新型インプレッサ1.6試乗レビュー!こんなのでも売れるんですね。水平対向のメリットは?

     2017/02/27

スバルの新型インプレッサに試乗してきました。FFの1.6Lモデルです。

昨年12月に追加されたばかりの1.6Lエンジンモデルはどんな走りなのでしょうか?

インプレッサ2.0L・4WDの試乗レビューはこちら↓

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スバル・インプレッサ

インプレッサはスバルのCセグメント車です。ボディ形状は2種類あって、セダンが「インプレッサG4」、ハッチバックが「インプレッサスポーツ」です。

インプレッサスポーツ

インプレッサG4

スバルは(OEM車を除けば)Cセグメント以上の車とSUV、スポーツカーしか作っていません。インプレッサはスバルのラインナップで最も安く、(BRZを除けば)最も小さなモデルです。

国内でのCセグメント市場は、格下のBセグメントコンパクトカー(フィット,ヴィッツなど)の人気に押されてあまり活気がありません。国産メーカーの主要車種はスバル・インプレッサとマツダ・アクセラです。エンジンラインナップやセダンとハッチバックという構成、スポーティなイメージでアクセラとインプレッサは直接のライバル関係にあります。

トヨタ・プリウスもサイズ的にはCセグメントですが、世界初のハイブリッド市販車にしてハイブリッド専用車なのでやや別扱いされることが多いです。トヨタの場合「トヨタが作った欧州車」という触れ込みのオーリスの方がインプレッサに近いでしょうね。インプレッサほど売れている車ではありませんが。(オーリスハイブリッド試乗レビューオーリスターボ試乗レビュー

インプレッサのラインナップ

現行インプレッサには1.6L自然吸気エンジンと2.0L自然吸気エンジンの2種類のエンジンが用意されています。スバルなのでもちろん水平対向エンジンです。

現行スバルには水平対向4気筒エンジンしかありません。排気量は1.6L、2.0L、2.5Lの3種類で、1.6Lと2.0Lにはターボ、2.0Lにはハイブリッドも設定があります。トヨタ傘下とはいえ規模の大きい会社ではありませんからね。ラインナップを絞っての販売となっています。

現行インプレッサ

インプレッサは昨年10月にフルモデルチェンジを受けて、5代目になりました。デザインやスペックについてはすでに記事にしているのでそちらをご覧ください。

当初は2.0L自然吸気エンジンのみでしたが、12月に1.6L自然吸気エンジンモデルが追加されました。そっちは買う価値無さそうなんですけどね。

インプレッサはなぜか日本カーオブザイヤー(JCOTY)を授賞したわけですが、そもそもカーオブザイヤーなんて自動車メーカーの顔色をうかがいながら授賞車を決めるものなので、権威も何もありません。レコード大賞ほどあからさまに金で買う賞ではありませんが、「良い車が授賞するとは限らない」ということは知っておきましょう。

実車を見た印象

実際に新型インプレッサを見てみると、数値以上に車体が大柄に感じました。Cセグメントとしてはやや大きめな方ですが、マツダ・アクセラとはほぼ同サイズ。でもデザインの効果なのか大きめに見えます。

デザインの「効果」と言ったのは、インプレッサは大柄に見せようとするデザインになっているからです。日本向けに販売する車の場合、車体サイズは(諸外国から見れば)小さめに見えた方が好まれます。だから実際には大きめのサイズでもあまり大きく見えないようなデザイン上の工夫をします。

でもインプレッサの主要販売先はアメリカです。ピックアップトラックが一般庶民に受け入れられるような国ですから、インプレッサのサイズでも全然小さい方です。Cセグメントながらアメリカ人にウケるようにするには、大きく見えた方がいいわけです。それでもっと大きい車が欲しければレガシィなりフォレスターなりを買いなさい、となります。インプレッサより小さい車を欲しがる人が(少なくともスバルの顧客には)あまり多くないので、インプレッサ以下の車を用意しないわけですね。

