マツダロードスターの何がスゴいのか?経営上は頭おかしいとしか思えない

  2015/10/07   

roadsters-1b-s

マツダが4代目となる新型ロードスターを発売して数ヶ月が経過しました。この時代にマツダがロードスターの販売を続けるのって実はかなーりスゴいことなんです。普通の自動車メーカーはこんなことやりませんよ。

この時代にマツダがロードスターを販売し続けることの何がスゴいのか解説します。

スポーツカー全般の分類は以下の記事をご覧ください↓

SPONSORED LINK

スポーツカー冬の時代

スポーツカーと呼ばれるジャンルの車が売れなくなって久しいです。

日本で最も売れている車はなんでしょうか? コンパクトカーでもミニバンでもありません。軽自動車です。自動車大国日本を代表する車はなんと「貧乏人の買う車」(スズキの鈴木修会長が言ったといわれる)である軽自動車なんですよ。何とも情けない……。

実用主義で、広くて燃費が良くて維持費が安い車が売れる時代です。実用車の対極に位置するスポーツカーが売れる時代ではなくなってしまいました。

かつてはどのメーカーもスポーツカーを作っていた

sports-car2-s

昔はどのメーカーもフラッグシップ(最上位車種)兼イメージリーダーとしてスポーツカーを据えていました。そのメーカーを象徴し、代表する車種としては、流麗で美しく、あるいは筋肉質で力強い、そして速い車がピッタリだったわけですね。

特にバブル期に全盛を迎え本気のスポーツカーがたくさん並びました。日産・スカイラインGT-R、ホンダ・NSX、トヨタ・スープラ、マツダ・RX-7、三菱・ランサーエボリューション、スバル・インプレッサ WRX STI。各メーカーを代表するスポーツカーやラリーカーが揃っていました。純スポーツカーを作っていなかったのは、軽自動車中心のダイハツとスズキくらいでしたね(軽スポーツを除く)。どのメーカーも自社の技術を結集した高性能なスポーツカーで技術力をアピールしていました。

若者向けの安価なスポーツカーとしても、日産・シルビア、マツダ・ロードスター、トヨタ・MR-Sなどがありました。

スポーツカーの激減

国産スポーツカーが激減したのは2002年。排出ガス規制が強化され、新たな規制に通るように改良するか、その車種の販売をやめるかを迫られました。

すでにバブル崩壊から10年が経過しており、趣味で成り立つスポーツカーの販売台数は悪化する一方です。モデルチェンジをせずに細々と販売を続けることはできましたが、新たな排出ガス規制を通すには多額の資金を投じてエンジンや浄化装置の改良が必要です。

いつまでも売り続ける車種
一般に売れない車ほど、長く販売して開発費を回収しようとします。モデルチェンジを受けることなくなかなか消えない車種は、人気があるから売り続けているのではなく、人気がなさすぎて販売をやめられないんです。

開発からすでに多くの車種は10年近くになっていました(2002年時点で、GT-R:3年、シルビア:3年、スープラ:9年、RX-7:11年、NSX:12年)。単に排出ガスをクリーンにしただけでスポーツカーの販売が伸びるわけではありません。排出ガス以外、見た目も性能も同じスポーツカーの売れ行きなんて知れています。売れる見込みのある車であれば、排出ガス規制に合わせてフルモデルチェンジして新型車にするでしょう。ですが売れないスポーツカーはモデルチェンジの投資を回収できる見込みはありませんでした。

スカイラインGT-R、スープラ、RX-7。並み居る高性能スポーツカー達は揃って販売を終了しました。高性能スポーツカー(ラリーカー除く)で生き残ったのは、ホンダ・NSXのみ。安価なスポーツカーからも日産・シルビアが脱落し、残ったのはマツダ・ロードスターとトヨタ・MR-Sとなりました。それに元々新規制対応で開発されたホンダ・S2000が加わりました。

モデルチェンジの壁

2002年の規制をなんとかクリアできた車種でも、フルモデルチェンジを受けるためには売れ続けなければいけません。売れないモデルは、前述のとおり細々と販売を続け、ひっそりと販売を終了していくことになります。

2002年以降も販売を続けた4車種、NSX、ロードスター、MR-S、S2000。それにマツダがロータリースポーツ「RX-8」(4ドアなので純スポーツカーかは議論の余地あり)を加えた5車種のうち、フルモデルチェンジを受けて次の世代に移ったのは唯一ロードスターだけです。他の車種は残念ながらモデルチェンジを受けることなく、1世代で販売を終了しました(NSX:2005年、MR-S:2007年、S2000:2009年、RX-8:2012年に生産終了)。

ロードスターは、1989年の初代発売以降、9年後の1998年に2代目、7年後の2005年に3代目、10年後の2015年に4代目と、順調に次期モデルが登場しています。

不景気で、ガソリン高で、エコが叫ばれるこの時代にスポーツカーを作り続けることがいかに難しいか分かっていただけたと思います。

マツダの車種ラインナップ

現在のマツダの車種ラインナップを見ると、ロードスターの異質さが分かります。

CX-5以降のマツダは、スカイアクティブ全面採用車種として、新世代プラットフォームを使い、統一された「魂動デザイン」にしています。

スカイアクティブ全面採用車は8車種で、すでに1巡しています。うち国内向けに投入されている6車種を見てみましょう。

小型ハッチバック 小型SUV 小型セダン
中型ハッチバック
中型セダン
ステーションワゴン
中型SUV スポーツ
デミオ
demio-s
CX-3
(デミオベース)
CX-3-s
アクセラセダン
アクセラスポーツ
axela-s
アテンザセダン
アテンザワゴン
atenza-wagon-2-s
CX-5
ロードスター
ND-1-2-s
駆動方式 FF/4WD FR
エンジン 1.3G
1.5G 1.5G
2.0G
2.5G
1.5D 2.2D
トランス
ミッション
5MT(FF用)
6MT(FF用) 6MT(FR用)
6AT(FF用) 6AT(FR用)
フロントサス ストラット ダブルウィッシュボーン
リアサス トーションビーム マルチリンク

※ G:ガソリンエンジン、D:ディーゼルエンジン

ラインナップが整理され、エンジンの種類も少なくなり、すべてFF(またはFFベースの4WD)に統一されました。ロードスターを除けば。

SPONSORED LINK

ロードスターのために費やされた開発コスト

シャシーの開発コストが丸々かかる!

