アルファロメオMiToの走りはまさに「じゃじゃ馬」。なぜクーペにしなかった!

     2017/02/08

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我が家のジュリエッタのメンテナンスついでに、アルファロメオ・MiToを試乗してきました。「ベイビーアルファ」とも呼ばれるアルファロメオ最小のコンパクトハッチバックはどんな走りを見せてくれるのでしょうか?

※ 追記MiToの生産か終了が決まったという話がありましたが、誤報だったようでマイナーチェンジの発表もされました

MiToのデザインをレビューした記事もご覧くださいね。

ドアがやたらデカい

まず乗り込むときに感じるのはドアがやたら大きいことです。ある程度まともなリアシートのある2ドア車では一般的なことですが、前後方向に長いです。狭い駐車場など横に広くない場所で乗り降りするときにはぶつからないように気を遣わないといけません。

リアシートに乗り込むのはさらに大変です。これは2ドア車に共通する問題なので致し方ないことではありますが、シートを倒して乗り込むのは腰囲ではありませんね。なまじリアシートが普通に乗れるレベルなので4人乗りとして使えそうに思ってしまいますが、常用するには結構な気合いが必要でしょう。

ドアだけを見れば、格上のCセグメント車「ジュリエッタ」よりも上級の車にさえ見えてしまいます。

サッシュレスドア

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ドアの構造は「ジュリエッタ」とは異なります。サイドウインドウ上にサッシが無いタイプなので、窓を開けているとドア上部は何も無くなります。

バブル期に「ハードトップ」とも言われた構造で、当時はよく採用されていましたが、基本的には剛性が落ちるだけで良いところはほとんどありません。ただ、クーペタイプの2ドア車の場合には開口部が小さいためにボディ自体で十分に剛性が確保されていて、この構造を採用しても問題無いこともあります。衝突安全基準の厳しい現代で採用しているのですから問題無いとの判断なのでしょう。

窓上部はオープンカーと同じく、窓周囲と密着するゴム(ウェザーストリップ)によって密閉性を確保しています。ドアを閉めるときに気圧が変化するのを嫌ってか、ウェザーストリップに衝撃を与えるのを避けるためか、ドアを閉める瞬間に窓が自動的に数センチ下がって隙間を作ります。ドアが閉まると窓は再び閉まります。小さな動作ですが、使い勝手や耐久性には寄与していることでしょう。

パワートレインはジュリエッタとほぼ同じ

搭載するエンジンは直列4気筒1.4Lガソリンターボで、格上となるCセグメントの5ドアハッチバック「ジュリエッタ」に搭載されているエンジンと同じです。ただ、過去にあった最上位グレード「クアドリフォリオ・ヴェルデ(QV)」を除いて、搭載されるエンジンはジュリエッタよりも性能が抑えられています。

MiTo
MiTo-1
ジュリエッタ
giulietta-3rd
Competizione Quadrifoglio Verde
(販売終了)
Sprint / Sportiva Quadrifoglio Verde
(現行TCT仕様)
販売期間 2009年~ 2012~2014年 2012年~
全長 4,070 mm 4,350 mm
全幅 1,720 mm 1,800 mm
全高 1,465 mm 1,460 mm
ホイールベース 2,510 mm 2,635 mm
車重 1,260 kg 1,250 kg 1,400 kg 1,440 kg
トランス
ミッション
6DCT 6MT 6DCT
サスペンション
(フロント/リア)
ストラット /
トーションビーム
ストラット /
マルチリンク
エンジン 直列4気筒
1368cc ターボ
直列4気筒
1742cc ターボ
最高出力 135 PS / 5,500 rpm 170 PS / 5,500 rpm 240 PS / 5,750 rpm
最大トルク
(Natural /
All weather)
19.4 kgm / 4,500 rpm 23.5 kgm / 2,250 rpm 30.6 kgm / 1,850 rpm
最大トルク
(Dynamic)
23.5 kgm / 1,750 rpm 25.5 kgm / 2,500 rpm 34.7 kgm / 2,000 rpm
価格 324 万円~ 328 万円~
(販売終了時)
318 万円~ (Sprint)
360 万円~ (Sportiva)
426 万円~

