新型ジュリエッタ試乗レビュー!1.75ターボの走り&マイチェンでの変化は?

     2017/02/21

マイナーチェンジを受けたアルファロメオ・ジュリエッタに試乗してきました。

乗ったのは最上位モデル「ヴェローチェ」です。1.75ターボエンジンを搭載していて、以前は「クアドリフォリオ・ヴェルデ(QV)」と呼ばれていたグレードです。

高性能版ジュリエッタの走りはどうなのでしょうか? マイナーチェンジ前後の違いは?

アルファロメオ・ジュリエッタってどんな車?

ジュリエッタはアルファロメオのCセグメントハッチバック車です。

欧州実用車の中心・Cセグメントなのでライバルはたくさんいます。フォルクスワーゲン・ゴルフルノー・メガーヌ、BMW・1シリーズ、メルセデスベンツ・Aクラスアウディ・A3ボルボ・V40などなど。

国内ではマツダ・アクセラスバル・インプレッサトヨタ・オーリスが同じCセグメントです。私自身Cセグメントのサイズ感が好きなので、結構試乗していますね。後はトヨタ・プリウスも一応Cセグメントですが、プリウスとジュリエッタで迷うような人はいないでしょうね。車格は同じでも性格が違いすぎます。

ジュリエッタはイタリア車らしいデザインやエモーショナル(情緒的)な走りが魅力な一方、イタリア車で懸念される故障などのトラブルは昔に比べ格段に減っています。良く言えばイタリア車の問題点が減ったと言えますが、悪く言えばかつてのイタリア車の過激さが減ってドイツ車のようになってしまっています。良くも悪くもイタリア人が作ったドイツ車がジュリエッタでしょうね。

ジュリエッタの発売は2012年(イタリアでは2010年)です。その後2014年にフェイスリフト(マイナーチェンジ)を受けて外観デザインが一部変更されました。今回が2度目のフェイスリフトです。

今回は同時にBセグメントのミトとミッドシップスポーツカーの4Cが同時にマイナーチェンジを受けました。

私の今の愛車がまさにこのジュリエッタです。自分の車のレビューをまだ書いていません(問題!)が、今回はマイナーチェンジ直後ということで、マイナーチェンジ前や1.4Lモデルとの比較を中心にレビューします。

エンジンラインナップ

ジュリエッタのグレード構成は変わったものの、エンジン構成は変わっていません。下位・中位グレードには1.4Lターボエンジン、上位グレードは1.75Lターボエンジンです。

スーパー スーパー
PACK SPORT
ヴェローチェ
駆動方式 FF
トランスミッション 6速DCT
エンジン 直列4気筒 マルチエア 直列4気筒 DOHC
排気量 1.4Lターボ 1.75Lターボ
最高出力 170ps 240 ps
最大トルク D 25.5 kgm 34.7 kgm
N/A 23.5 kgm 30.6 kgm
価格 377 万円 388 万円 424 万円

ここで面白いところが2つあります。一つは1.4Lターボの方は吸気バルブがカム駆動(機械式駆動)ではなく、電子制御で油圧バルブを操作していることです。これを「マルチエア」と呼んでいます。

マルチエア

もう一つは走行モードによって最大トルクが変化することです。最近は走行モードでアクセルの反応やトランスミッションの制御を変えている車はよくありますが、ジュリエッタではスポーツモードにあたる「Dynamic」にすると最大トルクすら変化します。

走り

1,440kgに対して240馬力というスペックです。車重とパワーが近いのはフォルクスワーゲン・ゴルフGTIや、アウディ・TTの2.0Lモデルなど。

加速感

1.4Lモデルとも共通するところですが、最高出力の割に踏み始めのトルクはあまり出ません。やや遅れてトルクが盛り上がってきます。

いわゆるターボラグの類なのでしょうが、最近の欧州ダウンサイジングターボはターボラグをほとんど感じさせない設計のエンジンがほとんどなので、ここはやや残念です。特に回転数が低いときにはトルクの立ち上がりの遅さにあれっと思うかもしれません。踏み始めの瞬間は同排気量の実用車並みの反応です。

ターボラグを抜ければトルクフルな性格が顔を出します。特にDynamic(スポーツモード)にしていると最大トルクは34.7kgm。自然吸気なら3.5Lクラスのトルクです。車重が特別軽いわけではありませんが、十二分に強力な加速をしてくれます。回転数が上がるとハッチバック車とは思えないほどの良い加速を見せてくれます。

