トヨタプリウス試乗レビュー!プリウスの美点と欠点、C-HRやオーリスとの差は?
2017/02/14
トヨタ・プリウスの現行モデルを試乗してきました。
国内最量販車の走りはどうなのでしょうか? C-HRハイブリッドやオーリスハイブリッドとはどう違うのでしょう?
トヨタ・プリウスってどんな車?
トヨタ・プリウスは言わずと知れた世界を代表するハイブリッド車です。特に日本ではハイブリッドと言えばプリウスが連想されるほど、ハイブリッド車として圧倒的な知名度を誇ります。
初代の発売は1997年。世界初の量産ハイブリッド自動車として登場しました。
プリウスが急激に販売台数の伸ばしたのは2003年発売の2代目から。初代は一般的な4ドアセダンの形をしていましたが、2代目以降はワンモーションフォルム(ボディ前端からルーフ、後部までが滑らかな1本の曲線で繋がるデザイン)の5ドアハッチバックになりました。
現在販売されているのは2015年発売の4代目です。
ハイブリッド専用車
プリウスが初代から一貫しているのは、ハイブリッド専用車であるということです。
ハイブリッド専用であるということは、プリウスを見れば誰もがハイブリッド車であることを連想するということです。ハイブリッド専用でないフィット、クラウン、オデッセイなどを見てもハイブリッドは連想しませんが、専用車であるプリウスやアクアは明らかにハイブリッドだと分かりますね。この見るからにハイブリッドという性能が一部の人にウケました。
4代目プリウス
4代目プリウスは最近のトヨタ車(コイツやコイツ)のようにやや奇抜なデザインをしています。トヨタがオシャレなデザインをやろうとしたってイタリア車やフランス車に勝てるわけがありませんし、マツダのようなカッコ良いデザインを並べられるわけでもありません。それで今までは地味なデザインに甘んじてたわけですが、最近は急激にぶっ飛んだデザイン(良いとは言ってない)をどんどん投入してきました。
現行プリウスがカッコイイとは全然思いませんが、日本最量販車が地味じゃないことは良いことだと思います。アクアもマイナーチェンジでマシになりましたし、ヴィッツも変な顔になりしましたしね。
今回は走りのレビューなので、プリウスのデザインについて詳しくは話しません。発表時に内外装デザインを軽くレビューしています↓
走り
加速感
モーターでするすると発進。モーターは低回転域から最大トルクを出せますからね。発進加速の滑らかなトルク感はモーターを持つ車の特権です。
普通に走る分にはモーターがトルク感を出してくれますし、速度が上がればエンジンが始動して出力が付加されるのであまりパワー不足は感じません。同じパワートレインを積むC-HRハイブリッドと同じく、トルク不足や回らないといった「足りない」という感じもありませんが、「余裕」もあまり感じません。C-HRハイブリッドより軽く車高が低いので走りはC-HRハイブリッドをやや上回ります。
踏めばちゃんと急激な加速にも対応してくれるので不足感はあまりありませんが、なにせ元々燃費を上げるために作った車なので刺激はありません。モーターがあるからといってぶっ飛ぶような発進加速なわけでもありませんし、エンジンとモーターが両方働いても同クラスの車に対して特別高い性能があるわけでもありません。
走行モードは「ノーマル」「エコ」「スポーツ」の3通り。
エコだと若干加速感が落ちますが、3代目プリウス(=オーリスハイブリッド)のエコモードほど全然加速しないという感じではありませんでした。これならなんとか常用もできそうです。スポーツだとアクセルの反応は上がりますが、変な演出にしか感じませんでした。
上のグラフにあるように、変化するのはペダルストロークに対する加速度合いです。全開にすればフル加速するのはどれも同じ。だったらリニア(直線)に近いノーマルモードが一番走りやすいはずです。
ただしスポーツモードだとエンジンが停止しないそうなので、燃費と引き替えにエンジン始動ラグは無くなりますね。まぁそんな使い方をする人は最初っからプリウスなんか選ぶなよって話です。空気抵抗や転がり抵抗など改良を重ねて燃費を向上させた車で、燃料を無駄遣いして走るものではありません。高速をぶっ飛ばしてるプリウスなんてもってのほか。プリウスは市街地走行は得意でも高速巡航は苦手(ガソリン車より燃費が悪い)ですし、そもそも巡航走行に適した設計ではありません。
プリウスは低速域の燃費性能に的を絞った車なので、速度を上げると相対的に加速性能が低く感じます。60km/hくらいまではクラス平均以上の加速感がありますが、そこから徐々に減少して100km/h辺りではやや足りないという程度の加速感になります。高速道路の最高速度引き上げが検討されていますが、プリウスはそう言った道にはあまり向きませんね。
足回り
