車格の決め方まとめ。判断基準や優先順位、ミニバンやスポーツカーの扱いまで解説します

   

車格ってどうやって決めているのでしょうか? 優先順位は? ミニバンやスポーツカーはどうするの?

車格を評価する方法を詳細に解説します。これが車格のすべてだ!

車格とは

車格とは車種を格付けするルールのことです。

BセグメントCセグメントなどのセグメント区分も車格の一種です。「車格が上/下」という曖昧なものではなく、「ここからここまではBセグメント」のように分類を規定したのがセグメントです。

車格の目的や使われ方について詳しくはこちら↓

車格の分類方法

車格の上下を判断する方法を紹介します。判断基準として優先順位の高いものから紹介します。ここではハッチバックとセダンについて、かつ日本における事情を中心とします。ボディ形状については後述します。

あっちこっちに微妙という言葉が出てきますが、車格とはそういうものです。人によって判断が異なる部分が多いことに注意してください。

車体の全長

一般的には車体の全長が長い方が車格が高いです。車格を判断するのに全長が最も重要で、エンジンサイズや価格より全長が重視されます

全長が最重要視されるのには「実用面」と「イメージ」の二つの要因があります。

実用面

車は、定員・積載量・加速性能・巡航性能・取り回し・価格などの様々な要求をバランスして開発されます。原付に使うような小さなエンジンでバスを走らせることはできませんね。

大きく重い車は中も広く安定した乗り心地になりますが、スムーズに走らせるためには大きなエンジンが必要になります。大きなエンジンは開発・製造費が高く車両価格が上がりますし、燃費が悪く維持費が高くなります。それに大きな車を所有するには広いガレージや駐車場が必要です。

単に大きな車と言っても、大型ミニバンのような縦に大きな車はあまり乗り心地が良くありません。直進安定性に優れるよう、全長(やホイールベース)を長くとった車ほど上質、格上だとなります。

イメージ

元々は実用面から「上級車種ほど全長が長い」となりました。しかしそれが逆に「全長が長いほど上級車種」と認識されるように変化していきました。単に広い車内が必要ならミニバンのようなワンボックス車に乗ればいいだけのこと。実用上不要なほど全長を長くとっている車ほど偉いんです。

一般的には全長と車格に相関があるので、「やたら長いのに内装が安っぽい車」や「ボディは小さいのに大型エンジンで内装も高級」といった車はほとんど作られません。そんな車は受け入れがたいからですね。

今ではほとんどのメーカーが全長・エンジンサイズ・質感・価格が連動するようなラインナップにしています。一部が逆転することもよくありますが、おおよそ全長が基準になっています。

ブランド,特殊モデル

一部のブランドや一部のモデルについては、同じ全長でも車格が上(下)に見られることがあります。

分かりやすいのがレクサスです。トヨタの高級車ブランドであるレクサスの車は、サイズが同じであっても車格が少しだけ上に見られます。セグメント区分で言えば0.5セグメントほど上がります。例えばプリウスと同じハイブリッドシステムを積む「レクサス・CT」(366~461万円)は全長は短いですがプリウスより車格が上となります。

CTと同じくハイブリッド専用車であるHSの場合は全長が伸びて4,710mmあります。4,770mmのマークXとどちらが上かは微妙ですね。

車格
トヨタ・プリウス
全長 4,540mm
1.8H
FF
243~339 万円
レクサス・CT
全長 4,350mm
1.8H
FF
366~461 万円
トヨタ・マークX
全長 4,770mm
2.5G, 3.5G
FR
266~385 万円
=?
<?
レクサス・HS
全長 4,710mm
2.4H
FF
435~571 万円

レクサスはトヨタの社内ブランドなので上下がハッキリしていますが、通常のメーカー間での比較は難しいです。トヨタとBMWのどっちが上なのか、メルセデスベンツとレクサスのどっちが上なのかなどは共通認識がありません。一般にプレミアムと呼ばれるブランド(レクサス、BMW、アウディなど)は少し車格が上だとされやすいです。

