新型ロードスター本気レビュー:素晴らしいMTと残念なAT

     2017/03/12

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2015年5月に発売を開始した新型ロードスター(ND型)に試乗してきました。グレードとAT/MTの都合上、3タイプのロードスターに試乗しました。

元ロードスター乗りとしては思うところが山ほどあるので、連載にしています。

今回はトランスミッションです。MTとATで印象が真逆でした。ではいってみましょー!

スコスコと気持ちの良いマツダ製SKYACTIV-MT

新型ロードスターにはSKYACTIVが全面採用され(一部例外あり:後述)、マニュアルトランスミッションもSKYACTIV-MT(6速)が載りました。

ロー ドスターのSKYACTIV-MTはショートストロークで小気味良く変速できます。歴代ロードスターに共通することですが、ストロークが短いので今何速に 入っているかが分かりやすくなっています。シフトノブの剛性も高く、ミッションからの振動やギヤの入り具合などのインフォメーションがちゃんと伝わってき ます。

クラッチは、NA/NBと比べると楽々繋がりました。この辺は排気量が大きく楽々動かせたNCのフィーリングに近いモノがありますね。簡単にはエンストしなさそうです。

SKYACTIVではロードスターに限らず全車のアクセルにオルガンペダル(支点が床側にあるペダル)が採用されています。 MTの遊べるところとして、ダブルクラッチやヒールアンドトウをよくやっていたのですが、NDでのヒールアンドトウはほぼ不可能です。仕方ないとは思いま すが、最近希少になってしまったマニュアル車を選ぶ人はこういった練習もしたいと思うので少し残念です。

以 前デミオ(ディーゼル)のMTにも乗ったことがありますが、ロードスターにはロードスターの性格に合わせたMTにしてきているように感じました。軽い力と 小さな動きでブレ無くギアに入りますし、クラッチペダルの感覚もデミオの方がソフトに味付けされているように思いました。

アイシン製のATはセッティングに問題あり

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日本車としてはMT率が非常に高いロードスターといえども、ATも結構出ています。特にNCで電動ハードトップが登場して以降は、ライトウェイトスポーツ カーとしてというよりオシャレオープンカーとしてロードスターに乗る人も増えましたね。なのでATの出来も重要になってくるわけです。

ですが、SKYACTIVを全面的に採用した新型のロードスターにあって、ATだけは例外に なってしまいました。残念ながらSKYACTIV一族の一員である「SKYACTIV-DRIVE」ではなく、アイシン製のATが使われています。つまりマツダの技術を投入して新規開発したスカイアクティブ系の内製ではなく、(悪く言えばアリモノの)外注に甘んじてしまったわけです。

変速が気持ち悪い!トルコンなのに!

ま、そんなデータ上の話は置いておいて、実際に乗ってみてどうかということです。

発進はすんなりいきます。トルコンですから当たり前ですね。現代のスポーツカートしてはDCT(デュアルクラッチトランスミッション:MT構造のミッション を自動変速)を採用して欲しかったところですが、MTメインのロードスターでは贅沢は言いません。4AT(NA/NB)から6AT(NC/ND)になった だけで十分です。

変速はなんか気持ち悪いです。免許取り立ての下手な人がマニュアルを運転 しているかのように、回転数が一瞬ずれます。次のギヤの回転数になる瞬間に、ほんの一瞬回転数が上がります。デュアルクラッチになるまえのセミAT(アル ファロメオのセレスピードなど)が回転合わせに失敗したかのような気持ち悪い感じがします。それでもトルコンかよ!と言いたい。単なる普通のシフトアップですよ!?

スポーツモード

変速タイミングは、セレクトレバーの手前にあるモード切替スイッチを「SPORT」にしないとじゃんじゃんギアを挙げてしまってタルくて仕方ありません。「SPORT」にすればある程度引っぱってくれるので、スポーツカーとしてさほど悪くない変速をしてくれます。ATを試乗するなら少なくともSPORTモードにしないと、ATロードスターの評価がさらに下がってしまいますよ。

アクセルを踏み込んだときの反応には難あり

AT車でもアクセルを踏み込めば意図的にシフトダウンを起こすことができます。キックダウンですね。これ自体はなんてことないんですが、スカイアクティブのAT「SKYACTIV-DRIVE」ではその感触が非常に良い。「今シフトダウンして欲しい!」というタイミングで「あいよっ」と言わんばかりにタイミング良くシフトダウンしてくれます。とても気持ち良い。デミオで体験しました。

で、ロードスターでもそれを期待したわけですよ。期待が高すぎた。確かに踏み込めばシフトダウンしてくれますが、「意図した通り」とはほど遠い、普通のクルマの普通のキックダウンです。しかもそこからの再加速に否めない滑り感が。オーナーにしっかりと「オートマに乗ってるんだなぁ」と感じさせてくれます。スポーツカーでこれは残念です。

ATをSKYACTIVにできなかった理由

SKYACTIVを採用しなかった理由について、ディーラーの人は「FR用のSKYACTIV-DRIVEが無かった」と言っていました。

自動車メーカーとして大きいとは言えないマツダの中で、ロードスターに裂ける人員は限られているでしょう。もちろん理想はMT/AT共にロードスター専用設計のSKYACTIVトランスミッションを開発して投入することなのでしょう。ですがそれが叶わないとして、どちらかのみを内製、もう一方を外注とするのであれば、ロードスターというクルマの性格を考えればMTを内製にするのが筋でしょう。

おそらくそんな理由で、MTはFR用のSKYACTIV-MTを開発して投入、ATは(不本意ながら)アイシン製の非SKYACTIVのATを使った、というところでしょうね。

SKYACTIV-DRIVEがロックアップ率を上げてダイレクト感を向上させていることを謳っているだけに、普通のATになってしまって残念に思います。ATのロードスターを考えている人は、いずれ出るかもしれないSKYACTIV-DRIVE仕様のATロードスターを待つのも一つの手かもしれませんよ。

次回:新型ロードスター本気レビュー:25年のノウハウが詰まった幌。フルオープンで乗るべし。

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