トヨタC-HR 4WDガソリンターボ試乗レビュー!あえて選ぶ理由は?

   

トヨタ・C-HRを試乗してきました。今回はターボエンジンモデルのレビューです。

同じエンジンを搭載するオーリスターボや、C-HRのハイブリッドモデルに比べてどうなのでしょうか?

C-HRハイブリッドの試乗レビューはこちら↓

トヨタ・C-HRってどんな車?

トヨタの新型SUVです。CX-3やヴェゼル、ジュークといった小型SUVの活況を受けて投入されたモデルですが、国内のライバルに比べるとサイズが少し大きく、価格設定も強気です。デザインは(好みはともかく)かなりこだわっていて、あまりトヨタらしくないモデルになっています。

すでにC-HRに関連した記事をいくつか書いているので、良かったらご覧くださいね。

「若者を取り込みたい!」と意気込んでいたようですが、価格が高すぎるので実際に売れているのは中年層がメインだそうです。

C-HRは2種・4グレード

C-HRはパワートレインが2種類あり、FFハイブリッド車と4WDターボ車に分かれています。装備内容によってグレードは上下に分かれているので、計4グレード構成です。

FFハイブリッド 4WDターボ
システム トヨタ式ハイブリッド ダウンサイジングターボ
排気量 1.8Lガソリン+モーター 1.2Lガソリンターボ
車両重量 1,440 kg 1,470 kg
駆動方式 FF 4WD
最高出力
(エンジン+モーター)
98+72 ps 116 ps
最大トルク
(エンジン+モーター)
14.5+16.6 kgm 18.9 kgm
燃費
(JC08)
30.2 km/L
(3.3 L/100km)
15.4 km/L
(6.5 L/100km)
年間燃料費
(10,000km, 124.9円)
4.1 万円 8.1 万円
上位グレード G
290.5 万円
G-T
277.6 万円
下位グレード S
264.6 万円
S-T
251.6 万円

エンジンだけで見ればターボの方が高出力ですが、ハイブリッドでは走行中のパワー不足はモーターがアシストするので、合計した出力はハイブリッドの方が上です。

燃費はハイブリッドの方が圧倒的に良く、カタログスペック通りでは年間燃料費が4万円差となります。ターボの車両価格はハイブリッドより15万円程安いですが、燃料費を含めればハイブリッドの方が25万円程安い計算になりますね(10万キロの場合)。スペック表で見れば、よほどのこだわりがあるか4WDが必要という人にしかターボモデルは売れないと思います。

ただし日本の燃費基準「JC08」は比較的ハイブリッドに有利な測定方法です。ハイブリッドはストップ&ゴーが多い市街地が得意で、モーターとバッテリーがデッドウェイトになる定速巡航では燃費が悪化します。一方ダウンサイジングターボは加速時ではあまり燃費がよくありませんが、定速巡航では小排気量なので低燃費になります。発進停止が多く巡航の少ないJC08ではハイブリッドが低燃費に見えやすいという性質には注意しておく必要があります。

複数のディーラーで聞いた結果、ハイブリッドとターボの販売比率は 8:2 か 9:1 程度だそうです。スペックと価格からすれば当然ですね。あまりにターボが売れないので、マイナーチェンジでターボモデルが(国内向けには)廃止になる可能性すらあるそうです。仮にターボが無くなればFFハイブリッドのみになります。するとモーターで後輪を動かすプリウスと同じシステム(E-Four)を採用した4WDモデルが投入されることでしょうね。

今回両方のモデルに試乗したので、実際の走りの面でも比較してみました。まず今回レビューするのはハイブリッドモデルです。

C-HRターボ

C-HRのハイブリッドでない方、4WDターボモデルです。

「ガソリン車」とも呼ばれていますが、ハイブリッドもガソリンを燃料源とするところは同じです。最近は「ハイブリッド車でない」という意味で「ガソリン車」という呼称が使われていますね。レトロニムみたいなものでしょうか。

C-HRターボ

C-HRのハイブリッドのエンジンルームはプリウスとまったく同じでしたが、C-HRターボのエンジンルームは同じエンジンを積むオーリスとは配置が微妙に異なります。

C-HRハイブリッド

1.8Lエンジン+モーターを搭載するハイブリッド仕様に比べると、1.2Lターボエンジンのエンジンルームには余裕があります。大きなバッテリーを搭載する必要がない点も含めて、C-HRのターボ仕様には設計に無駄があるということになるかと思います。エンジンルームのサイズだけで言えば、1.6Lターボくらいまでなら余裕で搭載できたでしょうね。

走り

試乗したのは1.2Lターボを搭載する上位グレード「G-T」です。1,196ccターボ/116ps/18.9kgm/1,470kgというスペックです。

加速感

重い・パワー不足。これがすべてです。とにかく加速性能が悪すぎます。

ダウンサイジングターボの隆盛で1.2Lターボを採用する車は欧州車を中心に増えていますが、C-HRターボは1.2Lターボの市販車で最も重い1,470kg。ミニバンのルノー・カングー、オープンカーのVW・ビートルカブリオレ、Cセグメントロング(ステーションワゴン)のルノー・メガーヌエステートやVW・ゴルフヴァリアントよりも重いんです。単純に数字で見ても非力なのは明らか。

同一エンジンを積むオーリスターボは1,300kg。オーリスですら非力だったのに、170kgも重いC-HRが良い走りをするはずがありませんね。

C-HRのターボエンジンの問題点は、パワーの出方にもあります。アクセルペダルを踏んでから実際に加速感が得られるまでのタイムラグ(≒ターボラグ)が顕著に感じられます。

