VW・新型ティグアン発表!ゴルフベースのSUVはどんな風に進化したか?
フォルクスワーゲンの中型SUV「ティグアン」がフルモデルチェンジしました。
現行ゴルフをベースにした新型ティグアンは、どんな車になったのでしょうか?
目次
フォルクスワーゲン・ティグアンってどんな車?
ティグアンは、ドイツのフォルクスワーゲンの中型SUVです。
Cセグメントの代表格、フォルクスワーゲン・ゴルフをベースにSUV化されたのがティグアンです。成り立ちはプリウス(Cセグメント)ベースでSUV化したトヨタ・C-HRと似ていますね。
サイズが非常に似ているのは、最近フルモデルチェンジしたばかりのマツダ・CX-5です。日産・エクストレイルやスバル・フォレスターもおおよそ似たようなクラスです。輸入車ではプジョー・3008やBMW・X1がライバルになるでしょう。
アウディ・Q3(369万円~)はティグアンと兄弟車の関係にありますが、元々Q3の方が遅れて発売されているので、2代目へのモデルチェンジもQ3の方が後になるようです。
デザイン
エクステリアデザイン
エクステリアデザインは先代(初代)から大きくは変わっていません。
初代ティグアンは2011年にマイナーチェンジを受けて現行ゴルフや現行パサートとよく似た水平基調のデザインになっていました。外観上は小変更に留まっていますね。
新型ティグアンは、水平方向のラインをさらに強調して、Dセグメントのパサートにも繋がるようなデザインになりました。
先代のリアはほとんどゴルフそのまんまでしたが、新型ティグアンはSUVらしく変わりました。印象を変えているのはナンバープレートの位置です。
初代ティグアンはゴルフと同じくバンパーにナンバープレートがありました。リアがハッチバックなこともあって、ゴルフを大きくしただけに見えました。
新型ティグアンはナンバープレートをハッチ部分にしたことで、よりSUVっぽく見えるようになりました。
インテリアデザイン
新型ティグアンの内装は、フォルクスワーゲンらしい何とも地味で無骨なデザインになりました。初代ティグアンで特徴的だった縦二段の丸形エアコンルーバーは無くなりましたね。
現行ゴルフの内装と比べてみると、縦方向に少し引き延ばした以外はほとんど同じようなデザインですね。
エンジン低出力化 & 4WD廃止
2代目に切り替わったことで、エンジンは低出力化されてしまいました。さらに4WDモデルも廃止されました。
ティグアン (2代目) |
ティグアン (初代) |
||
---|---|---|---|
FF | 排気量 | 1.4Lガソリンターボ | 1.4Lガソリンターボ +Sチャージャー |
出力/トルク | 150ps / 25.5kgm | 160ps / 24.5kgm | |
トランスミッション | 6DCT | 6DCT | |
価格 | 360 万円~ | 342 万円~ | |
4WD | 排気量 | - | 2.0Lガソリンターボ |
出力/トルク | 179ps / 28.6kgm | ||
トランスミッション | 7DCT | ||
価格 | 420 万円~ |
ツインチャージャーの消滅
初代モデルでは、FFには1.4Lガソリンツインチャージャーエンジンが搭載されていました。
ツインチャージャーとは、動力性能と燃費を両立するために、小排気量エンジンにターボチャージャー(排気過給)とスーパーチャージャー(機械式過給)が両方搭載されたエンジンのことです。かつてはフォルクスワーゲンが積極的に採用していましたが、設計・製造・整備コストがかさむことから最近は採用車種がめっきり減ってしまい、代わってターボのみのシングルチャージャーモデルが増えています。
新型ティグアンでは1.4Lターボエンジンのみになったので、ツインチャージャーモデルは廃止になりました。
日本に輸入されているVW車では、初代ティグアンが最後のツインチャージャーモデルでした。今回ティグアンがフルモデルチェンジしたことで、ついにフォルクスワーゲンからツインチャージャーがなくなるということですね。日本市場でのツインチャージャーは、ボルボ・S60/V60のトップグレード「T6 AWD Rデザイン」を残すのみとなりました。
4WD廃止
先代ティグアンには4WDの設定があり、そちらには2.0Lターボエンジンが搭載されていました。FFに設定されていた1.4Lツインチャージャーの上位エンジンという位置づけでした。
新型ティグアンには(少なくとも今のところは)4WDの設定がなく、1.4Lターボエンジンのみの設定です。2Lターボ+4WDは上級グレードの役割も担っていましたが、新型ティグアンではスタート価格より100万円以上高い上位グレードでもエンジンや駆動方式は同じです。
ちなみにヨーロッパではディーゼルエンジンや4WDの設定もあります。4WD需要が十分あるということになれば、日本にも追加設定される可能性はあります。
グレード構成・価格
新型ティグアンは3グレード構成です。前述した通り駆動方式やエンジンは同一で、装備の違いだけとなります。
TSI コンフォートライン | TSI ハイライン | TSI Rライン | |
---|---|---|---|
駆動方式 | FF | ||
排気量 | 1.4Lガソリンターボ | ||
アダプティブ クルーズコントロール |
● | ● | ● |
レーンキープなど 追加アシスト |
△ | ● | ● |
LEDヘッドライト | △ | ● | ● |
ナビ・ETC | △ | ● | ● |
スマートキー | △ | ● | ● |
R-Line専用 エクステリア |
- | - | ● |
レザーシート(電動) | - | △ | - |
シートヒーター | △ | ● | ● |
タイヤ・ホイール | 17インチ (通常タイヤ) |
18インチ (モビリティタイヤ) |
