ノートe-POWER試乗レビュー!シリーズハイブリッドのEV的な走りは?(追記あり)
2017/01/06
ガソリンで走る電気自動車、ノートe-POWERに試乗してきました。
たしかにこれは異質! EVに期待する走りを見せてくれるのか詳細にレビューします。
※ 気になる点があったので、再度試乗しました。
ノートのデザインやガソリンエンジン仕様の走りのレビューはこちら↓
目次
日産・ノートe-POWERってどんな車?
ノートe-POWERは、2016年11月のノートのマイナーチェンジで追加された、ノートの派生モデルです。
注目は国産市販車初採用となるシリーズハイブリッドです。駆動力は100%電気モーターの出力、モーターを駆動する電気を得るためにガソリンエンジンで発電するというタイプのハイブリッドカーです。走行するための力はモーターのみなので、走りの面では完全にEV(電気自動車)と同じです。シリーズハイブリッドについて詳しくは以下の記事をご覧ください↓
ノートとの違い、リーフとの違い
ノートe-POWERのベース車両は、Bセグメントコンパクトカーの「ノート」です。発電に使われるエンジンも通常のノート用エンジンと同じです。
ですが、駆動力を得るモーターはEVのリーフと完全に同一です。車重こそ違う(ノートe-POWERの方がリーフより軽い)ものの、走りの面ではリーフとほとんど同じ感覚になっています。
ノートe-POWERのスペックについては以下の記事で詳しく解説しています↓
グレード構成
ノートe-POWERは3グレード構成になっていますが、実質2グレード構成です。
グレード | 価格 | 燃費 | 備考 |
---|---|---|---|
e-POWER メダリスト | 224 万円 | 34.0 km/L (2.9 L/100km) |
部分合皮シート, アルミホイールなど |
e-POWER X | 196 万円 | 標準グレード | |
e-POWER S | 177 万円 | 37.2 km/L (2.7 L/100km) |
エアコンすら無い 燃費&価格スペシャル |
グレード「e-POWER S」は、エアコンを始めあらゆる快適装備がガッツリ削られています。燃費はたしかに最も良いんですが、エアコンすら付いておらずオプション装着もできません。「ノートe-POWERは最大燃費37.2km/L、177万円~」と書かせるためだけに存在するグレードです。2016年11月にノートが車種別販売台数で1位に輝きましたが、15,000台を売れたのに「e-POWER S」はなんと1台も売れなかったそうです。
そんな無意味なグレードは存在させても消費者を誤解させるだけです。日産の悪意を感じますね。プリウスやフィットハイブリッドにも燃費スペシャルのグレードがありますが、せいぜい燃料タンクを小さくするとか後席パワーウィンドウをなくす程度(e-POWER Sは当然どっちもやってる)です。そちらは商用車などの用途も含めれば一定数は売れているはずですが、ノートの「e-POWER S」は完全に売る気がありません。
声を大にして言いたい。ノートe-POWERは「196万円~、34.0km/Lです!」と。堂々とアピールできる内容を公表して欲しいものです。
通常グレードの「e-POWER X」と、装備が豪華な「e-POWER メダリスト」という構成です。レザーシートなど「e-POWER メダリスト」にしか設定されないオプションもあるので、よく吟味して決めましょう。
デザイン
内外装デザインはほとんどノートのガソリンエンジン車と同一なので、詳しくはノートのレビューで紹介します。ここでは通常のノートとの違いを紹介します。
エクステリア
外観での差はほとんどありません。ガソリンエンジンモデルとの違いは2箇所のみです。
1つはフロントグリルに青いラインが入っていることです。なんという微妙さ! プラグインハイブリッドのゴルフGTEも同じようにフロントに青ライン。ゴルフGTEは結構目立ってましたが、ノートe-POWERの方は違いに気づきませんでした。この写真だと青なので余計に目立ちませんが、他のボディカラーでもあまり目立ちませんでしたね。
