新型ワゴンRのグレード構成&価格をチェック!ハイブリッドは買いなのか?
2017/02/06
4年半ぶりにモデルチェンジした新型ワゴンR。グレード構成と価格、スペックを見てみましょう。
「ガソリンエンジン」「マイルドハイブリッド」「ターボハイブリッド」のどれが買いなのでしょうか?
新型ワゴンRのデザインレビューはこちら↓
新型ワゴンR
今回発表された新型ワゴンRは6代目。先代は2012年発売だったので、4年半ぶりのフルモデルチェンジとなります。軽自動車は全体にモデルサイクルが短めですね。
一方ライバルのムーヴは2014年に現行の6代目にフルモデルチェンジしました。ここ数世代はモデル年数的にワゴンRとムーヴが交互にモデルチェンジするような形になっています。
新型ワゴンRの目玉はマイルドハイブリッドの搭載です。でもスズキのマイルドハイブリッドは基本的に今まで「S-エネチャージ」と呼ばれていたものと同じ。減速時の回生充電やモーターによるアシストという点では確かに「ハイブリッド」なのですが、モーターの性能が低すぎて「エセハイブリッド」と呼んだ方がいいじゃないかという代物です。
しかもソリオでマイルドハイブリッドを発表したときは、「軽自動車のS-エネチャージと同一システム。単に普通車の客層にウケるようにハイブリッドを名乗った」(意訳)と言っていたのに、今度は軽自動車で「マイルドハイブリッド」を名乗り始めましたね。仕組みをよく知らない人には「ハイブリッド」と書いてあるだけで売れますからね。あくどいです。
でも一応先代モデルのS-エネチャージよりは進化しているようです。そこについては後ほど確認しますね。
グレード構成・価格
ワゴンR、ワゴンR スティングレー共に、3グレード構成です。グレードによって顔やパワートレインが変わるので、同じ顔で同じ動力源というグレードはありません。マイルドハイブリッドという名のエセハイブリッドなので、モーターではなく「ミニモーター」と表記しました。
グレード | 顔 | エンジン | セーフティパッケージ | |
---|---|---|---|---|
あり | 無し | |||
[ワゴンR] | ||||
ハイブリッドFZ | チビヴェル | 660cc +ミニモーター |
141 万円 | 135 万円 |
ハイブリッドFX | 初代風 | 660cc +ミニモーター |
127 万円 | 118 万円 |
FA | 660cc | 108 万円 | ||
[ワゴンR スティングレー] | ||||
ハイブリッドT | 牛 | 660ccターボ +ミニモーター |
166 万円 | |
ハイブリッドX | 660cc +ミニモーター |
149 万円 | ||
L | 660cc | 135 万円 | 129 万円 |
※ いずれも2WDの価格。すべてのグレードに+12.1万円で4WDの設定あり。
3種類の顔は以下の通りで、顔によって選べるボディカラーも異なります。一番軽自動車として似合っているのは初代ワゴンR風(一番左)でしょうかね。
3種類の顔について詳しくはこちら↓
エセハイブリッドは少し進化
スズキが最近「マイルドハイブリッド」だと呼んでいるハイブリッドシステムは、ワゴンRで少しだけ進化しました。世界の他のハイブリッドシステムと比較してみましょう。
採用車種 | プリウス, アクア など |
フィットハイブリッド など |
ソリオ | ソリオ スイフト ワゴンR |
---|---|---|---|---|
モーター出力 (目安) |
60~80馬力 | 20~40馬力 | 10~20馬力 | ~10馬力 |
エンジン/モーター バランス |
同等 | エンジン優位 | エンジン優位 | エンジン中心 |
モーター単独発進 | ○ | ○ | ○ | × (ワゴンR:○) |
モーター単独走行 | ○ | ○ | × | × |
自動車業界での 呼び方 |
ストロングハイブリッド | マイルドハイブリッド | - | |
スズキの呼び方 | - | - | フルハイブリッド | S-エネチャージ マイルドハイブリッド |