19インチ (モビリティタイヤ) |
価格 | 360 万円 | 433 万円 | 463 万円 |
※ ●:標準装備、△:オプション
様々な装備を削ったのが「コンフォートライン」、一通りの高級・最新装備を揃えたのが「ハイライン」、さらに外観デザインをグレードアップさせたのが「Rライン」です。
装備は充実するものの、ハイライン以上は割高感があります。ベース価格から73万円、実に2割増しですからね。先代では上位グレードになるとエンジンが変わり、2.0Lターボ+4WDで420万円~でしたが、新型では463万円のRラインでも1.4Lターボ+FFです。
そもそも全体に高すぎる
そもそも、ゴルフベースのCセグメント系SUVで車体価格400万円超えは高すぎます。4WDでもないのに敢えてゴルフより100万円も高いティグアンを選ぶ理由が分かりません。
SUVにする必然性が無いなら、Cセグメントのアウディ・A3が1.4Lターボ・FFで303万円~。さらに1.8Lターボ・4WD(クアトロ)でも429万円で、ティグアンのTSIハイライン(1.4Lターボ・FF)より安いです。
どうしてもSUVにしたければ、兄弟車のアウディ・Q3が同じ1.4Lターボ・FFで369万円。絶対にこっちの方がいいでしょ! 基本的にアウディとフォルクスワーゲンは上下関係にありますからね。ポロより後席が狭いなど使い勝手の変わるアウディA1はともかく、Q3とティグアンは使い勝手の差はあまりありません。
Q3の難点はベースの設計が古いことです。新型ティグアンは7代目ゴルフと同様に、MQBと呼ばれるモジュール開発を採用していますが、Q3は先代ティグアンと同じくベースは6代目ゴルフ。設計の差を許容できるかは、実際に乗ってみるしかありませんね。
スペック比較
ライバル車と比較してみましょう。欧州車からはBMW・X1。1シリーズのSUV版という成り立ちはティグアンと同じです。国産では新型CX-5とC-HRをチョイスしました。
車種 | フォルクスワーゲン ティグアン |
BMW X1 |
マツダ CX-5 |
トヨタ C-HR |
---|---|---|---|---|
グレード | TSI コンフォートライン |
sDrive 18i | XD | S |
全長 | 4,500 mm | 4,455 mm | 4,545 mm | 4,360 mm |
全幅 | 1,840 mm | 1,820 mm | 1,840 mm | 1,795 mm |
全高 | 1,675 mm | 1,610 mm | 1,690 mm | 1,550 mm |
ホイールベース | 2,675 mm | 2,670 mm | 2,700 mm | 2,640 mm |
車重 | 1,540 kg | 1,520 kg | 1,600 kg | 1,440 kg |
駆動方式 | FF | |||
トランスミッション | 6AT | CVT | ||
エンジン形式 | 直列4気筒 | 直列3気筒 | 直列4気筒 | |
排気量 | 1.4L ガソリンターボ | 1.5L ガソリンターボ | 2.2L ディーゼル | 1.8L ガソリン +モーター |
最高出力 (モーター) |
150ps | 136ps | 175ps | 98ps (+72ps) |
最大トルク (モーター) |
25.5kgm | 22.4kgm | 42.8kgm | 14.5kgm (+16.6kgm) |
フロントサス | ストラット | |||
リアサス | マルチリンク | ダブルウィッシュ ボーン |
||
燃費 | 16.3 km/L (6.1 L/100km) |
15.6 km/L (6.4 L/100km) |
18.0 km/L (5.6 L/100km) |
30.2 km/L (3.3 L/100km) |
価格 | 360 万円~ | 397 万円~ | 278 万円~ | 265 万円~ |
X1は、下位グレードだと3気筒エンジンです。BMWの3気筒エンジンは出来が悪いので、走りのクオリティはティグアン(≒現行ゴルフ)に劣ります。X1で4気筒になるのは、440万円~の2.0Lディーゼルか、485万円~の2.0Lガソリン。BMWのディーゼルも微妙なので、走りの質で対抗できるのは485万円~となります。ティグアンと比べるにはさすがに高すぎますね。
マツダ・CX-5は新型で値上げ上げしたとはいえ、十分に安いですね。ベースの2.0Lガソリンエンジンなら246万円~です。マツダのディーゼルなら質でも対抗できると思います。
トヨタ・C-HRはプリウスと同じハイブリッドシステムで265万円~。C-HRにはターボもありますが非力すぎてダメ。トヨタ式ハイブリッドの滑らか&静かな走りが好みならアリですが、SUVらしいパワフルな走りではありません。C-HRは他の3車種よりやや小さいサイズ(ジュークやヴェゼルに近い)です。
まとめ
現行ゴルフと同じ新世代設計に切り替わったのはいいんですが、1.4Lターボ・FFのみとラインナップが絞られてしまったので、上位モデルの割高感が目立つようになってしまいました。
そもそもベースの現行ゴルフが内容に対して異様に安いので、敢えて100万円も高いティグアンを選ぶ理由がなかなか見いだせないと思います。単にSUVのデザインだけで選ぶならそもそもフォルクスワーゲンを選ぶべきではありません。
フォルクスワーゲンの価値は、輸入車らしさを感じさせない地味で無難なデザインと、ドイツ車らしい安定した走りと異様なほどに行き届いた気配りを楽しむことにあります。ほとんど見た目だけで選ばれるSUV(しかもFF)と組み合わせて活きるものではありません。
日本車やドイツ車の丁寧な造りが好きならCX-5やC-HR、マジメな欧州車が良いなら普通に現行ゴルフ、派手に目立ちたいならシトロエン・DS4やフィアット・500Xにでもした方がいいと思いますよ。