スバル・WRX STI試乗レビュー!国産スポーツセダンはどんな走り?過去最高に……

   

スバル・WRX STIを試乗してきました。国産本格スポーツセダンの走りはいかに!?

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スバル・WRX STIってどんな車?

「WRX STI」はスバルのスポーツセダンです。

インプレッサベースでなくなった「WRX」

スバルのスポーツセダンといえば、「インプレッサWRX」という名が長らく使われてきました。でも現行車はインプレッサのない「WRX」です。

レガシィツーリングワゴンをやや小さくして、日本専売モデルとして登場したレヴォーグ。現行WRXはレヴォーグと同時に開発されました。なので以前の「インプレッサWRX」からインプレッサの名が外れて「WRX」となったわけです。成り立ち的にはむしろ「レヴォーグWRX」とした方が適切なのでしょうが、WRXが長らくインプレッサのスポーツモデルとして設定されてきたことと、レヴォーグが日本専売として企画された(WRXはグローバルモデル)ことから「WRX」という単独名になったのでしょう。

レヴォーグはその後ヨーロッパや香港、台湾などでも発売されましたが、スバル最大の輸出先である北米で販売されていない以上、WRXに「レヴォーグ」が冠されることはないでしょうね。

ややこしい話

もっと正確に言えば、以前は「インプレッサ」という車種に「WRX」や「WRX STI」というグレードが設定されていました。車種としては通常のインプレッサと分かれてはいなかったのですね。ある種「スカイラインGT-R」などと似た成り立ちだと言えます。それが現行モデルで「WRX」という独立した車種名が与えられて別車種になったということですね。

「WRX STI」と「WRX S4」

WRXは2つの車種に分かれています。一つは「WRX STI」、もう一つは「WRX S4」です。

車種 スバル
WRX STI
スバル
WRX S4
スバル
レヴォーグ 2.0L
車重 1,480 kg 1,540 kg 1,560 kg
駆動方式 4WD
トランスミッション 6MT CVT
エンジン形式 水平対向4気筒
排気量 2.0L ガソリンターボ
最高出力 308ps / 6,400rpm 300ps / 5,600rpm
最大トルク 43.0kgm / 4,400rpm 40.8kgm / 2,000-4,800rpm
燃費 9.4 km/L
(10.6 L/100km)
13.2 km/L
(7.6 L/100km)
年間燃料費
(10,000km)
ハイオク141.2円
14.7 万円 10.5 万円 10.7 万円
価格 379 万円~ 335 万円~ 356 万円~

分類上はMTモデルがSTI、CVTモデルがS4となっています。単純にMTが欲しいかどうかだけでどちらかを選ぶことになるでしょう。

ですがトランスミッション以外のスペックも異なっています。どちらも水平対向4気筒・2.0Lターボですが、スペックはSTIの方が上です。S4に搭載されるのはレヴォーグの2.0Lモデルとまったく同じエンジンです。ボディ開発が一体でエンジンも同じ、どちらも4WD専用となれば、ほとんど同じ車ですね。ワゴンのレヴォーグをスポーツセダンにしたのがS4だと言えます。

一方STIは先代「インプレッサ WRX STI」のエンジンを流用しています。昨今はエコ偏重の時代なので新しいエンジンの方が燃費は良くなっていますが、ことスポーツ性能に関して言えば昔のエンジンの方が性能が高いというのは珍しくありません。最上級モデルであるWRX STIに先代エンジンを搭載したのはそんな理由からなのでしょう。STIはカタログ燃費で10km/Lを切るという現代の2L車とは思えない値をたたき出しています。

WRX STIのエンジン

最高出力が308馬力というのも高出力ですが、注目すべきは最大トルク43.0kgmという部分です。3Lターボや4L自然吸気といったクラスで出るようなトルクを2Lターボで出してしまうんですから、過給能力の高さによるものでしょうね。