一般に自動車開発で最もコストが掛かるのは、シャシー(車台)だと言われています。ですので、現代のスポーツカーの分類に書いたように「実用車ベース」や「実用車プラットフォーム」のスポーツカーが増えるわけです。

ですが、ロードスターの場合は違います。マツダはロードスター以外にFR車を持っていないので、必然的に専用シャシーとなります。バブル期のスポーツカーのように、その車のためだけに専用のシャシーが用意されるわけです。スポーツカーとしての理想を追求したシャシーにできるのは大きなメリットですが、コストは嵩みます。

さらに、サスペンションも特別です。Cセグメントの解説にあるように、最近のサスペンションの相場は決まっています。フロントはストラットでほぼ決まり。リアは高性能なマルチリンクか、安くて小さいトーションビームです。Eセグメント以上やスポーティな車は違いますが、他はだいたいこのタイプです。

ですが、ロードスターはスポーツカーなので、フロントにダブルウィッシュボーンを使っています。これもマツダラインナップで唯一になります。

トランスミッションも別設計!

FRになるとやっかいなのは、トランスミッションも別途開発しなければいけないことです。

さすがにATとMTの両方をロードスター専用に自社開発するのは厳しかったようで、ATだけはアイシン製のものを使っています。

ですが、MTについてはFR用のSKYACTIV-MTを開発し、搭載しています。ここにもコストがかかっているわけです。

さらにオープンカー!

ND-softtop-2-s

ロードスターはスポーツカーであり、そしてオープンカーでもあります。

オープンカーは、単に屋根を切っただけの車ではありません。車にとって屋根も重要な構造部品なので、屋根がそのまま無くなってしまうと、剛性がないフニャフニャボディになりますし、衝突安全性能は絶望的です。屋根が無くなる分、ボディを補強して剛性を確保する必要が出てきます。そのためのノウハウやシミュレーション、衝突試験などが必要になってきます。

さらにオープンカーにはソフトトップ(折り畳み式の幌)かハードトップ(折り畳み式の固い屋根)が必要です。これが無いと雨が降ったらびしょ濡れです。ホンダ・S660ロータス・エリーゼのような巻き取る幌なら開発が簡単そうですが、ロードスターのように複雑な機構を持つものだと、相応に開発コストがかかります。

もちろんマツダは純粋なオープンカーであるロードスターを25年に渡って売り続けているわけですから、ノウハウが蓄積されていることでしょう。ですが、新型ロードスターの幌が先代よりもさらに進化していることを考えると、現行モデルの品質で満足することなく開発を続けているようです。

ロードスターを続けることの意味

純粋なスポーツカーであるロードスターが今も売り続けられ、新モデルが投入され、独立したプラットフォームで開発されていることがいかに素晴らしいことなのか分かっていただけたでしょうか?

こんなロードスターでも独立車種として開発を続けることには大きな意味があります。

「Zoom-Zoom」「走る歓び」「Be a driver.」

マツダのキャッチコピーです。「走り」「スポーティ」を前面に押し出した開発・販売をする自動車メーカーがスポーツカーを作っていないのはどうでしょうか? スポーツカーを知らないメーカーがスポーツを語っても失笑を買うだけです(実際、S2000の販売をやめたホンダが、CR-Zでスポーツを語って失笑を買った)。

4代目となる新型ロードスターの発表会(千葉まで見に行きました)で、マツダはロードスターについてこう言いました。

「ロードスターはマツダの魂です」

この言葉には理由があります。マツダ社員は入社するとロードスターでドライビングを学ぶそうです。ピュアなFRライトウェイトオープンスポーツで学んだ「クルマ」を基準に、マツダの車は開発されています。

マツダの誇りであり技術の結晶であるロータリーエンジンが無くなった今、多大なコストやリスクを背負ってでもロードスターを売り続けることには重大な意味があるわけです。

ロードスターは儲かるのか

営利目的の民間企業である以上、いくら信念を語ったところで儲からない車を作り続けることはできません。ロードスターを続けているのにはちゃんと理由があります。

2代目・3代目ロードスターの開発主査を務めた貴島孝雄さんがこのように語っていました。

どうやってロードスターのような車を作ることを経営陣に認めさせるか。それは儲かるように作ることです。

専用設計が多く儲かりにくいように見えるロードスターでも、ちゃんと儲かるように工夫しているのだそうです。単に企業のブランド力のためなら経営が苦しくなると簡単に切り捨てられてしまいますが、儲かる車ならやめにくいですよね。そうやってロードスターを作り続けてきたのだそうです。

まとめ

マツダという会社がロードスターを作り続けることがいかに難しいことなのは分かっていただけましたか?

これでロータリーエンジンが復活したら、マツダの信念に感服しますね。

一方で新技術HCCIの開発も進んでおり、相変わらずマツダには技術者魂を感じます。

 

newcars レスポンシブ 本文下

 - 自動車市場
 - , , , , ,