オーリス1.2ターボ試乗レビュー!非力+ダメCVTなのにゴルフより高いってどういうこと?
オーリスの1.2Lターボ車に試乗してきました。
トヨタが作ったダウンサイジングターボはどんな走りなのでしょうか? ……こんな走りにこんな価格で買う人いるんですかね。
オーリスハイブリッドの試乗レビューはこちら↓
目次
トヨタ・オーリスってどんな車?
トヨタ・オーリスは、トヨタのCセグメントハッチバックです。国内では同クラスに属するプリウスに押されてさほど多く売れてはいませんが、ヨーロッパではトヨタの主力車種になっています。
世界におけるCセグメント
オーリスが属するCセグメントは、ヨーロッパにおいて最もベーシックな実用車の地位を確立しています。Cセグメントを牽引するのは名車フォルクスワーゲン・ゴルフ。この「主要実用車」の座を巡って、BMW、ルノー、ボルボ、アウディ、アルファロメオなどの欧州メーカー各社が主力車種を投入しています。
日本メーカーではトヨタ・オーリスの他にもマツダ・アクセラやスバル・インプレッサがCセグメントハッチバックです。アクセラとインプレッサは日本でも主力車種になっていますが、オーリスはあまり力を入れられていませんね。日本ではハイブリッド専用車が圧倒的に売れるので仕方ないのかもしれません。
カローラオーリス?
現行オーリスは2012年から販売されている2代目です。プラットフォームはカローラの大きめモデル(カローラルミオンと海外向けカローラセダン)と共通です。元々オーリスの前身はカローラハッチバック。つまりオーリスはトヨタの名付けからすると「カローラオーリス」と呼ばれるべき存在なんですね。でも「カローラ」の名前は大衆向けのイメージが強すぎるので外したのでしょう。
欧州メインで開発されたオーリスは、初代(2006~2012年)からこのクラスの国産車にしては幅広な全幅1,760mmでした。現在ではこのくらいの幅が国産でもジャンジャン出ているので珍しくはありません。
現行オーリスのパワートレイン
国内向けの現行オーリスは3種類のパワーソースがあります。
エンジン | 1.5L | 1.8L | 1.8L+モーター | 1.2Lターボ |
---|---|---|---|---|
トランスミッション | CVT | CVT/6MT | CVT | CVT |
価格 | 179 万円~ | 238 万円~ | 262 万円~ | 259 万円~ |
ディーラーマンによると一番出るのは1.5Lらしいんですが、Cセグメント車で1.5Lはさすがに非力でしょうね。せっかく欧州向けの安定した足回りと余裕あるボディサイズなのに、1.5Lでは高速を楽に走ることはできないでしょう。
となると妥当なのは1.8Lか1.2Lターボですね。1.8L+モーターのハイブリッドは発進時の静粛性やトルク感に魅力がありますが、高速巡航でのモーター&バッテリーはただの重りになりますし、だいいち同クラスのプリウスを買えば良いだけの話。オーリスハイブリッドはプリウスと競合してあまり売れていないそうです。
高速巡航での燃費とパワーをバランスすると、欧州メーカーと同じくダウンサイジングターボに行き着くのでしょう。ということで今回はダウンサイジングターボの1.2Lターボエンジン車を乗ってきました。同一エンジンが新型SUVのC-HRにも搭載されることにも注目です。
1.2Lターボの走り
スペックで見ると、1.2Lターボは116ps/18.9kgmです。パワーは1.5Lと1.8Lの間というわけですね。
加速感
トヨタ式のダウンサイジングターボはどんなだろうかと思って走り出したんですが、とにかくCVT(無段階変速)が残念! オーリスのラインナップの中で敢えて1.2Lターボを選ぶ人は、ターボエンジンらしい心地よい加速感が欲しいからなのでしょうが、これでは全く意味がありません。
CVTなことは我慢しつつ加速感を見てみると、1.2Lターボは1,300kg近い車重にはやはり非力なようです。CVTだからアクセルを踏むと異様にエンジン回転数を上げてパワーを稼ごうとしますが、それでも非力です。そして当然回転数が上がる分だけうるさくなります。
1.2Lターボでもこんな非力なのに、1.5L自然吸気はさらに非力です。それでもCセグメントかよ!と言いたくなるようなレベルです。外見と中身が合っていません。単に大きければいいなら、Bセグメントロング系の方が価格に見合った造りになっていると思います。
1.2Lターボは1,300kgの車重には非力。同じCセグメントでも1.5L自然吸気のマツダ・アクセラ(111ps/14.7kgm/1,280kg)は、どういうわけか軽快感があって走りやすく、非力さをあまり感じませんでした。何が違うのかって、トランスミッションですよ。CVTがすべてをダメにしています。
トランスミッション
走り始めてすぐに感じる、CVTの不快感。エンジン音だけ大きくなるのに、車速は全然上がってきません。トヨタ式ハイブリッドならCVTでもエンジン音が比較的静か(低速ではモーターがトルクを稼ぐ)のであまり気になりませんが、非力エンジン+CVTではCVTの悪癖がより強調されます。こんなCVTで走るくらいならハイブリッドの方がいいですね。オーリスのターボとハイブリッドはほぼ同価格です。
同じ1.2Lターボといえば、VW・ゴルフが有名です。105ps/17.8kgm/1,240kgなので、カタログスペック上では大きな差はありません。でも少なくとも普通に走る分にはゴルフ1.2は最低限不満の出ない走りができました。でもオーリスは普通に街中を走るだけでも「加速しない」「反応が悪い」「エンジンがうるさい」を感じます。