この大トルクが出るのは比較的低回転の領域です。レッドゾーンは8,000rpm~というターボ車とは思えないほど高回転ですが、低回転域での性能の高さに注力したエンジンだということが分かりますね。WRC撤退とかそういう話はさておいて、やはりラリーのような走行スタイルを前提にした設計のエンジンになっています。

デザイン

レヴォーグのセダン版ということで、基本的にはレヴォーグと同じ外観デザインになっています。

スバル・レヴォーグ

細かい違いはありますが、パッと見ではフロントグリル内がメッシュになっていることが一番分かりやすいでしょうね。

リアには大型のスポイラー(ウイング)が付いているので、インプレッサWRX(セダンに限る)の印象を踏襲しています。仰々しいほどの大きさがこの車の秘めるパフォーマンスをアピールしているようですね。

でもこの大型リアスポイラーは、412万円~の「STI タイプS」というグレードのみ標準装備です。ベースの「STI」(379万円~)には装備されていません。リアスポイラーが無いとデザインに締まりが無いことをスバルも分かっているのか、Webでもカタログでもスポイラー無しの写真はグレード一覧の斜め前方の1枚のみ。あとはあらゆる写真がすべてリアスポイラー付きです。

STI(ベースグレード)

後方からの写真は公式ページ内の3Dビューアーからのみ見られます。

STI(ベースグレード)

なんだかフツーの車ですね。タダのノーマルセダンという佇まいです。格下のWRX S4はSTIとほとんど同じデザインで大型リアスポイラーがオプション設定なので、そちらの方が参考になるかもしれません。ただ、S4の写真はだいたいトランクリップスポイラーが付いています。

ベースグレードの「STI」でも大型リアスポイラーを装着可能です。メーカーオプションで54,000円。ダウンフォースの効果をさておいても、せっかくWRX STIを買うならデザイン的に装着しておくべきだと思います。後方視界は若干悪くなりますけどね。

巨大なウイングを装着している割に、トランクはダンパー無しなのに落ちてきませんでした。ヒンジを重心付近にしているようですね。(以前乗っていたロードスターにリアスポイラーを付けたらトランクリッドが落ちるようになって、仕方なくトランクダンパーを後付けしました)

内装はレヴォーグとほとんど同じですが、ドアパネルなどにアルカンターラが貼ってありました。高級を感じるというより「金をかけたスポーツ乗用車」という雰囲気ですが、質感や色選びにまとまりがあったので良い印象でした。

まぁでも総じてスバル車の内装にデザイン性を求めてはいけませんね。無骨なゴツゴツした雰囲気を楽しむのが正解です。

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走り

加速力

低回転域からとてつもないトルクで加速します。あまりにトルクの出方が急激なので、後述するトランスミッションも含めてかなり扱いづらいです。同じ300馬力クラスでも、日産・フェアレディZ(3.7L自然吸気・355馬力)ポルシェ・ボクスターS(先代・3.4L自然吸気・315馬力)などは(速さはともかく)乗りづらさや扱いづらさを感じることはありませんでしたが、WRX STIは普通に乗るとかなり運転しづらいです。

扱いづらさの理由はいくつかあると思いますが、大きな要因は排気量とギア比だと思います。

排気量

最高出力300psはともかく、最大トルク43.0kgmは2.0Lターボエンジンとしてはかなり高スペックです。トルクが出やすいディーゼルはともかく、ガソリンエンジンでこれくらいのトルクを得るには3.0Lターボか3.0Lスーパーチャージャーを使うのが一般的です。

排気量の小さいエンジンを大きく過給してトルクを出すと、ターボラグが問題になります。アクセルを踏み込んでから、排気圧力が上がって過給され、トルクがぐんと立ち上がるまでのタイムラグです。たいていは時間差が発生することによる反応の悪さが問題になりますが、WRX STIではこれが扱いにくさになっていると思います。

