アルファロメオ・ジュリエッタから1.4Lターボが消滅!何を意味する?
アルファロメオのCセグメントハッチバック「ジュリエッタ」から、1.4Lターボエンジンの設定がなくなりました。今後は上位の1.75Lターボエンジンのみとなります。
目次
アルファロメオ・ジュリエッタとは
アルファロメオ・ジュリエッタは、2012年に発売されたCセグメントハッチバックです。Cセグメントは広さと快適さと価格のバランスが良く、フォルクスワーゲン・ゴルフ や マツダ・アクセラ などが属する世界的大激戦区です。日本では発売からもうすぐ7年、本国イタリアでは2010年発売なのでもうすぐ9年になります。
アルファロメオ車の世代としては、147/159/ブレラ の次の世代で、Bセグメント「MiTo」とほぼ同時期(MiTo → ジュリエッタ の順)です。後述する4C/ジュリア/ステルヴィオよりは前の世代となります。
以前のアルファロメオにあったような走りの過激さというか「じゃじゃ馬感」は落ち着いてしまった一方、イタリア車に付き物だった故障のリスクが随分と抑えられて、良くも悪くも
搭載できるエンジン
ジュリエッタに搭載可能なエンジンは、4種類(性能的には6種類)と結構多彩にあります。ガソリンエンジンが1.4Lターボ と 1.75Lターボ。ディーゼルエンジンが1.6L と 2.0L。1.4Lガソリンターボ と 2.0Lディーゼル は性能がそれぞれ2種に分かれています。
このうち、日本に正規輸入されたのは、1.4Lターボの高性能仕様(マルチエア)と、1.75Lターボ の2つです。
エンジンによる違い
欧州Cセグメントに搭載するエンジンは、ほぼすべて「ダウンサイジングターボまたはディーゼルエンジン」という構成です。欧州では原油価格や政府戦略(税金)の影響で半数以上ディーゼルエンジンのようですが、日本向けはガソリンターボの方が主流です。
このクラスに搭載するターボエンジンの排気量は1.2L~1.6L程度が一般的。ジュリエッタに搭載されている「マルチエア」と呼ばれる1.4Lターボエンジン(170ps / 23.5kgm)は、排気量で見れば「普通」、スペックで見れば「やや高性能」といったクラスです。今回の変更で日本向けにこの「普通クラス」のエンジンが外されました。
一方1.75Lターボエンジンは、Cセグメント車向けには高性能なクラスです。最高出力は240馬力、トルクは30.6kgmというスペックで、1.75Lターボでありながら標準的な2.0Lターボと同等以上の性能です。1.75Lターボを搭載するジュリエッタの試乗レビューはこちら↓
グレード構成の変化
ジュリエッタが正規輸入されるようになった当初は、1.4Lターボがメインで、1.75Lターボは高性能グレードという扱いでした。2017年2月にマイナーチェンジを受けるまでは、1.75Lモデルはアルファロメオの高性能モデルを示す「クアドリフォリオ・ヴェルデ」(略称QV)の名を冠していました。
日本向けには1.4LはDCT(限定でMT設定されたことあり)、1.75LがMTと分けられていましたし、価格面でも1.4Lは「BMW・1シリーズ」や「ルノー・メガーヌ」などの競合と十分戦える300万円台前半でしたが、1.75Lは400万円前後だったため、実際ディーラーで聞いてみても1.4Lの方が売れていたようです。
つまり、ジュリエッタの本流は1.4Lで、1.75Lは高性能・高価格な特別グレードという扱いになっていました。
マイナーチェンジでの3つの変化
それが変化したのが2017年2月のマイナーチェンジです。マイナーチェンジの詳細は以下の記事にまとめています↓
ここで3つの変化がありました。
一つ目はMTの消滅です。1.75LモデルもDCTのみとなり、ジュリエッタ全体(もっと言えばアルファロメオ全体)で、トランスミッションはDCTに統一されました。MT好きにとっては残念ではあるものの、日本人の多くがATに乗っている現状においては「MTを理由に1.75Lを諦める必要がなくなった」とも言えます。
二つ目はグレード名の変更です。歴史あるアルファロメオの高性能グレード「クアドリフォリオ・ヴェルデ」の名は、より格上のモデルに付けられるようになり、ジュリエッタの1.75Lは新たに「ヴェローチェ」という普通のグレード名に変わりました。現在「クアドリフォリオ・ヴェルデ」を冠しているのは、Dセグメントセダン「ジュリア」と中型SUV「ステルヴィオ」の最上位グレードで、いずれも3Lツインターボ・510馬力・1000万円超えという頭のおかしい超高性能なモデルに付けられるようになりました。
三つ目はスタート価格の上昇です。以前の最下位グレード「スプリント」(318万円)が廃止され、中級グレード「スポルティーバ」(370万円)が「スーパー」(377万円)になりました。結果的にスタート価格は50万円以上アップしたことになります。
これらはジュリエッタを1.75Lのみにするための「準備」だったとも取れます。この準備から2年を経て、ついに1.4Lを消滅させることになった、ということでしょう。
1.4Lターボ消滅の狙い
最近のアルファロメオの変化の流れは明確です。それは「ブランドの高級化」です。
アルファロメオの属するFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)において、「アルファロメオ」をより高級・高性能ブランドになるよう、ブランド力を向上させる戦略が2015年頃より決まっています。そのために開発されたのが、軽量高性能スポーツカー「4C」、スポーツセダン「ジュリア」、スポーツSUV「ステルヴィオ」の3車種です。いずれも属するセグメントにおいては高性能・高価格な構成になっていますし、前述したように超高性能グレードの「QV」までラインナップしています。
ミト と ジュリエッタ の行方
既に販売中の「MiTo」「ジュリエッタ」の2車種は、この路線からするとやや庶民的です。それぞれ、「MINI」などと競合するプレミアムBセグメント、「BMW・1シリーズ」などと競合するプレミアムCセグメントの車は、現在のアルファロメオの路線より控えめです。かといって、(開発費回収等の観点から)まだ十分売れる力のある車種を簡単に終了させるわけにもいきません。したがって、価格やグレード構成を高級側に振りつつ、徐々に終焉させるという方針なのでしょう。すでに「MiTo」は日本向けの販売を終了していますし、「ジュリエッタ」も先に1.4Lの方から終了させて、時期を見て1.75Lも終了させることでしょう。
ちなみに本国イタリアでは、ジュリエッタの1.4Lモデルも、MiToも販売を続けています。輸出向けモデル、特に右ハンドルの日本が先に変更されたということでしょうね。
ディーラー販売網
併せて行われているのがアルファロメオディーラー網の縮小です。「アルファロメオ」というブランドが高級路線になっていくと、1台当たりの単価が上がり、販売台数が減ります。すると現状の販売ディーラー数を維持するのは割に合わなくなりますから、ディーラー数を減らすということになります。
すでにアルファロメオのディーラー数は(正確に数えてはいませんが)明らかに減少しています。アルファロメオを販売していたディーラーは、「フィアット」「アバルト」のみの扱いに縮小したり、「ルノー」や「MINI」などの他のブランドに鞍替えしたりしています。
※ 輸入車ディーラーは大半がフランチャイズなので、元々複数ブランドを扱う会社が経営していることがほとんどです。
これも、アルファロメオ高級ブランド化の国内における影響の一つと言えるでしょう。
まとめ
以前から言われてきたアルファロメオの高級ブランド化が、いよいよ顕著に現れてきましたね。どんどんアルファロメオが普通の人には手の届かないブランドになっていくことでしょう。