Dセグメントとは?「余裕あるミドルセダン/ワゴン」のサイズ・特徴・代表車種を整理

   

車(特に輸入車)の説明でよく出てくる「○セグメント」って何でしょうか?

分類や各セグメントの特徴、代表車種を整理して、自分に合った車体サイズを考えてみましょう。

今回は余裕のあるミドルクラスセダン&ワゴンが属する「Dセグメント」を見てみましょう!

「セグメント」という分類

セグメントは車格の分類の一種で、一般に輸入車について使われる車体サイズの目安が「セグメント」です。

おおまかな分類は全長によって分けられていて、小さい(前後に短い)車がAセグメント、大きく(前後に長く)なるとB、C、Dセグメントとなっていきます。最大はFセグメント(Lセグメントとも呼ばれる)です。

ただ、全長だけでハッキリと分類できるものではなく、内外装や性能、ベースの車、車種のイメージなどから総合的に分けられます。全長は長いのに下のセグメントに属したり、その逆だったりということがあります。この辺はだんだん感覚を掴んでいってください。

またセグメント分類に価格は基本的に関係ありません。Aセグメントでスタート価格600万円に達する車(アバルト・695ビポスト)がある一方で、Dセグメントでも300万円以下の車(トヨタ・マークX)もあります。[参考 → 車格の決め方まとめ

分類は以下の通りです。

Dセグメントの分類

Dセグメントは、全長がおよそ4,600~4,800mmの車です。

単純に実用性だけで言えば、Cセグメントで十分でしょう。日本車に至ってはBセグメント(≒コンパクトカー)ですら十分な実用性があるとも言えます。では何のためにDセグメントがあるのか? それは余裕です。

Dセグメントに限らず車格分類全般に言えることとして、下級車種ほど実用性重視で、上級車種ほど実用面では不要なほどに余裕が増していきます。セグメントの分類の中でも明確に余裕が発生するのはDセグメントからとなります。

Cセグメントロングとの違い

Cセグメントには車体後部を拡張した「Cセグメントロング」というクラスが含まれます。CセグメントロングとDセグメントはどこが違うのでしょうか? フォルクスワーゲンを例に、Cセグメント,Cセグメントロング,Dセグメントの3台を比べてみましょう。

Cセグメントのベースは「ゴルフ」です。全長は4,265mm。ゴルフの後部を拡張した「ゴルフヴァリアント」は全長4,575mmに達します。全長だけならDセグメントのシトロエン・DS5(4,535mm)を上回り、Dセグメントに分類されてもおかしくありません。でもDセグメントにならないのには3つの理由があります。

  • ベースのCセグメント車「ゴルフ」とエンジンや内装が同じ。
  • ホイールベースがCセグメントサイズのまま。
  • Dセグメントには「パサート」があり、「ゴルフヴァリアント」はパサートの下に序列されている。

先ほどの画像で全長だけを見れば、「ゴルフヴァリアント」は「ゴルフ」(310mm差)より「パサートヴァリアント」(155mm差)の方が近いです。でもホイールベース(前後輪軸の長さ)は「ゴルフ」と同じ2,635mm。構造上はココがDセグメントになれない理由です。

セグメント Cセグメント Cセグメントロング Dセグメント
車種 フォルクスワーゲン
ゴルフ
フォルクスワーゲン
ゴルフヴァリアント
フォルクスワーゲン
パサートヴァリアント
全長 4,265 mm 4,575 mm 4,775 mm
ホイールベース 2,635 mm 2,790 mm
エンジン形式 直列4気筒
排気量 1.2L ガソリンターボ
1.4L ガソリンターボ
1.4L ガソリンターボ
2.0L ガソリンターボ
価格 250~329 万円 295~363 万円 350~520 万円

販売上の違いもあります。ゴルフヴァリアントはゴルフと同じ1.2Lターボと1.4Lターボというラインナップ。一方パサートヴァリアントに1.2Lターボは無く、1.4Lターボと2.0Lターボが用意されます。価格もパサートヴァリアントがゴルフヴァリアントの上に位置するようになっています。

Dセグメントの特徴

ボディ形状

Dセグメントのボディ形状は主にセダンとステーションワゴンに分けられます。Dセグメントに属する車の多くが、セダンとステーションワゴンの2つのボディ形状を併売しています。

アテンザセダン と アテンザワゴン(正しい縮尺)

車の基本形状はセダンです。AセグメントBセグメントなど低い車格では実用性を重視して、(少なくとも日本では)ハッチバックが圧倒的多数になっています。一方Dセグメント以上ではむしろセダンの方が多くなります。

Dセグメントを選ぶ理由は「余裕」です。車格の上下を考えた場合、実用性が低い、不必要な程に大きい・高出力など、無駄なほどの「余裕」があるほど車格が高くなります。同じDセグメントでも、ワゴンよりセダン、セダンより2ドアクーペの方が格上だということになります。