ワゴンR以外のスズキ的「マイルドハイブリッド」はモーター単独発進ができませんでしたが、ワゴンRではクリープ現象の範囲内かつ最長10秒に限ってモーター発進ができるようになりました。たった3馬力しかないモーターなのでそれ以上の力は出せませんが、アイドリングストップしたエンジンの再始動時間を稼ぐという意味では十分に意味のある進化でしょう。
考えてみたらクラッチスタートシステムが採用される以前のMT車では、ガス欠などでエンジンが始動できなくなった時にセルモーターの力で発進することができましたね。セルモーターがざっくり3馬力くらいなので、スズキ的マイルドハイブリッドも制御次第でできて当然だったのかもしれません。
軽ワゴンで最も低燃費
ワゴンRのハイブリッドモデルは、33.4 km/L (3.0 L/100km)を達成して、「軽ワゴンで最も低燃費」という称号を手にしました。
「ワゴン」の条件を外すとスズキ・アルト/アルトラパン(マツダ・キャロル)が37.0 km/L (3.0 L/100km)で最低燃費、次いでダイハツ・ミライース(トヨタ・ピクシスエポック,スバル・プレオプラス)が35.2 km/L (2.8 L/100km)です。
最高までに軽以外では、プリウスが37.2 km/L (2.7 L/100km)でトップ。アクアが37.0 km/L (2.7 L/100km)でプリウスと同等です。実用燃費では軽自動車はパワー不足でアクセルを開きがちなので、カタログ燃費が同じでも軽の方が燃費が悪くなりやすいです。
ハイブリッドで元は取れるのか
装着できるオプションの差などはさておき、単純にマイルドハイブリッドは元が取れるのかを検証してみました。「ワゴンR」の「FA」と「HYBRID FX (セーフティパッケージ非装着)」が最も装備内容が近いので比べてみましょう。(燃料費計算機を使用)
ワゴンR | ||
---|---|---|
FA | ハイブリッドFX | |
燃費 (JC08) |
26.8 km/L (3.7 L/100km) |
33.4 km/L (3.0 L/100km) |
年間燃料費 (10,000km, 124.9円) |
4.7 万円 | 3.7 万円 |
10万キロ燃料費 | 46.6 万円 | 37.4 万円 (-9.2 万円) |
車両価格 | 107.9 万円 | 117.7 万円 (+9.8 万円) |
車両価格が約10万円アップに対して、燃料費は約9万円ダウン。ほぼトントンですね。
この2グレード、マイルドハイブリッド以外の差はほとんどありません。車両接近通報やエコクール、マルチインフォメーションディスプレイの差などはハイブリッドに付随する装備で、何かメリットがあるわけではありません。違うのはハイブリッドFXではタコメーターが装着されることと、2WD車でも運転席シートヒーターが装備されることです。
エセハイブリッドのクセにトントンまで持ち込むなんてスゴいじゃないか! と思ったんですが、「FA」ではアイドリングストップすら効かないんですね。かつてトヨタ式ハイブリッドが出たときは、アイドリングストップ・エネルギー回生・エンジン効率利用が3分の1ずつだという話がありました。「FA」にアイドリングストップが付いたら燃費差が縮まってハイブリッドのメリットが薄れるんでしょうね。
ともかく、価格設定上、ワゴンRのハイブリッドはスズキの「マイルドハイブリッド」(=エセハイブリッド)の中で唯一買う価値があります。というかそうなるように価格設定されています。さらに言えば、FAはセーフティパッケージを装備できないので、セーフティパッケージを付けたい場合は必然的にハイブリッドになります。
ただし、普通のガソリンエンジン車とハイブリッド車では得意分野が異なりますし、乗り方にもかなり影響されます。中長距離の巡航中心の運転であればハイブリッドのメリットはほとんど無くなりますし、アクセルをガンガン踏むような運転だといっそターボにした方が実用燃費が良くなる可能性すらあります。
スペック
