アウディA4試乗レビュー!プレミアムDセグメントの走りはいかに。ATには難あり。

     2017/01/22

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アウディのDセグメントセダン/ステーションワゴンの「A4」を試乗してきました。先日同じVWグループのDセグメントセダン「フォルクスワーゲン・パサート」に試乗してきたこともあって、格上のアウディのDセグメントを試してみたかったというところです。

すでにフルモデルチェンジした新型A4が発表されていますが、日本に入ってくるのは来年2月頃とまだ期間があり、その間に現行モデルの値引きも期待できるだろうということで現行モデルに乗ってきました。

試乗したのはセダンの「A4 2.0 TFSI」に「S lineパッケージ」を合わせたもの。エンジンは直列4気筒2.0Lガソリンターボ。「S lineパッケージ」を付けると、スポーツサスペンションになり、ホイールが17インチから18インチになります。

アウディA4という車

アウディはドイツのプレミアムメーカーとしてBMWやメルセデスベンツと同様にセグメント別のラインナップを揃えています。

アウディ創業の1965年から、フォルクスワーゲン・ゴルフとプラットフォームを共有するCセグメントの「A3」が1996年に登場するまでの約30年間、「アウディ・50」という唯一の例外を除いてアウディヒエラルキーの最下層は常にDセグメントでした。つまりアウディラインナップで最もベーシックな存在というわけですね。現在はA4の下にVWゴルフと同じCセグメントの「A3」、VWポロと同じBセグメント「A1」があります。

現行モデルは2008年に登場したB8系と呼ばれるもの。エンジンは2.0Lターボのみ(1.8Lターボはラインナップ落ちした)です。ライバルはBMW・3シリーズ、メルセデスベンツ・Cクラスなど。日本ではトヨタ・マークXやマツダ・アテンザが同じDセグメントです。プレミアムブランドという点ではレクサス・ISがライバルでしょうね。(ISのクーペ版、RCの試乗記もご覧ください)

セダンの「A4」とステーションワゴンの「A4 Avant」があります。グレード構成は以下の通り。

A4 / A4 Avant
2.0 TFSI
A4 / A4 Avant
2.0 TFSI quattro
駆動方式 FF フルタイム4WD
エンジン 直列4気筒
ガソリンターボ
直列4気筒
ガソリンターボ
排気量 1,984 cc 1,984 cc
最高出力 180 PS / 4,000-6,000 rpm 211 PS / 4,300-6,000 rpm
最大トルク 32.6 kgm / 1,500-3,900 rpm 35.7 kgm / 1,500-4,200 rpm
トランスミッション CVT 7AT
価格
上:A4
下:A4 Avant
467 万円~
496 万円~
554 万円~
583 万円~

ベースモデルとクアトロはどちらも2.0Lターボですが、チューニングによって性能に差を付けてあります。ECUチューニングで差別化するやり方は、BMWやフォルクスワーゲンなど欧州メーカーではやっていますね。保証はさておきECUをパーツ注文すれば廉価グレードでも高性能版にできるんじゃないかとも思ってしまいますね。仮にA4でやった場合、下のモデルがCVTなので35.7kgmのトルクを受けられるかが心配ですね。

価格は467万円~。ちなみにフォルクスワーゲン・パサートは1.4Lターボで最廉価グレードが329万円~、最高グレードが461万円~なので、アウディとフォルクスワーゲンの差別化からすると妥当な価格設定なのでしょう。

外装

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エクステリアデザインはアウディらしく、やや地味ながらも堅実で落ち着いたデザイン。

2012年にデビューした現行A3と並ぶと、さすがにA3の方がモダンな雰囲気ですね。デザインに不満があるなら来年発売の次期A4を待つのも手でしょう。

内装

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内装は新型A3より上質。A3のスイッチの質感は良くない。

インパネデザイン

やはりインパネのデザイン品質は高いです。質感やボタンの配置は上質さを感じさせるもので、パサートとは明らかに差を感じます。パサートは大半を「地味」が占めてましたからね。

フォルクスワーゲン・パサート

フォルクスワーゲン・パサート

A3の内装もカッコ良くていいんですが、ややシンプル過ぎますね。これではDセグメントにはちょっと物足りない。A4の内装は丁度いいラインでできていると思います。ちなみにA3のスイッチ類の質感はあまり良くありませんでした。

アウディ・A3

アウディ・A3

フロントシート

ホイールベースの差と内装デザインの差によってか、A3より明らかに着座位置が低く感じました。広い道をゆったり走るにはA4の方がいいですね。A3は街中用といった雰囲気です。

