新型C-HRはヴェゼル/ジューク/CX-3に勝てるのか?スペック比較で見えたC-HRの欠点

     2017/03/09

トヨタの新型小型SUV「C-HR」が発売になりましたね! 小型SUVと言えば、ホンダ・ヴェゼル,日産・ジューク,マツダ・CX-3がすでにありますが、C-HRは勝てるほどの素養があるのでしょうか?

公開されたスペック情報を比較してみようと思います。C-HRの欠点はどこでしょうか?

トヨタ・C-HR

C-HRは、トヨタから発売されたばかりの新型小型SUVです。ベースはプリウスで、特にハイブリッド仕様はパワートレインが同じなので、いわば「プリウスSUV」という車です。

トヨタにしてはアグレッシブなデザイン(シエンタとかもある意味アグレッシブですが)で、「若者世代の開拓」「トヨタに乗っていない人の取り込み」を狙うモデルと位置づけられています。

小型SUVに参入

ジュークがつき、ヴェゼルがこねし小型SUV、座りしままに食うはC-HR

国内での小型SUV市場は日産・ジュークが開拓しました。コンパクトカー並みの実用性を備えながらも、実用性一辺倒でない遊び心のあるSUVデザイン、取り回しに困らないサイズ感、100万円台後半~という絶妙な価格設定で人気を獲得しました。100万円後半だと、実用性一辺倒(ヴィッツクラス)から一つだけ贅沢が許される価格帯です。

小型SUVは「サイズを変えずに遊び心が欲しい」という人にちょうどウケたわけですね。

ジュークが売れたことでホンダ・ヴェゼルとマツダ・CX-3も参入。ある程度市場ができあがったところで王者トヨタが入ってくるわけです。いつものトヨタのやり方ですね。基本的に確実に売れる車しか作りません(初代プリウスを除く)。車として良かろうが悪かろうが、トヨタの販売力があれば確実に売れますからね。C-HRはジュークやヴェゼルの顧客(潜在顧客含む)を奪っていくことでしょう。

ちぐはぐなデザイン

一方で、かなり挑戦的なデザインだったコンセプトカー「C-HRコンセプト」に比べると、市販車仕様は色んな毒が抜かれてしまって結構普通な外観になってしまいました。トヨタ車としては比較的良いデザインなのかもしれませんが、「デザイン重視!」と胸を張って言えるほどの出来ではありません。特にリアはコンセプトカーから劣化しまくりです。

それに内装はとても若者向けとは思えない「オジサン向け茶色」か「高級志向の真っ黒」の二択。外観とちぐはぐになってしまっています。C-HRのデザインについては以下の記事で詳細に評しています。

スペック比較

スペックを比較してみましょう。グレードは最安価格のものを選びました。

車種
グレード
トヨタ・C-HR
ホンダ・ヴェゼル
日産・ジューク マツダ・CX-3
全長 4,360 mm 4,295 mm 4,135 mm 4,275 mm
全幅 1,795 mm 1,770 mm 1,765 mm
全高 1,550 mm 1,565 mm 1,605 mm 1,550-1,570 mm 1,550 mm
ホイールベース 2,640 mm 2,610 mm 2,530 mm 2,570 mm
車重 1,440 kg 1,470 kg 1,180 kg 1,200 kg 1,300 kg 1,270 kg
駆動方式 FF 4WD FF/4WD FF FF/4WD FF/4WD
トランスミッション CVT 6AT/6MT
エンジン形式 直列4気筒
排気量 1.8L ガソリン
+モーター
1.2L ガソリン
ターボ
1.5L ガソリン 1.5L ガソリン 1.6L ガソリン
ターボ
1.5L ディーゼル
エンジン最高出力
(モーター最高出力)
98ps
(72ps)
116ps 131ps 114ps 190ps 105ps
エンジン最大トルク
(モーター最大トルク)
14.5kgm
(16.6kgm)
18.9kgm 15.8kgm 15.3kgm 24.5kgm 27.5kgm
フロントサス ストラット
リアサス ダブルウィッシュボーン 車軸 トーションビーム
燃費 30.2 km/L
(3.3 L/100km)
15.4 km/L
(6.5 L/100km)
20.6 km/L
(4.9 L/100km)
18.0 km/L
(5.6 L/100km)
14.2 km/L
(7.0 L/100km)
23.0 km/L
(4.3 L/100km)
年間燃料費 4.0 万円 7.9 万円 5.9 万円 6.7 万円 8.5 万円 4.2 万円
価格 265 万円~ 252 万円~ 192 万円~ 198 万円~ 243 万円~ 238 万円~

※ C-HR以外の車重・燃費はFFの値。年間走行距離は10,000km、生涯燃料費の計算機で計算。
※ 他にヴェゼルには1.5Lハイブリッド(7AT)あり。
※ ジュークの4WD車はリアサスペンションがマルチリンク。

ヴェゼルハイブリッドは無意味

ヴェゼルには1.5Lハイブリッドがありますが、ガソリン車に比べて車体価格が 35万円 も高いのに対して、10万キロ燃料費はカタログスペック通りでも 14万円 しか安くなりません。

ホンダのハイブリッドはモーターの出力が小さい(ヴェゼルでは30馬力)ので走行性能に与える影響も小さいです。環境意識の高い高尚な方を除けば、ヴェゼルのハイブリッド仕様を買う意味はありません。

機械式駐車場に停められるのは C-HRハイブリッド と CX-3 だけ

日本の機械式駐車場の多くは全高1,550mm以下という制限があります。都市部のマンションなど自宅が機械式駐車場の場合はこの制限の範囲で車を探さなければいけません。

比較的車高が高くなりがちなSUVでは、1,550mmを超える車がほとんど。でも機械式駐車場も想定している小型SUVには制限内のものもあります。現行SUVで全グレード1,550mm以下なのは、CX-3とインプレッサXVのみ。インプレッサXVは全長4,450mmに2.0Lガソリン/2.0Lハイブリッドなので、CX-5などの中型SUVに属します。

C-HRはハイブリッド仕様だけが全高1,550mm。ジュークは「15RX Vアーバンセレクション」というグレードだけが全高1,550mmです。機械式駐車場利用で小型SUVを選ぶ場合、C-HRハイブリッド、CX-3、ジューク Vアーバンセレクションのいずれかに限られます。

C-HRはライバルに勝てる?

