ケータハムセブン160試乗レビュー!軽のエンジンを積んだスーパーセブンの走りはいかに

     2017/03/06

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念願だったスーパーセブンに試乗してきました。スズキの軽自動車のエンジンを搭載して軽自動車登録できるようになった「セブン160」です。

わずか490kgのスポーツカーはどんな走りを見せてくれるのでしょうか?

ケータハム・セブン160

セブン160は、軽自動車規格に合わせて作られたスーパーセブンです。(「スーパーセブン」の名には色んな事情がありますが、ここでは取り上げません)

スーパーセブンは車体が小さいにも関わらず、排気量や車幅(ギリギリ軽自動車枠から外れる)のせいで軽自動車規格には入りませんでした。普通車なら税金も車検も高い、つまり維持費が多くかかります。スーパーセブンは実用性皆無なので確実にセカンドカー(あるいはサードカー)にしかならず、維持費の高さは所有する障壁を上げてしまいます。

そこでスズキ製の660ccターボエンジンを搭載し、タイヤとフェンダーを狭くして軽自動車枠に収めたのがセブン160です。似たような発想で作られたクルマでは、スマートK(スマートフォーツーの軽自動車版)があります。

エンジンはスポーツカーとしては非力な80馬力しかありませんが、セブン160の車重はわずか490kg。重さならあのエリーゼのおよそ半分! この軽さなら軽のエンジンでも十二分に面白いというワケ。

エクステリア

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普通の車とはまったくもって違います。こんな車を見た後では、マツダ・ロードスターだろうが、ホンダ・S660だろうが、なんならロータス・エリーゼですら実用車に見えてしまいます。サーキット専用車のような風貌なのに公道も走れるんだから日本の道交法も捨てたもんじゃありません。

思えばスポーツカーの定義ってものすごく曖昧でよく議論の対象になっていますが、セブンなら誰が見ても文句なくスポーツカーでしょう。「いやいや、これじゃカートだろ」って? 返す言葉もございません。

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まずドアがありません。公道を走る車でドアが無いのに乗るのは初めてです。まさに「走るためだけに存在する車」。四輪自動車として必要のないものは本当に何もありません。

ここまで潔いと「スポーツカー」なんて安易なくくり方はできなさそうですね。「車だけど車でない何か」とか「バイクのタイヤを4つにした何か」とかそういう種類の乗り物です。もちろん褒めてますよ?

インテリア

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まずどこまでが外装でどこからが内装なんだって感じもしますが、一応内装らしい部分もあるので見てみましょう。

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インテリアパネルはかなりシンプルです。平らな板に必要なメーターとスイッチ(すべて汎用品)を順に並べただけです。デザイン性を語るまでもない無骨さです。デザインなんて走るために必要ありませんからね。

メーターは残念ながら見やすいとは言い難いです。これも「シンプル」「クラシカル」だと言えば聞こえは良いですが、場所もメーターの刻みも視認性が良いとは言いがたいです。頻繁に見る速度計&タコメーターですら、小さなステアリングの隙間から小さなメーターの小さな針の動きを見なければいけません。

しかも針の動きも結構プルプルしていて(不安になるかはともかく)読みづらさを増幅させています。たぶん実際の回転数・速度に忠実なんでしょう。補正なんて入っているはずもありませんから。

スイッチ類にユーザービリティなんてものは微塵もなく、「あればいいんでしょ」というレベルです。特にウインカーは悲惨です(後述)。

走り出すまでが大変!

まず乗り込むのが大変です。下手にボディパネルに手を掛けると凹んでしまうそうで、乗り方の指導を受けながら慎重に乗り込みました。

シートは一応前後可動式ですが、少し前に出したらシートがセンターコンソールに当たってしまいました。調整範囲はかなり狭いです。私の足短いってことか!?

