マークXマイナーチェンジ!スポーツ志向に振りたいメーカーと現実の乖離+ついでに値上げ
2017/01/14
トヨタのミドルクラスセダン「マークX」がマイナーチェンジしました。どこがどう変わったのかチェックしてみましょう。
トヨタの意向と現実の乖離が見えてきますよ。ついでに値上げしているのも要チェック!
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目次
トヨタ・マークX
トヨタ・マークXは、トヨタのミドルクラスセダンです。セグメント区分ではDセグメントに属していて、日本車だと日産・スカイラインやマツダ・アテンザ、輸入車だとBMW・3シリーズやメルセデスベンツ・Cクラス、アウディ・A4などと同じクラスです。
日本ではセダンの人気が低迷していて、Cセグメントはセダンがほぼ死滅してしまいました。日本車ではアクセラセダンとインプレッサG4くらいしかありません。
となるとセダンはDセグメントから。中高年層にはセダン人気が根強いですからね。セダン以外認めない人のためにBセグメントにすら一応セダンが用意されていますが、一部の高齢者向けといった趣。輸入車では本国にはB/Cセグメントセダンがあっても、日本にはDセグメント以上しか入ってきません。なので、セダンはDセグメントからしかまともなのが無いのが現状です。
車の基本はセダン
クルマの車体形状の基本はセダンです。実用性と走りのバランスが取れたカタチです。もっと走りに振ればクーペ(≒スポーツカー)、もっと荷物を載せたければステーションワゴン、車体をコンパクトにするとハッチバックと派生していきました。
つまり、本来クルマの理想型はセダンなんです。だから同じクラスの車に比べて乗り心地も走りも(一般的には)上回ります。
Dセグセダンには2種類ある
国内Dセグメントセダンは、乗り心地の良さでセダンを選ぶ人に向けた高級志向タイプと、走りの良さでセダンを選ぶ人に向けたスポーツタイプに分けられます。この時代に敢えてセダンを選ぶ人ですから、何か理由があるはずです。
高級車と言えばセダンだった時代の憧れを捨てられない高齢者もセダンを選びますが、こちらも欲しいのは高級志向タイプです。体の弱った高齢者にはスポーツよりも足腰に優しい乗り心地の方が重要だという側面もあります。
マークXの立ち位置はどっち?
さて、マークXです。どちらでしょうか? これが実は結構あいまいなんです。ザックリ言えばメーカーはスポーツタイプで売りたいが、買う人は高級志向だと思います。
マークXのCMに出てくるのは気持ちは若々しい仕事のできる中年男性というイメージです。高級と言うよりスポーティさを売りにしたそうです。でも実際に売れているのはスポーツ志向のない普通の中高年男性でしょう。
マイナーチェンジしたマークX
今回はマイナーチェンジ。モデル自体は同じ「2代目マークX」です。
エクステリアデザイン
外見に大きな変更はありません。分かりやすい特徴はフロントバンパーに「コ」の字型のメタルラインが入ったことでしょう。受ける印象は高級感よりスポーティさだと思います。アグレッシブな走りをイメージさせます。高級感が必要なクラウンの ふてぶてしさ とは違う方向性ですね。
トヨタとしてはスポーティさを演出したいのでしょうが、マイナーチェンジではボディラインまで手を入れられないので、中途半端な気もします。
サイドから見ると分かりやすいです。上がマイチェン後のマークX、下がマツダ・アテンザです。アテンザはフェンダーからトランクに向かうショルダーラインがやや上に向いていますが、マークXはほとんど水平になっています。このラインが高級志向とスポーツタイプを分けていると思います。
ショルダーラインを高くすると起きる弊害が、後席の窓の縮小です。スポーツ志向で売っているアテンザは後席の窓が多少狭くても許されるが、高級志向でも売らないといけないマークXは後席窓を小さくできません。なので、ショルダーラインは高級志向、つまりクラウンと同じ軌跡を描かないといけないわけです。
極端な話、マークXは安いクラウン、アテンザは高いアクセラという立ち位置ですから、それぞれ上下の車と同じような方向の車作りになっているのだと思います。
インテリアデザイン
インテリアもスポーツ志向にしようとしている感がありますね。前期モデルにあった無駄に木目調パネルを多用したグレードはなくなりました。
こんなもの欲しがるのは高齢者だけだと思うんですよ。それを今までは用意していましたが、これからはスポーツ志向に振っていくために、そういう需要は無視することにしたようです。
今までは(G'sを除く)トップグレードが木目調のお金のある高齢者向けでしたが、マイナーチェンジ後はスポーツタイプに変貌しました。
