新型ロードスター本気レビュー:25年のノウハウが詰まった幌。フルオープンで乗るべし。

     2017/03/12

ND-softtop-2

オープンカーを語る上で欠かせないのが幌(あるいは開閉式の屋根)です。新型ロードスターに搭載されたのは、ロードスターを作り続けて25年以上のマツダがたどり着いた究極の幌。8年のロードスター歴のほとんどをオープンで過ごした私の視点で、新型ロードスターをレビューします。オープン/クローズ両方の試乗もしてきました。

他にも試乗レビューを書いているので、是非ご覧ください。

新型ロードスターを構成する要素は、以下の3パターンの変化を遂げていると思います。

  • 正常進化
  • 原点回帰
  • 初代との決別

この3点に注意して見ていくと、新型ロードスターが目指したモノが見えてくると思います。

今回はオープンカーには切っても切り離せない存在、「幌」です!(そこ!ハードトップがぁとか幌無し車がぁとか言わない!)

歴代の幌

歴代ロードスターの幌と、現行の国産オープンカー代表としてダイハツ・コペン、ホンダ・660と比較してみましょう。S660はすでにレビューしているので、良かったらそちらもご覧ください→これは贅沢な公道用カートだ!元ロードスター乗りのS660試乗記

車種 写真 形状
ウインドウ
ロック
マツダ
ロードスター
初代
(NA)
CA3F0463 手動W型ビニール2箇所
2代目
(NB)
NB-softtop-2 手動W型ガラス2箇所
3代目
(NC)
 NC-softtop-1 手動Z型
または
電動>型ガラス1箇所
4代目
(ND)
ND-softtop 手動Z型
(または たぶん
電動>型)ガラス1箇所
ダイハツ
コペン
copen-hardtop 電動>型ガラス2箇所
ホンダ
S660
 S660 手動巻き取り(タルガトップ)3箇所

ロードスターに関して言えば、NA/NBとNC/NDで全く異なる構造に変化しました。

NAとNBはW型で同形状。W型のデメリットは?

NA-screen

NAのときはリアスクリーンがビニールだったので、白濁したりひび割れが起きたりという問題がありました。一方で、リアスクリーンの周りにファスナーが付いていたので、幌全体を開けずにリアスクリーンだけ開ける通称「NA開け」ができました。おそらくNAはファスナーを開けてから幌を開けるのが推奨だったはずなので、開閉には30秒程度かかりました。とはいえ、寒い時期(スクリーンがひび割れる)でなければそのまま開けることができたので、その場合の開閉は10秒程度です。

NB-rearglass

NBはNAと全く同じ外形の幌を使っています。問題だったリアウインドウはガラスに変更されたので、耐久性の問題はほぼ無くなりました。ファスナーは廃止されたのでNA開けはできませんが、リアスクリーンを気にすることなく10秒で開けられたのは大きな進歩です。リアガラスには熱線も付いたので、曇る心配もなくなりました。

幌が同一外形だったので、初代のNAロードスターにNBの幌を移植した例もたくさんあります。幌の骨組みごと新品にすると工賃含め10万円以上はかかりますが、最終型ですら発売から17年たっているNAの場合、幌を交換してでも乗り続けたい人はとても多いですね。

NB-softtop-3

NAとNBはW型の幌になっています。W型には2つのデメリットがあります。

まずW型では、閉めた際に車内に来る取っ手や車体とのロックが上に見える形になります。これを隠すためのトノカバーというオプションもありましたが、装着に手間がかかる(1分程度)のでせっかく手軽にオープンできるメリットが薄れてしまいます。トノカバーが無いと、無骨であまり美しいとは言えない姿になってしまいました。それがイイという人もいますけどね!

もう一つのデメリットは、取っ手が遠い位置になるということです。160cm台の私では運転席から取ってに触るのがやっとで、軽くない幌を持ち上げるのは無理でした(何度もトライしました)。結局、写真にあるように幌の端の一番近く手を掛けやすい場所を右手で持ち上げて閉めていました。それでも車内から閉められるのは非常に便利で、雨以外ほぼ常に開けていました。

こんな所を持つと幌が歪まないか心配でしょう。乗っていた8年間この開け方をし続けた結果、どしゃ降りだと雨漏りをするようになってしまいました(泣)

幌を閉めたときのロックは左右2箇所でした。ロックが開いたままだと美しくないので、上の写真にあるような状態にするには[ロックを開ける]→[幌を少し持ち上げる]→[ロックを閉める]→[幌を降ろす]という手順が必要でした。閉めるには逆の手順が必要なので手間と言えば手間でしたね。ほぼ景観のみなのでロックを解放したままでも問題はありませんが。

NB幌の生産が終わる!?
2014年末頃からロードスター界隈でささやかれているのが、NB用幌の生産が終わるということ。実際は純正採用されていた ビニール幌 のみが生産を終了したようです。クロス幌(布地)はまだ入手できるようですが、こちらは高級感があるものの、価格がやや高く手入れが大変というデメリットがあります。

NCはZ型を採用。美しく楽になった。

NC-softtop-2

NCになって、幌は大きな変貌を遂げました。

NC-softtop-1

NA/NBとほとんど同サイズの幌収納スペースながら、W型ではなくZ型を採用しました。これにより、開けた状態でもとても美しくなりました。トノカバーは不要です。ロードスターは幌を開けた状態が標準なので、幌が開いたときの姿が美しいことはとても重要です。

「ロードスター」の語源
「ロードスター(Roadster)」という言葉は「幌付きの馬車」が語源です。つまりロードスターは「屋根の開けられるクルマ」ではなく「屋根を閉められるクルマ」、つまり開けた状態が標準です。
ちなみに「スパイダー」「バリエッタ」も同様に「閉められるクルマ」です。「コンバーチブル」「カブリオレ」は「開けられるクルマ」という意味です。