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走り

1.6L・FFモデルのレビューです。2.0L・4WDのレビューや車内空間についてはこちら↓

加速感

1.3トンを超える車重を走らせるのに自然吸気1.6Lはやはり非力です。

ガツンとアクセルを踏んでも、まず回転数だけが上がってブゥ~ン!とうるさくなり、遅れて加速感がきます。一応加速するのですが加速感が弱いです。CVTによる反応の悪さとパワー不足による非力さで一気に加速したいときにはストレスを感じるでしょう。

車体は軽くない、排気量も足りない、トランスミッションはCVTでは良い走りをするはずがありませんね。加速性能は全然ダメです。ちゃんとCセグメントらしいのは車体サイズだけ。とにかく走りが悪いです。

単純に加速感が無いことも問題ですが、せっかく一般にフィーリングが良いと言われる自然吸気エンジンなのに、CVTのせいでアクセルに対する反応は最悪です。あんなにゴツいデザインのボディでスポーティな外観なのに、走りはスポーツのかけらもありません。

アクセラは同サイズでも1.5Lエンジンでそれなりに楽しい走りになっているのに、インプレッサはどうしてこんなにもダメなんですかね。責任の一端がCVTにあるのは間違いありませんが、エンジン出力のフィーリングも良くありません。ドライバーが「走るぞ!!」となっているのに、「ふゎ~~い」と眠たい顔をして走り出す。そんな車です。

トランスミッション

スバルはすべてCVT。一応特別な設計のものを使っています。

あまりアクセルを踏まずに走っている分にはそんなに違和感がありません。今まで乗った各社のCVTの中では最も違和感が少ないでしょうね。発進時や低速加速で回転数と車速のミスマッチや反応の悪さをやや感じますが、それでもCVTにしてはかなり良好なフィーリングです。

一方発進でぐっと加速したときや高速再加速では反応の悪さが顔を出します。回転数は上がってぶぅーんと音を立てるのに、実際に車速が上がってくるまでにはタイムラグがあります。せっかく自然吸気エンジンでエンジンの反応は良いのに、トランスミッションのせいでフィーリングが悪化してしまっています。

それでもCVTの中ではかなりマシです。本当は普通にトルコン式ATを入れて欲しいんですが、CVTを入れた割には頑張っているなぁという感じです。ライバルたるアクセラのATの出来がいいだけに、頑張ったところでCVTではフィーリングで勝てるはずありません

日本でのスバル車の顧客層を考えると、[車にこだわりがある人]か[高性能な四駆が必要な人]にほぼ限られるでしょう。デザインや価格でなんとなく選ぶには商品性やブランド力が足りません。後者(四駆)はともかく、前者(こだわり)に売るためには運転フィールは重視する必要があります。なのに(マシとはいえ)フィーリングの悪いCVTを採用してしまってはダメですね。

CVTのメリットはほぼ燃費だけ。なのに以前設定されていたアクセラの2.0LモデルのATよりも燃費が悪いってダメじゃないですか。ただ燃費の値について詳しくは後述します。

マニュアルモード

CVTのクセになぜかマニュアルモードがあります。トヨタC-HRもそうでしたが、CVTに有段変速のマニュアルモードを設定する意味が分かりません。

パワーが欲しかったりエンジンブレーキをかけたいだけなら、単に「回転数を高めに維持するレンジ」を作ればいいだけのこと。CVTの動きのままで回転数だけ高めになれば十分です。有段変速で車速に合わせてギアを変えるなんて、この用途に限れば煩わしいだけ。しかもCVTから有段変速への切り替え時にはどんなギア設定に入るのか謎です。元々無段階変速を擬似的に有段にしているわけですからね。

一方スポーティな走りのための楽しみとして有段変速にしているなら、そもそもCVTなんか採用するなよって話です。マニュアルモードにしたところで滑りを許容する構造には変わりありません。トルコン式AT車のマニュアルモードですら滑りを感じるのに、CVTベースのマニュアルモードではフィーリングが良いはずありません。もちろん無段階とマニュアルモードの切り替え時の動作が謎なことは変わりません。常にマニュアルモードで走れば切り替え問題は避けられますが、そうしたらCVTの利点(=燃費)が犠牲になるのでもはやCVTのメリットは皆無になってしまいます。