ほぼ一緒ですよね。オーナーには分かるけど、他の誰も気づかないような違いです。
デザイン上の違いはこの1箇所だけ。もう一つはサイドとリアの「e-POWER」エンブレムです。
まぁこれは付いていて当然という感じですね。トヨタのハイブリッドだろうが、マツダのスカイアクティブだろうが、こういうのは付いていますからね。
せっかくシリーズハイブリッドという世界的にもまだ珍しいシステムを採用しているのに、あまりにも主張しなさすぎです。デザインを大きく変えるのがコスト的に厳しいのは分かりますが、もっと明確な差を付けても良かったのかなぁと思います。せめてNISMO仕様のようにフロントに明確に示した方が良かったと思います。
[この車なんだろう → へぇーe-POWERっていうのなんだ]ってなるとブランド力向上に寄与するのかなぁなんて余計なおせっかいですが。最近の日産はこういうのが下手くそだから日本でのブランド力がどんどん落ちていってるんだと思います。
インテリア
インテリアもほぼ通常ノートと同じです。
大きく異なるのはシフトレバーです。ノートe-POWERのスイッチデザインはリーフと全く同一です。まるでプリウス系ハイブリッドのようにつまむようなスイッチになっています。倒してもそこで固定されず中央に戻るようになっているのもプリウスと同じです。
深く調べていませんが、2代目プリウス(2003年発売)が中央に戻るスイッチ形式を採用、3代目プリウス(2009年発売)で指先で操作する形を採用、そしてリーフ(2010年発売)がそのまま流用したという流れのようです。
リーフ/ノートe-POWERのスイッチデザインは良くありません。どう掴めば良いか分からないからです。指先でつまむには幅が大きすぎますし、手で上から覆うには小さすぎます。その上設置位置が低すぎます。
さらに酷いのは、セレクト位置が分かりにくいことです。中央に戻るのでレバーでは選択位置が分かりません。なのでどこかに分かりやすく表示するべきですよね。メーター内に選択位置が表示されるんですが、なんと小さな点が出るだけ! しかも点の位置が分かりにくい! 最悪です。単に選択した文字の色を変えるだけでも随分分かりやすくなると思います。
オーナーなら慣れで解消できるかもしれませんが、何も聞かなくても操作できることも重要。操作の仕方が伝えるのもデザインの役割です。これを決めたデザイナーやエンジニアは人間工学とユーザビリティを勉強し直すべきですね。
走り
やっと肝心の走りです。長くてすみません。
加速感は異質
発進の瞬間、ガソリンエンジン車なら ブゥン! とエンジン音が大きくなるところでもエンジン音は変化しません。モーターでするすると加速していきます。ここは同じくモーター発進のトヨタ式ハイブリッドと同じ感覚です。
たしかに発進加速はスムーズかつ強力ですが、それ以降の盛り上がりに欠けます。モーターなのでトルクはほぼ一定ですが、ガソリンエンジン車は中~高回転でトルクが盛り上がるのがほとんど。ガソリンエンジン車のトルク感に慣れていると逆に伸びが悪いように感じてしまいます。
ノートe-POWERには変速機構がありません。最大トルクの25.9kgmを出せるのは0~3,008rpmなので、0~48km/hまでです。それ以降は回転数が上がるほどトルクが落ち、100km/hでは12.4kgmまで落ちてしまいます。
ただ、それでも最大出力は109馬力に保たれている(48~159km/hの間一定)ので、1.5Lエンジンを積んだコンパクトカー以上の加速性能はあります。ガソリンエンジン車の最高出力は大抵高回転域でしか発揮できません。加速したい瞬間に低回転だとパワーが出ないガソリンエンジンに比べると、踏んだ瞬間に最高の加速ができるモーターは強烈ですね。
トランスミッションが無い