「C-HRハイブリッド」のライバルは マツダ・CX-3

C-HRのハイブリッド仕様車と直接のライバルになるのは、マツダ・CX-3でしょう。パワートレインや思想は異なりますが、低回転域のトルクが厚く、それぞれハイブリッドとクリーンディーゼルという手法で燃料費が安い。価格帯もさほど離れていません。

C-HRハイブリッドとCX-3については別記事で詳細に比較しています。

「C-HRターボ」はライバル不在:高すぎるから

C-HRターボには直接のライバルがいません。「ライバル不在」と言えば聞こえはいいですが、ライバルがいない理由はC-HRの価格競争力が低すぎるからです。

C-HRターボのパワーは100馬力そこそこ。1.2Lダウンサイジングターボでは1.5L自然吸気エンジンにやや勝る程度です。1.5Lガソリンのジュークやヴェゼルは200万円を切っています。C-HRターボより50万円以上安くては勝ち目がありません。

C-HRターボと価格帯で競合するのはジュークの1.6Lターボ車くらいでしょうか。比べてみましょう。

車種 トヨタ・C-HR
日産・ジューク
グレード S-T 16GT FOUR
車重 1,470 kg 1,390 kg
(FFは1,300kg)
駆動方式 4WD
トランスミッション CVT
排気量 1.2L ガソリンターボ 1.6L ガソリンターボ
最高出力 116ps / 5,200-5,600rpm 190ps / 5,600rpm
最大トルク 18.9kgm / 1,500-4,000rpm 24.5kgm / 1,600-5,200rpm
フロントサス ストラット
リアサス ダブルウィッシュボーン マルチリンク
燃費 15.4 km/L
(6.5 L/100km)
13.4 km/L
(7.5 L/100km)
年間燃料費 7.9 万円 8.5 万円
価格 252 万円~ 270 万円~
(FFは243万円~

全然勝てそうにありませんね。1.6Lターボのジュークは190馬力・24.5kgm。しかも車重はC-HRターボより80kgも軽いときたら運動性能は圧倒的にジュークの方が上です。排気量が大きくて燃費が悪いのかと思えば、年間燃料費はたった6,000円の差。どちらも小排気量ターボなので実燃費の傾向は同じ。走行シーンに関わらず燃料費は似たような差になります。

同じ4WDで比べれば価格はジュークの方がわずかに高いですが、ジュークの1.6LターボにはFFもあります。FFならC-HRターボより10万円ほど安い。一方C-HRターボは4WDのみです。

C-HRは重すぎる!!

何がマズかったかって、C-HRが重すぎるんですよ! 全長4.3mの小型SUVで1,400kg超えなんて重すぎます。1.8Lガソリンエンジンにバッテリーとモーターを積んだハイブリッド仕様が重いのはまだ理解できます。プリウスだって1,300kg超えていますからね。

でも1.2Lターボがこんなにも重たいのはおかしい! ハイブリッド仕様でも軽くないのに、ターボ仕様はさらに30kgも重いってどういうことだよ! 1.6Lターボ+4WDを積んだジュークの方が軽いってどういうことだよ!

SUVで1,400kg台って全長4.5m以上で2Lエンジンの「エクストレイル」「フォレスター」辺りのの重さですよ。ベースとなったオーリスの1.2Lターボはハイブリッドより90kg軽い1,300kgなのに、一体何が載ったら1,470kgにもなるのか不思議です。オーリスから計算すると4WDシステムが120kgということ。このクラスの4WDシステムは100kg以内が相場。軽量化の努力が足りませんね。

同じエンジンを積むオーリスターボ(1.2Lターボで260万円~)に乗ってみましたが、C-HRターボより170kgも軽いのに非力でした。しかもCVTな点はオーリスもC-HRも同じ。

ハッキリ言って、C-HRのターボはやめたほうがいいです。これに250万円はいくらなんでも高すぎます。

まとめ

C-HRのスペック上の欠点は重すぎること。そしてC-HRという車の最大の欠点は価格が高すぎることだと判明しましたね。

面白い車ではあるんですが、根本的に価格競争力が低すぎて話になりません。250万円も出せば色んな車がより取り見取りです。ジューク1.6ターボやCX-5はもちろんのこと、インプレッサやフォレスター、アクセラオーリスロードスター、BRZ、輸入車ならフィアット・500アウディ・A1、VW・ゴルフ/ポロ/ビートル、ルノー・ルーテシア、プジョー・208などなど、オシャレ実用車からスポーツカーまで選択の幅はかなり広いです。この価格でスペックの魅力が低いC-HRを選ぶなんて、デザインがよっぽど気に入ったか、トヨタ信奉者くらいに限られるんじゃないかなぁと思います。

まぁ頼みの綱のデザインもコンセプトカーからだいぶ劣化してしまったんですけどね。デザインについてはこちら↓

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