ゴルフGTIが新「FF最速」の座に!シビックタイプRとメガーヌに勝てた理由
フォルクスワーゲンのゴルフGTIがニュルブルクリンク北コースのFF最速タイムを更新し、「FF最速」の座につきました。シビックタイプR敗れたり!
毎年のように変わるFFの天下
最近の「FF最速」は頻繁に更新されています。
2011年に8分7秒を記録したルノー・メガーヌRSは3年近く天下に居座りましたが、2014年にセアト(フォルクスワーゲングループ)のレオンCUPRAが8分切りを達成してからは、メガーヌが天下を奪還し、シビックRが4秒更新、そして今回ゴルフが1秒更新と毎年のように記録が更新されています。
記録日 | 車種 | タイム |
---|---|---|
2011年6月 | ルノー・メガーヌ RS トロフィー | 8分07秒97 |
2014年3月 | セアト・レオン CUPRA | 7分58秒44 |
2014年6月 | ルノー・メガーヌ RS トロフィーR | 7分54秒36 |
2015年3月 | ホンダ・シビック タイプR | 7分50秒63 |
2016年5月 | VW・ゴルフGTI クラブスポーツS | 7分49秒21 |
FFでニュルのタイムが8分を切ってくるというのはかなり難しいことです。
90年代に一世を風靡したスカイラインGT-Rは、R32型で8分20秒、「マイナス21秒ロマン」を掲げたR33型でやっと7分59秒と8分を切りました。FRベースの4WDでもこの時代には8分切りがやっとでした。(当時は馬力自主規制で280馬力だったというのも一因ではあるでしょうけどね)
昨年シビックタイプRが日本車ながら「最速」の名を手に入れたのは嬉しかったんですが、今回またしても欧州勢に持って行かれましたね。
シビックも日本生産ではないので純粋に「日本の日本車」ではありませんが、それでもまぁ開発の中心は(たぶん)日本なのでしょうから一応日本車を名乗れるのでしょう。
なんかあいまいですね。ともかく、今回ヨーロッパの、しかも排ガス問題で話題のフォルクスワーゲンに最速を取られてしまいました。
フォルクスワーゲンはこんなときにエンジニアの道楽のような最速争いをしていていいんでしょうかね? 販売にまったく寄与しないわけではないんでしょうが、ゴルフのイメージは世界的に「良くできた実用車」なわけで、それはゴルフGTIであっても多くの人にとって「チューンした実用車」でしかないでしょう。F1参戦を含め昔からレースのイメージがあるホンダの出すタイプRや、実用車とは別に3ドアの低車高ボディを用意しているメガーヌRSに比べると「ゴルフでそんなに頑張らなくても」と思わずにはいられません……。
FF最速を争う3台のスペック
FF最速を争うゴルフ・シビック・メガーヌは、ジャンルが同じなので結構似たようなスペックになっています。
いずれも「Cセグメントハッチバックの実用車ベースで、エンジンやボディはメインの実用車から大きく変えない」となっています。現在のCセグメント高性能仕様の定番、2Lガソリンターボエンジンが搭載されています。
ボディはメガーヌ、エンジンはシビック優勢
一番通常仕様から外れているのがメガーヌRSで、ボディ形状の異なる3ドア車になっています。ゴルフも3ドアになっていますが、ボディ形状自体は5ドアと同じなので開発コストは低いでしょう。30馬力以上の差がありながら数秒差しかつかなかったのはボディの素性の影響が少なからずあるでしょう。
性能はシビックタイプRのトルクがやや大きい程度でほぼ同じです。0-100km/h加速や最高速度でもシビックが半歩出ていますね。
あとはリアサスがゴルフだけ独立懸架になっていることくらいでしょうか。リアの粘りが有利でしょう。Cセグではコストとスペースを優先する一部の車種以外はマルチリンクが多数派です。ゴルフはグレードによって独立懸架と車軸懸架がどちらもあるので、こういう車種の設定には有利でしょうね。
シビックRとメガーヌRSはベース車の縛りで車軸懸架しか採用できなかったのでしょう。
ゴルフが最速になれた理由
ゴルフが最速になったのは、ゴルフもシビックもメガーヌも「FF最速が目的」になっているからだと思います。
純粋に性能をベース車やスペックから推察すれば、ゴルフが勝てる可能性はあまり高くはなかったでしょう。でもメーカーも開発者もドライバーも至上命題は「FF最速になること」でしょうから、ある意味勝てて当たり前な気がします。
シビックタイプRはもっと出力を上げたエンジンを積むとか、もっと内装をはがして軽くするとか、もっと高性能な公道走行ギリギリのタイヤを履けば7分49秒すら切れたことでしょう。メガーヌだって同じです。でも「5000万円追加投資すれば7分50秒(最速)が7分45秒(最速)になります」とすればメーカーは投資するでしょうか?「世界最速になれればそれ以上は欲しない」となるのは当然です。会社資源は限られていますから。
ゴルフGTIも、一流メーカーがCセグ3ドアに2Lターボを積んでいる時点で世界最速を狙える可能性は十分にありました。あとは「FF最速になるためには投資する。それ以上はやらない」となっていただけかと思います。そしてシビックを超えた。ギリギリでも超えた。任務完了です。
シビックが巻き返すか
今回ゴルフが更新したタイムはわずか1秒42です。ラップタイムに対する割合ではわずか0.3%です。(あ り得ませんが)仮に馬力がタイムに直結するとすれば、310馬力が311馬力になれば追いつける計算です。(あり得ませんが)仮に車重がタイムに直結する とすれば、4kg軽量化すれば追いつけます。
「シビック最速奪還の秘訣はドライバーのダイエット!」なんて可能性すらありますね(笑)
FF最速そのものに価値があるというより、最速を取ったことによる話題性が重要なのでしょうから、シビックRが再度最速を奪還する可能性は高いでしょうね。
ちなみにFF以外で例を挙げると、身近なトヨタ・86が8分44秒、ポルシェ・911 GT3(997型)が7分42秒、日産・GT-R NISMOが7分8秒です。8分を軽く切れるようなやつは価格も1000万円を軽く超えてきますね。500万円以下でニュル8分切りが買えるなんて、いかに実用車ベースが安く作れるかってことですね。
スポーツカーを安くするには実用車ベースにするしかありません。
まとめ
ここまで書いておいてなんですが、私は「FF最速」そのものにあまり意味があるとは思えません。「電気自動車最速」「オープンカー最速」「日本車最速」みたいなのに比べると、駆動方式を限定することに何の意味があるんだろうと思ってしまいます。
スポーツ走行にFFが向いていないことは明白で、だからFF最速は全車種最速にはなれない。FFが採用されているのは実用車ベースにしないと採算が合わないというメーカーの事情でしかないのに、「FFでは最速ですよ」ってアピールしたって「なんでFRや4WDにしないの?」「そんなに開発費無いから」って悲しい現実を見せられるだけじゃないですか。
ま、でも1番になることは良いことですね。いずれシビックには再トライしてもらいたいところです。