足回り

意外と柔らかめの印象でした。車のイメージからするともっと硬く重厚感のあるセッティングになっているのかなぁと思いましたが、結構ふんわりした足回りでした。

よくあるトヨタ車ほどではありませんが、どうも雲の上に乗っているような安定感のないフワフワ感があって安心してスピードを出せるような感覚にはなりませんでした。この辺りは主要欧州車や、欧州車的な車造りのアクセラとは違いますね。これを「乗り心地が良い」と感じる人にはいいのかもしれませんが、(少なくともFF同士の比較では)接地感が弱くて安心できませんでした。

昔のスバル車を知らないので過去との比較はできませんが、端々に親会社たるトヨタの影響を感じずにはいられません(スバルは子会社にはなっていないが、事実上子会社と変わらない)。趣味で買う人が多い車なのに、数が売れないからとMTの設定を外す辺りもトヨタの経営方針の影響でしょうね。ほぼすべての車のほとんどのエンジンにMTを設定したり、巨大メーカーですら実用化できない技術を生み出すマツダとは対照的です。

走りの質

騒音

とりあえずうるさいです。エンジン始動時から騒音を感じます。エンジンが冷えていたとはいえ車内に入るエンジン音(排気音ではない)が大きすぎます。エンジンが暖まってもあまり静かにはなりませんでした。

エンジンがうるさいという側面と、車体の遮音性が低いことの両方に問題があるようです。エンジンは4気筒ガソリンエンジンなのに、まるでディーゼルのようなブブブブブブという耳障りな脈動があります。「水平対向エンジンだから」と言われればその通りなんでしょうが、買う人は他の車(=直列4気筒エンジン)と比較するはずです。結構気になりました。

国内で比較されることが多いのは同じCセグメントのアクセラでしょう。アクセラはガソリンエンジンが静かなのはもちろん、ディーゼルエンジンでも結構静かです。

インプレッサ1.6Lの音はアクセラ1.5Lディーゼルよりもうるさく感じました。ガソリンエンジンなのにこんなにうるさいのは問題でしょう。

振動

エンジンの騒音が結構しますが、振動はあまりありませんでした。一般的な直列ガソリンエンジンでは騒音レベルと振動レベルが連動することが多いんですが、インプレッサでは騒音だけが大きいです。

これも「水平対向エンジンだから」なのでしょう。水平対向エンジンは4気筒でも直列6気筒並みの制振レベル(構造上、一次二次振動がゼロ)だと言われています。振動に関しては特筆すべき美点を感じました。

アメリカを向いた車作り

インプレッサのダメさ加減を見ていくと、スバルの経営実態が見え隠れします。

スバルはアメリカでの販売に頼った経営をしています。スバルの販売台数に占めるアメリカの割合は約6割。日本の割合は15%くらいしかありません。一方企業規模がスバルよりやや大きい(1.5倍程度)マツダの場合、日本の割合は10%強とスバル以上に低いですが、北米の割合は30%足らずです。マツダは北米よりも欧州向きの車作りをしています

アメリカで車を売った方が儲かるという現実がありますが、日本のユーザーにとっては良いことではありません。日本とアメリカでは車の嗜好がまったく異なるからです。というか世界でアメリカだけが異質の嗜好傾向にあります。国土が圧倒的に広いですからね。大きいこと、多いこと、強いことを重視して、小気味良さやレスポンス、まして小回りなどは全然重視されません。

スバル車はそんな土地で売れています。日本でもそこそこ売れている理由は3点。「スバリスト」と呼ばれる愛好家の存在、嗜好か体格がアメリカ人に近い人の存在、高性能な四駆の3つです。つまり四駆へのこだわり(これはアメリカでもウケている)さえ捨てなければ、普通にアメリカ向けの車作りをしていれば良いということになりますよね。

