現代のスポーツカーを4つに分類。例外はあの車だった!
2017/03/17
スポーツカー冬の時代と呼ばれて久しいですが、現在でも販売されているスポーツカーもちゃんとあります。現在売られているスポーツカーを分類してみると、明らかにおかしいやつが見つかりました。
目次
スポーツカーの分類
現在のスポーツカーは以下の3種類に分類できます。
- 実用車ベース
- 実用車プラットフォーム
- ブランドスポーツカー
でもどれにも属さない「例外」も中には存在しますよ。
実用車ベース:エンジンや一部ボディを変更したスポーティカー
ハッチバックやセダンなどの実用車に、高性能エンジンを積んだり、ボディを2ドアクーペにしてスポーツクーペにしたもの。成り立ちからすると「スポーツカー」というより「スポーティカー」で、足回りの構造や駆動方式などはベース車と同じなことが多いです。
ヘッドライトやボディパネル、内装、電装系、補機類など多くの部品を共用できるので、低コストでスポーツタイプの車を自社ラインナップに加えられます。製造ラインも共通なのであまり売れなくても損害が小さいというメリットもあります。
一方でサスペンション構造やボディ形状には制限が多く、スポーツカーとしての理想を追求することは難しくなります。多くの場合駆動方式は実用車で圧倒的に多いFFとなります。
ルノー・メガーヌR.S.、フォルクスワーゲン・ゴルフR、マツダ・マツダスピードアクセラなど現在でも多数あるタイプですね。フィアット・500に高性能エンジンを積んで別ブランド(アバルト)で売っている例もあります。最近ではホンダがシビックタイプRの日本発売を決定したなんてニュースもありました。
実用車プラットフォーム:別ボディながらエンジンやシャシーを共用
実用車のプラットフォーム(シャシーやパワートレインなど)を使ってスポーツカーを作る手法です。最近は実用車同士でもプラットフォームを共用することが多くなっています。
アウディ・TTはプラットフォームを実用車の「フォルクスワーゲン・ゴルフ」や「アウディ・A3」と共用しています。見た目はまったく違うので完全なスポーツカートして作られていますが、エンジンやサスペンション、駆動系などを共用できるので、完全独立車種に比べると大きくコストを圧縮できます。
アウディ・TTはさほど多く売れる車ではありませんが、ベースのゴルフは世界販売年間100万台クラスなのでコストを大きく下げてくれます。エンジンはA3やA6に使われるものを流用、FFベースのクアトロシステムはアウディお得意の駆動方式です。
国産だと日産・フェアレディZはFRセダンの日産・スカイラインと共用しています。トヨタ・86/スバル・BRZも部分的ながらスバル・インプレッサのプラットフォームを流用していますね。86/BRZの場合は開発と販売をトヨタとスバルで分担することでコストとリスクを抑えていると見ることもできます。
ブランドスポーツカー:ブランド力で高価に販売
ベース車の無い独立したスポーツカーは開発・製造コストがかさみます。そんな独立スポーツカーを売るにはどうすればいいでしょうか? 答えは簡単。高く売ればいいんです。でもスポーツカーが売れない時代にただ高いスポーツカーでは売れません。高価なスポーツカーを売るためには相応のブランド力や特別な性能が必要です。ポルシェ、フェラーリ、ランボルギーニ。世界の名だたるスーパーカー達もここに分類されます。
ポルシェの911やボクスター/ケイマンはそれぞれ独立したスポーツカーです。安い方のボクスターですら、相応の高性能エンジンを搭載して634万円~です。スポーツカーとしてだけでなく、高級車としても完成していることも重要なポイントです。(参考:ボクスターS試乗記)
ロータス・エリーゼのようにシャシーを自社開発して、エンジンやトランスミッションは他社(トヨタ)製を載せているものもあります。走りはスポーツカーそのもの、というかむしろ公道用カートです。こちらは589万円~。(参考:エリーゼ/エリーゼS試乗記)
