ルノートゥインゴ試乗レビュー!RRの走りは一体?回頭性はいいがややパワー不足か
2017/01/07
ルノー・トゥインゴに試乗してきました!
久々のルノー新型車、しかもRR! 今回はいよいよRRの走りをチェックしてみましょう!
デザイン&実用性のレビューはこちら↓
目次
RRの走りっぷり
トゥインゴの走りです。911に乗って以来久々のRRです。わくわく!
でもRRの話の前にパワー感をレビューします。これがRRの走りに影響しているのでね。
パワー感
走り出しは軽快です。低回転域のトルクがかなり高く、発進直後からしっかりと加速してくれます。
一方で高回転域の伸びはいまいち。低回転域重視のダウンサイジングターボエンジンでも、一般的には高回転まで引っ張ればパワーの盛り上がりが感じられるものです。[パワー=トルク×回転数]ですから、トルクが一定なら回転数を上げるほどパワーは増加するはず。でもトゥインゴではパワーが落ちているのかと錯覚するほどです。
トゥインゴにはタコメーターが無いので感覚でしかありませんが、フルアクセルで加速しても中回転域以上はトルクが落ちているようで、他のガソリンエンジン車ほどの加速はありません。ガソリンエンジンよりも、むしろモーターで走るノートe-POWERの加速感に近かったですね。
一応カタログスペックで見てみると、2,500rpmで最大トルクの13.8kgm。最高出力となる5,500rpmでは11.7kgmだそうです。数値ではあまり落ちていないようですね。感覚では高回転トルクがもっと落ち込んでいるように感じました。
コンパクト実用車としての不足はありませんが、フルアクセルで加速しても普通に走るだけでドキドキ感に欠けます。フィアット・500の2気筒ターボエンジン比べると刺激が足りないように感じたんですが、スペックで比べてみるとトゥインゴの方が上なんですよね。
車種 | ルノー・トゥインゴ INTENS |
フィアット・500 TwinAir |
---|---|---|
車重 | 1,010 kg | |
駆動方式 | RR | FF |
トランスミッション | 6DCT | 5AMT |
エンジン形式 | 直列3気筒 | 直列2気筒 |
排気量 | 0.9L ガソリンターボ | |
最高出力 | 90ps / 5,500rpm | 85ps / 5,500rpm |
最大トルク | 13.8kgm / 2,500rpm | 14.8kgm / 1,900rpm |
燃費 | 21.7 km/L (4.6 L/100km) |
24.0 km/L (4.2 L/100km) |
価格 | 189 万円~ | 229 万円~ |
排気量は同じ0.9Lターボで車重は同一。最大トルクは500の方が上ですが、トゥインゴの方が出力が上。つまりトルクの落ちは500の方が大きいんです。なのに500の方が走るように感じる理由として考えられるのは、気筒数の違いです。2気筒の方が3気筒よりさらに音と振動が増えますが、摩擦によるロスは減りますし、完成重量も小さくなります。すると発生トルクは同一でも、回転数の上がり方は2気筒の方が素早くなります。気筒数が少ないメリットはココです。
比較的回転数の変化が小さい高速域では、絶対的な力=トルクの影響が大きいですが、回転数の変化が大きい低速域での加速では気筒数の少ない2気筒エンジンの方がスッと回転が上げられるのでしょうね。
走行モード
トゥインゴには「ECOモード」が用意されています。ECOモードにすると吸気量をカットするそうです。ゆっくり走っている分にはほとんど変化を感じません。単に最大吸気量を落としているだけで、スロットル開度が小さいときには影響がないのかもしれませんね。
元々燃費の良い車(JC08で24.0km/L)なので、あえてECOモードにする必要はなさそうに思います。
RRらしさは感じられるか?