駆動がモーターのみで変速機構が無いということは、加速に全く途切れが無いということです。発進から高速巡航までのスムーズさは特筆に値します。まぁ技術的にはこのスムーズさにエンジン+モーターで対抗できるトヨタ式ハイブリッドがもっとスゴいんですけどね。
高速巡航は結構普通ですが、発進加速のスムーズさ&トルク感は異質です。ストップ&ゴーでぐいぐい走りたいならオススメできます。
ガソリン車と比較すれば当然勝てるんですが、
エンジン停止について(書き直しました)
エンジンスタートスイッチを押しても(通常は)エンジンは始動しません。プリウスなどのトヨタ式ハイブリッドと同じですね。
発進時はエンジンが停止したままですが、するすると加速していくと途中でエンジンが始動します。エンジン始動音は通常のコンパクトカーと同じくらいハッキリと聞こえます。ガソリンエンジン部分についてはガソリンエンジン版のノートと同じですからね。アクアなんかは始動音が静かだったので気にしていないとエンジン始動に気づかないことがあるほどでしたが、ノートe-POWERはしっかりとエンジンの存在を主張してきます。
1回目の試乗ではほとんどエンジンが停止しませんでしたが、それについて質問したらエンジンが停止する条件について教えてもらえました。
- バッテリー残量が十分。
- 外気温が暑すぎ/寒すぎでない。
- ボンネットが開いていない(後述)。
この条件から推測すると、おそらく前回は寒かったためにエンジンが回りっぱなしになってしまったのでしょう。ただ、さほど寒い日ではなかった(外気温10℃程度)のにエンジンが始動するとなると、雪がじゃんじゃん降るような寒い地域に住む人はあまりエンジン停止の恩恵にあずかれないということですね。
カタログではe-POWERの動作について「ヒーターがオンだとエンジンが停止しない」との注釈が書いてありますが、エンジン停止中にエアコンをオンオフしたり設定温度を上げてみたりしましたが、エンジンは始動しませんでした。イマイチ条件が不明ですね。
強制充電モード
バッテリーの充電は通常走行中に自動的に行われます。減速時の回生発電でも充電しますし、エンジンからも充電します。停車中は基本的にエンジンが停止しているので充電しません。
停車中でもエンジンを始動させてバッテリーを充電するには、ボンネットを開ければいいそうです。エンジンが始動してバッテリーを充電してくれます。ディーラーの試乗車用くらいしか用途が思いつきませんが、必要に応じてユーザー操作でバッテリー充電ができるのは良いことですね。
走行モード
ノートe-POWERには3つの走行モードがあります。「S」では強力な加速感、「ECO」では積極的に省燃費走行をします。
ただ、走行モードによる変化はかなり小さいです。「S」に入れなくても結構良い加速をしますし、「ECO」でもちゃんと走ってくれます。ECOモードにするとまるで加速しなくなるトヨタ車とは大違いです。
モーター走行の場合は、急加速してもあまり燃費が悪化しないので、無理にECOモードにする必要は無いのかもしれません。
アクセルペダル
走行モードを「S」「ECO」のどちらかに入れていると、「e-POWER Drive」という走り方になります。
通常はアクセルペダルを離すとほぼ定速走行(少しずつ減速)しますが、e-POWER Driveではアクセルペダルを戻すとグッと減速します。そのまま離していればどんどん減速して、そのまま停車します。
これが結構楽で、街中を普通に走っている分にはまったくアクセルペダルだけでの走行も可能です。特に踏切や市街地での一時停止が非常に楽です。一時停止を面倒だなぁと思っている人でも、明示的にブレーキを踏むのに比べればアクセルを離すだけというのはかなり楽でしょう。それに「離せば止まる」というのは、ペダルの踏み間違い防止にも効力を発揮しそうです。
減速に使うのは発電機による回生だけだそうで、ブレーキパッドは使わないそうです。停車時にも発電機を抵抗として活用しているとのこと。長い下り坂で使っても安心ですし、ブレーキパッドの消耗も抑えられますね。ブレーキランプは減速する加速度が 0.1G を超えると点灯します。ただ停車時(=加速度0)は消灯してしまうので、追突されないようにブレーキペダルを踏んだ方がいいかもしれません。