1.4Lでも1.75Lでも、同排気量のダウンサイジングターボ車に比べてパワーが大きめです。大トルク・高パワーを重視して、アクセル踏み始めの反応を多少犠牲にしたということでしょう。コンマ数秒のラグを我慢できるかが、ジュリエッタを楽しめるかの分岐点になるでしょうね。

DCT

現行日本で販売されているジュリエッタはDCT(アルファロメオはTCTと呼ぶ)のみとなっています。以前は1.75LターボがMTとの組み合わせになっていましたが、2014年のフェイスリフト以降は排気量に関わらずDCTのみとなりました。

今回のマイナーチェンジで発進のスムーズさが明らかに進化していました。マイナーチェンジ前のQV(1.75LターボのDCTモデル)と比較しても発進時のクラッチの繋ぎ方や発進の瞬間のエンジン挙動がスムーズになっています。元々アルファロメオのDCT「TCT」はフォルクスワーゲンのDCT「DSG」と比べてもスムーズな発進でしたが、さらに進化したことで各社DCTの中でもトップクラスのスムーズさになったと思います。何も知らずに乗ればDCTだと気づかない人もいるでしょうね。

コストを除けばDCTの苦手ポイントは発進くらいしかありませんからね。ここが改善されたのは良いことです。

足回り

マイナーチェンジ前後で足回りに変化は感じませんでした。

サスペンションの動きはしなやかで、路面の凹凸を適度に吸収しつつも、高速走行にも余裕で対応する安定感があります。イメージで言えば、ドイツ車の「ガッチリ安定」と、フランス車の「ふんわり吸着」の間のような感覚でしょうか。

ただし、ジュリエッタは下位グレードでも17インチ・扁平率45、中位上位では18インチ・扁平率40なので、タイヤの分乗り心地が悪いです。ゴルフなどのCセグメント車は下位中位グレードで16インチが多いですからね。16インチくらいなら小さな凹凸はタイヤで吸収できてしまいます。

コーナリング時はかなりしっかり踏ん張ってくれます。足回りの安定感ではCセグメントでも随一ではないでしょうか。ホイールサイズが大きいこともあって、タイヤがたわむ感じもほとんどありません。

トルクステア

低速域からフルアクセルで加速してみましたが、トルクステアはまったく感じませんでした。ゴルフGTIやマツダスピードアクセラ(廃版)など、200馬力超えのFF車ではトルクステアを感じる車が多いですが、ジュリエッタは大丈夫でしたね。

同じくハイパワーFF車ではルノー・メガーヌR.S.もトルクステアがありませんでした。

メガーヌR.S.はサスペンションの構造でトルクステアを抑えているとのことでしたが、ジュリエッタはどうしているのでしょうね? そんな特別な構造だとは聞いたことがありませんし、高度な電子制御で回避しているとも思えません。トルクステアで暴れるくらいのほうがイタリア車らしい気もしてしまいますけどね。

ドライビングポジション

(165cm・60kgでのレビューです)

これがジュリエッタ最大の問題点です。イタリア車は全体的にドライビングポジションが変(日本人に合わない)なのですが、ジュリエッタは特にダメです。とにかくステアリング位置が高すぎる!遠すぎる!

ステアリングが上に向いている上に、チルト(上下調整)の下限が高いのでシートを高くするしかありません。しかもステアリングが遠いのでテレスコピック(前後調整)で手前に引き出すわけですが、ステアリングが上向きなので手前に引き出すとさらに高くなります。単純にステアリングが握りにくいですし、ステアリングが高いせいでメーターの下の方が隠れます。

ステアリングに合わせるとシートを結構高くすることになりますが、ボディ形状やシートの角度、ペダルの角度はシートを低くすることを期待しているようで、今度は視界や足に違和感が出てきます。

もはや体を車に合わせるしかないということになりますね。変な姿勢でも我慢して運転するしかありません。こんな乗り方は前時代的です。

イタリア人の体型や乗り方には合うのかもしれませんが、世界中に販売する車ならあらゆる体型に合わせられるように調整範囲を広く取るのが正しいやり方です。最近のマツダ車なんかはほとんどどんな人にも合わせられるんじゃないかというほど調整範囲を設けています。

フィアット/アバルトにしろアルファロメオにしろ、なんならランボルギーニ(座ったことだけあります)にしろ、ドライビングポジションというものを軽視しすぎです。上向きすぎのステアリング・調整範囲の狭いチルト・無いかあっても奥すぎるテレスコというお決まりのコンビネーションでドライバーを苦しめます。