元の排気量が小さいのに最大トルクが大きいということは、未過給時のトルクと過給中のトルクの差が大きいということです。アクセルを踏み込んだ直後には、ほぼ排気量通りの出力(2.0L自然吸気並み)のトルクなのに、ターボがかかると4.0L自然吸気並みの大トルクに跳ね上がります。一瞬遅れて爆発的なトルクが発生するので、その感覚になれないと「扱いづらい」と思うのでしょう。

ただし低回転域から過給圧が上がるので、昔のドッカンターボ(高回転域で急激にトルクが上がる設計)とは異なります。回転数に関わらず、アクセルを踏み込むときは一瞬遅れて出る大トルクを想定して、必要な力が出なくても一瞬我慢するという変わった運転が必要になります。特に人を乗せて街中を走るときには踏み込み方に注意が必要です。

ギア比

もう一つの要因がギア比です。強大なトルクを発生させるエンジンの割に、ギア比が低め(ローギアード)です。6速・100km/hでのエンジン回転数は2,670rpmと結構高いですね。例えばBMW・3シリーズの6MTモデルだと、6速・100km/hでは1,814rpm。1つ下げて5速・100km/hでも2,121rpmです。4速でやっと2,716rpmと同等になります。トルク型ターボエンジンにも関わらず、普通の車よりかなりローギアードなのが分かりますね。

大トルクエンジンでローギアードですから、加速力は凄まじいものになります。各ギアでアクセル全開した時の加速度を見てみましょう。参考までにスポーツカーのトヨタ・86(2.0L自然吸気・6MT・MC後)を載せました。

1速からとんでもない加速をしていますが、注目して欲しいのはもっと上です。WRX STIの5速(青の⑤)が86の3速(赤の③)より広範囲で上にありますね。[青の⑥]は[赤の④]より上です。つまりWRX STIは86で2段落としたときよりも高い加速力だということです。街乗りでスムーズな運転をしようと思ったら、意識的に高いギアに入れないと回転数が上がってしまう → パワーが出過ぎるということになります。特にMTスポーツカーの運転に慣れている人ほど低いギアにしてしまって乗りづらくなります。オーナーになれば幾分解消されることだとは思いますけどね。

ちなみにこのグラフに入っているのは7,200rpmです。7,200rpmで次の

モード切り替え

WRX STIには「SI-DRIVE」という走行モードの切替機能があります。下から順に「Intelligent」「Sport 」「Sport#」の3段階になっていて、切り替えるとレスポンスを表すであろうグラフがメーター内のディスプレイに表示されます。

ただし変化の程度は小さいです。確かに多少反応は変わりますが、Intelligentでも十分過ぎるほどに反応が良くしっっかりと加速します。カタログには「エコドライブを実現するインテリジェントモード」なんて書いてありますが、こんな出力でエコだなんてバカ言っちゃいけません。この車だとアクセル開度と過給圧をガッツリ制限するとかじゃないと、「エコドライブ」には相当な精神エネルギーを使います。

トランスミッション

とにかくクラッチが扱いづらいです。元が普通の乗用車なのでシートはアップライトで、足は前に出すのではなく下に下ろす姿勢です。クラッチペダルはスポーツカーとして見ればそんなに重いわけではありませんが、ミートポイントが結構かつ急激に繋がるので感覚が掴みづらいです。私は結局試乗が終わるまでクラッチを掴めませんでした。

シフトノブの動きは小気味良いのですが、元が乗用車なのでノブがやたら長いです。乗用車基準なら「動かしやすくクイックなシフト」となりますが、スポーツカー基準で見ると「握りにくくストロークが長すぎるシフト」となるでしょうね。

大トルクを生かしてのんびり走りたくても、アクセルレスポンスの機敏さ(たとえインテリジェントモードであっても)と低すぎるギア設定で頻繁なシフトチェンジを強いられます。街乗りで楽に走りたければほぼ5速6速だけで走った方がいいくらいです。気合いを入れて走るときであっても、速度変化の大きい道では掴みづらいクラッチペダルを何度も踏む必要があります。