意外とすぐに慣れてしまうので、積極的に活用したい機能です。なので、走行モードと分離して選択できた方がありがたかったのかなぁと思います。どうせどのモードを選んでもあんまり変わらないんですけどね。それにしても「e-POWER Drive」ってまるで何か分からない名前ですね。名付けが下手くそ。「アクセル」「加速度」「ペダル」「ブレーキ」「回生」などの要素が何も入っていない ふんわり とした謎機能名です。
足回り
足回りのセッティングはノートと同じように感じます。通常のノートとの重量差は70kg程度なので変える必要が無かったのでしょう。特に悪いという感じはしませんが、マツダ・デミオのような特別な安定感はありません。普通のコンパクトカーというレベルですね。
バッテリーはフロントシートの下にあるので、低重心をアピールしていました。ですが感じられるほどではありませんでしたね。
静粛性
一番残念だったのは静粛性です。せっかくEV走行が可能な車なのに、車体の遮音性が悪すぎます。せっかくパワートレインが静か(エンジン停止時のみ)でも、ロードノイズががんがん入ってきて、かなりもったいないです。
エンジン音も通常ノートと同じように入ってきます。ノートがそもそも静粛性が低いんですが、せっかくEVの乗り味を楽しめる車ならもっと静粛性を高めるべきだったと思います。
対抗のトヨタ・アクアは結構静粛性が良くて、発進時はほぼ無音、走行中でもあまりロードノイズが気になりませんでした。VWゴルフほどの静粛性とまでは言いませんが、アクアやデミオ並みの静かさにするとEVの良さがもっと光ると思います。車体を静かにできないなら、せめてエンジンを通常ノートより静かにしてくれないと、せっかくのシリーズハイブリッドがもったいないですね。
燃費
何度もフル加速しても、燃費は18km/Lくらいでした。1.5L以上の普通のガソリンエンジン車なら半分も行かなかったでしょう。普通に走っていれば街乗りでも25km/Lくらいが余裕だと思います。
その他装備
肘掛けが無い
「e-POWER S」と「e-POWER X」には運転席の肘掛けがありません。オプションでも用意されておらず、肘掛けを付けるには、上位グレードの「e-POWER メダリスト」にする必要があります。各種快適装備には興味がないけど、肘掛けが欲しいという場合には都合が悪いかもしれません。
電子ルームミラー
試乗車がオプションのスマートルームミラー(電子ルームミラー)装着車でした。ルームミラーが液晶になっていて、車体後部のカメラの映像をそのまま表示する装備です。
残念ながらこの装備はまだまだ発展途上という感じですね。昼間だと普通に反射した像と液晶の内容がかぶってしまって、かなり見づらいです。見える角度が狭くて見づらかったり、カメラがやや下向きになっていたりという点も問題ありです。一応レバーを倒せば普通の鏡にもなります。
普通のルームミラーが役立たないほど車内に荷物を詰め込む人には役立つかもしれませんが、ほとんどの人には不要な装備でしょうね。
まとめ
加速感はたしかに特別かつ異質です。アクセルを踏んだ瞬間にしっかり加速しますし、スムーズです。でもできればそこに「静か」を加えたかったですね。
せっかくの素晴らしいモデルなのに、デザイン変化が小さいのが残念です。内外装共に「e-POWER」を実感できるような装備があった方が満足度が上がるように思います。せっかくの貴重なシリーズハイブリッドですからね。車種別1位になったときにも言いましたが、やっぱり「ノート」とは別の名前にすべきだったのかなぁ思います。走りがまったく違いますからね。e-POWERをあんなの(失礼)と一緒にしたらかわいそうです。
ノートe-POWERと、EVや他のハイブリッドの比較はこちら↓
ノートのデザインやガソリンエンジン仕様の走りのレビューはこちら↓