マツダが作る世界初の新エンジン「SKYACTIV-X」は何がスゴいの?HCCIとは?
2017/08/09
マツダがHCCI技術を採用した新型エンジン「SKYACTIV-X」の投入を発表しました。
どんな新技術を使っていて、何が画期的なのかをご紹介します。
目次
マツダの新エンジン「SKYACTIV-X」
マツダが新型エンジンの実用化に成功したことを正式発表しました。その名もSKYACTIV-X。以前から開発中だと紹介されてきましたが、市場投入時期は以前の情報よりやや遅れたのか2019年から導入だと発表されました。
SKYACTIV-Xは「第二世代スカイアクティブ」の目玉
新型エンジンの名前は「SKYACTIV-X」(スカイアクティブ-X)です。マツダは2010年以降、新技術群を「スカイアクティブ・テクノロジー」と銘打って一貫開発しています。
現在販売されているマツダ車に搭載されているのは、ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G」と、ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D」があります。
スカイアクティブは、2012年発売の初代CX-5以降のすべての新型マツダ車(OEM除く)に全面採用されてきました。CX-5、アテンザ、アクセラ、デミオ、ロードスター、CX-3、CX-9、CX-4と続き、2016年末に2代目CX-5が発表されたことで一巡しました。
スカイアクティブ・テクノロジーがマツダ車全体に採用されるに至り、市場の評価も良好。スカイアクティブはいよいよ第二世代に移行していくこととなります。
そして新型エンジン「SKYACTIV-X」と、その裏にある新技術「HCCI」が第二世代スカイアクティブの目玉となります。
新技術「HCCI」
「SKYACTIV-X」は単にマツダの新しいエンジンというわけではありません。世界初の超画期的な新技術を採用したエンジンです。
「マツダの新型エンジン」と聞いてロータリーエンジンを思い起こした方も多いと思いますが、SKYACTIV-Xの「世界初」は違う方向性です。外観は普通のレシプロエンジンと同じで、ピストンが往復して回転運動を取り出すのも同じ。燃料も普通のガソリンです。では何がスゴいのか。ガソリンの燃え方が今までと全く違います。HCCIの仕組みやメリットはこちらで詳しく解説しています↓
要約すれば、従来のエンジンはプラグでガソリンに点火するのに対して、HCCIではガソリンが自己着火するよう綿密に制御する。燃費向上と排ガス浄化がメリットだが、制御が超絶難しい。という技術です。
なにも開発していたのはマツダだけではありませんが、市販車に投入できるレベルで実用化した(正式発表している以上、市販車投入可能なレベルにこぎ着けたのでしょう)のはマツダだけです。技術内容はともかく、マツダだけが実用化できたのはロータリーエンジンと同じですね! ちなみにHCCIはロータリーエンジンにも適用可能な技術ですが、先行きは明るくありません(後述)。
燃費向上は20~30%
燃費向上は最大で20~30%だそうです。車重や排気量などの条件は様々なので一概に言えるものではありませんが、HCCIエンジンでの燃費のイメージはこんな感じです。
※ いずれもFF・AT車。
参考までにハイブリッドコンパクト3車種の燃費は、トヨタ・アクアが 37.0 km/L (2.7 L/100km)、フィットハイブリッドが 33.6 km/L (3.0 L/100km)、ノートe-POWERが 34.0 km/L (2.9 L/100km)です(いずれも燃費特化グレードを除く)。HCCIは非ハイブリッドでこの燃費ですからかなりスゴいことなんですよコレ。当然HCCIにはハイブリッド車のデメリットがありません。
市場投入時期 と 採用車種
マツダの発表によれば、市場への投入は2019年とのことです。第二世代スカイアクティブを牽引する新型エンジンにして、世界初の実用化でもある超重要なエンジンですから、いずれかのモデルのフルモデルチェンジで投入されることはほぼ確実です。
主力車種で見てみると、現行アテンザの発売が2012年~、アクセラは2013年~、デミオが2014年~、CX-5が2016年~です。マツダの実用車は4~6年のモデルサイクルであること、現行車種群の評価が良好なことを考慮すると、次期アクセラでの投入が最も有力だと思います。アクセラは世界販売台数も多い(特にヨーロッパでよく売れている)ので、日本だけでなく世界に向けてマツダの技術力をアピールするにはうってつけです。
まとめ
なかなか正式発表されてこなかったので開発が難航しているのではないかと心配しましたが、いよいよ実用化の目処が立ったのでしょうね。自動車向け内燃機関の究極形とも言える技術なので、マツダと新エンジンの今後が非常に楽しみです。
ちなみにもう一つの「マツダの世界初」、ロータリーエンジンの未来はあまり明るいものではありません。今回のマツダの発表は2030年を見据えた長期ビジョンを兼ねていましたが、ロータリーエンジンについては残念ながら触れられていません。今年はロータリーエンジン誕生50周年という節目の年ではありますが、長期ビジョンにすら出されない所を見ると、(自動車メーカーとしては)小さなメーカーが多額の投資をして開発を続けられるようなエンジンではないのでしょうね。