MiToに用意されるエンジンは「マルチエア」と呼ばれる1.4Lガソリンターボエンジンです。おおよそ1.8L自然吸気エンジン並みの出力となっています。1,260kgとBセグメントにしてはやや重めですが、エンジン性能は必要十分以上になっています。

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「マルチエア」エンジンでは吸気バルブをカムシャフトではなく油圧で制御しています。吸気タイミングやバルブのリフト量を自由に制御できるわけですね。

現在のアルファロメオ車に共通する機能として「アルファD.N.A.」というモード切替機能が付いています。よくあるモード切替機能では、ATの変速タイミングを変更したり、せいぜいアクセルレスポンスを変更する程度ですが、アルファD.N.A.ではエンジンのトルクの出方も変わります。特にMiToでは最大トルクが2割以上向上します。この機能自体がマルチエアによる自由な制御にもよるのでしょう。

かなり高額な価格設定

現在のMiToの価格はかなり高額です。単一グレードで324万円~です。装備の差はあるとはいえ、ジュリエッタが318万円から用意されているので、よほど明確なメリットを感じられないと、格下かつ出力が劣るMiToを買う理由はあまり無いでしょうね。

ちなみにグレードを序列は[QV > Sportiva > Competizione > Sprint]の順です。MiToのCompetizione(324万円)は、ジュリエッタのSportiva(360万円)とSprint(318万円)の間に位置していますから、現在の価格構成ではジュリエッタとMiToに価格差はほぼつけられていないということですね。

シート

フロントシートはジュリエッタとよく似ています。ドイツ車なんかに比べるとやや固めではありますが、形状は悪くありません。ただ、パワーシートではなく手動です。シートを倒す操作がレバー式ではなくダイヤル回転式なので、大きく倒す場合には面倒です。もちろんリアシートに乗り込む時には、フロントシートを一気に前に倒すレバーがあるので問題ありません。

アームレストはシートから横に出ていて、上下数段に調整可能なタイプです。ジュリエッタは上下調整できないタイプなのでここも異なりますね。調整可能なのはメリットにも感じましたが、高すぎか低すぎでちょうど良い場所で止まってくれないので私には微妙でした。ジュリエッタは標準の場所がちょうど良かったのでこれは残念です。

フットレストはペダルに比べてやや手前にあります。フットレストがやたら遠かったアウディ・A4よりはマシですが、若干気になりましたね。

リアシート

クーペ風のボディにしてはリアシートは結構余裕があります。2+2(リアシートが小さいクーペ)と違って普通に乗れるレベルなのはスポーツカーに比べたメリットですね。

ただヘッドクリアランスはかなり狭いです。座高が高い人は常に頭が当たってしまって不快でしょうね。子供を乗せるにはいいでしょうが、2ドアなのでベビーシートやチャイルドシートに乗せるのは大変です。自分で乗ってくれる年齢になっていれば問題無いでしょう。

走り

加速感

エンジンパワーはジュリエッタに劣りますが、軽さが効いていることもあって普段の加速感(Dynamicモード、Naturalモード)はジュリエッタよりも軽快です。リアスプリングが柔らかいのか、加速中は若干視点が上昇するのを感じました。ホイールベースがジュリエッタより100mm以上短いことも影響しているのでしょう。

一方フルアクセルでの加速感(Dynamicモード)はジュリエッタにやや劣っていました。

パワーウエイトレシオ(小さいほど高性能)はジュリエッタの8.2 kg/PSに対して、MiToは9.3 kg/PSと若干劣ります。トルクウェイトレシオ(小さいほど高性能)で見ても、ジュリエッタの54.9 kg/kgmに対して、MiToは53.6 kg/kgmとほぼ同等です。車重は軽いんですが、エンジンパワーも相応に低くなってしまっているのでジュリエッタほどのフル加速性能にならなかったのでしょう。

