トヨタ86/スバルBRZ試乗レビュー!MC後のデザイン&パッケージングの完成度は?

     2017/03/18

トヨタ・86とスバル・BRZに試乗してきました。今や珍しくなってしまった国産スポーツカーの中で、性能・価格・実用性が最もバランスが取れている86/BRZ。典型的FRスポーツクーペの走りはどうなのでしょうか? ロードスターとどっちがいいのでしょうか?

86・BRZは共に2016年8月にマイナーチェンジを受けました。まずは車種・マイナーチェンジ概要と、デザイン&パッケージングを見ていきましょう!

トヨタ・86 / スバル・BRZってどんな車?

FRスポーツカー「トヨタ・86」と「スバル・BRZ」。トヨタが企画し、スバルとトヨタで共同開発、スバルが生産し、トヨタとスバルの両方から販売されている国産スポーツカーです。

2ドアクーペで2+2(後席が狭い4人乗り)というパッケージングは、90年代にはたくさんありました。トヨタ・スープラ、日産・シルビア、マツダ・RX-7などなど。でもみんな廃版になってしまいました。特に排出ガス規制が強化された2002年は多くの国産スポーツカーが姿を消しました。

2002年に消えたスポーツカー。左下のNSX以外は4人乗り。

そんな2ドア4人乗りクーペというジャンルに再び登場したのが86/BRZです。

トヨタ車? スバル車?

トヨタとスバルの関係は単純なOEMでは無いので、トヨタ車なのかスバル車なのかは議論が分かれるところです。水平対向エンジンを搭載してスバル工場で生産されるという点ではスバル車とも考えられますが、そもそも企画したのがトヨタで、コンセプトカー(FT-86)もトヨタから登場していたという点ではトヨタ車だと言えるでしょう。共同開発ということになっていますが、開発車のコメントなどから考えると開発の中心はトヨタ側だったように見受けられます。

実際の販売はネームバリューと販売網の差から圧倒的に「トヨタ・86」の方が売れています。見た目がソックリなので分かりにくいですが、街中でも販売台数の通り、8:2くらいで86の方をよく見かけます。

ビッグマイナーチェンジ

86/BRZ共に、2016年8月にビッグマイナーチェンジを受けました。バンパー形状が変更になったことで外観でも違いが分かる変更となっています。

前期型はオーナー以外には86なのかBRZなのか分かりにくいほどの差しかありませんでしたが、後期型では86のバンパー下部が特異な形状になったので86とBRZが見分けやすくなりました。BRZは前期と後期であまり変わりませんでしたね。

マイナーチェンジでは外観の他に、エンジン、ボディ強化、ファイナルギアレシオ変更、マルチインフォメーションディスプレイの追加など様々な変更が加えられました。

エクステリアデザイン

まずは86/BRZに共通する部分からデザインを見てみましょう。

ボディライン

ボディ形状は典型的な2ドアクーペです。まともなリアシートのある4シーターでありながら誰が見てもスポーツカーだと分かるデザインなのは素晴らしいですね。どんな車でもそうですが、特にスポーツカーは外から見ても所有している嬉しさを感じられることが重要です。

必要十分に長くとられたボンネットはFRスポーツカーの象徴のようなもの。なだらかに下がるルーフライン後方は伸びやかで美しいです。

86エンブレム

ステアリングやらカタログやらに描かれるこの「86」エンブレム、カッコ良いと思う人いるんでしょうかね? Googleで「86エンブレム」って入れるとネガティブな検索候補が出てきます。

これが現実、という感じでしょうか。

フロントフェンダー後方には86のエンブレムが鎮座していますが、マイナーチェンジで随分小さくなりました。マイナーチェンジ前は両側にピストンが描かれてボクサーエンジンを表現したやたらデカいエンブレムでしたからね。微妙なデザインのエンブレムが小さくなったことは良いのですが、丸くなって場所も変えたせいでロードスターのフロントサイドマーカーに見えてしまいます。

先代ロードスター(3代目)

初代~3代目のロードスターはフロントサイドマーカーが丸型でした。現行4代目では形状が変更されましたが、同じ国産スポーツカーで似たデザインがあるのは気になってしまいます。86のエンブレム位置をパクリだとは思いませんが、なんであの位置&大きさにしてしまったのかなぁと思います。

フロント

トヨタ・86

マイナーチェンジで変更されたバンパー下部の波打った形状は好みが分かれる所でしょうが、フロントデザインは300万円クラスのスポーツカーとしてちょうどいいと思います。

ただ、特別カッコ良かったり、格別に美しかったり、デザインだけで所有したいと思えたりするかというと、そうでもありません。低価格スポーツカーとしてはどうしても野暮ったさを感じてしまいます。200万円クラスならそれでも全然いいんですが、スタート価格はロードスターよりも高い262万円。もうちょっと美しさがあればなぁなんて思ってしまいます。でも「じゃあ何なら美しいんだ」と言われても良い候補が無いのが悲しいところですね。