セダンとワゴンはほぼ同額な場合が多いです。実用重視のA~Cセグメントではより便利な方が売れますが、せっかく高額なDセグメント車を買うなら格が高い(=不便な)セダンを買おうという人が多いわけです。BMWやアウディなどのプレミアムと呼ばれるブランドでは特に顕著で、Dセグメント以上ではセダンが大多数となっています。

ハッチバックは無い

BセグメントCセグメントで主要なボディ形状と言えばハッチバックです。でもDセグメントにはハッチバックは事実上ありません。

ハッチバックとステーションワゴンを分ける明確な基準はありません。ステーションワゴンと呼ばれている車体にも車体後部にはテールゲート(=ハッチバック)が設けられていることがほとんどです。

一般的にはリアオーバーハング(後輪軸より後ろ)のトランクが長いかどうかで分類されます。「ハッチバック」と呼ばれるためにはトランク部が短くなければいけません。

セダンは前からエンジンルーム・車室・トランクの順に3つの部分(3ボックス)に分けられます。Dセグメントでは全長が長いのでトランク部分も十分な長さが取れます。

Dセグメントの方がトランクが長い

Dセグメントセダンをベースにすると、車体後部は同じように長くなります。なのでDセグメントでは「ハッチバック」と呼ばれるほど後部が短い車が出てこないわけですね。

FRの採用が多い

Cセグメントまではコストやスペース効率に優れるFF(前輪駆動)の採用が圧倒的多数ですが、DセグメントではFR(後輪駆動)の採用が多いです。

FRの方が走行性能や乗り心地の面で有利です。サイズやコスト要求に余裕があるDセグメント以上ではFRを採用することで走りの質を上げているわけですね。

ただ最近はCセグメント車とエンジンやトランスミッションを共有する車種もあるので、FFを採用するメーカーも増えました。

Dセグメントの代表車種

Dセグメントの日本でのイメージは主に4通りに分けられます。ここでは日本での車種イメージごとに代表車種を紹介します。

高級セダン

BMW,メルセデスベンツ,アウディなどの欧州プレミアムブランドを中心として、Dセグメントのセダンは高級セダンの代表格となっています。さらに上のEセグメントやFセグメントになると高すぎて買える人が限られますが、Dセグメントなら購入する人もそれなりにたくさんいるという点も重要でしょう(BMWではDセグメント「3シリーズ」が409万円~、Eセグメント「5シリーズ」が698万円~)。Cセグメントほど実用車っぽくなく、Eセグメントほど高すぎないという点で人気のあるセグメントです。

日本ではセダンの人気がすっかり低迷しきっていますが、こと高級乗用車というジャンルにおいてはセダンなことが当たり前というほど多数派です。前述の通り各社セダンとステーションワゴンをラインナップしていますが、日本で輸入プレミアムブランドのステーションワゴンを見ることはかなり珍しいです。

メルセデスベンツ・Cクラス

メルセデスベンツ・Cクラス(436万円~)

日本で高級輸入車と言えばベンツをイメージする人が多いのではないでしょうか。昔はもっと高級志向のデザインでしたが、最近はスポーツを連想させるアグレッシブな外観になりました。

アウディ・A4

アウディ・A4(447万円~)

ベンツとBMWの間に割って入るように人気を獲得しつつあるアウディです。ベンツほど有名過ぎず、BMWほどスポーツに振らず、良い意味で目立たない高級車として人気を獲得しました。

アウディと言えば、スバル「AWD」と比肩するフルタイム4WD(本気四駆)システムの「クアトロ」が有名です。SUVのような車だけでなく、A1を除くセダン/ハッチバック/ステーションワゴンにもクアトロの設定があります。

ただ、先代モデルは退屈な車でしかありませんでしたね。2016年にモデルチェンジしたので改善されているかもしれませんが。

オジサンセダン

高級セダンと対照的なのが、オジサンセダンというイメージです。[日本でセダンの人気が低迷 → セダンを選ぶ人は古い価値観を捨てられない人 → オジサン]という連想によって「セダンと言えばオジサンの乗り物」というイメージになってしまいました。

さらに拍車をかけたのがメーカーとの連動です。「オジサンにしか売れないから、オジサン向けの車にしよう」となったわけです。余計にオジサンなイメージになってしまいました。

こうなるとイメージの挽回は難しく、メーカーがスポーツのイメージを付けようとしてもなかなかうまくいきません。

トヨタ・マークX

トヨタ・マークX(266万円~)

オジサンセダンの代表格と言えばトヨタ・マークXでしょう。マイナーチェンジでスポーツ志向に振ろうとしましたが、上手くいっているとは言えません。相変わらずのオジサン向けっぷり。

