い走りの車は作りやすいでしょう。コストと実用性ばかり気にしていては走りが終わります。

「2シーターFRオープンスポーツ」というジャンルでロードスターほどバランスされた車はありません。ロードスターがあまりにスゴすぎるから、直接の競合はいません。S2000やバルケッタは消えましたし、ボクスターZ4は高級感という付加価値で価格を上げて競合を避けています。86/BRZがオープン仕様を出さないのはロードスターがいるせいで販売を伸ばせないからでしょう。

そしてロードスターの中でも最もバランスに優れているのが1.5Lソフトトップでしょう。2.0Lにすれば出力は上がりますが、車重が増加と吹け上がりの鈍化で軽快感が損なわれます。1.4Lターボではもっとですね。

ゆったりツーリングしたいならBMW・Z4やメルセデスベンツ・SLにすればいいですし、ハイパワーが欲しければフェアレディZロードスターがあります。でも「ライトウエイトオープンスポーツ」を直接体現するのは1.5Lロードスターでしょう。たとえエリーゼであっても軽快さや開放感ではロードスターに一歩(開放感は2歩)譲ります。

幌で大丈夫?

ソフトトップという点が気になる人もいるでしょうが、走行中に運転手が開閉できるほど簡単に開閉できます。防犯の面でも、日本の場合よほど治安の悪い地域でなければそうそう被害に遭うこともありません。少なくとも財布やカバンを見えるところに置いておかない、というのは幌でない車でも気をつけるべきです。

スポーツカーが欲しいだけで開ける気はないという人は、一度オープンで試乗してみましょう。世界が変わりますよ。

誰に向いているか?

つまるところ、迷うくらいなら1.5Lソフトトップにしておけが結論です。

ソフトトップロードスターについて詳しくは以下の記事でレビューしています。

マツダ・ロードスターRF

ロードスターを電動ハードトップ(開けた外観はタルガトップ)にし、エンジンを2.0Lにしたのが「ロードスターRF」です。エンジンはマツダ製2.0L自然吸気エンジン「SKYACTIV-G 2.0」です。

RFはリトラクタブルファストバックの略です。ルーフから車体後方にかけてなだらかに下がる形状を「ファストバック」と呼び、それが折りたためる(リトラクタブル)から「リトラクタブルファストバック」というわけです。

走りはロードスター+α

2.0L・電動ハードトップとなることで車重は10%増えますが、トルク/パワーは20%程増えるので車としては速くなります。加速は1.5Lロードスターをしのぎますし、車重の影響がほぼなくなる高速域では2.0Lの方が確実に余裕ある走りになります。

一方走りの軽快感は1.5Lソフトトップよりちょっとだけ落ちます。とは言ってもそこはロードスター、走りの軽快感は極限まで1.5Lソフトトップと変わりないレベルになっています。2.0Lというロードスターとしては大きめのエンジンの割に、1.5Lと変わらず交差点を一つ曲がるだけで面白いというのは素晴らしい!

ロードスターというボディサイズ・車重からすれば、ちょうどいいのは1.5Lでしょう。それでも2.0Lを用意したのは、RFの重量増を打ち消すためと、ソフトトップとのすみ分けのためでしょうね。ちなみにアメリカでは幌/RFのどちらも2.0のみ、ヨーロッパでは幌/RF・1.5L/2.0Lの4通りが売られています。

単純に速い方がいいなら2.0Lにしてください。でも走りに楽しさや面白さを求めるなら1.5Lの方が上です。長距離走行を頻繁にするなら、後述する静粛性の面でもRF・2.0Lの方が向いているでしょうね。

電動ハードトップ

ロードスターRFは、電動ハードトップによって天井部分とリアウインドウが格納されます。

上:ロードスターRF、下:ロードスター

後方の枠が残るので外観はタルガトップと呼ばれる形状になりますが、開放感はフルオープンと比べてもほとんど遜色ないレベルに調整されています。これには過去にロードスターをほぼ常にオープンで乗っていた私でもアリだと思えました。同じタルガトップでもS660エリーゼより圧倒的に開放感があります。

もちろん後方視界や重量増などの欠点はあります。でも静粛性の向上や防犯性の強化、クローズドでのカッコ良さという点は強みになるでしょうね。

ロードスターとは微妙に装備内容が異なります。例えば、フロントガラス・フロントドアガラスがソフトトップだと[UVカットガラス]ですが、RFでは[UVカット&熱線吸収グリーンガラス]となっています。装備内容について詳しくはソフトトップのグレード比較RFのグレード比較をご覧ください。

誰に向いているか?