完全な独立とはならず、スポーツカー同士でプラットフォームを共用することもあります。マツダのRX-8と3代目ロードスター(NC型)は、ドア数もエンジンも違いますが、FR同士としてトランスミッションやサスペンションを共用していました。フェラーリとマセラティや、アウディとランボルギーニなど同一グループ内で共用する例も多くなりました。
マツダがロータリーエンジンを復活させるとしたら、ブランドスポーツカーとして売ることになるでしょうね(SKYACTIV-2から見えてくるロータリーエンジンの未来)。一方で実用車プラットフォームという噂もあります(次期RX-7(RX-9)がアテンザベースで計画されているとの情報)。
例外:勇気あるスポーツカー
どれにも当てはまらないスポーツカーが2台あります。
こいつらおかしいです。マツダは自社唯一のFRかつオープンですし、ホンダは車格がまるで違う次期NSX(アキュラブランド)しかMRを持っていません。エンジンは実用車と共用しているものの、ロードスターのMTは自社開発、S660は軽自動車初の6MT採用などコストのかかる専用設計を取り入れています。
それでいて、ロードスターは250万円~、S660は198万円~とスポーツカーとしては十分に安いです。現在「新車を400万円以下で購入できるスポーツカー」(スポーティカー除く)は輸入車を含めても以下の6車種しかありません。
車種 | 価格 駆動方式 |
備考 |
---|---|---|
ダイハツ・コペン |
180万円~ FF |
ベースはミライース 走りは微妙 |
ホンダ・S660 |
198万円~ MR |
独立設計 軽自動車 カートのような走り |
トヨタ・86 |
241万円~ FR |
インプレッサのプラットフォームを ベースに大幅変更 実用可能な後席をもつ2ドア4シーター FRスポーツクーペのお手本のような走り |
マツダ・ロードスター |
250万円~ FR |
独立設計 ライトウェイトスポーツを体現 |
日産・フェアレディZ |
384万円~ FR |
スカイラインとプラットフォームを共用 大排気量の余裕+軽快な足回り |
アバルト・124スパイダー |
389万円~ FR |
マツダ・ロードスターと大半の部品を共有 ロードスターと共にマツダ工場で生産 軽さも刺激も欠ける |
※ ホンダ・CR-Zは270万円~ですが、ホンダ自身がスポーツカーでは無いと言っていますし、スタイルも走りもスポーツカーとは呼べないので外しました。
この時代に独立設計のスポーツカーを安価に販売していくには、販売数を伸ばせる相当な自信があるか無謀なチャレンジャーのどちらかです。いずれにしても企業に確固たる理念が無ければ成立しません。新規開発やフルモデルチェンジをしてでもスポーツカーを販売するのにはかなりの勇気が必要です。すっかりスポーツカーから遠ざかっていたFF専門メーカー・ホンダが軽ながらMRスポーツを出したのにも驚きましたね。
特にロードスターについては常軌を逸しています(褒め言葉)。ただでさえ専用設計のオンパレードなのに、エンジンは1.5Lと2.0Lの2種類、さらには電動ハードトップの「RF」も追加されてボディも2種類になりました。あまりに素晴らしいので詳しくは別記事にします。
ロードスターは、イタリアの「フィアット/アバルト・124スパイダー」と多くの部品を共有する兄弟車の関係になっていますが、これはプラットフォーム共有というより派生モデルと考えた方が良さそうです。エンジンはフィアット製ながら車体の生産はどちらもマツダ工場ですし、内装はほぼ同一。広い意味ではマツダ・ロードスターの一部ですし、フィアット版が無いと採算が取れなくなるとも思えません。124スパイダー自体は「ブランドスポーツカー」として売られるのでしょうね。
まとめ
この時代でもスポーツカーを造り続けてくれるメーカーがいるのはありがたい限りです。
ラインナップにスポーツカーがあるだけでも珍しくなってきたのに、独立設計の純スポーツカーを安価に販売するマツダとホンダには素直に感服しました。