スズキソリオに「マシな」ハイブリッド登場!「エセ」から「一応」へ少し進歩

     2016/12/25

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スズキ・ソリオにちゃんとしたハイブリッド仕様車が登場しました。これでもトヨタ式ハイブリッド程ではありませんが、元々あったエセハイブリッドよりはだいぶマシになりましたよ。

ソリオハイブリッドの試乗レビューはこちら↓

スズキ・ソリオってどんな車?

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スズキ・ソリオはコンパクトなトールワゴンです。サイズ的には最小のAセグメントに属していて、ザックリ言えば軽自動車枠からはみ出した軽自動車です。

元々は軽のワゴンRを拡大して普通車仕様にした「ワゴンRソリオ」です。それが人気になってきた(軽みたいな車ばっかり売れるようになってきた)ので、「ソリオ」という独立車種に分離したのが発祥です。

先日トヨタ/ダイハツが、スズキ・ソリオに真っ向から対抗する(というか もろパクり)のトヨタ・ルーミー/タンク & ダイハツ・トールを発売しました。よく売れるジャンルに成長したということですね。

独立車種とは言っても、ソリオもルーミー/タンクも設計は軽自動車的。排気量と車体サイズ以外は軽自動車だと思って見ないと、色んなクオリティの低さに驚かされます。

11月頭に発表されたルーミー/タンクに注目を持って行かれてしまったので、ソリオも一つ新しい話題を提供して注目してもらおうというわけですね。今回は「ハイブリッドの追加」という話題です。あれ? 今までもハイブリッド無かったっけ?

スズキ・ソリオのハイブリッド

スズキ・ソリオには今までも「ハイブリッド」が用意されていました。今回発表された「ハイブリッド」は今までの「ハイブリッド」と何が違うのでしょうか?

今までは「エセハイブリッド」だった

今まで用意されていた「ハイブリッド」なグレード、「HYBRID MX」「HYBRID MZ」のハイブリッドは、ハッキリ言ってしまえばエセハイブリッドでした。

「MX」「MZ」のハイブリッドは、軽自動車ではS-エネチャージと呼ばれているものです。軽ではハイブリッドだなんて呼べない代物なのに、普通車に搭載した途端に「ハイブリッド」を名乗り始めました。搭載しているモーターの出力はたった3馬力! エンジンは91馬力なのに、モーターはたった3馬力です。スクーターのエンジン以下! こんな力しか無いので、モーターは発進時にエンジンを補助するだけ。モーターでは自力発進すらできません。

2つの動力源を持っているので、ハイブリッド(異種組み合わせ)になっていないことはありませんが、自動車用語としての「ハイブリッド」を適切に捉えるなら「MX」「MZ」は「ハイブリッドであってハイブリッドでない」。つまり「エセハイブリッド」が適切な呼び方です。

今度は「一応ハイブリッド」

今回追加されたのは「HYBRID SX」「HYBRID SZ」の2つのグレードです。どちらも今までよりはマシなハイブリッドを搭載しています。モーター出力は13.6馬力。エセハイブリッドではモーター単独走行ができませんでしたが、「SX」「SZ」ではモーターのみでの走行も可能です。

スズキはMX・MZを「マイルドハイブリッド」、SX・SZを「ハイブリッド」と呼んでいます。でも他のハイブリッドと比べてみると、マシになった程度なのが分かります。

 車種 トヨタ
アクア
ホンダ
フィットハイブリッド
スズキ
ソリオ
スズキ
ソリオ
分類 本気
ハイブリッド
ちゃんと
ハイブリッド
一応
ハイブリッド
エセ
ハイブリッド
エンジン出力 74 ps 110 ps 91 ps 91 ps
モーター出力 61 ps 29.5 ps 13.6 ps 3.1 ps
出力全体のうち
モーターの割合
45% 21% 13% 3%

注目して欲しいのはエンジンとモーターのバランスです。車体全体の出力に対するモーターの割合は、新しいハイブリッドでもわずか13%しかありません。

ホンダのハイブリッドでは21%。これでもホンダは「エンジンが中心で、モーターが補助の役割をする」と言っています。完全にエンジンとモーターが対等(性能的でも構造でも)なのはトヨタ式のみ。

「ハイブリッド」の中で、トヨタ式ハイブリッドは抜きんでて素晴らしい仕組みです。ハッキリ言って、ソリオなんかが同じ「ハイブリッド」を名乗るのが申し訳ないほど。いや申し訳なく思わないといけないのはスズキなんですが。

トヨタ式がスゴいのは、モーター出力がちゃんと走行性能に反映されていることです。単に数値上の燃費を上げるだけではなく、モーターとエンジンそれぞれの得意分野を最大限活かして走ります。

今回のハイブリッド追加で、「プリウスやアクアと同じハイブリッドが、ソリオにも!」なんて思わないでくださいね。まっっったく違いますから。

ガソリン代では絶対に元が取れない!