ロードスターRFが向いている人は3通りでしょう。

  • オープンの楽しさを知ってもなお、閉めて乗ることが多い人
  • 高速長距離走行を頻繁にする人
  • 単純に速い車が欲しい人

でも単に速いのが欲しければ86やZを買った方がいいでしょうね。

車種 マツダ・ロードスターRF トヨタ・86 日産・フェアレディZ
車重 1,100 kg 1,210 kg 1,500 kg
エンジン形式 直列4気筒 水平対向4気筒 V型6気筒
排気量 2.0L ガソリン 2.0L ガソリン 3.7L ガソリン
最高出力/最大トルク 158ps / 20.4kgm 207ps / 21.6kgm 336ps / 37.2kgm
価格 324 万円~ 262 万円~ 383 万円~

つまるところ、高速巡航を重視するならロードスターRFが結論です。

ロードスターRFの詳しいレビューはこちら↓

アバルト・124スパイダー

3台で唯一外観が異なるのが124スパイダーです。フィアット(およびアバルトブランド)から販売されています。

その成り立ちは変わっていて、フィアットが生産するのはエンジンのみ。イタリアで生産されたフィアット製エンジンを広島のマツダ工場に運び、マツダで生産された124スパイダーのボディに搭載。日本製イタリア車として世界に運ばれます。

足回りを担当するのがRX-7を作ったマツダ、エンジンとデザインを担当するのがアルファロメオやフェラーリを擁するフィアット社だと聞けば、誰でも期待してしまうものです。アルファロメオ・ミトアルファロメオ・ジュリエッタに搭載されるダウンサイジングターボエンジンと、イタリアンデザインが、世界一のオープンカーと組み合わせるんですよ。しかも日本製なら故障の心配も薄いはず。

でも実際にできあがった車は違いました。

デザインはロードスターが色濃く残る

デザインをフィアットが担当すると言っても、実際に変更されたのは主に前後バンパー周りだけ。Aピラーは仕方ないにしても、フェンダーラインやドア、ドアハンドル、ドアミラーなど、もっと変更できるところはあったはずです。

ロードスターはフロントオーバーハングをギリギリまで詰めているので、124スパイダーの方が145mm長いです。やや伸びやかさはありますね。

そして外装以上に残念なのが内装です。ほぼロードスターそのままです。

違うのはシート、メーター、シフトノブ形状程度。あとはステアリングのエンブレムが違うくらいしか差がありません。

しかもシートはマツダ製のようです。やや硬めな辺りはイタリアをほんのり感じますが、車内にいるとマツダをつよーく感じます。というかマツダそのものです。

日本人がイタリア車を購入する強い動機の一つはデザインでしょう。私もデザインを一番の理由にイタリア車(アルファロメオ・ジュリエッタ)を買いました。ロードスターのデザインが悪いとはまったく思いませんが、せっかくイタリア車を買うのにデザインがほとんど(外装の70%、内装の98%)がマツダでは買う気になりませんよね。

走りは刺激不足

124スパイダーは1.4Lターボエンジンが搭載されています。吸気バルブをカムによる機械駆動ではなく、油圧+電子制御で積極制御する「マルチエア」と呼ばれるエンジンです。

124スパイダーにはフィアット版とアバルト版があり、どちらも1.4Lターボながらエンジンスペックが異なります。日本に導入されているアバルト版は170馬力・25.5kgmで、アルファロメオ・ミトの高性能モデルアルファロメオ・ジュリエッタ 1.4Lフィアット・500Xアバルト・500/595に搭載されているエンジンと基本的には同じです。

スポーツカー向けにどんなチューニングがされているのかと期待しましたが、たしかにパワーはあるものの「刺激的な走り」とは程遠いトルクフルな安定した走りでした。なんならミトやジュリエッタよりも大人しいくらいかもしれません。低回転域のトルクの無さもそのまま、高回転の伸びも1.4Lターボから予想される範囲内でした。

同じアバルトの1.4Lターボでも、フィアット・500をベースにしたアバルト・595は超絶刺激的です。「暴れサソリ」と呼びたいほどにエンジンは唸り、足は暴れ、それを押さえ込みながら走る楽しさがあります。