その大きな理由はゴルフに使われるDCT(VWではDSGと呼ばれる)でしょう。構造上CVTのような滑りがありませんし、変速も超高速です。これなら1.2Lターボの力を十分に使えます。
でもオーリスの1.2Lターボではせっかく絞り出した力をCVTが滑って失いますし、エンジンが非常にうるさいです。発進加速のたびに「ぐぅーーーん」と高回転まで回してなんとか回転数で押し切ろうとしてきます。フィーリングも非常に悪いです。Cセグメントでももっと良い車がたくさんあるのに、なんでこんなのに260万円も払わなきゃいけないんでしょうか。
Cセグメントでダウンサイジングターボをやるなら、欧州各社のようにDCTを入れる、マツダやBMWのように質の良いトルコン式ATを開発する、排気量を上げるのいずれかが必要だったのでしょう。オーリスの場合1.5LターボであればCVTであってももっと快適に走れたと思います。
オーリスの車重でもこんな状態なのに、C-HRはまともに走れるのでしょうか? C-HRの1.2Lターボは4WDオンリーで車重は1,470kg。今回試乗したオーリスより200kgも重いです。そして当然CVT。これでは加速感はさらに悪化することは間違いないでしょうね。
足回り
オーリスハイブリッドと特に変わった感じはありませんでした。「トヨタが作った欧州車」と宣伝しているだけあってトヨタ車にしてはどっしり系の足回りではありました。でももっとカッチリさせてくれてもなぁとも思います。トヨタのラインナップから敢えてオーリスを選ぶんですからね。
もしかしたら日本向けオーリスはサスペンション設定を日本人向けに柔らかめにしているのかもしれません。
ブレーキ
トヨタにしてはちゃんと効くブレーキでした。トヨタ車と言えば踏んでもなかなか効かないブレーキが多いですからね。タッチもソフトでコントロールしやすかったですし、不安を感じるようなところありませんでした。
スペック比較
車種 | トヨタ・オーリス |
マツダ・アクセラスポーツ |
フォルクスワーゲン・ゴルフ |
|
---|---|---|---|---|
グレード | 120T | ハイブリッド | 15C | TSIトレンドライン |
全長 | 4,330 mm | 4,470 mm | 4,265 mm | |
全幅 | 1,760 mm | 1,795 mm | 1,800 mm | |
全高 | 1,480 mm | 1,470 mm | 1,460 mm | |
ホイールベース | 2,600 mm | 2,700 mm | 2,635 mm | |
車重 | 1,300 kg | 1,390 kg | 1,280 kg | 1,240 kg |
駆動方式 | FF | |||
トランスミッション | CVT | 6AT | 7AT | |
エンジン形式 | 直列4気筒 | |||
排気量 | 1.2L ガソリンターボ | 1.8L ガソリン+モーター | 1.5L ガソリン | 1.2L ガソリンターボ |
最高出力 (括弧内モーター) |
116ps / 5,200-5,600rpm | 99ps / 5,200rpm (+82ps) |
111ps / 6,000rpm | 105ps / 4,500-5,500rpm |
最大トルク (括弧内モーター) |
18.9kgm / 1,500-4,000rpm | 14.5kgm / 4,000rpm (+21.1kgm) |
14.7kgm / 3,500rpm | 17.8kgm / 1,400-4,000rpm |
フロントサス | ストラット | |||
リアサス | ダブルウィッシュボーン | マルチリンク | トーションビーム | |
燃費 | 19.4 km/L (5.2 L/100km) |
30.4 km/L (3.3 L/100km) |
20.4 km/L (4.9 L/100km) |
21.0 km/L (4.8 L/100km) |
価格 | 259 万円~ | 262 万円~ | 176 万円~ | 250 万円~ |
オーリス1.2Lターボは、ハッキリ言ってここに挙げた3台のどれにも勝てません。トヨタらしいゆったりした走りや静粛性ではオーリスハイブリッドに、小排気量の軽快な走りや価格ではアクセラに、ダウンサイジングターボの加速感と高速巡航の両立と高級感ではゴルフに、それぞれ劣ります。
まとめ
CVTのダメダメさ+パワー不足がオーリスターボのすべてです。ブーストがかかった走りの感じはダウンサイジングターボそのものでエンジン単体のフィーリングは悪くありませんが、その後にあるトランスミッションがぶち壊しています。
オーリスターボに乗っただけで「ダウンサイジングターボはこんな感じなのか」と思って欲しくありませんね。本場ヨーロッパのダウンサイジングコンセプトなCセグメント車はこんなではありません。ゴルフ、1シリーズ、メガーヌ、ジュリエッタ、V40などなど、どれも違いはあれどオーリスターボよりずっとバランス良くまとまっています。
259万円~という価格も含めて、オーリスで1.2Lターボを選ぶメリットは何もありません。1.5Lは非力なので、1.8L(238万円~)か1.8Lハイブリッド(262万円~)を選ぶことになります。そしてここまで出すならプリウス(248万円~)、出せないならカローラフィールダー(1.5L・CVTで174万円~)の方が車体と性能と価格のバランスが取れていると思います。
そして単純にCセグメント車で言えば、アクセラスポーツ(1.5L・6ATで176万円~)やフォルクスワーゲン・ゴルフ(1.2Lターボ・7DCTで250万円~)の方が確実にイイクルマです。というか国産車なのに、もっと完成度の高い輸入車のゴルフより高いってダメ過ぎですね。