ホールド感はあまり良くありません。スポーツ走行するような車じゃありませんが、もう少し包み込むデザインだと疲れにくいと思います。BMW・3シリーズのMスポーツに装備されるシートが結構良かっただけにもう一歩という感じがしてしまいました。

ペダル配置

左足のフットレストがやたら遠いです。存在意義が疑われます。ペダルが全体に遠いなら理解できますが、左足だけ長い人種なんて存在しないかと。

パサートと同じく吊りペダルです。プレミアムDセグメントなんだからオルガンペダルくらい入れて欲しいところ。ちなみにマツダはアテンザを含むSKYACTIV全面採用車はみんなオルガンペダルです。どっちが時代に逆行してるんだろーか?

リアシート

Dセグメントになるとリアシートが長距離移動可能なレベルになりますね。A3だと前後が狭いからか背面がかなり立っていて長時間は乗れなさそうでした。A4ではある程度まともな着座姿勢で乗れるので、大人が長時間乗っても問題ないでしょう。

とはいえ、もちろんフロントシートの方が快適です。リアシートにさらなる快適性を求めるなら628万円~のA6に進むしか無いでしょうね。

トランク

セダンのトランクは奥行きがある分結構広いです。これはセダンの方がステーションワゴンよりも全長が長く取られているためです。箱状の荷物を多数積むのであればステーションワゴンを選ぶことになるのでしょうが、セダンでも容積は結構ありますし、長尺物も載せやすいです。

車体形状の美しさやボディ剛性はセダンの方が上なので、せっかくDセグメントにするならセダンを選ぶのもいいのではないでしょうか。実用主義ばかりでセダンが壊滅しかけている日本ではステーションワゴンの方がずっと売れてるんでしょうけどね……。

走り

トランスミッション

試乗したのはFFモデルなので、トランスミッションは無段階変速(CVT)の「マルチトロニック」です。上位のクアトロになるとデュアルクラッチ式の7速AT「Sトロニック」になります。

CVTなのに、2ペダルMT(MT構造のAT)のように発進でもたつきます。デュアルクラッチ式のVW「DSG」の方がよっぽど出来がいいと思うほど。クアトロのSトロニックは細かいセッティングの違いだけで、基本的にはDSGと同一のトランスミッションです。

トランスミッションについてさらに言うと、加速中にほんの少しアクセルを緩めただけで一気に回転数が落ちて、出来の悪いトルコンATのように変速ショックのような加速Gの途切れが起きます。燃費を重視するCVTの悪癖とはいえ、かなり振動が大きく出てしまうためかなり印象が悪いです。まるでアクセルをON-OFFスイッチのように踏む下手な人が運転しているかのような振動が起きます。高級車なのに。

アウディは今後CVTのマルチトロニックに統一していくなんて話もありますが、この品質ではちょっと厳しいんじゃないかなぁ……と思ってしまいました。

加速感

明らかにパワー不足だったパサートほどではないにしても、急加速には対応できていません。踏んでからトルクが立ち上がるまでに一瞬 間 があります。ただ、そのまま踏んでいけば2.0Lターボの十分なトルクがかかってくるので、しっかり加速してくれます。

走りに軽快さはあまりありません。重たい巨大をぶん回して走る感じです。実際に重たい(1,540kg)のでどうしようもありませんね。クアトロになるとトルクは10%増えますが、車重も10%増の1,680kgになってしまいます。やはり重い。

ターボがかかってしっかり加速しながら緩いカーブを曲がっても、トルクステアを全く感じなかったのは縦置きエンジンの恩恵でしょうか。同じ2.0LターボでFFのミニクーパーSが(より軽いものの)トルクステアを感じたのに比べると安心して踏めるなぁと思いました。

足回り

足回りは良好です。レクサスのような特別高品質な感じはしませんでしたが、路面の凹凸は十分吸収され安定した走りをしてくれました。それでもプレミアムDセグメントとしてはやや硬いようにも感じたので、「S lineパッケージ」を付けずに17インチ+ノーマルサスにした方がより落ち着いた走りになってくれると思います。

総評

プレミアムブランドらしく、よくできた上質セダンに仕上がっていました。

ただ、さほど「特別」な感じはしませんでした。非日常な特別感という意味ではレクサスには勝てないでしょう。スポーティさを求めればBMW・3シリーズの方がいいですし、すべてを捨てて安いDセグメントでいいならパサートやいっそマークXも。

やや地味ながらも上質で落ち着いた存在、それがアウディ・A4なのでしょう。

ライバルたる、BMW・3シリーズやメルセデスベンツ・Cクラスの試乗レビューはこちら↓

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