足元はかなり狭いです。足が太い人は入らないかもしれません(誇張でも何でも無く)。アクセル・ブレーキ・クラッチの3つのペダルが狭い足元を占領しています。ペダルの両側に余裕なんてありません。足を伸ばしたらどれかのペダルを踏んでしまうので、気軽に足を伸ばすことすらできません。

ステアリングにチルトもテレスコピックもあるはずないので、座ったその場所がドライビングポジション。座高によっては座布団のようなものを敷いた方がいいかもしれません。

ウインカーすら初見じゃ分からない操作体系を一通り聞き、やっと出発です。

走り

まず乗った時から感じた足元の狭さを強烈に感じます。ブレーキペダルを踏むだけでアクセルも踏みそうになります。つまり減速・停止ですら片時も気が抜けない。「ヒールアンドトウ」(ブレーキを右足つま先で踏みながらアクセルをかかとで煽る)をしようにもペダルが近すぎてできません。トーアンドトー(どっちもつま先で踏む)になってしまいます。

クラッチは軽くて深いです。トランスミッションはスズキ製をそのままつかっているらしいので、あまり重くないのでしょう。一方シフトノブは超絶クイックです。ストロークがほんの少ししかない重いレバーをガコッと操作するので、どこに入ってるのかすらよく分かりません。このあたりはロータス・エリーゼのシフトとは真逆です。

ステアリングは小さいですが車体が軽いのであまり問題ありません。私には場所もちょうど良かったので運転しやすかったです。

軽さ・パワー感

走りは確かに軽いです。間違いなく軽い。でも車基準じゃなくカート基準で見てしまうのか、意外にも「うわこのクルマはえー!」とはなりません。「このボディならこういう加速をしてくれるよね」と冷静に考えてしまいます。ここは660ccではない普通のセブンなら違うのでしょうね。

発進は楽々です。クラッチの感触も分かりやすく車体が軽いのですんなり走り出します。

トランスミッションは結構ローギアードで、すぐに回転数が上がってしまいます。5,000rpmくらいまではあっという間に上がってしまいました。

ターボは4,000rpm辺りからかかります。ターボが効き出すと結構ググっと加速感が得られます。軽いとはいっても所詮わずか660ccなので、ターボが無ければ加速の刺激感に欠けたことでしょうね。

加速性能自体は、エリーゼ(非スーパーチャージャー)程度。でも小排気量・超軽量・超低車高なので、走行感覚はまったく別物です。

走行感覚

まずとにかく地面が近い。ドアも無いのでその気になれば地面が触れてしまうほど。この低さとオープンエアが体感速度を上げてくれます。メーターの読みにくさも相まって、今何キロ出てるのかまるで掴めません。実際の速度は大したことなくてもかなり速く感じます。

オープンカーの構造をしていますが、当然「オープンカーとしては快適に走れるように設計した車」ではありません。日常の40~50キロ程度でも後方からの風の巻き込みが猛烈です。オープンカーとは何たるかを突き詰めたマツダ・ロードスターとは全く異なります。

マツダ・ロードスターが「屋根を開けた時の爽快感・快適さを追及した車」だとしたら、セブンは「ただ屋根を付けなかった車」です。別に快適だからとかそんな理由じゃありません。重い屋根は走るのに不要。ただそれだけのこと。

足回り

普通の車と色んな要素が違いすぎてうまく評価できなかったのが正直なところです。硬いながらもコーナリングでちゃんと粘ってくれるなぁとは思いましたが、足回りの性能が車両性能に見合っているかは公道で軽く走っただけでは判断しづらいです。

やはりこの車はサーキットに持ち込まないと力を発揮できませんね。

実用性

一応セブンの実用性も見ておきましょう。

走りの装備

セブンに快適装備が無いのは仕方ありませんが、普通に走るための装備すら欠けています。

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まずウインカー。セブンにはハンドル横のレバーがありませんから、インパネのスイッチで操作します。ただの[ON-OFF-ON]スイッチ。しかも勝手には戻りません。角を曲がったらスイッチを中央に戻さないとずっと点滅し続けます。

次にブレーキブースターがありません。車体が軽いから無くてもちゃんと止まれますが、それなりに踏力が必要です。いつもの車の感覚では止まれません。

当然パワステも無し。でも軽いので(以下略)

