RX-VISIONのボンネットが低いのはなぜ?ロータリーエンジンの価値とは

     2015/11/02

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マツダがコンセプトカー「RX-VISION」を発表しました。美しく、そしてカッコ良いですね!

カッコ良さの要素の一つとして、最近の車としてはボンネットがかなり低いことが挙げられるでしょう。最近の車が低くなくなってしまったワケと、RX-VISIONがこんなにも低くなったヒミツを紐解いてみましょう。

RX-VISIONについてはこちら↓

歩行者頭部保護基準

ボンネットが高くなった最大の理由は、2004年に「歩行者頭部保護基準」というものが導入されたからです。

これは、自動車と衝突した歩行者がボンネットに頭を打ち付けて死亡するリスクを減らすために、ボンネットから受ける衝撃に基準を設定して、基準を満たさない車を販売できないようにする法律です。

2005年以降に発売する新型車が対象で、2010年以降は既存の車も規制の対象となりました。これ以降に発売された車は規制を満たしているということですね。

規制を満たすための技術

ボンネット高の規制は「高さ何mm」というものではなく、「人の頭を想定した鉄球をぶつけて衝撃が基準を超えないこと」という内容になっています。なので、ボンネット高を低くしたければ衝撃を吸収できる構造や機能にすればいいわけです。

ショックコーンアルミボンネット

例えば、現状最後のロータリーエンジン搭載車であるRX-8では「ショックコーンアルミボンネット」という衝撃吸収機構の付いたボンネットが採用されました。

アクティブボンネット

アクティブボンネット(マツダ・ロードスター)

今年発売した新型ロードスターでは衝突の瞬間にボンネットが持ち上がる「アクティブボンネット」が標準装備になっています。新型ロードスターが歴代ロードスター並みに低い(むしろ先代より低く見える)ボンネットを採用できたのは、この技術の恩恵でもあるのでしょう。

RX-VISIONのボンネット

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RX-VISIONの車高はかなり低く、特にボンネット高は最近のクルマとしては異様に低いです。RX-VISIONはコンセプトカーですから、ボンネット高の規制を気にすることなく理想的なデザインを追求できたという側面もあるでしょうが、まったく市販を考えていないデザインでもないはずです。

ここで重要なのは、ボンネットの中身です。そもそもボンネットに衝突して問題になるのは、すぐ下に鉄の塊=エンジンがいるからです。ボンネット内部が空っぽなら柔らかいボンネットで衝撃を吸収してやればいいわけです。

ロータリーエンジンの強み

ロータリーエンジン最大の特徴は、もちろん往復運動ではなく直接回転運動をすることですが、最大のメリットは何でしょうか?

最大のメリットは「軽量でコンパクト」であることです。ロータリーエンジン(1.3L、1.6L)と同等のエネルギーを取り出せるエンジンとなると、レシプロでは2.5Lターボや3.0L自然吸気といった大型のエンジンが必要になります。ロータリーエンジンは小型なので、同じ車体に搭載すればより低く中央に近い場所になるために、運動性能、特にコーナリング性能が高くなります。

RX-7が「究極のコーナリングマシン」と呼ばれたのは、ロータリーエンジンの良さを引き出すならコーナリングマシンにするしかないという必然性から来たものだったのでしょう。

そして今回のRX-VISIONでは別のメリットが出てきました。「同等性能に対してコンパクト」ということは、「同じボディでもエンジンを低く搭載できる」ことになります。同じ車格のスポーツカーであれば、3.0L V6エンジンのような大型エンジンを搭載するでしょうから、エンジンの高さも高く、必然的にボンネットも高くなってしまいます。でもロータリーエンジンならエンジンは低い位置に鎮座しているので、ボンネットはそこまで高くしなくてもいいはずです。

歴代ロータリーエンジン搭載車

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RX-7

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RX-8

RX-VISION

 

RX-7は歩行者保護規制前、RX-8は2010年以降も販売を続けていましたから規制を満たしています。RX-VISIONのボンネットはRX-8よりも低くなっているように見えますね。

ここで注意したいのが車格の違いです。RX-7は4.3mに実質2シーターの2ドアスポーツカーでしたが、RX-8は4.5mに4ドア4シーターを搭載する必要がありました。横から見て分かるように、ボンネット部分はRX-7ほどの長さを確保できていません。

一方RX-VISIONはRX-7と同じ2ドアです。そして、写真で見る限りはRX-7よりも車体が大きく見えます。かなり長く取られたボンネットは、明らかにRX-8よりも広いでしょう。この広さがあれば、RX-8よりも幾分大きなエンジンを、ボンネットから十分離して搭載できるのでしょう。補機類の設置を工夫すれば歩行者保護規制とボンネットの低さを両立できそうに見えます。

まとめ

RX-VISIONの美しさの裏には、ロータリーエンジンならではのメリットがちゃんと活かされていたようですね。

※11/2追記。東京モーターショーでマツダが配布していた冊子にも、ロータリーエンジンとボンネット高の関係が明記されていました。

ひと目でスポーツカーとわかるパッケージに、圧倒的に低いボンネットと全高を可能にする次世代ロータリーエンジン「SKYACTIV-R」を搭載し、オンリーワンのFRプロポーションを生み出しました。(以下略)

こんなデザインで実際に市販されることを大いに期待します。実際に売るときは高くなっちゃったとか言わないでね!

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