排気量は大きいのに、キビキビ感や反応の鋭さが無い辺りは中高年向けのニオイがぷんぷんします。

スポーツセダン

車種イメージをスポーツ志向に振った車もあります。

セダンは元来、クーペに次いで走行性能を高めやすいボディ形状です。実用的な4ドア5人乗りでありながら、低い車高・重心と高い剛性によってスポーツ走行を可能にした車がスポーツセダンです。

スポーツセダンはCセグメントにもEセグメントにもほとんどなく、Dセグメントが中心となります。Eセグメントはスポーツ走行には大きすぎるというのもあるのでしょうね。

BMW・3シリーズ

BMW・3シリーズ(409万円~)

「高級セダン」とも重複しますが、BMWはスポーツセダンとしての側面も強く訴求しています。BMWのブランドコンセプトは「駆け抜ける喜び」ですしね。

BMWにはスポーツもでるのMシリーズがあることも有名です。3シリーズのM仕様「M3セダン」は高性能スポーツセダンの代表格となっています。

日産・スカイライン

日産・スカイライン(413万円~)

オジサンセダンに甘んじてしまったマークXと異なり、スカイラインは今でもスポーツセダンのイメージを残しています。GT-Rがスカイラインの派生車種だった頃(R34まで。今のGT-Rは独立車種)に比べるとスポーツのイメージはやや後退しましたが、それでも分類するならスポーツセダンでしょう。

荷物のたくさん載る乗用車

Cセグメントハッチバック以上に荷物の載るステーションワゴンは、乗用車の中でも高い積載能力があります。

走行性能はセダン並みに良く、ミニバンほど所帯じみておらず、「乗用メインだけど荷物も載る」というのはアウトドアを好む人にはピッタリでしょう。

スバル・レヴォーグ

スバル・レヴォーグ(278万円~)

セダンのみとなってしまったレガシィのステーションワゴン「レガシィ・ツーリングワゴン」の後継として用意されたステーションワゴンが「レヴォーグ」です。Dセグメントにしてはやや小柄ですが、CセグメントにはインプレッサがあるのでレヴォーグはDセグメントです。

レヴォーグはステーションワゴンのみで直接ベースとなるセダンはありませんが、スポーツセダンの「WRX」と多くの部品を共有しています。

スペック

各ジャンルの代表車種をリストアップしました。

ジャンル 高級セダン オジサンセダン スポーツセダン ステーションワゴン
車種 メルセデスベンツ
Cクラス
トヨタ
マークX
BMW
3シリーズ
スバル
レヴォーグ
グレード C180 250G Fパッケージ 318i SE 1.6GTアイサイト
ドア数・定員 4ドア,5名 5ドア,5名
全長 4,690 mm 4,770 mm 4,645 mm 4,690 mm
全幅 1,810 mm 1,795 mm 1,800 mm 1,780 mm
全高 1,445 mm 1,435 mm 1,440 mm 1,485 mm
ホイールベース 2,840 mm 2,850 mm 2,810 mm 2,650 mm
車重 1,490 kg 1,510 kg 1,550 kg 1,530 kg
駆動方式 FR F4WD
トランスミッション 9AT 6AT 8AT CVT
エンジン形式 直列4気筒 V型6気筒 直列3気筒 水平対向4気筒
排気量 1.6L ガソリンターボ 2.5L ガソリン 1.5L ガソリンターボ 1.6L ガソリンターボ
最高出力 156ps / 5,300rpm 203ps / 6,400rpm 136ps / 4,400rpm 170ps / 4,800-5,600rpm
最大トルク 25.5kgm / 1,200-4,000rpm 24.8kgm / 4,800rpm 22.4kgm / 1,250-4,300rpm 25.5kgm / 1,800-4,800rpm
フロントサス マルチリンク ダブルウィッシュボーン ストラット
リアサス マルチリンク ダブルウィッシュボーン
燃費 16.1 km/L
(6.2 L/100km)
11.8 km/L
(8.5 L/100km)
17.2 km/L
(5.8 L/100km)
17.6 km/L
(5.7 L/100km)
年間燃料費
(10,000km
8.4 万円 10.6 万円 7.9 万円 7.1 万円
価格 436 万円~ 266 万円~ 409 万円~ 278 万円~

※ レギュラー124.7円,ハイオク135.8円で計算。

まとめ

Dセグメントは車体に余裕があることで、高級感やスポーツといった付加価値をつけることができます。一方で多くの人は実用上Cセグメントで事足りてしまうので、単に快適に移動するためだけならDセグメントを選ぶ理由はあまりないでしょう。

「スポーツセダン」や「ステーションワゴン」というジャンルが好みなら、サイズはほぼDセグメントに限られます。高級セダンが好きなら、格上のEセグメントと比較する(される)ことになるでしょうね。

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