スズキが2気筒ディーゼルエンジンを開発!2気筒は普及するか?
2015/07/03
スズキがインド向けに新たな2気筒エンジンを開発したことを発表しました。自動車用としてはあまり使われることのない2気筒エンジンはこれから普及していくのでしょうか?
目次
スズキが開発したエンジン
スズキはインドで販売する小型車向けとしてこの2気筒エンジンを開発しました。
スズキ株式会社は、軽量・コンパクトな2気筒0.8Lの小型車向け「E08A型ディーゼルエンジン」を開発した。インド子会社マルチ・スズキ・インディア社が生産・販売する小型車「セレリオ」に搭載して、インド国内向けに発売する。(スズキ プレスリリース)
スズキはこれまで他社からの供給/ライセンス生産で1.3~2.0Lのディーゼルエンジンを海外向けモデルに搭載してきました。今回はインドでのディーゼル需要に対応するために自社開発に踏み切ったようですね。
スペック
エンジン形式 | 2気筒DOHC8バルブ インタークーラーターボ ディーゼルエンジン |
---|---|
排気量 | 793cc |
内径×行程 | 77.0mm × 85.1mm |
圧縮比 | 15.1 |
最高出力 | 35kW (46.9ps) / 3,500rpm |
最大トルク | 125Nm (12.7kgm) / 2,000rpm |
低圧縮比化と大型インタークーラーの搭載により、低回転域での高トルクと燃費性能を両立した。また、フライホイールを最適化することで2気筒ディーゼルエンジン特有の低周波振動を軽減した。
2気筒で800ccは一般的な容積ですね。振動の低減も謳っています。
2気筒が使われなくなった理由
初期の軽自動車など、昔は自動車用にも2気筒が使われていました。しかし、振動・静粛性・走りの観点で軽自動車は完全に3気筒に置き換わりました。2気筒が消滅してしばらくは3気筒と4気筒が両方使われていましたが、初代コペンを最後に4気筒も消滅しました。
2気筒のメリット・デメリットは以下の2つに集約されます。
- 軽量コンパクトで燃費性能に優れる。一般に気筒数が少ない方が、熱効率・熱損傷率に優れる。
- 振動が大きく、静粛性も劣る。3, 4気筒に比べ回転が滑らかではない。
日本の軽自動車のように、排気量が少ないが振動や静粛性を犠牲にできない車では、小排気量であっても3気筒以上を採用する方が良かったのでしょう。
今、見直される2気筒エンジン
昨今の流れであるダウンサイジングターボを採用しようとすると、1000ccクラスの小型車には600~800ccのターボエンジンを搭載することになります。日本の軽自動車では3気筒エンジンが使われていますが、メリットを大きく享受できる車にとっては2気筒の方が合っているのでしょう。(参考:猫も杓子もボクスターもダウンサイジングする悲しい理由)
フィアットの2気筒エンジン「ツインエア」
2010年からイタリアのフィアット「500(チンクエチェント)」にダウンサイジングコンセプトの下に開発された2気筒ガソリンターボエンジン「ツインエア」が採用されています。
エンジン形式 | 2気筒 8バルブ マルチエア インタークーラーターボ ガソリンエンジン |
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排気量 | 875cc |
内径×行程 | 80.5mm × 86.0mm |
圧縮比 | 10.0 |
最高出力 | 63kW (85ps) / 5,500rpm |
最大トルク | 145Nm (14.8kgm) / 1,900rpm |
このエンジン、というかフィアット500という車自体が、2気筒であることを逆に「味」として使っている節があります。というのも、この車は元々1957年に発売された「NUOVA 500」のリバイバルとして作られた車なので、2気筒エンジンが醸し出す古めかしさや荒々しさが逆に昔のエンジンを想起させる演出になっているわけです。
NUOVA 500は、映画「カリオストロの城」でルパン3世の愛車として登場したことでも有名ですね。
2気筒エンジンの車に乗ってみた感想
フィアット500自体に興味があったというのもあり、この2気筒エンジン「ツインエア」を搭載したフィアット500に試乗しました。
なんというか現代の車とは思えないような危なっかしい振動と音(褒め言葉)で、ボコボコ言いながら小さな車体を走らせる様はまさしくみんながイメージする「昔のクルマ」で、素晴らしいポンコツ感を演出しています(最上級の褒め言葉)。
ターボエンジンですから、踏み込めばこのサイズには十分な加速感を味わえますし、この車種自体がある種の趣味車なのでピッタリなエンジンだなぁと思いました。
一方、フィアット500には1.2Lの自然吸気4気筒エンジンも用意されていて、こちらは「普通の現代の小型車」の走りを見せてくれました。そして実は4気筒の方が安いんです。
2気筒エンジンは今後普及するか
正直、フィアット500の例は特殊で、一般的にはあの振動と音は実用車としてはなかなか受け入れられないだろうと思います。今回スズキが発表したエンジンがインド向けであるように、主に発展途上国での小型車としてはちょうどいいサイズ・燃費・価格だと思いますが、先進国の小型車向けに普及させるのは難しいだろうなぁと思います。
特に日本の軽自動車メーカーは、小排気量3気筒エンジンの開発実績が多分にありますし、ターボにするとしても先進国向けには3気筒エンジンを使うだろう、というのが私の結論です。