アウディA1試乗レビュー!3気筒1.0Lターボの質と走りはA1に絶妙な組み合わせ

   

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3気筒で1.0Lターボという思い切ったダウンサイジングに舵を切った、アウディ・A1を試乗してきました。「小さな高級車」を標榜したA1はエンジンも小さくなりました。これでもちゃんと「高級車」しているのでしょうか?

今回は3気筒999ccターボの質感と走りをレビューします!

アウディ・A1の999ccモデルとは?

A1はこれまで1クラス上のA3のFFモデルと同じ122馬力の1.4Lターボエンジンを搭載していました(A3のクアトロは1.8Lターボ)が、今年6月に直列3気筒999ccターボエンジンを搭載したモデルが追加されました。

気筒休止機能「シリンダーオンデマンド」を搭載しない1.4Lモデルの販売が終了したため、1.0Lターボ以外は「1.4TFSIシリンダーオンデマンドスポーツ」というグレードのみになりました。このグレードは3ドアで329万円~、5ドアで349万円~となり、A3スポーツバックのスタート価格328万円を超えてしまいます。A3も同じ1.4Lターボエンジンなので、どうしても気筒休止機能が欲しいとか、A1のコンパクトなサイズで高い動力性能が欲しいとかいう奇特な理由が無い限りA3を買うことになるでしょう。車重はA1 1.4Lの方が100kg軽く(おそらくECUの差で)ハイパワーですが、リアサスがマルチリンク→トーションビームになってまでA1 1.4Lにしたい人がどれだけいるのか疑問です。

A1 3ドア A1 5ドア A3 ハッチバック
1.0Lターボ 95PS / 16.3kgm
249 万円~
95PS / 16.3kgm
269 万円~
1.4Lターボ 122PS / 20.4kgm
328 万円~
1.4Lターボ+気筒休止 150PS / 25.4kgm
329 万円~
150PS / 25.4kgm
349 万円~
140PS / 25.5kgm
381 万円~
1.8Lターボ+クアトロ 180PS / 28.6kgm
429 万円~

つまり、「アウディ・A1」は「3気筒1.0Lターボ」とセットで考える必要があるということです。このエンジンがダメならA1は諦めてA3か他社に行くしかありません。BMWが残念な3気筒エンジンを晒す中、アウディは思い切った戦略を取ったと思います。

ま、とは言ってもBMW・1シリーズ、メルセデスベンツ・Aクラスと対抗するのはA3なので、さらに小さいA1は挑戦的なことをしても許されるのでしょうね。プラットフォームはVW・ポロと共有ですし。1シリーズどころか3シリーズにまで3気筒エンジンを搭載してくるBMWのバカげた戦略とはワケが違います。

3気筒エンジンの完成度は高い

3気筒ということで、BMWミニの悪夢が再来するのではと思いながら乗ったのですが、意外や意外、全然ちゃんとしていました。アイドリングの振動や音は(さすがに4気筒よりは劣るものの)十分に抑えられ、何も知らずに乗れば3気筒であることを気付かないレベルに仕上がっていました。

走り出しや日常的な加速でも、3気筒らしい荒々しい低音はあまり聞こえず、静かな夜に乗ったにも関わらずそこそこの4気筒エンジン並みのクオリティでした。車格的に同クラスの非プレミアム車の4気筒エンジン(フィット、ヴィッツなどの1.3L以上)よりは十分静かです。

車から降りるとそれなりに3気筒な音がしていたので、車体の静粛性で抑えているのでしょう。ディーゼルエンジンでいえばマツダ(エンジンを静かに)よりもボルボ(車内を静かに)のアプローチに似ていますね。プレミアムブランドならエンジン音以外の面でも静粛性はウリになるのでこういう造りが実現できるのでしょうね。

大きくアクセルを開けて加速すると3気筒エンジンの音と振動が顔を出します。これはクリーンディーゼルエンジンを搭載するプレミアムセダンと同じですね。

同じ3気筒エンジンでもBMWミニの方は正直私には許容できないレベルでしたが、こちらは十分許容範囲に収まっていました。窓を開けなければ普段3気筒を意識することはほとんど無いでしょう。

走り

999ccモデルに限定すると、3ドアは1,120kg、5ドアは1,140kgです。95馬力/16.3kgmと決してハイパワーとは言えないエンジンにこの車重なので、スペック上は軽快さをあまり期待できなさそうです。試乗したのは5ドアの「A1 Sportback 1.0 TFSI」です。

加速感

実際に走ってみると、かなり下からターボ過給されるのが感じられて結構なトルク感があります。低回転での加速だけで言えば1.5L NAの国産コンパクトカーよりも力強く加速します。車体も1,100kg未満程度にしか感じられず、スペック以上の軽快さを感じられました。

難点はトルクの頭打ち感。回転数を上げて走ってもパワーの伸びがあまり感じられません。1,500-3,500rpmで最大トルクを発生するので、そこからはトルクが落ちる(パワー=トルク×回転数)からでしょうか。普段使いでは十分なトルクを感じるのに、やる気になって飛ばしてもそんなに伸びてくれない感じはディーゼルエンジンにも似ているなぁとも思いました。

トランスミッション

アウディのSトロニックは、フォルクスワーゲンのDSGと基本的に同一です。7速なのでVW・ポロやVW・ゴルフに使われている乾式7速DSGと同じでしょう。

特徴はDSGに準じています。発進時の疑似クリープは弱めで、発進時のクラッチミートが急激なので発進時はギクシャクしやすいです。慣れればさほど気にはなりませんが、完成度の高い他社DCTやましてトルコンATのような滑らかさを期待してはいけません。

変速は俊敏です。特にアップシフトの回転落ちはDSGらしいですね。アルファロメオやルノーのDCTは結構穏やかなので、「DCTらしさ」と思えば楽しめます。特に悪い点ではありません。ダウンシフトも特に問題ありません。

足回り

足回りは思いの外良くできていました。ドイツ車らしくしっかりと落ち着いていて(ボディ剛性のお陰も)、高速走行でも心配なさそうです。試乗では80km程度までしか試せませんでしたが、ばたつく感じやふわふわする感じとは無縁でした。

スポーツ走行に入るとややロールの大きさが出てきてしまいますが、車体の軽さもあって軽快にコーナリングできます。スキール音が出る程の速度で曲がっても足回りの破綻は見られませんでした。1,140kgもあるようには思えませんでしたね。

ただ、リアサスペンションはトーションビームなので後部座席の乗り心地は期待できません。そもそもリアシートは狭すぎて実用的ではないので問題ないでしょうね。フロントシートに座っている分にはさほど影響を感じませんでした。

まとめ

3気筒エンジン搭載車としてはかなり頑張っているなぁと思いました。かなり軽快な走りをしてくれるので、排気量的には1.0Lターボでも十分なのでしょう。チューニングの差なのか、ベースのVW・ポロ1.2Lターボよりもスイスイ走ってくれました。

リアシートにある程度の居住性を求める人にはA3を始めCセグメント以上がいいのでしょうが、リアシートはおまけ程度でフロントシートメインで考えられる人には、ちゃんとアウディらしい高級感を感じられる良いクルマだと思います。高速道路を長時間走るのは苦手ですが、ちょっと2人で温泉に出かけようなんて用途には抜群にぴったりだと思います。

A1のパッケージングからすると1.0Lターボは絶妙な組み合わせだと思いますよ。

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