ダウンサイジングターボは欧州メーカー各社がこぞって採用していますが、どれもターボラグをあまり感じさせないような設計になっています。それをトヨタができないはずはないと思うのですが、C-HRのターボエンジンはとにかく反応が悪い! 排気量不足とはいえ、最高出力は116馬力。しかも最大トルク18.9kgmを1,500rpmから出せるのでそんなに悪いスペックではないのですが、ブーストがかかるまでのラグが酷すぎます。

同じ1.2Lを搭載するフォルクスワーゲン・ゴルフ(上位グレードは1.4L)は、105ps/17.8kgmとC-HRターボより低スペックながら、走りは遥かにまともでした。車重は1,240kgと実に230kgも軽いですし、ターボラグはほとんど感じさせません。さらにトランスミッションの差(後述)も効いています。

トランスミッション

トランスミッションはCVT(無段階変速)です。一応「Super CVT-i」という特別な名前が付けられていますが、ロスの軽減(=燃費の向上)を重視したCVTなので、フィーリングの良さに特段の売りはありません。

フィーリングは一般的なCVTそのもので、加速時に回転数ばかり上がって車速が上がらない、アクセルの反応が悪い、エンジン音と同期しないので運転しづらいなどのCVTの悪い点はそのままです。

エンジンの明らかなパワー不足をCVTがさらに際立たせています。ただでさえ排気量不足+ターボラグで反応が悪いのに、やっと立ち上がった力をトランスミッションがちゃんと伝えてくれません。高速道路の追い越しなど走行中の再加速シーンでは、踏んでもなかなか加速しない!というイライラを引き起こさせます。

無意味なマニュアルモード

CVTなのにマニュアル変速モードを搭載していて、7速ATのように操作できます。これがまた意味が分からない。疑似有段変速にしたところで構造がCVTなのでフィーリングは良くありません。ちゃんと変速位置を固定しているか疑わしいほどにアクセルの反応は悪いままです。

7速という数字も根拠不明。娯楽として変速を楽しむだけなら6速程度がちょうど良く、7速だと変速頻度が高い上に回転数の変化も分かりにくいです。おそらく7速くらいにしないとCVTの変速速度の遅さが目立つからなのでしょうね。

娯楽でなく単純に回転数を自己制御したいという点では、回転数を上げるシフトポジションを設ければいいだけの話。オート変速が無段階、マニュアル変速が7段で一致していないので面倒なことが起きます。加速時や下り坂などで「回転数を上げたい」という状況で、「マニュアルポジションに変更」「回転数の変化を待つ」「それでも回転数が足りなければ - に倒す」という奇妙な操作を強いられます。楽しいのかコレ?

誰に売りたいのか分からない

ダウンサイジングターボを採用する欧州車の多くは、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)を採用しています。フォルクスワーゲンを筆頭に、ルノー、プジョー、フィアット/アルファロメオもDCTを積極採用しています。自動変速機として理想を追求したDCTは、現状コスト面以外のあらゆる性能(フィーリングを含む)が優秀です。

そんな中で、トルコン式ATですらないCVTを採用するなんてどうかと思います。CVT最大のメリットは燃費、最大のデメリットはフィーリングです。C-HRターボは一体誰に売りたいんでしょうか? 燃費を考えればハイブリッドを買えばいいだけですし、運転の面白さを売りにするならコストがかかってもDCTにしないと欧州車に対抗できません。

デザインはともかく、C-HRターボ(252万円~)はフォルクスワーゲン・ゴルフ(250万円~)より高いという状況をもっと深刻に考えるべきです。ゴルフの方が走りもフィーリングも上質さも明らかに上ですから。

足回り・静粛性

足回りや静粛性の印象はC-HRハイブリッドと同じです。足回りは悪くありませんが、静粛性はプリウスに及びません。

ただし欧州車と比較すると問題アリです。ダウンサイジングターボは高速での定速巡航に的を絞ったアイディアです。C-HRの足回りに大きな問題が無いとはいえ、高速巡航での安定感は欧州車には及びません。オーリスハイブリッドのレビューに書いたように、「トヨタが作った欧州車」とか「世界戦略車」とか言う割には欧州車ほどの安定感はありません。

街中重視のハイブリッドなら柔らかめでも良いのでしょうが、高速重視のターボはもっと硬めの足にした方が使われ方にマッチしていると思います。ただし、日本でトヨタのダウンサイジングターボ車を選ぶ人が高速巡航重視の設計だと理解して購入するかというと……なんとなくで選ぶ人が多いんでしょうね。

まとめ

C-HRでのダウンサイジングターボの採用は明らかに欧州メーカーに対抗したものです。でもパワー不足だったり重すぎたりCVTだったりと、欧州車とまともに比較すれば勝てそうにありません。

トヨタの得意分野を生かした車作りをするなら、無理をしてダウンサイジングターボ車なんか出さなくてもハイブリッドだけで戦えたと思います。小排気量でパワー不足なのに安くないという競争力の無い車を出す意味がどこにあるのか分かりません。「C-HRの4WDが欲しいけど、ハイブリッドより走りが悪いのか……」と潜在顧客を悩ませるだけだと思います。

乗ってみた結果、C-HRターボはまったく買いではありませんでした。C-HRが欲しければせめてハイブリッドにしましょう。どうしても4WDが良いならハイブリッドで4WDが投入されるのを待つかCX-3などの他の車にしましょう。ただC-HRの4WDはスタンバイ式(生活四駆)なので性能に過度な期待はしないでくださいね。

C-HRハイブリッドの試乗レビューはこちら↓

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