日産が「グリップスコンセプト」を発表!発想は面白いけどスポーツカー要素なし
日産がスポーツクロスオーバーのコンセプトカー「グリップスコンセプト」をフランクフルトモーターショー2015にて初公開しました。
若い世代に向けた新しいタイプの車とのことですが、どんな車なんでしょうか? 色々と奇抜すぎてそもそものコンセプトが分かりづらいような……?
日産・グリップス コンセプトってどんな車?
GRIPZ(グリップス)コンセプトは、日産がフランクフルトモーターショー2015に出展したコンセプトカーです。
プレスリリースは矛盾だらけ
日産のプレスリリースによると、グリップスは若い世代に向けた新しいタイプの車で、スポーツコンパクトクロスオーバー(小型SUV)の性能と実用性、スポーツカーのワクワク感とパフォーマンスを兼ね備えるそうです。
性能と実用性が小型SUVなんだから、それは小型SUVそのものですよね。自動車業界では性能のことをよく「パフォーマンス」と呼びますが、小型SUVの性能でスポーツカーのパフォーマンスってどういうことでしょうか? 矛盾してませんかね?
結局のところ性能と実用性は小型SUV基準で、デザインとイメージにスポーツカーの要素を取り込もうとしているんでしょうかね。
「平日の通勤にも週末の遊びにも対応できます」ともありますが、SUVもスポーツカーも方向性は違えど非日常の遊びを彩るタイプの車です。平日の通勤に、SUVなら取り回しの悪さと車重から来る燃費の悪さが無駄ですし、スポーツカーなら爽快に走れない渋滞路で性能を持て余します。SUV+スポーツカーなら単純に「非日常を演出する遊びのクルマ」で良いじゃないですか。
実車を見ずともプレスリリースが矛盾だらけです……。
エクステリアデザイン
完全にコンセプトカー然としているのでこのまま市販化はできませんね。あくまで「こういうジャンルの車はどうですか?」という提案なのでしょう。
車体サイズは4,100×1,890×1,500mmです。
日産の小型SUVということで、ところどころに同社の小型SUV「ジューク」のデザイン要素が使われています。V字のヘッドライト、エンブレム周りのV字のシルバー枠、グリルのメッシュデザインなどですね。
リアもかなりゴツゴツしたデザインです。こういうガンダムみたいなのは私はあまり好きじゃありません。
クロスオーバーな感じはしますが、スポーツカーの要素はほとんど感じません。ルーフがクーペ風に低くなっていることくらいでしょうか。同じくフランクフルトモーターショーで発表されたマツダ・越(KOERU)の方がよっぽどスポーティです。こちらはスポーツカーとは名乗っていませんが。
ガルウイング+観音開きのドア
ドアは奇をてらってしまっています。4ドア観音開きな上にフロントドアはガルウイング(跳ね上げ)式です。
ちょうどポルシェが観音開きドアのコンセプトカー「ミッションE」を出しているので観音開き自体は問題ないと思います。
マツダ・RX-8が採用したように、観音開きドアにも乗降性やデザインにメリットがあるからです。
しかしガルウイングドアは実用上かなり問題ありだと思います。ランボルギーニのように真上に跳ね上がるタイプのドアなら狭い場所でも乗り降りできますが、こんなに斜め外側に開いてしまうと一般的な駐車場ではドアを開けることすらできなさそうです。
インテリアデザイン
インテリアはエクステリア以上に奇抜です。カッコ良いはカッコ良いんですが、シートは長時間座らせる気がありませんし、FRでもない(というかそもそもEV)のに巨大なセンタートンネルがあったりします。
クーペ風のスタイルの割にフルサイズのリアシートを備えているのはスポーツカーとしては立派ですが、小型SUVとしては普通です。
天井部分も特殊ですが、まぁこれは実現可能性ほぼないのでスルーしましょう。
パワートレイン
グリップスはEVです。モーターには日産・リーフと同じものが採用されています。つまりスポーツカーとして造られたパワートレインではありません。
まがいなりにもスポーツカーを名乗るなら(架空だとしても)専用のパワートレインを用意しますくらい言わないといけないと思います。リーフは実用重視のEVですから、これではスポーツカーとは言えませんね。最高出力は108馬力しかありません。
さらに確実にリーフより重いでしょうから走行性能はリーフにすら劣るでしょうね。
そしてただでさえ重たいのに、発電専用のガソリンエンジンを搭載しています。シリーズハイブリッドという方式で「Pure Drive e-Power」と名付けられています。エンジンもガソリンタンクもバッテリーもモーターも搭載しないといけないので、これではいくらなんでもスポーツカーの走りは到底期待できませんね。
まとめ
スポーツカー+SUVという試みは面白いですが、完全にSUV側に偏ってしまっています。
しかもピュアEVではなくシリーズハイブリッドなので動力性能はEVでも車重やパッケージングが圧倒的に不利です。EV技術を持つ日産ならEVとしてのコンセプトカーにすれば良かったのになぁと思ってしまいます。
シリーズハイブリッドで売り込んでいるので「実用ハイブリッド+SUV」になってしまっているのがグリップスの現実ですね。
フランクフルトモーターショーでは他にもたくさん発表されているのでぜひご覧ください。