こんなに文句を言っていますが、これが私の愛車です。ステアリング位置だけはどうにも我慢ならなかったので、DIYでチルトステアリングを下限を少し低くしました。これだけでもかなり改善しますよ!(もちろん自己責任で)

内装

外観は本国での発表時日本での発表時実車レビューに書いてきたので、今回は内装をレビューします。

メーター

一番の変化ポイントはメーターです。

マイナーチェンジ後

マイナーチェンジ前

メーター周囲を覆っていたシルバーのリングが無くなりました。良く言えばすっきりシンプルになったとも言えますが、リング付きに見慣れているせいか安っぽく感じてしまいました。

そしてもう一つ。

インフォメーションディスプレイが白表示になってしまいました。左下にアルファロメオのエンブレム(しかも新しいロゴの方)が出ていますが、そんなことは些細なこと。白ですよ白! アルファロメオ車のカッコ良いポイントが失われていまいましたね。

さらに、車に乗り込むときにジュリエッタが走ってくるアニメーションが表示されますが、グリルは初期モデルのまま! グリルデザインは2回も変更されているのに、メーターの表示は変更しないんですね。

今回のマイナーチェンジ後のグリル

このアニメーションの表示はマイナーチェンジ前は全画面でした。そこは変更するのに、車のデザイン変更は反映しないのかよ! イタリア人らしいと言えばそれまでなんですけどね。

マイナーチェンジ前

インパネ

インパネのカラーリングが下位グレードがナチュラル(濃いベージュ)固定、中位・上位グレードはカーボン調固定になりました。

マイナーチェンジ後

マイナーチェンジ前はカーボン調がなくて、代わりに黒や赤になっていました。特にレッドレザーシートを選択したときの赤インパネは素敵でした。

マイナーチェンジ前(レッドレザーシートのとき)

これが無くなったのは実に残念ですね。スポーティな印象にしたいのでしょうが、イタリア車の「おしゃれさ」という美点も選べるようにして欲しかったですね。

カーボン調は好きな人は好きなのでしょうが、偽装デザイン(実際に軽くて強いカーボンを使っているわけでもないのに、見た目だけはカーボン調)なので私は好きではありません。オプションですら他のパネル色の設定が無いというのはちょっと押しつけがましいですね。

ちなみにカーナビは標準装備になりました。

シート

ジュリエッタの「ヴェローチェ」は標準でレザー/アルカンターラのコンビネーションシートです。うちのフルレザーのジュリエッタに比べると、シート座面が柔らかいからか着座位置がやや低く感じました。

レザー/アルカンターラではパワーシートは装備されておらず、手動調整です。マイナーチェンジでファブリックシートが廃止になり、下位グレードでもレザーシートが標準装備になりました。

[下位グレード]
スーパー
1.4Lターボ
[中位グレード]
スーパー パックスポーツ
1.4Lターボ
[上位グレード]
ヴェローチェ
1.75Lターボ
シート表皮 レザー レザー/ファブリック レザー/アルカンターラ
(オプション:レザー)
シート調整 電動 手動 手動
(レザーでは電動)

なんだかシートの構成がグレードと逆転しているようにも見えますね。ただし「スーパー」のレザーはナチュラル(濃いベージュ)固定、「ヴェローチェ」のオプションレザーはレッドとブラックの選択式です。

ボディカラーも含め、相変わらず選択肢が狭いですね。唯一のメタリックカラー「エトナブラック」が下位グレードしか選べないというのももったいないですね。

どのシートにもシートヒーターが付いていますが、フルレザーシートは強さ3段階、今回試乗したレザー/アルカンターラはオンオフのみです。レザー/アルカンターラのシートヒーター「オン」は、レザーシートの3段階中の1~2くらいの強さでしたね。ちなみに年に数回雪が積もる程度の地域では1でも熱すぎるくらいです。

まとめ

トランスミッションがスムーズさを増したのは重要なトピックですが、内装の変更は残念な点ばかりでしたね。

走りに関する変更はほとんどありませんでしたが、元々非常に面白い走りの車なので(ターボラグの問題を除けば)楽しめると思いますよ。欲を言えばもう少し軽いと軽快感が出てもっと良かったかなぁと思います。

ミト&ジュリエッタのマイナーチェンジ後の外観レビューはこちら↓

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