プリウスの足回りはトヨタ車にしてはしっかりしています。当たりは柔らかですが、フワフワ感があまり無いので気持ち悪くはなりません。カローラフィールダー(現行モデル)で高速を走ったら運転手なのに車酔いしましたが、プリウスではそんな心配は無さそうです。
試乗したモデルは15インチホイール(タイヤサイズ:195/65R15)を履いていたので、当たりの柔らかさはタイヤから来ている可能性もあります。転がり抵抗軽減のためかグリップ力はあまり高くなく、コーナリング中にはタイヤがたわんで曲がる力を逃がしてしまっていました。低速フル加速時はモーターによって結構な加速度がありますが、タイヤがちゃんと受け止め来ていない感じがあるせいで一抹の不安を感じました。
18インチホイールのC-HRはプリウスよりも硬めの乗り心地だったので、プリウスの上位グレードに装備される17インチでは印象が異なると思います。
プリウスの足回りは「手放しでは褒められないが、トヨタ車にしては悪くない」という感想です。マツダとかBMWとかプジョーとか、そんなところとは比べちゃいけません。
静粛性
プリウス最大のポイントはココです。とにかく静か。
もちろんモーター走行時はエンジンが停止している分静かに感じられるわけですが、エンジンが動いているときでもかなり静かです。気にしていないと走行中のエンジン始動に気づかないほどです。走行中にエンジン停止・再始動を繰り返すトヨタ式ハイブリッドでは、再始動音が気にならないのは非常に重要なことですね。
停止中の回りのノイズレベルが低いことから、まずボディの遮音性能がとても高いです。ベーシックブランドのCセグメント車としては、フォルクスワーゲン・ゴルフに唯一対抗できるレベルの遮音性能です。C-HRはプリウスほど静かではなかったのは遮音性能の差によるものでしょう。
空気抵抗低減の努力から来る副次的なメリットとして、走行中の風切り音も非常に小さいです。転がり抵抗を軽減したタイヤからのロードノイズも低く、走行中の静かさはプリウスの大きな強みになっています。
外観・内装デザインも走行性能も特別感はありませんが、こと静粛性に関しては格上の車(クラウンや欧州Dセグメント車など)と比べても十分に戦えるほどの特別さがあります。この静粛性が「イイクルマに乗っている感」を上手く出しているのでしょう。
ドライビングポジション
シートは上下に広く調整できるようになっていて、低めのポジションも取れるようになっています。長距離巡航では低めに落ち着いた姿勢の方が疲れにくいでしょう。1,470mmという全高は特別低いわけではありませんが、着座位置が低いので走行中の安心感はあります。
シフトノブは3代目よりさらに小さくなり、指先でつまんで操作する形状になっています。P(パーキング)に入れるときは独立したボタンを押します。まぁこれはこれで別にいいんですが、手元に小さなスイッチを並べた割にはパーキングブレーキは足操作(ブレーキペダルの左)です。シフトノブをこうするならパーキングブレーキも電磁式にしてしまえばよかったのに。プリウスのSUV版、「C-HR」は電動パーキングブレーキを採用していますが、シフトノブは旧来のレバー式。ちぐはぐですね。
メーターは「センターメーター+デジタル速度計」という最悪の組み合わせ。運転手が運転中に見づらいなんて、何のためにメーターが存在しているのか分かっていませんね。一応ヘッドアップディスプレイがあれば見やすい位置に速度(デジタルですが)が表示されるものの、上位グレードにしか装備されません。
スペック
燃費スペシャルのグレード(「E」グレード)を除いたベースグレード「S」のスペックを見てみましょう。
車種 | トヨタ・プリウス |
---|---|
グレード | S |
全長×全幅×全高 | 4,540×1,760×1,470 mm |
ホイールベース | 2,700 mm |
車重 | 1,360 kg |
駆動方式 | FF |
トランスミッション | CVT |
エンジン形式 | 直列4気筒 |
排気量 | 1.8L ガソリン+モーター |
最高出力 (エンジン) |
98ps / 5,200rpm |
最大トルク (エンジン) |
14.5kgm / 3,600rpm |
最高出力 (モーター) |
82ps |
最大トルク (モーター) |
21.1kgm |
サスペンション (フロント/リア) |
ストラット / ダブルウィッシュボーン |
燃費 | 37.2 km/L (2.7 L/100km) |
年間燃料費 (10,000km, 124.9円) |
3.3 万円 |
価格 | 248 万円~ |
まとめ
「不満は無いけど面白くも無い」というのが総合的な評価です。
加速性能は低速域に限って期待以上、足回りは減点されない程度には良い出来。内外装のデザインのダサさを静粛性の良さが打ち消してくれるという感じです。
現行プリウスのSUV版「C-HR」や、3代目プリウスのシステムを積むオーリスハイブリッド、アクアの試乗レビューはこちら↓