124スパイダーにこの走りを求めたら肩すかしをくらいます。実用的で走りやすいダウンサイジングターボエンジンをそのまま載せただけな感じです。たしかにロードスターよりもかなり速いんですが、加速感に刺激はほとんどありません。

足回りはロードスターをベースにかなり安定方向に調整してあります。リアが流れるのを楽しむこともできなければ、ハイパワーで暴れる車を抑える面白みもありません。

うまくいかなかった理由

なんでこんなことになってしまったのか。それはマツダの美点を消した上に、アバルトの良さを出せなかったからでしょう。

スポーツカーの足回りのチューニングはマツダが最も得意とするところです。でも124スパイダーに乗る限り、足の設計はフィアットがやったか、フィアット側の注文に忠実に従ってマツダが作ったようです。マツダの方が軽量FRスポーツに長けているんですから、無理せずマツダに任せてしまえば良かったんですよ。

そしてアバルトの良さ、軽く小さい車に、そぐわない程のハイパワーエンジンを載せて、細かい制御なんかせずに車の素性の良さだけで暴れ走るというのが出せていません。実用エンジンをすぽっと載せただけではなく、もっとハイパワー側に振ってくれれば良かったんですよ。足回りはロードスター以上に軽々動くようにすれば、走りにくくとも面白い車にはなったでしょう。

誰に向いているか?

つまるところ、単に速ければ面白くなくてもいい、珍しい車がいいという人だけが124スパイダーが向くでしょうね。ただそれにしても高すぎます。輸入車とはいえ広島生産なのにね。

124スパイダーの詳しいレビューはこちら↓

スペックの違い

それぞれのベースグレードでスペックを比較してみましょう。

車種 マツダ
ロードスター
マツダ
ロードスターRF
アバルト
アバルト124 スパイダー
グレード S S ベースグレード
屋根 手動ソフトトップ 電動ハードトップ 手動ソフトトップ
全長 3,915 mm 4,060 mm
全幅 1,735 mm 1,740 mm
全高 1,235 mm 1,245 mm 1,240 mm
ホイールベース 2,310 mm
車重 990 kg 1,100 kg 1,130 kg
駆動方式 FR
トランスミッション 6MT
エンジン形式 直列4気筒
排気量 1.5L ガソリン 2.0L ガソリン 1.4L ガソリンターボ
最高出力 131ps / 7,000rpm 158ps / 6,000rpm 170ps / 5,500rpm
最大トルク 15.3kgm / 4,800rpm 20.4kgm / 4,600rpm 25.5kgm / 2,500rpm
サスペンション ダブルウィッシュボーン / マルチリンク
燃費 17.2 km/L
(5.8 L/100km)
15.6 km/L
(6.4 L/100km)
13.8 km/L
(7.2 L/100km)
年間燃料費
(10,000km)
ハイオク135.7円
7.9 万円 8.7 万円 9.8 万円
価格 249 万円~ 324 万円~ 389 万円~

実質価格差

スタート価格には大きな差がありますが、各ベースグレードの装備内容も異なります。

「ロードスター」のSはオートエアコンや各種装飾類もありません。スーパーLSD、リアスタビライザー、トンネルブレースバーといった装備も削られ剛性がやや落ちますが、その分軽さは唯一1トンを切った990kgです。

「ロードスターRF」のSは、「ロードスター」のS Special Packageと同等です。各種快適装備が付きます。さらにMTでもアイドリングストップが標準装備になります。

「124スパイダー」はベースグレードのみの単一グレード設定ながら、各種快適装備が標準装備ですし、シートはレザー+アルカンターラのコンビシート。「ロードスター」のS Leather Packageや「ロードスターRF」のVSと変わらないほどの充実した装備内容になっています。

装備差を除く、エンジンやボディによる価格差は[ロードスター → ロードスターRF]が約50万円、[ロードスター → 124スパイダー]が約85万円です。

まとめ

性能は[ロードスター < ロードスターRF < 124スパイダー]
面白さは[ロードスター > ロードスターRF ≫ 124スパイダー]

という結果になりました。ロードスターベースのよく似たスポーツカー3台。細かく見ていくと色々な違いがあります。興味を持った人は3台とも試乗してみましょう。

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