快適さ

運転していて意外に良かったのが、センタートンネルのクッションです。感触が良くて、良い感じにアームレストになってくれました。

二人乗ると窮屈

車体が超絶狭いのにちゃんと二人乗りです。でも成人男性が二人乗るには狭いです。助手席で普通に腕を下ろしたら運転手の左手(シフト操作)に当たってしまいます。助手席の人も運転を邪魔しないように気を遣わないといけません。そもそもなんで男同士でこんな密着しなきゃいけないんだみたいな感覚に陥ります。じゃあ女性ならいいかって? こんな非快適な車に乗ってくれる人が一体何人いるんだろうか。

エアコン無いけどヒーターは装着可能

屋根が簡易式なのでエアコンなんてあるはずがありません。でもオプションでヒーターは装着可能です。オープンカーにとっては日射しの強い夏よりも冬の方が乗りやすいので、ヒーターの装備はありがたいです。

総じて公道を走るのがメインではないんでしょうね。「公道を走れるのはサーキットに移動するため」くらいに思った方がいいのかもしれません。

スペック

ケータハム・セブンのスペック一覧です。

SEVEN 160 SEVEN 270 SEVEN 480S SEVEN 620R
軽自動車
全長 3,100 mm 3,100 mm
全幅 1,470 mm 1,575 mm
全高 1,090 mm 1,115 mm
ホイールベース 2,225 mm
車両重量 490 kg 540 kg 525 kg 545 kg
エンジン形式 スズキ製3気筒 フォード製 シグマ1.6 フォード製 デュラテック2.0 フォード製 デュラテック2.0
排気量 660cc 自然吸気 1.6L 自然吸気 2.0L 自然吸気 2.0L スーパーチャージャー
最高出力 80ps / 7,000rpm 135ps / 6,800rpm 240ps / 8,500rpm 310ps / 7,700rpm
最大トルク 10.9kgm / 3,400rpm 16.8kgm / 4,100rpm 21.0kgm / 6,300rpm 22.3kgm / 7,350rpm
最高速 160 km/h 195 km/h 225 km/h 249 km/h
0-100km加速 6.9 秒 5.0 秒 3.4 秒 2.8 秒
トランスミッション 5速MT 5速MT 6速MT 6速シーケンシャル
フロントサス ダブルウィッシュボーン ダブルウィッシュボーン ダブルウィッシュボーン ダブルウィッシュボーン
リアサス マルチリンク Aフレーム Aフレーム Aフレーム
フロントブレーキ ディスク ディスク ディスク ベンチレーテッドディスク(4ポッド)
リアブレーキ ドラム ディスク ディスク ディスク
価格 400 万円~ 497 万円~ 767 万円~ 896 万円~

480Sや620Rのスペックはかなりぶっ飛んでいますが、価格も価格でぶっ飛んでますね。エリーゼSが220ps/950kgで670万円、エキシージSが350ps/1,180kgで880万円、どちらも(快適ではないけど)現実的に二人乗って移動できる。金持ちの道楽としてもさすがに高すぎますね。

セブン160は400万円~。アバルト124スパイダーとほぼ同額です。100万円足して1.6Lになるなら、維持費の高さを含めてもセブン270にした方が良いように思います。

中身は軽自動車、車体や装備は最小限って思うと、買う側からすればセブン160で200万円くらいが妥当だと思います。もちろん数売れないから高くなっているわけですが、「クルマの価値」としてはそれくらいということです。

まとめ

エリーゼが思っていたほどの強烈な走りではなかったので、いっそセブンならと思いましたが、少なくともセブン160ではそこまで刺激的ではありませんでした。もちろんそこそこのスポーツカーに比べたら強烈なインパクトがありますが、ぶっ飛んだ車かと言われるとそうでも無いといった感じです。いくら軽くてもやはり660ccでは限界があるようです。

走行感覚には新鮮な面白みがありましたが、それを体験するために400万円は高すぎます。維持費を抑えたサーキット専用車として見ればアリなのかもしれませんが、コレを買えるならエリーゼにした方が色んな点で良さそうです。

こうして見るとスーパーセブンに乗る人ってとんでもなく奇特なんだなぁと思わせられます。

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