足回り

高性能車とはいえスポーツセダンなので乗り心地は相応に良いものかと期待しましたが、結構硬かったです。欧州スポーツセダンのような「細かい振動は消しつつもどっしり安定」みたいなのとは異なります。「ガチガチではないが細かい凹凸をすべて伝える」といったところですね。路面変化をすべて伝えるのでスポーツ走行時には良いでしょうが、長距離ツーリングでは疲れると思います。エンジンもトランスミッションもまずもってツーリングには向かない車なんですけどね。

今回は残念ながらコーナリング性能を試せるようなコースではありませんでした。4WDなので回頭性は期待できますが、FRスポーツカーのような軽い足取りではなさそうです。

ちなみに参考程度ですが、過去に助手席に乗ったことがあるランエボ9はもっと硬かったです。最近乗った車では、86とBRZの間くらいの乗り心地でしょうかね。

スペック比較

国産で4/5ドア乗用車ベースのスポーツタイプだと、シビックタイプRが当てはまります。目的や思想が異なるので競合することは少ないでしょうが、現行モデルのタイプRを入れました。

スポーツセダンという括りではBMW・3シリーズが代表でしょう。価格が比較的近い320iと、スポーツ性能を追求したM3を並べました。現行M3にはMTが設定されていないのが残念なところですね。

車種 スバル
WRX STI
ホンダ
シビック
BMW
3シリーズ
BMW
M3
グレード STI タイプR 320i スポーツ M3セダン
ドア数・定員 4ドア・5名 5ドア・4名 4ドア・5名
全長 4,595 mm 4,390 mm 4,645 mm 4,685 mm
全幅 1,795 mm 1,880 mm 1,800 mm 1,875 mm
全高 1,475 mm 1,460 mm 1,440 mm 1,430 mm
ホイールベース 2,650 mm 2,600 mm 2,810 mm
車重 1,480 kg 1,380 kg 1,560 kg 1,640 kg
駆動方式 4WD FF FR
トランスミッション 6MT 7AT
エンジン形式 水平対向4気筒 直列4気筒 直列6気筒
排気量 2.0L ガソリンターボ 3.0L ガソリンターボ
最高出力 308ps / 6,400rpm 310ps / 6,500rpm 184ps / 5,000rpm 431ps / 7,300rpm
最大トルク 43.0kgm / 4,400rpm 40.8kgm / 2,500-4,500rpm 29.6kgm / 1,350-4,250rpm 56.1kgm / 1,850-5,500rpm
フロント
サスペンション
ストラット
リア
サスペンション
ダブルウィッシュボーン 車軸 マルチリンク
燃費 9.4 km/L
(10.6 L/100km)
13.0 km/L
(7.7 L/100km)
15.7 km/L
(6.4 L/100km)
12.2 km/L
(8.2 L/100km)
年間燃料費
(10,000km)
ハイオク141.2円
14.7 万円 10.9 万円 9.0 万円 11.6 万円
価格 379 万円~ 428 万円~ 515 万円~ 1,132 万円~

まとめ

トルクの出方が暴れすぎで落ち着いて楽しめるタイプの車ではありませんでした。ブーストのかかり具合とシフトチェンジにかなり気を遣いながらの運転で非常に疲れました。大トルク系スポーツでも扱いやすかったフェアレディZとは大きく異なります。

それにスポーツセダンとして見ると乗り心地は正直落第レベルでしょう。4ドア5人乗りセダンと聞けばみんなで長距離移動もできそうですが、[乗り心地悪い+回転数高くてうるさい]のコンビネーションでは運転手だけでなく同乗者にも負担を強いることになります。

確かに速いけど乗りたくないが全体の感想です。正直今まで乗った中で最も乗りにくかった車です。以前乗ったインプレッサWRX STI(ハッチバックがあった頃の世代)はもっと扱いやすかった印象がありましたが、現行WRX STIは乗り手を選ぶ車だと思います。

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