コーナリングでグッとアクセルを踏み込むと、たしかに後輪駆動らしさは感じられます。けれども、絶対的にトルクが足りないのでそれほど楽しめないというのが悲しいところ。極低速域でステアリングを大きく切り込めばリアがぐぐっと滑りだろうとする感覚に襲われますが、中高速域ではトルク不足で楽しみきれません。もっと力強く加速してよっ!となりました。
後輪駆動なので余計にコーナリングに期待してしまうと言うのもあるかもしれません。FFだったらこんなもんかなーで済んでしまうものですが、せっかくRRならもっと「らしさ」を出して欲しいと思ってしまいます。
コーナリングではちゃんと前輪に荷重をかけないとややアンダーステア(コーナー外側に膨らむ)になります。フロントが軽いですからね。前後重量配分は空車状態で 40:60、大人2人が前に乗ってほぼ 50:50 になるそうです。ただ、重量物の搭載位置で言えばリアの方が遠くにあるので、減速中は重量配分ほどは前輪に荷重がかかってくれないようです。
前輪に荷重をかけてステアリングを大きく切り込み、ぐっと加速すれば今度はオーバーステア傾向に。こういったところはRRならではの楽しみができそうですね。
最小回転半径4.3m
最小回転半径が4.3mとかなり小さく、ハンドルがかなり回ります。4.3mというと、世界中の乗用車の中でもトップクラスに小さいです。軽自動車ですら4.5~4.7mくらいがほとんどですからね。
駐車は楽なんですが、普通に走行するシーンも含めてステアリングの切れ角がもう少しクイックな方が面白かったかなぁと思います。
トランスミッション
トゥインゴにはデュアルクラッチトランスミッションが搭載されています。輸入車のこのクラスはほとんどがシングルクラッチ式で、デュアルクラッチ式を採用しているのは他にありません。フィアット・500、フィアット・パンダ、フォルクスワーゲン・up!はいずれもシングルクラッチ式ですし、ミニクーパーは通常のトルコン式を採用しています。
トルコン式 | CVT (無段階変速) |
シングルクラッチ (AMT) |
デュアルクラッチ (DCT) |
|
---|---|---|---|---|
発進フィール | ○ | ○ | △ | △ |
変速フィール | ○ | - | △ | ◎ |
変速速度 | ○ | - | △ | ◎ |
ダイレクト感 | △ | × | ○ | ○ |
クリープ現象 | ○ | ○ | △*1 | △*1 |
燃費 | △ | ◎ | ○ | ○ |
コスト | 安 | 安 | 安 | 高 |
採用車種 | 大半のAT車 デミオ,クラウン BMWなど |
最近の国産車 プリウス,フィット インプレッサなど |
欧州廉価車 500,up! など |
欧州高級車 ゴルフ,ポルシェ フェラーリなど |
*1 クリープ現象は擬似的に再現しているメーカーも多い。
最も標準的なトルコン式が平均点ですね。最近の国産車では燃費を重視してフィーリングの悪いCVTが増えてきました。ダイレクト感が重視されるヨーロッパでは、シングルクラッチやデュアルクラッチが多く採用されています。理想的にはデュアルクラッチなんですが、コストがかかるために安い車ではシングルクラッチが採用されているのが現状です。
トゥインゴのトランスミッションの完成度は他のDCT採用車に比べるとやや劣るものの、シングルクラッチよりは明らかに上です。マニュアルモードで変速したときに反応が遅いことだけは気になりましたが、変速フィールは悪くありませんし、何より普通に運転できます。シングルクラッチは変速にかなりクセがある(変速中にトルクが抜ける)ので、MT車に乗ったことがない人が乗るとかなり違和感があります。デュアルクラッチならその心配はありませんので、国産AT車しか乗ったことのない人でも問題無く運転できます。
Dモードではギアが分からない
残念だったのは、メーター内のギア表示がマニュアルモード中に限られることです。Dレンジ(自動変速モード)では「D」とだけ表示されて、今何速に入っているのかは分かりません。タコメーターが無い事と相まって、今エンジンにどれくらい余裕があるのかが掴みづらくなっています。
「そういう車ではない。ただの実用車だ」と言われればそれまでですが、日本でトゥインゴを選ぶ人は運転好きが多いでしょう。タコメーターもギア表示も無いのは結構痛いところですね。
マニュアルモード
よくある「マニュアルモード付きAT」と同様に、シフトレバーを倒すと自分でギアを選択できます。進行方向に倒すとアップ、後方に倒すとダウンです。加速Gを考えると後方がアップの方が適切なはずなんですが、実際にそうしているのはフィアット・アルファロメオ系とマツダくらいですね。
マニュアルシフトモードにしていても高回転までシフトしなければ自動でシフトアップします。どうやらここがトゥインゴの限界のようですね。回転数が見られないので、いつ変速するのか予想できないのがつらいです。
足回り
足回りはやや柔らかめです。国産Aセグメント(軽とソリオ、ルーミー/タンク)よりはずっとしっかりしているものの、なんだか宙に浮いているようなふわふわ感が残ります。足回りの完成度は500の方が上に感じましたね。