ほぼすべてのハイブリッド車について言えることですが、ハイブリッド車とガソリン車の価格差はガソリン代ではほぼ確実に元が取れません! それが自動車メーカーすら認めている現実です。ソリオのハイブリッドについて見てみましょう。

HYBRID SX
一応ハイブリッド
HYBRID MX
エセハイブリッド
G
ガソリン
カタログ燃費 32.0 km/L
(3.1 L/100km)
27.8 km/L
(3.6 L/100km)
24.8 km/L
(4.0 L/100km)
車両本体価格 192 万円~
G +37万円
170 万円~
G +25万円
145 万円~
年間燃料費 約4.7万円/年 約5.4万円/年 約6.1万円/年
10年10万キロ
燃料費
約47万円
G -14万円
約54万円
G -7万円
約61万円

※ 実燃費はカタログ燃費の80%、年間1万キロで計算。

ガソリンがエセハイブリッドになると、差額は25万円。ガソリン代は10年10万円でたった7万円の差です。エセハイブリッドでは燃費改善も小さいので、効果はかなり限定的です。

ただ、「G」と「HYBRID MX」では他の装備差もありますし、Gでは自動ブレーキがオプションでも設定が無いなどがあるので、仕方なくエセハイブリッドを選ぶということはあるでしょう。

一方今回発表された一応ハイブリッド「HYBRID SX」と、エセハイブリッド「HYBRID MX」の車体差額は12万円。燃料費はこちらも10年10万キロで7万円しか減りません。しかも「SX」と「MX」の装備はほとんど同一。価格面だけで見れば、5万円で40kgのおもりを購入するのと同じです。要するに、ミニハイブリッドより傷が広がるだけですね。

こんなハイブリッドを買うなんて、見栄くらいしか理由がありません。でもソリオじゃ見栄にすらなりませんね……。

価格面でハイブリッドがお得になるのは20万キロ以上ですかね。でもこんな長距離に向かない車で20万キロも耐えられるのでしょうか?

スペック

車種名 スズキ
ソリオ
グレード HYBRID SX
[ハイブリッド]
HYBRID MX
[マイルドハイブリッド]
G
分類 一応ハイブリッド エセハイブリッド ガソリン
駆動方式 FF FF / 4WD
全長×全幅×全高 3,710 × 1,625 × 1,745 mm
車両重量 990 kg 950 kg 930 kg
トランスミッション 5AMT CVT
エンジン エンジン形式 直列4気筒
排気量 1.2L ガソリン
最高出力 91.0 ps
最大トルク 12.0 kgm
モーター 最高出力 13.6 ps 3.1 ps
最大トルク 3.1 kgm 5.1 kgm
サスペンション
(フロント/リア)
ストラット / トーションビーム
JC08モード燃費 32.0 km/L
(3.1 L/100km)
27.8 km/L
(3.6 L/100km)
24.8 km/L
(4.0 L/100km)
価格 192 万円~ 170 万円~ 145 万円~

モーター出力が向上した分、車重は40kgも増えています。車重差をモーターの性能で補えるかは制御プログラム次第だと思います。

シングルクラッチ式AT採用

もう一つのトピックはトランスミッションが5AMTになることです。AMT(スズキではAGS)とは、シングルクラッチ式ATのことです。MTのクラッチ・変速を自動化した方式です。ATとMTのいいとこ取りだと思うなかれ。ハッキリ言ってクセが強すぎてほとんどの日本人には運転しづらいです。

最近のスズキはこの方式の採用を少しずつ増やしていますが、日本では従来通りのトルコン式か、高性能かつ乗りやすいデュアルクラッチ式じゃないと受け入れられないと思います。

まとめ

ソリオにいよいよハイブリッド追加か!と思いましたが、フタを開けてみるとちょっとマシになっただけでしたね。しかも例によってガソリン代では元は取れない。これならエセハイブリッドの方がまだマシですし、そもそもガソリン車を選んだ方がずっとマシです。

でもソリオのガソリン車はオプションでも付けられない装備が多すぎ。こうなるとトヨタのルーミー/タンクに流れる人も多いんじゃないでしょうか。ルーミー/タンクにはハイブリッドはありませんが、ガソリン車の選択の幅が広く、上位グレードにはダウンサイジングターボもあります。

ソリオハイブリッドの試乗レビューはこちら↓

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