スバル・BRZ

86と比べるとBRZはオーソドックスなカッコ良さですね。青色だとRX-8にも似て見えます。グリル形状のせいでしょうかね。

マツダ・RX-8

私はすっきりしているBRZの方が好きですね。86にしろBRZにしろ、特にエアロパーツなどを付けなくてもスポーツカーらしいデザインとして完成されているのが良いと思います。

リア

マイナーチェンジ前からどうしても受け入れられないのがリアのデザインです。ボディ形状は良いんですが、テールランプやナンバープレート周りが好きになれません。

ナンバープレート周りが口ひげっぽく見えてしまうんですよね。アクセラも同じようなデザインです。

マツダ・アクセラスポーツ

テールランプは前期型だと困った目のようなデザインよりは随分良くなりましたね。

リアは86とBRZで違いはないようです。ロードスターと124スパイダーほどの差をつけろとは言いませんが、ちょっとぐらいデザインに違いを付けてもよかったのではと思います。

リアのデザインに締まりがないからか、公式サイトやカタログなどプロモーション画像ではリアスポイラーが付いていることも多いです。

リアスポイラーは上位グレード(86:GT Limited,BRZ:GT)にのみ標準装備です。純正スポイラーならもっとボディラインに沿う形状にしてくれればいいのになぁとは思います。ちょっと直線過ぎますね。

意外と全高は低くない

スポーツカーらしく車高が低く見えますが、全高1,320mmは過去のスポーツカーと比べるとやや高めです。

NSX 1,160mm、RX-7(FD) 1,230mm、スープラ(A80) 1,275mm、シルビア(S15) 1,285mm、S2000 1,285mm、セリカ(T230) 1,305mm と90年代スポーツカーはだいたい1,300mm以下でした。現代のスポーツカーだと、現行ロードスター 1,235mm、現行フェアレディZ 1,315mm。CR-Zみたいなエセスポーツカーを除けば、86/BRZは国産スポーツカーで最も全高が高いようですね。

時代と共に全高が上がってしまったのはある程度仕方ないことだと思います。衝突時の歩行者保護のためにボンネット高を高く(性格にはエンジンとボンネットの隙間を広く)しなければなりません。ボンネットが高くなればルーフも高くしないとデザインバランスや4人乗車できる車内空間が確保できません。現代で全高の低い(しかも安価な)スポーツカーを作ろうとすれば、それこそロータリーエンジンでも使わなければ難しいでしょうね。

全高の高いスポーツカーを探してみると、大人4人がちゃんと乗れるRX-8が1,340mm。アウディ・TTは1,380mm。全高が高くてもちゃんとスポーツカーらしいデザインにできるものなのですね。ちなみにスポーツカーのベンチマーク、ポルシェの場合はケイマン(ボクスターのクーペ版)も911も1,295mm程度です。

インテリアデザイン

内装はスポーツカーらしく無骨でカッコ良いと思います。ただ若干の古くささも感じました。カッコ良いんですが、やぼったさもあって洗練されている感じは受けません。シンプルで美しいカッコ良さではなく、メカメカしくガッチリしたカッコ良さです。

フロントシート

シートは表皮やステッチカラーが86とBRZで異なります。どれも基本色は黒ですが、選択肢が微妙に異なります。

86 BRZ
[上位グレード]
86:GT Limited
BRZ:GT
表皮 本革/アルカンターラ 本革/アルカンターラ
カラー 3色
白ステッチ
赤ライン+赤ステッチ
タン色ライン+タン色ステッチ
赤ステッチ
[中位グレード]
86:GT
BRZ:S
表皮 上級ファブリック ファブリック/トリコット
カラー 2色
白ステッチ
赤ライン+赤ステッチ
赤ステッチ
[下位グレード]
86:G
BRZ:R
表皮 ファブリック トリコット
カラー 全面黒 全面黒

86の中位グレード以上では、シートの一部がライン状に別色になっているものを選べます。

86のシート(赤ライン+赤ステッチ)

一方BRZは、ステッチ(縫い目)色がグレードで異なるだけで、シート色はどれも黒のみ。シート色は内装の雰囲気を変えるので、BRZにも似たような選択肢を用意してくれても良かったのになぁと思います。

タン色(濃いベージュ)が86の上位グレードにしかないのは、この色を選ぶのはほぼ中高年層に限られるからでしょう。中高年層なら多少高くても指名買いでしょうから、スタート価格の高いグレードのみに設定したのだと思います。