 

NC-lock

さらに、閉めたときのロックは中央の1箇所のみになりました。NA/NBでは運転席から助手席側に手を伸ばしてロックを外さないといけなかったので良い進歩ですね。助手席に助手してくれる人が乗ってくれる場合は別ですが。普段の開閉でありがたいのはロックを開けたまま幌を開けられること。つまり「ロックを開ける」→「幌を降ろす」の2ステップで開けられるわけですね。かなり楽です。

閉めるときは、車内のレバーで幌を少し浮かせ、車内から中央のロックの両側にある取っ手に手をかけて閉めます。私にはなかなか難しくて最初うまく閉められませんでしたが、NA/NBに比べると格段に楽になりました。

NCでは開けるときに幌を上から押してカチッとロックが止まるようにしないといけないのですが、これが(新車では)すこし固かったです。長年使ってどうなるかは試していないので分かりませんが。

新型ロードスターの幌はNCの正常進化形

ND-softtop

新型ロードスター(ND)の幌はNCのデザインを踏襲したものになっています。たたみ方は開けた姿が美しく閉めやすいZ型、閉めたときのロックは中央1箇所です。ロックの形状はほぼ同一、幌を降ろしたときのレバーもほぼ変わっていません。

これだけを見るとNDはNCと同じじゃないかと思いますが、実際に操作してみるとその進化に驚かされます。

すべての動作が軽い!スムーズ!

幌を開けるとき、車内からロックを外して幌を後ろに押します。軽くひょいっと押しただけで簡単に幌収納スペースに吸いこまれていきます。とにかく動作が軽くてスムーズ! そして幌を上から押して車体に留める操作も極々軽い力で十分です。座ったままで楽に手が届く位置に幌が来ているので、上から軽く押すだけで簡単に完了します。NCと同じく試乗車でも展示車でも試してみましたが、NCより一段階も二段階も進化していました。

ND-softtop-2

閉めるときの操作はもっと感動的です。レバーを引いて幌を少し浮かせたら、取っ手に手を掛けてまっすぐ前に移動させるだけ。引っかかりや重さはまったくなく、一瞬で幌が閉まります。あとは中央にあるたった一つのレバーを倒すだけ。超が付くほど簡単です。慣れたら冗談抜きに10秒かかりません。(ちなみにNBでは私の実測で[開け5秒][閉め8秒]でした)

この簡単さはオープンカーにとって非常に非常に重要です。すでに別記事でも書いていますが、幌を開ける簡単さは、幌を開ける頻度にそのまま直結します。ロードスターは開けた状態で完璧になるように作られています。開けてこそのロードスターです。幌が今まで以上に簡単に開けられる新型ロードスターなら、もっといつでも、たとえ近所のコンビニや駅への送迎でも幌を開けようかなって思えます。

走行中の開閉も可能

安全性に十分配慮するのはもちろん必要ですが、緊急時での走行中の幌操作も可能でした。40キロ程度では余裕だったので、高速道路でも60キロくらいまで速度を落とせば操作できると思います。以下の記事で詳しくレポートしています。

オープンでの走り、クローズドでの走り

試乗の際に開け閉めをして、オープン・クローズド両方の走りを試しました。

オープンでの走り

まず最初に気付くのが、フロントガラスの近さです。NA~NCより随分近くにあるように感じました。これはメリット・デメリット両方ありました。

フロントガラスが近いメリット

マツダは新型ロードスターでのオープン走行では窓も開けることを推奨しています。これまでのロードスターでは、「窓を開けるのが一番爽快だけど、長時間だと窓を閉めたくなる」という感覚でした。実際私はオープンにしているときの7割くらいは窓を閉めていました。横からの風切り音と風の巻き込みが軽減されるも、屋根は開いているので爽快感はさほど落ちないからでした。

ですが新型ロードスターではフロントガラスが近いことで風の巻き込みがかなり改善(減ったではなく、より心地よくなった)され、風切り音も低減していました。窓を閉めた時の感覚はNBのものと似ていましたが、窓を開けていても不快な要素がほとんど無く、爽快感が体を包みます。これなら常に窓を開けていたくなりますね。フロントガラスが近いのはこの改善に役立っているものと思います。

フロントガラスが近いということは(ボンネット長が特別長くはないので)よりフロントガラスが寝ているということでもあります。デザイン的にはスタイリッシュになりますし、幌が小さくなって軽くできて重心を下げられるというメリットもあるかと思います。

フロントガラスが近いデメリット

NBに乗っていた身からすると、やや圧迫感がありました。これは実際に試乗して確かめてみるといいと思います。

クローズドでの走り

世代が違うから、と言えばそれまでですが、オープンカーにしてはとても静粛性が高く感じられました。NBでは静かになることより日射しが避けられることと風の巻き込みがなくなることしか感じませんでしたが、NDではクローズドスポーツカーとしても十分なクオリティを感じました。

ロードスターではオープンボディで完成しているので、(おそらく相当軽いであろう)幌を閉めても剛性の変化は感じられませんでした。

長期間乗れば、幌に日射しを受けた時の車内の温度変化や、雨が降ったときの車内の騒音が評価できるかと思いますが、今回は試乗なのでそこまでは分かりませんでした。

まとめ

新型ロードスター(ND)の幌の一番のポイントは、とにかく開けやすく閉めやすいことです。これは体感するのが一番だと思います。試乗までしなくてもいいので、ディーラーの展示車で一度操作してみてください。きっと感動すると思います。

ロードスターRFの電動ハードトップも素晴らしい完成度でしたよ↓

次回:新型ロードスター本気レビュー:各グレードの差を比較。迷ったらどちら?

他にも試乗レビューを書いているので、是非ご覧ください。

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