一般に輸入車が国産車より価格が高いことを理由に、輸入車メーカーの方が車格が高いとされることもあります。ただし最近では輸入車が珍しくなくなったので、「輸入車と国産車」で分けることは稀です。

一方で、日本・アメリカ・ヨーロッパ以外のメーカーは車格が下だとされやすいです。特に韓国車と中国車は日本においては(悪い意味で)別格扱いになっていて、同じ土俵で比較されることは稀です。

駆動方式

駆動方式が車格の上下に関わることもあります。前輪駆動(FF)に比べて後輪駆動(主にFR)の方が車格が上だとされることがあります。4WD車の場合は、FFベースの4WDかFRベースの4WDかで判断されます。セダン・ハッチバックに関しての話なので、MRとRRは対象となる車がほぼありません。

元々はFRが主流でしたが、車内空間を広く取りやすいこととコスト面のメリットからFFを採用する車が急激に増えました。それでも上級セダンを中心にFRが採用され続けているのは、FRの方が上質な走りを実現しやすいからです。

先ほどのマークX(FR)とレクサス・HS(FF)に差を付けるか微妙だとしたのは駆動方式も一因です。全長はほぼ同じ。レクサスの方がブランドの格は上ですが、マークXはFRです。[全長>ブランド>駆動方式]という順なのでマークXの方が上になることはありませんが、ブランドの差を駆動方式で打ち消して同車格とみなされる可能性があります。

ただし駆動方式の違いを車格差だと考えるかは人によります。

エンジンサイズ

基本的にはエンジンサイズが大きいモデルほど格上です。ただし同一車種内でエンジンが違ったからといって、車格が上下することはありません。

車格
ヴィッツ
1.0Lガソリンモデル
デミオ
1.5Lガソリンモデル

ただし、極端にハイパワーなエンジンを搭載している場合は別扱いとなることがあります。

車格
フィアット・500
1.2G, 0.9T
全長 3,570mm
200~259 万円
<? アバルト・500/595/695
1.4T
全長 3,570mm
286~846 万円
スバル・レヴォーグ
1.6T, 2.0T
全長 4,690mm
278~394 万円
≦? スバル・WRX S4
2.0T
全長 4,635mm
335~356 万円

フィアット・500をベースにハイパワーエンジンを搭載したアバルト・595は、ボディサイズは共通でも同じ車格とは捉えづらいです。アバルト・595の方を上だとみなすか、スポーツカー扱いとすることがあります。

スバル・WRXはレヴォーグとエンジンやシャシーを共有していますが、スポーツセダンとして設計されたWRXの方がやや格上の感があります。ただし価格帯がかぶっているので微妙です。

価格帯

最後に価格帯です。元々は価格の差を出発点として成立していった「車格」ですが、今となっては価格は車格の判断基準としては弱くなっています。

重要なのは価格帯であって価格ではないということです。200~400万円の車より300~600万円の車の方が車格が上だということであって、500万円のマークXは400万円のクラウンより車格は下です。

車格が明確な欧州車から、BMWの価格帯を見てみましょう。数字が大きいほど車格が上だという分かりやすいラインナップです。

 

車格が上の方が価格帯が高くなっています。1~5シリーズでは一部オーバーラップしていますが、「価格帯」が違うので車格の上下は車種名通りです。車格判定で最も重要な全長が違うからです。

全長は車種名通りですね。[全長が長い=車格が上=車種名の数字が大きい]と一貫しています。1シリーズの最上位モデル(590万円)と3シリーズの最廉価モデル(409万円)を比べた場合でも、3シリーズの方が車格は上です。

車格を評価する注意点

異なるボディ形状は比較しづらい

車格は元々一般的な乗用車に対して使われてきた基準です。自動車のボディ形状で最も基本となるセダンでは特に「車格」というものが重視されます。ハッチバックやステーションワゴンもセダンの延長なので似たような基準で車格が判断できます。

一方実用乗用車をベースとしないスポーツカー、本格オフロード車、商用車やバンなどは「車格」自体を考えないのが普通です。スポーツカー同士やオフロード車同士で車両クラスの上下を考えることはありますが、それを「車格」と呼ぶことはほとんどなく、実用車の車格と直接比較することもできません。