リアシート

86/BRZは2+2。やや小さなリアシートのある4シーターです。

ボディ形状からすればリアシートに期待はできないだろうと思いましたが、意外にもまともに座れるシートです。快適とは言いがたいものの、身長165cmの私では頭が当たらずに座れました(髪は当たりました)。さすがに長距離乗りたくはありませんが、1時間程度なら問題なく乗れそうかなぁと思いました。車格が高くない完全なクーペ型の車としては、十分なリアシートだと思います。

ただしリアシートの頭上はリアガラスなので、真夏などは日射しがつらいと思います。真夏でもオープンでロードスターに乗っていたので、直射日光の下で運転する厳しさはよく分かります。よくリアシートに人を乗せるなら、リアガラスにサンシェードを取り付けた方が良いと思います。後方視界とは引き替えになりますが。

ISOFIXチャイルドシート装着可能

リアシートはチャイルドシートをシートベルトを使わずに固定する「ISOFIX」と呼ばれる規格に対応していて、特段背が高くなければチャイルドシート装着可能です。実際にISOFIXのチャイルドシート(マキシコシ 2Way Fix+マキシコシ 2Way Pearl,1~4歳用)を助手席後ろに取り付けてみたところ、助手席のスライドを一番前にすれば問題なく取り付けられ、助手席のリクライニングも常識的な角度にできました。

日射しの問題を除けば、子供がいる家庭でも86/BRZが選べるということです。ロードスターのような完全二人乗りスポーツカーの場合、家族でのお出かけでは「ロードスターを置いていくか2台で行くか」の選択になりますが、86/BRZでは家族4人まではお出かけできるということです。子供ならリアシートの狭さも特段問題にはならないでしょうから、乗り心地さえ我慢できれば良い選択肢になるでしょう。

今の時代「4人乗りでカッコ良いスポーツカー」って他にほとんどありません。スポーティーカーならアバルト・595とかもありますが、純粋なスポーツカーが欲しい家族持ちには86/BRZはオススメです。

インパネ

ゴツゴツと無骨なスタイリングは、スバル車に通じるところがあります。

スバル・インプレッサ

細かく見てみると、上質とは言えませんがなかなか凝った造形になっています。

この価格のスポーツカーとしては良好な質感・操作感です。上質ではありませんが、スポーツカーに求める質感レベルは十分に上回っています。

シフトノブは純正としては超クイックでカッチリしていますが、デザイン的にはシフトノブが長く出過ぎに思います。スポーツカーの操作系はデザインよりも機能(動かしやすさや重さ、ストロークなど)で決められているでしょうから形を変えることは難しいでしょうが、ブーツ形状や周辺のデザインでもう少し短く見せられたのかな、とは思いますね。

握る部分のすぐ下には、リバースギアに入れるときに引き上げるリングが付いています。シフトノブのデザインという点では、コレは無い方がいいなぁと思います。

マツダ・ロードスター

ロードスターなんかはノブ自体を押し込んでリバースギアに入れるタイプなので、余分なリングが無いんですよね。86用のトランスミッションがどれくらい専用設計なのかは分かりませんが、できれば引き上げリングが無い方がデザイン的には綺麗でしたね。

メーター

マイナーチェンジでメーター内にマルチインフォメーションディスプレイが装備(中位グレード以上)されました。

それに伴ってタコメーターは垂直ゼロ指針になりました。スポーツカーの定番ですね。スピードメーターは相変わらずマイナスオフセットが大きく、常用域が読み取りづらいです。デジタル速度計もあるので、市街地ではデジタル、高速ではアナログと使い分けた方がいいかもしれません。

マルチインフォメーションディスプレイには、水温や油温、電圧を表示したり、車にかかるGを表示したりできます。ただ四角いディスプレイをそのまま設置しているので、ちょっと美しくはありませんね。「スポーツカーだから仕方ないか」と諦めるべきところかもしれません。

まとめ

色々書いてきましたが、基本的にはミドルクラスFRスポーツカーとして完璧なパッケージングだと思います。大人が乗れる後席がある4シーター、普段使いでも困らない十分な容量のトランクという実用性がありながら、低く構えたシルエットや長いボンネット、美しいルーフラインなどはスポーツカーとして十分に「所有したい」と思わせてくれます。

国内で直接対抗するのはもちろんライトウェイトオープンスポーツの世界的名車、マツダ・ロードスターでしょう。全体のデザインは2シーターのロードスターが若干勝っているような感じもしますが、内外装共にほとんど好みのレベルでどちらも高い完成度だと思います。ロードスターも86/BRZのどちらももっとショボくていいから若者でも買えるくらい安くしてくれと言うほどに金掛けすぎ感はありますが、価格を上げてでも品質を上げて金のある層(≒中高年)に売らなければ商売が成り立たないので仕方ないでしょう。

総じて多少の不満は出るかもしれませんが、250万円クラスのスポーツカーとして十分なデザイン&パッケージングだと言えます。

次回はいよいよ走りのレビューに参ります。86とBRZの違いも検証しました↓

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