燃費に見る日本軽視

例えば燃費の場合。インプレッサとアクセラのカタログスペックを比較してみましょう。

インプレッサスポーツ アクセラスポーツ
2.0L・4WD・CVT 2.0L・FF・AT
日本基準
(JC08)
16.8 km/L
(1.6L・FFでも18.2km/L)
19.0 km/L
(1.5L・FFなら20.4km/L)
アメリカ基準
(EPA ハイウェイ)
15.7 km/L
(37 MPG)
15.7 km/L
(37 MPG)
アメリカ基準
(EPA シティ)
11.9 km/L
(28 
MPG)
11.9 km/L
(28 
MPG)

日本基準で見てみると、同じ2.0Lではアクセラの方が1割以上勝っていますね。インプレッサ1.6Lよりもアクセラ2.0Lの方が燃費が良いという状況になっています。

なのにアメリカではアクセラと同一値。同じ「Cセグメント日本車」(アメリカの言い方では「Compact car」)のライバルに負けるわけにいきませんからね。アメリカ基準ではなんとしても同等以上にしないといけません。

それにしてもCVTを採用したのに同等ですか。なんとも残念ですね。「4WDだから」と言い訳したとしても、あんなにフィーリングが悪いモノを入れるならせめて数字は勝てよと思います。

アメリカは2.0Lのみ

そんなアメリカでは2.0L・4WDモデルしか売られていません。アメリカで1.6Lみたいに非力な車は売れませんからね。非力でもサイズと値段だけで買うような客がいる日本ではある程度売れますからね。全然走らない1.6Lモデルでも、ディーラーマンの話では2.0Lと同じくらい売れているそうです。

1.6Lモデルがそんなに安くないのは、2.0Lのようにアメリカで売って数を稼ぐことができないからなのかなぁと邪推したくなります。

スペック

車種 スバル・インプレッサスポーツ マツダ・アクセラスポーツ
グレード 1.6i-Lアイサイト 2.0i-Lアイサイト 15C 15XD
全長 4,460 mm 4,470 mm
全幅 1,775 mm 1,795 mm
全高 1,480 mm 1,470 mm
ホイールベース 2,670 mm 2,700 mm
車重 1,300 kg 1,320 kg 1,280 kg 1,360 kg
駆動方式 FF
トランスミッション CVT 6AT
エンジン形式 水平対向4気筒 直列4気筒
排気量 1.6L ガソリン 2.0L ガソリン 1.5L ガソリン 1.5L ディーゼル
最高出力 115ps / 6,200rpm 154ps / 6,000rpm 111ps / 6,000rpm 105ps / 4,000rpm
最大トルク 15.1kgm / 3,600rpm 20.0kgm / 4,000rpm 14.7kgm / 3,500rpm 27.5kgm / 1,600-2,500rpm
フロントサス ストラット
リアサス ダブルウィッシュボーン マルチリンク
燃費 18.2 km/L
(5.5 L/100km)
17.0 km/L
(5.9 L/100km)
20.4 km/L
(4.9 L/100km)
21.6 km/L
(4.6 L/100km)
価格 192 万円~ 216 万円~ 176 万円~ 230 万円~

まとめ

新型インプレッサに1.6Lモデルが追加されたときにも商品力が足りないことを書きましたが、実際に乗ってみると数値以上に選ぶ理由が見つからないという車でした。

これで192万円~ですよ? 高すぎません? 20万円ちょいの追加で2.0Lにできますし、176万円~のアクセラ1.5Lの方が走りの質は上です。多くの日本人にはドライビングポジションもアクセラの方が合うでしょう。

「高性能な4WDが必要だけど少しでも安い方がいい」という場合にしかインプレッサ1.6Lは勧められないでしょうね。

インプレッサ2.0L・4WDの試乗レビューはこちら↓ 車内空間についてもレビューしています。

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