アテンザディーゼル試乗レビュー!BMW越えのディーゼルはFRが欲しくなる
アテンザのディーゼル車に試乗してきました。マツダは国内ではほぼ唯一ディーゼルの普及に全力で取り組んでいます。そんなマツダのフラッグシップセダンに搭載するディーゼルエンジンはどんな走りを見せてくれるのでしょうか?
BMW・3シリーズのディーゼルを遥かに越えていましたよ。
マツダ・アテンザってどんな車?
マツダ・アテンザはマツダの最上級モデルです。サイズはミドルサイズセダンとなるDセグメントで、トヨタ・マークX、フォルクスワーゲン・パサート、BMW・3シリーズ、アウディ・A4などと同じクラスですね。
他のDセグメントと同様に、セダンとステーションワゴンの2種類の車体形状が用意されています。実用主義の日本ではステーションワゴンの方が売れるのでしょうが、見た目はセダンの方が伸びやかで美しいです。
初代アテンザが登場したのは2002年。同年にはコンパクトカーの2代目「デミオ」、翌2003年にはCセグメントセダン/ハッチバックの「アクセラ」とロータリースポーツ「RX-8」が登場しました。マツダはこの辺りからデザインが良くなってブランド力も持ち直してきたように思いますね。
初代アテンザは現行よりもスポーツセダンとして売り込まれていましたね。現行はややラグジュアリー方向に振ってきたような感じがします。マツダはEセグメント(クラウンクラス)を持っていないので、アテンザが最高級車の役割を担わないといけませんからね。それでもマークXなんかよりはずっとスポーティですが。
現行は2012年に発売された3代目です。スカイアクティブ全面採用車としてはCX-5に続く2車種目です。ちなみにスカイアクティブ第一世代は残りプレマシーとCX-9になりそうです。
デザイン
エクステリアデザイン
フロントマスクは魂動デザインらしいアグレッシブで堂々としたデザインです。
アクセラと並べてみても何が違うのかよく分かりませんよね。よく見ると、アクセラはナンバーがファイブポイント(五角形)グリルの内部にあったり、ヘッドライトが細かったりします。アテンザの方がより幅広で堂々として見えるようにしていますね。アクセラが1,795mm、アテンザが1,840mmなので差は大きくありませんが。
アテンザ(Dセグメント)もアクセラ(Cセグメント)もそれぞれのセグメントとしては全長が長めなので、余計に伸びやかなプロポーションが印象的です。アテンザセダンは4,860mmなので、BMW・3シリーズ(4,624mm)よりも20cm以上長いです。実は全長は5シリーズ(4,910mm)の方が近いんですよ。
セグメントの分類は全長がメインですが、「車格」と言われる車のイメージやパワートレインにもよるので、アテンザは全長が長くてもDセグメントです。Eセグメントになるにはもう一段ゴージャスさとパワーが必要ですね。アテンザはDセグメントのままで十分です。
インテリア
内装のクオリティはかなり高いです。アクセラ、というかデミオのレベルですらかなりデザイン完成度が高いですが、質感がさらに向上しています。とくにLパッケージ(レザー)では欧州プレミアムブランドかと見まがうようなクオリティです。
センターコンソールのすっきり具合はアウディ・A3とも似ていますね。Dセグメントとはいえマツダブランドの頂点たる上質さになっているのは素晴らしいですね。最近のマツダ車は内外装とも外れがないですね。
うまいなぁと思ったのがリアドアのドリンクホルダーです。パワーウインドウスイッチが乗っている斜めのラインを崩さずに、うまくドリンクホルダーを埋め込んでいます。単純に実用性だけで言ったら、缶や紙ドリンクも置ける垂直型の方が良いのでしょうが、そこはデザインを優先させたのでしょう。でもデザインを優先させすぎてドリンクホルダー自体がなくなってしまうイタリア車に比べれば遥かに実用的ですね。
リアシートですし、これくらいの実用-デザインバランスがちょうどいいと思います。
音・振動
ディーゼルエンジン特有の音や振動は総じてかなり低レベルに抑えられていました。
静粛性は高く、何も知らずに乗ればディーゼルエンジンというよりややうるさめのガソリンエンジンという程度。外で音を聞いても音はあまり大きくないので、 ディーゼルエンジン自体が放つ音自体を抑えているようです。エンジン自体はうるさいものの、車体の静粛性で車内の音量を落としているボルボのディーゼルやBMWのディーゼルとは異なりますね。エンジン自体が比較的静かなので、窓を開けて走ってもディーゼル特有の音はあまり気になりません。
アイドリング
アイドリングでのエンジン音や振動はかなり抑えられていました。車通りの多い路上にいる際はまったく気になりませんでした。完全に静粛で無振動だったボルボのディーゼルにも十分対抗できるレベルでした。
さらに言えば暖気中以外はアイドリングストップ(i-stop)がかかるのでエンジンが止まります。再始動の音や振動は技術的な差(ガソリンエンジンでは点火始動、ディーゼルでは1圧縮目始動なので早い)もあるのかかなり小さいです。BMWでは再始動の音と振動がかなり気になったので、このアドバンテージは大きいでしょう。ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み換える時間内で十分走り出せるレベルにエンジンが動き出してくれます。
加速中
大きく踏み込んで加速するとさすがにディーゼルらしい音とか振動が顔をのぞかせます。それでもかなり抑えられているようで、ディーゼルを知らない人はちょっと音の大きいかなくらいでディーゼルだと気づかないかもしれません。
車内の静粛性に頼らずエンジン自体が静かなので、窓を開けて走っても音が気にならないのが良いところですね。
走り
走り出しは穏やかですが、踏み込むとグッと加速してくれます。ディーゼルでトルクが大きいのは当然なのですが、トランスミッション(トルコン式)のダイレクト感がかなり高いです。構造がMTのデュアルクラッチトランスミッションにはさすがに敵いませんが、トルコン式としては最高レベルだと思います。スカイアクティブ採用車の大きなメリットですね(ただしロードスターを除く)。
自動変速での変速タイミングは絶妙です。特にギアを落としたくてアクセルを踏み込んだときのダウンシフトが、「今落として!」って瞬間にサッと下がってくれます。トランスミッション自体も制御プログラムもよく作り込まれているのでしょうね。
足回りはこのクラスの日本車にしては固めです。小さな凹凸はちゃんと吸収してくれますが、ちゃんとロードインフォメーションを伝えてくれるサスペンションなのは日本の中上級セダンでは珍しいですね。これもマツダらしさなのでしょう。さすがにBMWほどではありませんが。
コーナリングはFFらしく前からぐいっと曲がっていくので、上質さという面ではBMWなどのFR勢にやや劣ります。後輪駆動っぽい味付けをしているわけでもなく純に前輪駆動なので、後輪駆動が気になる人は他のFR車も乗ってみた方が良いでしょうね。
まとめ
国産ディーゼルセダンとしての出来は本当に素晴らしいです。これで318万円〜ですよ。内装品質がぐっと上がるLパッケージでも375万円〜。(価格は日本と同じではありませんが)ヨーロッパで人気なのも頷けます。
BMW 3シリーズは320i SEでも427万円です。買う価値があるかは別として320dだと500万円を超えます。エンブレムの差とFRであることで+200万円ですよ。
確かに走りはBMWの方が上です。アテンザがFRだったらいいのになぁと思わずにはいられませんでした。