SUVの比較は微妙

最近人気のSUVは微妙です。各社から投入が相次いでいる実用車ベースの「クロスオーバーSUV」の場合はベースとなる実用車があります。トヨタ・C-HRはプリウスベース、マツダ・CX-3はデミオベースなどです。ベース車両の車格を比較することでSUV同士の比較はできますが、SUVと実用車の比較は場合によるといったところです。

実用車 マツダ・デミオ
全長 4,060mm
1.3G, 1.5G, 1.5D
135~223 万円
トヨタ・プリウス
全長 4,540mm
1.8H
243~339 万円
SUV マツダ・CX-3
全長 4,275mm
1.5D
238~307 万円
トヨタ・C-HR
全長 4,360mm
1.8H, 1.2T
252~291 万円

G:ガソリン,D:ディーゼル
T:ガソリンターボ,H:ガソリンハイブリッド

実用車のデミオとプリウスを比較した場合、車格が高いのは誰に聞いてもプリウスでしょう。プリウスがセダン(全長が長くなりやすい)とはいえ、全長はプリウスの方が明らかに長いです。エンジンシステムは異なりますが、プリウスはエンジン部分だけでも1.8Lあってデミオより上です。価格帯も完全に上回っています。セグメント区分で言えば、デミオはBセグメント、プリウスはCセグメントです。

一方派生モデルのSUV、デミオ派生のCX-3とプリウス派生のC-HRは微妙です。ベースの車格で言えばC-HRの方が上ですが、全長の差は10cm足らず(ベースでは50cm差)。C-HRのメインとなるハイブリッドモデルはプリウスと同じパワートレインですが、CX-3は1.5Lディーゼルのみ。価格帯はほとんど同じです。

CX-3の方が車格が上だとする人はおそらくいないでしょうが、「同じ車格」「C-HRの方が車格が上」という意見に分かれるでしょう。発売された状況で言えば、BセグメントベースSUV(CX-3・ジューク・ヴェゼル)の人気に合わせて投入したのがC-HRです。状況からすれば同じ車格のはずですね。でもC-HRは価格が少し高かったり、サイズが少し大きめだったりするので微妙なんです。

そして[C-HRとプリウス]でどちらが車格が上かはもっと難しくなります。全長で言えばプリウスの方が大きいですが、同じメーカーで同じパワートレインながら価格はC-HRの方が上です。どちらが上とも下とも判断がつきません。異なるボディ形状の比較は難しいということです。

ミニバンの扱い

ミニバンの扱いは難しいです。なぜならミニバンは定員と広さのために車体を大きくしているため、セダンのような格付けが難しいからです。

乱暴な言い方をすれば、ハイエースなどのバン型商用車を元に、乗用車仕様に仕立てたのがミニバンです。とにかく荷物(人間)をたくさん積めることに価値がある車ですから、定員や積載量を増やすために全長を伸ばした車両も作られます。ハイエースの全長を伸ばした「ハイエースロング」や「ハイエーススーパーロング」がハイエースより格上だとは思いませんよね?

セダン ミニバン
全長を伸ばす目的 乗り心地や居住性の向上 定員や積載量の増加
全長と品質/性能/価格の相関 高い 「傾向がある」程度

ミニバン内での格付け

ただし国内の乗用ミニバン人気によってミニバンにも車格のようなグレード分けがされるようになりました。車体が大きくなるほどエンジンサイズを上げる必要があるので、セダンほど明確ではなくても「大きいほど高額で格上」という傾向があります。トヨタと日産の代表的なミニバンを見てみましょう。

トヨタ 日産
小型ミニバン シエンタ
4,235×1,695×1,675
169~233 万円
NV200バネットワゴン
4,400×1,695×1,850
194~233 万円
中型ミニバン ノア/ヴォクシー/エスクァイア
4,695×1,695×1,825
225~326 万円
セレナ
4,690×1,695×1,865
244~314 万円
大型ミニバン アルファード/ヴェルファイア
4,915×1,850×1,880
320~704 万円
エルグランド
4,915×1,850×1,805
321~583 万円