黒内装に程よく配された落ち着いたレッドレザー。アルカンターラ+合皮のコンビネーションシートだそうです。ステアリングがどうしようもなくダサいこと以外はなかなか頑張ったように思います。ステアリングは前期型と同じですからね。やれる範囲で最善を尽くしたということ。
内装の配色とグレードの関係は、次のグレード構成の章を見てください。
グレード構成・価格
マイナーチェンジ前後のグレード構成と価格を比較してみましょう。以前は高級志向グレード「プレミアム」がありましたが、それにかわって「S」「RDS」というスポーツグレードを用意した形です。
マイナーチェンジ後 | マイナーチェンジ前 | ||||
---|---|---|---|---|---|
内装 | FR | 4WD | 内装 | FR | 4WD |
- | - | - | 木目調多用 | プレミアム (3.5L) 401 万円 |
- |
レッドレザー | 350RDS 385 万円 |
- | 本革 黒系 | 350S 370 万円 |
- |
レッドレザー | 250RDS 343 万円 |
- | 本革 黒系 | 250G Sパッケージ 308 万円 |
- |
ファブリック (スポーツ) |
250S 321 万円 |
250S Four 345 万円 |
木目調多用 | プレミアム (2.5L) 300 万円 |
プレミアム Four 324 万円 |
ファブリック (スポーツ) |
250G 292 万円 |
250G Four 316 万円 |
本革 茶系 | 250G 278 万円 |
250G Four 301 万円 |
ファブリック | 250G Fパッケージ 266 万円 |
250G Four Fパッケージ 290 万円 |
合皮/ウレタン | 250G Fパッケージ 251 万円 |
250G Four Fパッケージ 275 万円 |
しっかり値上げされていますね。グレード名が変わっていたりするので分かりにくいですが、およそ15万円ほど値上げしたようです。
WikipediaのマークXの項目には「高級車」と書かれていますが、さすがにスタート260万円では高級車とは呼ばないかなぁと思います。
スペック
スペックはマイナーチェンジ前から変わっていません。貴重な国産FRセダンです。
車種 | トヨタ・マークX | |
---|---|---|
グレード | 350RDS | 250RDS 250S/G |
ボディ形状,定員 | セダン,4ドア,5名 | |
全長 | 4,750 mm | |
全幅 | 1,795 mm | |
全高 | 1,435 mm (4WD:1,445 mm) |
|
ホイールベース | 2,850 mm | |
車重 | 1,560 kg | 1,510-1,520 kg |
駆動方式 | FR/4WD | |
トランスミッション | 6AT | |
エンジン形式 | V型6気筒 | |
排気量 | 3.5L ガソリン | 2.5L ガソリン |
最高出力 | 318ps / 6,400rpm | 203ps / 6,400rpm |
最大トルク | 38.7kgm / 4,800rpm | 24.8kgm / 4,800rpm |
フロントサス | ダブルウィッシュボーン | |
リアサス | マルチリンク | |
燃費 | 10.0 km/L | 11.8 km/L |
価格 | 385 万円~ | 266 万円~ |
※ 車重・燃費はFRの値。
一応4WDも用意されていますが、当然スタンバイ式4WDです。ただ、FFベースのスタンバイ式4WDはあまりメリットがありませんが、マークXはFRベースなので意味があります。車で最大の重量物であるエンジンがフロントにありますから、FFに比べてFRの方が滑りやすいです。つまりFRの方がスタック(雪や砂にハマって動けなくなる)しやすいということ。なのでFRベースのスタンバイ式4WDは、四輪駆動が活躍する機会が多いということになります。
まとめ
トヨタはマークXをもっとスポーツ志向にしたい、そして中高年層以外、つまりもっと若い世代にも売りたいという意向があるようです。でもマークXの元々のイメージとマイナーチェンジでできる内容では、ちゃんとスポーツ志向にできていない印象です。せっかく貴重なFRなのにMT設定が無いのもダメなところ。
すでに「マークX」という名前はオジサン向けセダンとして定着してしまっているように思います。本気で顧客年齢層を下げたいなら、フルモデルチェンジを機に別の名前・デザインにしてしまった方が良さそうですが、トヨタが「マークⅡ/X」というビッグネームを捨ててまでそんな危険な賭けに出るとも思えません。もういっそスポーツなんて諦めて、中高年層向けコンサバ(保守的)セダンとして続けた方が生き残れるような気がしてしまいます。
(追記)と言っていましたが、マークXは生産終了がすでに決まったようです。マークX生産終了の情報はこちら↓
マークX試乗レビューはこちら↓