長年のライバル、ダイハツ・ムーヴと比較してみましょう。最量販グレードだろうと想定される、中位グレードに自動ブレーキパッケージを装備した
車種 | スズキ・ワゴンR | ダイハツ・ムーヴ |
---|---|---|
グレード | ハイブリッドFX セーフティパッケージ装着車 |
X SAII |
全長 | 3,395 mm | |
全幅 | 1,475 mm | |
全高 | 1,650 mm | 1,630 mm |
ホイールベース | 2,460 mm | 2,455 mm |
車重 | 770 kg | 820 kg |
駆動方式 | FF | |
トランスミッション | CVT | |
エンジン形式 | 直列3気筒 | |
排気量 | 660cc ガソリン+モーター | 660cc ガソリン |
最高出力 | 52ps / 6,500rpm +3.1ps |
52ps / 6,800rpm |
最大トルク | 6.1kgm / 4,000rpm +5.1kgm |
6.1kgm / 5,200rpm |
フロントサス | ストラット | |
リアサス | トーションビーム | |
燃費 | 33.4 km/L (3.0 L/100km) |
31.0 km/L (3.2 L/100km) |
価格 | 127 万円~ | 132 万円~ |
価格設定はワゴンRの方が安めですね。それにムーヴは最新のスマートアシスト3は装備されていないので、自動ブレーキなどの予防安全装備の性能でもワゴンRの方が上回っています。
エンジンの出力・トルクは談合のように同一値。でもワゴンRの方がハイブリッドシステム(といってもオルタネーターの延長)を装備している割に50kgも軽いです。ハイブリッドシステム分の価格差も大きくないので、スペック面だけで言えばワゴンRの方がオススメでしょう。
AGSは採用されず
最近スズキが積極的に採用しているシングルクラッチ式AT「AGS」は新型ワゴンRには採用されませんでした。新型ワゴンRは動力源に関わらずCVTのみの設定です。先日発表されたソリオのフルハイブリッド(一応ハイブリッド)はAGSを採用していましたが、ソリオもマイルドハイブリッド(エセハイブリッド)車はCVTです。
AGSはマニュアル車のようなダイレクト感を利点としていますが、変速時にトルク抜けを感じるためにフィーリングはあまり良くありません。特にトルコン式ATしか乗ってこなかった人(AT限定免許の人など)には違和感が大きく、ギクシャクした動きになってしまいます。違和感を緩和する方法もありますが、ワゴンRに乗るような人にはハードルが高いでしょうね。
現状AGSを採用しているのは、軽の中でも低価格車のアルト系と、商用車のエブリイ系、それにソリオハイブリッドの3系統のみです。ソリオハイブリッドだけは変速時にモーターアシストすることで違和感を減らしていますが、あとのアルト系とエブリイ系に共通するのはコスト要求が厳しいことです。AGSのようなシングルクラッチ式AT(AMT)の最大のメリットはコストが安いことです。日本で普通に運転する分にはコスト面以外のメリットが薄いので、ダイレクト感より違和感の方が重視されるであろう世の奥様方が運転するワゴンRはCVTにしたのでしょう。妥当な判断だと思います。
まとめ
意外なことに、マイルドハイブリッドの方が価格的にメリットがあるという結論になりました。まぁグレード構成や装備内容的に、最低グレードの「FA」は単にスタート価格を安く見せるためだけのグレードで、実際にはマイルドハイブリッド車を売りたいという気持ちがミエミエですね。
ワゴンR自体のスタート価格は108万円ですが、「燃料費で元が取れますからハイブリッドにしましょう」「自動ブレーキは必要ですよね」となるだけで127万円になります。これで顔の好みが初代風以外のどちらかなら、車体価格は一気に140万円台になってしまいます。気をつけましょうね!
正直……価格やスペックをみるまでは期待外れの車なのかなーと思っていたんですが、そんなに悪いモデルチェンジではなかったようですね。私は安全軽視が気に入らないので絶対に乗りませんけどね!!