ドライビングポジション
フロアが高い
トゥインゴに乗り込んですぐは「着座位置が低くていいなぁ」と誤解していましたが、実際にはシートが低いのではなくフロアが高くなっています。RRレイアウトを取るので通常はリアシート下にある燃料タンクが積めません。そこでフロントシートの床下に燃料タンクがあるわけですが、地面ヒットのリスクがあるので搭載位置をあまり低くもできない。そこそこの高さに燃料タンクを載せたので床面が高くなってしまいました。
これで日本車なら床だけでなく座面(シート自体)も高くしてしまうところですが、トゥインゴが高くなったのは床面だけ。シートの座面はそれほど高くなっていません。結構高い位置にシートがあるので理想的ではありませんが、被害は最小限にできたのかな、と思います。
まぁこれがフィットなら床面の上・シートの下に入れて「センタータンクレイアウト!」となるところですが、ホンダのセンタータンクレイアウトは特許らしいのでトゥインゴには採用できないのでしょう。そもそもリアシート下はすぐにエンジン補機類があるので、ガソリンタンクなんて入らないのかもしれませんね。
シート位置,ステアリング位置
シートバックの調整がダイヤル式なのはフィアット・500と同じですね。座面の高さ調整もあります。
ステアリングはチルトのみです。このAセグメント車ではテレスコピック(前後調整)はなかなか付きませんね。ステアリング位置はさほど悪くないので、ドライビングポジションに問題はありませんでした。
シート品質
シートはあまり良くありません。ふわっと柔らかめなのは他のフランス車と共通しているところでもありますが、形が良くありません。日本の軽自動車ほどではないにせよ、シートにホールドしようという気がほとんどありませんね。Aセグメント車としては普通なのかもしれませんけど。
小さな車なので用途としてそぐわないのかもしれませんが、このシートでは長距離走行には向きません。しっかり支えてはくれないので、1時間以上乗っていると腰が痛くなってくる可能性があります。
欧州車は車格によって用途を限定している節があります。「Aセグメントで長距離なんて走らないでしょ?」と言っている感じを受けますね。長距離走りたければ、Cセグメント以上を買うのが欧州の常識ですという言葉すら感じます。
キャンバストップ
電動キャンバストップの差額がわずか10万円とかなり安いです。開閉動作もスムーズなのでなかなか良いですね。ただ、500Cほど大きく開くわけではないので、解放感は限定的です。500Cですら本気のオープンカーには大きく劣りますからね。後席の圧迫感が軽減されるのでオマケ機能としてはいいかもしれません。
キャンバストップ開口部前方に、標準で巻き込み防止の飛び出しポップアップバーが付くのは嬉しいですね。500Cではオプションです。これの有無で結構巻き込みが違いますからね。開けていても髪がぐしゃぐしゃにならないのはいいですね。
まとめ
国産Aセグメント基準で考えた十分に力強い走りだとは思いますが、やや物足りなくも感じてしまいます。せっかくのRRレイアウトを生かし切れていない感じがするのが残念なところ。MTが入ってくるのにさらに非力な1.0L自然吸気エンジンです。リアにエンジンを積む以上、これ以上大きなエンジンにはできないでしょうね。RRで直列4気筒1.2Lターボとかになったらかなり面白いんですけどね。スペース的に厳しいでしょう。
Aセグメントで世界最多(要確認)の販売数を誇るフィアットは一日の長があります。フィアット・500と比べると、パワー感では0.9LターボのTwinAirに、静粛性や低振動では4気筒1.2L自然吸気エンジンにやや劣ります。トゥインゴの今後のアップデートに期待ですね。
私の理解ではルノーのような車は「パワートレイン」や「デザイン」などのどれかが優れていて選ぶというよりも、車全体での総合力で選択するタイプの車だと思っています。エンジンや内装などをつぶさに見ていくと悪い点(というか安っぽい点)がどうしても目立ってしまいますが、車全体では「いいなコレ!欲しい!」と思わせる何かがあります。それはコンパクトの良さを前面に出した可愛らしいデザインであり、RRという特殊なレイアウトであり、小排気量・5ドアというパッケージングであり、国産では絶対に味わえない走りであり、それらすべてです。絶妙な価格設定を含めて総合的に「欲しい!」と思わせてくるのがトゥインゴのニクいところ。
トゥインゴが気になる人は是非実際に見て、乗ってみてください。ドンピシャでハマる人は「これしかない!」と感じることでしょう。日本での輸入車の存在意義はそこにあります。みんなが「安いし広いからこの車にするかなー」みたいに選ぶ車ではなく、一部の人が「絶対にこの車がいい!」ってなるんです。特に「4ドア」「AT」が絶対条件になっている人が多い日本ではいい立ち位置を築いていくことでしょうね。
デザイン&実用性のレビューはこちら↓
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