自動車の「OEM」とは?どっちで買うべき?仕組み・メリットを徹底解説

     2017/02/27

似たような車の何が違うのか調べていると出てくる言葉「OEM」。一体何のことなんでしょう?

なんでOEMなんてものがあるのか、どういう仕組みなのか、どっちを買った方が良いのかをまとめました。

「OEM」とは?

OEMとは「Original Equipment Manufacturer」の略で、他社ブランドの製品を製造することを指します。自動車の場合で言えば、「あるメーカーが製造した車を、別のメーカーのブランド(≒エンブレム)を付けて販売する」ということになります。

エンブレムだけの変更なので、「バッジエンジニアリング」とも呼ばれます。

OEMの仕組み

OEM車での実際の仕組みを見てみましょう。例としてスズキ・アルトと、アルトのOEM供給を受けて販売される マツダ・キャロルを見てみましょう。

元の車種は「アルト」です。アルトはスズキで企画・開発されます。そして「アルト」はスズキ工場で生産され、スズキディーラーで「スズキ・アルト」として販売されます。当然エンブレムはスズキ。

一方、マツダ・キャロルも中身はアルトと完全に同一です。つまりスズキで開発された車です。アルトと同じくスズキの工場で生産されますが、エンブレムだけはマツダのものが装着されます。そしてマツダディーラーで「マツダ・キャロル」として販売されます。キャロルはマツダ車として扱われ、修理や整備などのサポートもマツダディーラーで受けられます。

どちらもスズキで開発・生産される全く同じ車です。違いは「販売・サポートを行うディーラー」と「前後のステアリングのエンブレム」だけということになります。

この場合、スズキを「OEM元」「供給元」、マツダを「OEM先」「供給先」と呼び、「マツダがOEMの供給を受ける」「キャロルはアルトのOEM」「アルト→キャロル」などと言います。

メーカーにとってのメリット

OEM関係を結ぶのはメーカーにとってメリットがあるからです。

スズキ(OEM元)のメリット

他社ブランド向けにOEM供給することで、生産台数を増やすことができます。

開発コストは「アルト」1車種分ですが、スズキだけでなくマツダでも売れば作る台数が増やせるので、開発コストの回収が容易になります。部品調達や生産ラインのコストも、大量生産になるほど単価は下がります。

つまりたくさん作りたいから、他社に供給するというわけです。

マツダ(OEM先)のメリット

1つのメーカーであらゆるサイズのあらゆる車種を生産するのは現実的ではありません。特に衝突安全性能の要求が厳しくなったことで、1台当たりの開発コストは上がるばかりです。特にマツダのような規模のメーカーでは開発・生産車種を絞るのが当然の流れです。

マツダは軽乗用車の生産からは40年も前に撤退しています。でも顧客が求める車は様々です。軽を作ってなくても、そんなことは知らずに「軽はないの?」とマツダディーラーで尋ねる顧客はいるでしょう。そんなときに「うちにも軽ありますよ!」と言うためには軽を扱いたい。でも開発・生産する余裕は無い。だから他社で生産された車を売るわけです。

つまりラインナップを増やしたいから、他社から供給を受けるというわけです。

OEMに含まれないもの

生産は一方が行うものの、開発は共同で行うという場合があります。初代・2代目のトヨタ・パッソ / ダイハツ・ブーンや、トヨタ・86 / スバル・BRZのような車です。

開発を共同で行っている以上、双方の意見が反映されるので単純なOEMとは言えません。「共同で開発した上で、一方が他方に生産委託(≠OEM)している」と扱われ、一般にOEMとは呼ばれません。

OEM車の扱い

OEM供給された車はどのように扱われるのでしょうか? 先ほどと同じく「アルトと、OEMのキャロル」を例に見てみましょう。

車の性格

アルトもキャロルもスズキで開発されるわけですから、製品としての性格は当然「スズキ車」になります。エンジンや走り、外観デザインや内装の品質などはすべてスズキ車になります。

ただし「一部変更」が行われる場合もあります。特に外観デザインや内装については、すみ分けや差別化のためにOEM元/OEM先で微妙に変更されることがあります。それでも走りの面は全く同じというのがほとんどで、走りも異なる場合はもはや「共同開発」となってOEMとは呼ばれなくなります。

どっちに分類されるか

キャロルはマツダで販売されるので、基本的には「マツダ車」として扱われます。マツダの販売実績(≠生産実績)にも含まれます。

ただし世の中的にはマツダ車として扱われないことも多くあります。例えば「最近のマツダ車のデザインが良くなった」とか言う場合の「マツダ車」にOEM供給された車は含まれません。「マツダが好きでマツダ車に乗っている」と言っている人がスズキ車のOEMに乗っていたら、コイツ何も分かっていないなと思われます。

どっちを買うのが得なのか

OEM元(アルト)とOEM先(キャロル)で中身がまったく同じなら、どっちで買うのが得なのでしょうか?

選択肢が制限される

OEM元の車に設定されているグレードや色のうち、OEM先の車種でも選べるものが限られるというのはよくあることです。エンジンラインナップすら限定されていることもよくあります。

選択肢が狭くなって嬉しいことなど何も無いので、選択肢の面では普通にOEM元で買う方が良いでしょう。

ただし、中にはOEM先の方が選択肢が広いこともあります。ダイハツ・トールでは、トヨタへのOEM「ルーミー/タンク」の方が顔とグレードの組み合わせが多く用意されています。

価格は同一がほとんど

OEM供給では、生産委託のために生産委託金が発生しているわけですが、ユーザーから見た価格(カタログ価格)は同じに設定されることがほとんどです。なので価格面での良し悪しはありません。

ただし値引きについては異なるので、賢い方法としてはOEM元とOEM先に見積もりを出してもらって、価格を戦わせるということになります。決算期など時期によってはOEM先の方が安くしてくれる可能性もあります。

ディーラー網の差

[アルト→キャロル]の例の場合、スズキで生産された車とはいっても、購入後のサポートはマツダで行われます。整備や修理はもちろん、部品購入などもマツダディーラーを通して行うことになります。スズキが遠くにしかなく、マツダが近くにある場合にはOEM車を買うことにはメリットがあるでしょう。

他のメリット

他に地味なメリットを無理矢理考えるとすればこんな例でしょうか。

すでにマツダ車を2台持っていて、3台目に軽を増車しようとしている場合、OEMながら3台目もマツダの軽自動車にすることで、整備や手続きの面で手間や連絡をまとめられるというメリットがあるかもしれません。まぁこんなものは稀でしょうね。

まとめ

結局のところ、よほどの理由が無ければ、単純にOEM元(例でのアルト)で買った方が無難でしょうね。

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