Dynamicモードで最大トルクを発揮する回転数はかなり低い(1,750rpm)ので、ダウンサイジングターボらしく低回転から力強い加速を見せてくれます。ターボラグは感じませんでした。ジュリエッタは、Dモードでアクセルオフすると急に減速Gがかかってギクシャクする感じがありますが、MiToでは感じませんでした。

同車格のBセグメントハッチバックでこのレベルの加速感が得られる車はほとんど無いでしょう。エンジン性能のスポーティさで言えば群を抜いています。小排気量のプジョー・208は言うに及ばず、フォルクスワーゲン・ポロもシトロエン・DS3もアウディ・A1(1.0Lターボ)も、「スポーツ性能」はほとんど感じられません。ルーテシアR.S.やポロGTIのような特殊グレードを除けば、セグメントで敵無しのスポーツ性能でしょう。

足回り

実用車としてはゴツゴツして固めです。アウディ・A1のような安楽な乗り心地を期待してはいけません。

リアはBセグメントの文法に則ってトーションビームです。Cセグメントではリアにマルチリンク(トーションビームより高価で高性能)を使う車も多いので、ここはどうしても劣って見えてしまいますね。凹凸は吸収しきらずにドライバーに伝えてきます。

スポーツ走行をすると、ロールを小さく抑えてぐいぐい曲がっていきます。1.2t超えとライトウェイトではないので、軽々とした走りではありませんが、回頭性は上々です。FFではありますが、FF的な悪癖はあまり感じません。コーナーの立ち上がりこそ前輪駆動を感じますが、コーナリング姿勢はまるでFRのようで、非常に自然で心地よい走りをしてくれます。よくこんな足回り作ったな!と感激しましたよ。

いやほんと、なんでこれをクーペにしてくれなかったんだ……。FFスポーツカーとしての素性は完全にできあがってますよ。

ちなみに急加速してもトルクステアは出ませんでした。トルクステアを感じるにはQVレベルのパワーが必要なんでしょうか。でもジュリエッタのQVでもトルクステアはありませんでしたね。

Dモードにしているとステアリングは若干重めになります。これもスポーツ走行のしやすさに寄与しているでしょうね。

トランスミッション

トランスミッションはジュリエッタと同じくデュアルクラッチトランスミッション(DCT)の「TCT」で6速です。MiTo発売当時はMTしかラインナップにありませんでしたが、TCT導入を経て現在はTCTのみとなりました。

TCTは各社のDCTの中でも特に完成度が高いです。発進時や変速時のギクシャク感はほとんどなく、トルコン式AT車に負けない滑らかさを実現しています。変速タイミングも秀逸で、強くアクセルを踏めば良い具合に引っぱってくれますし、下り坂でエンジンブレーキが欲しいときは何もしなくてもギアを落としてくれます。ただしこの秀逸なタイミングは「Dynamic」モードに限ります。

Naturalモードは実質エコモードなので、積極的に上のギアを使おうとします。ただ、MiToはジュリエッタほどは変速していかないので、Nモードでもある程度まともな走りをしてくれます。ジュリエッタのNモードはフラストレーションがたまるレベルですが、MiToは常用してもあまりストレスにならないでしょうね。

TCTというより制御全体の問題ですが、アイドリングストップの出来はあまり良くありません。再始動はジュリエッタと同様早くありませんし、緩い上り坂でもアイドリングストップがかかってしまうので、ブレーキペダルを離してから発進するまでの間にタイムラグがあって車が下がってしまいます。正直これは非常に怖いです。

きつい上り坂ならヒルホールド(下がらない制御)がかかってアイドリングストップしなくなるのでいいんですが、緩い上り坂でもせめてアイドリングストップのキャンセルはして欲しいものですね。

まとめ

「じゃじゃ馬」という表現がピッタリです。コンパクトハッチバックとしては十分すぎる面白さがあります。

「安いスポーツカー」というジャンルがほとんど死滅して、「高価なスポーツカー」か「スーパーカー」しか無くなった今、ボディ形状こそハッチバックではありますが、このように面白い走りの車があるのはいいことですね。販売終了が決まりましたが。

MiToのデザインをレビューした記事もご覧くださいね。

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