およそ同じような全長と価格帯が並んでいると思います。国内ミニバン市場はほぼこの3階級に分けられています。全高の低いウィッシュやプリウスα、アイシスなどは全長やエンジン構成の面で中型ミニバンに分類されます。

ミニバンとセダンの比較

セダンやハッチバックといった通常の乗用車とミニバンを比較するのは難しいです。プリウスα(プリウスのミニバン仕様)のように明らかに乗用車ベースの場合はその延長だと考えることができますが、ミニバン単独車種をどう扱うかの共通理解はありません。

セダンを格付けする際の指標の一つとして、「実用上不要なほど長い」「実用上不要なほど高出力」など実用性主義でないものほど余裕があり格上だというものがありました。サイズの割に定員や積載量を多くしたミニバンは実用主義の最たる物でしょう。500万円で8人乗りのアルファードより、400万円で5人乗りのクラウンの方が贅沢だということです。

各クラスのミニバンの平均的な品質レベルで言えば、およそこんな感じでしょうか。

ミニバンクラス 乗用車セグメント
小型ミニバン
(シエンタ)
Bセグメント
(ヴィッツ)
中型ミニバン
(ノア/ヴォクシー)
Cセグメント
(カローラ)
大型ミニバン
(アルファード)
Dセグメント
(マークX)
Eセグメント
(クラウン)

※ 走りと安全性除く、比較イメージ。

ただしミニバンは車両の成り立ち的に走りは絶望的です。四輪自動車が乗用として最も快適に走行できるのはセダンやクーペなどの形状で、ミニバンは向いていません。車体が重く、重心が高く、空気抵抗も大きく横風に弱いです。ミニバンはほぼ箱型なので衝突安全性を上げにくく横転リスクも高いという点にも注意してください。

スポーツカーの扱い

スポーツカーはまるで状況が異なります。そもそもスポーツカーの目的は速く(あるいは楽しく)走ることにあるので、「豪華で高額な車が偉い」という乗用車の発送は当てはまりません。

走る速さだけを考えれば、まず単純に軽いほど速いという話があります。走るために必要なもの以外をどんどん削ぎ落とせば速くなります。内装は質素だけど速い、そんな車をどう扱うかがまず難しいです。

ロータス・エリーゼの内装

例えばロータス・エリーゼ(572万円~)の内装は実に質素なものですが、その分非常に軽いので速いです。エリーゼの全長は3,800mmでヴィッツほどもありません。

スポーツカーにも色々あって、BMWやアウディのようにスポーツカーにも十分な(価格に見合った)高級感を備えたものもあります。

スポーツカーを車格のように区分する共通した指標はありません。あえて挙げるとすれば、単純に価格帯で分類することでしょう。スタート価格や量販帯の価格をもって、スポーツカーを分類しようというわけです。

スタート価格帯 車種名
~200万円 ダイハツ・コペンホンダ・S660
200~300万円 トヨタ・86 / スバル・BRZ,マツダ・ロードスター
300~400万円 日産・フェアレディZ
400~500万円 アウディ・TT
500~600万円 BMW・Z4,ロータス・エリーゼ
600~800万円 ポルシェ・ボクスター/ケイマン
800~1000万円 アルファロメオ・4C,日産・GT-R
1000~1500万円 ポルシェ・911
1500~2000万円 BMW・i8
2000~2500万円 ホンダ・NSX,ランボルギーニ・ウラカン
2500~3000万円 フェラーリ・458イタリア

単に価格だけなので、随分と性格の違う車が並んでいたりもしますが、スポーツカーはこんな風にしか分類できないということです。

まとめ

これで車格の決め方分かっていただけましたか? 非常に複雑で難解、そして主観に依存する面も多くありますが、車格を理解すると車種ラインナップの意味が分かったり車種選びがしやすくなったりすると思います。

「車格」を考える理由や使われ方について詳しくはこちら↓

 - セグメント
 - ,