アメリカではデミオを売らない!北米で売上を伸ばす2つの戦略とは
2015/07/03
マツダが、新型デミオをアメリカでは販売しない可能性があることを報じられている。
日本市場で好評を博している新型マツダ『デミオ』。同車に関して、米国市場に投入されない可能性を、一部メディアが伝えている。(Response: マツダ デミオ 新型、米国導入は見合わせか…米メディア)
最近のマツダを見るに、なるほどな、といった感じがする。
マツダはヨーロッパを向いて車を作っている
アテンザ・アクセラが発売されて以降のマツダのラインナップや走りは、日本車的でもアメ車的でもなく、どことなく欧州車の雰囲気があります。運動性能の基礎力や足回りを重視し、マニュアル車が多くを占めるヨーロッパでは、マツダの車作りが日本メーカーの中でもダントツで合っているように思えてならない。
実際ヨーロッパにおけるマツダのブランドイメージは非常に良く、日本では大きく水をあけられているホンダに匹敵する販売実績を上げている。欧州シェアは約1.4%と高くはないが、ブランドイメージはトヨタなどの大衆車よりもBMWやアウディのような高級車ブランドとして認識されてすらいます。
もちろんアメリカ向きにも車を作っており、米国シェアは欧州シェアと同等ですが、ヨーロッパでのブランドを確固たるものにしようという強い意志が感じられます。
ヨーロッパでの販売を牽引するアクセラ
2014年第3四半期の欧州新車販売台数は4万6126台。前年同期比は19%増と伸びた。好調な販売を牽引したのは、モデルチェンジした『マツダ3』(日本名:『アクセラ』)。(マツダ 欧州販売、19%増の4.6万台… アクセラ が好調 2014年7-9月)
ヨーロッパで人気のクラス「Cセグメント」。全長4.5m前後のセダン/ハッチバックで、日本で人気のコンパクトカー(ヴィッツクラス)より一回り大きい。Cセグメントを長らく牽引しているのはVW・ゴルフで、世界的に競争が熾烈なこのセグメントだが、日本車ではマツダ・アクセラ、スバル・インプレッサ、トヨタ・オーリスのほぼ3車種に絞られてしまう。(参考:教習車にアクセラが採用される3つの理由)(トヨタ・プリウスも一応Cセグメントであるものの、ヨーロッパで売れる車ではないので除外しました。)
2003年にアクセラを発売して以降、ヨーロッパにおけるマツダを牽引する車に成長しました。ホンダのフィットや、トヨタのプリウス/アクアもそうですが、やはり売れ筋のクラスで売れないと業績の大幅な伸びは期待できませんね。
これからのマツダがとる戦略とは?
広がるSUV市場
最近マツダが力を入れているのがSUV。デザインコンセプト「魂動」を牽引したCX-5をはじめ、コンパクトSUVを切り開こうとしているCX-3、パワートレインを変更せずに魂動デザインにしたCX-9、中国専売のCX-7と各サイズ揃えて4車種で展開しています。
マツダは今後SUV市場が大きく伸びると見込んでいます。上(スーパーカー)から下(軽)まで時代はSUV、フィアット500Xが日本発売!300万円を切ってくる!? にあるように、SUV市場はぐんぐん伸びています。そしてSUVのような力強く(見た目に)余裕がある車が売れるのが北米市場です。
もう一つ重要なことは利益率です。デミオがガソリン1.3Lで135万円~、ディーゼル1.5Lでも178万~と手頃な価格なのに対して、デミオのSUV仕様にあたるCX-3はディーゼル1.5Lで237万~と大幅に価格が上がる。SUVが利益率が高いことも、このセグメントに力を入れたい理由なのでしょう。
マツダはすでにヨーロッパでの実績とブランド力を手に入れました。次は北米市場での販売を伸ばすべく、SUVを売り込んでいきたい。CX-3を売りたいのに、やや安いデミオは不要なのでしょう。
デミオは他の手段で売られる
サイオンIA予想CG
(出典:http://jp.autoblog.com/2015/04/06/ny-2015-ia-scion-mada2-demio/)
乗ってみると分かりますが、デミオは非常に良くできた素晴らしい車です。販売戦略はあるものの、せっかく新規開発した車を世界最大の市場に投入しない手はありません。
そこで新型デミオは、「マツダ・デミオ」としてではなく、トヨタ車として市場に投入されます。つまりトヨタがOEM供給(製造元でない他のメーカーが、自社エンブレムを付けて販売すること)を受けて販売することになります。(参考:【NYオートショー2015】マツダが作ったトヨタ車!? 「デミオ」ベースのサイオン「iA」登場!!)
この方法であれば、せっかくの新型車からも利益が得られますし、マツダに来た顧客には積極的にCX-3などのSUVを販売できる。トヨタの力を使ってでもアメリカでの販売を伸ばす良い戦略ですね。