RX-9が正式承認?ホリデーオートのスクープを検証
ホリデーオートから「マツダ・RX-9」が正式承認されたとのニュースが入ってきました。その信憑性をチェックしましょう。
現状のマツダからはちょっと厳しいんじゃないか?
目次
マツダ・RX-9
「RX-9」という名前自体はずいぶん前から登場しています。ロータリーエンジンを搭載したスポーツカー「RX-7」の後継者として度々呼ばれている名前です。
RX-8の次だからRX-9?
2002年に生産終了した3代目RX-7(FD3S)の後継者は登場せず、ロータリーエンジン搭載車は「RX-8」に引き継がれました。「RX-9」の名はRX-7, RX-8からの連続だとよく思われますが、マツダの命名規則はそうはなっていません。
- マツダの命名規則
- RX-7, RX-8やMX-5(ロードスターの海外名)に使われている数字は、マツダ内での車格番号を示すものだそうです。RX-7とRX-8ではロータリーエンジン搭載車の開発順を示す意味も含まれていますが、昨今のロータリー以外の車種の命名からすると車格番号を付ける可能性が高いと思います。
現在のマツダのラインナップ(スカイアクティブ全面採用モデル)はすべて数字で表現されます。CX-3, CX-4, CX-5, CX-9はもちろんのこと、アテンザの海外名は「Mazda6」、アクセラは「Mazda3」、デミオは「Mazda2」、ロードスターは「MX-5」です。
RX-9なら車格が上がる
ロードスターの海外名「MX-5」と「CX-5」ではサイズ感が随分異なる(実寸でもロードスター:3,915×1,735×1,235mm、CX-5:4,540×1,840×1,705mm)ので、クーペ/オープンの類は別基準のようです。
4代目RX-7ではなく初代RX-9を名乗るのであれば、RX-7、RX-8を上回る車格(サイズや車種の性格、性能など)でないと相応しくなくなってしまいます。
「RX-9」の開発が正式承認?
本題です。ホリデーオート編集部の名義で、RX-9の開発が正式承認されたとのスクープが入ってきました。
【スクープ!】夢を継ぐもの〜RX-9の開発が正式に承認されたらしいよ!
次世代ロータリーエンジン=SKYACTIV-Rを搭載したピュアスポーツカーの開発が、ついに役員会で正式に承認されたました。
だそうです。本当なのでしょうか?
度々出てくるこの手のニュース
ロータリーエンジンを搭載した新型車の話は度々出てきます。スープラ後継やNSX後継(実際に発売されました)、シルビア後継などと同じく注目されやすいニュースなのでよく取り沙汰されます。
当のホリデーオートを含め、月刊や季節刊の自動車情報誌にはこの手のニュースがよく掲載されます。正直言って眉唾な客寄せスクープも多く、この「○○発売か」を見るのは何度目だろうかと思うことがよくあります。春頃に出てくる新型iPhoneのニュースがそうであるように、「可能性があるのかも」程度に情報を取捨選択する必要があるかと思います。
過去のニュース
過去にはアテンザベースで開発されているとの情報もありましたが、これにはあまり現実味がありませんでしたね。
レシプロエンジンでFF駆動の4座セダンを、ロータリーエンジンでFR駆動の2座クーペに作り替えるのはあまりに労力がかかることでしょう。プラットフォームを共通にすることを前提に開発された、レシプロ+FRの3代目ロードスターとロータリー+FRのRX-8ですら、実際に開発していくうちにどんどん専用設計が増えてしまってほとんど共通箇所が無くなってしまったと言われています。FFをFRにしたらさらに離れてしまうことでしょう。
数ヶ月おきにはこういった「ロータリー復活」的なニュースが飛び込んできますが、だいたいは眉唾的な夢物語ばかりです。
RX-VISIONとの関係
今回のスクープを裏付けるものとして、昨年の東京モーターショーで発表された「RX-VISION」があります。ロータリーエンジン搭載を前提にしたコンセプトカーで、その流麗なデザインも相まって話題になりました。
マツダが久々に公式の場でロータリーエンジン関連のモノを出品したので、一気に期待が高まりました。2007年に新型ロータリーエンジン「16X」が発表されて以降は音沙汰無しでしたからね。
ただ、RX-VISIONはあくまでコンセプトカーですし、ロータリーエンジンは積まれていないので走ることはできません。マツダ自身も「マツダエンジニアが考える夢のロータリースポーツを形にした」と言っていて、実現できるのかという現実的な部分までは考慮されていないようです。
RX-VISION市販化の可能性については以下の記事で分析しましたが、要するに市販化は厳しいです。
今のマツダにはやることが山盛り
スカイアクティブ&魂動デザインの成功で調子づいているマツダですが、余裕がある状況ではありません。スカイアクティブ戦略の第一世代が完了し、第二世代の投入が始まろうとしています。つまり第二世代の技術を取りまとめて量産化へと進めていることでしょう。スカイアクティブ第二世代では「HCCI」という新技術も期待されています。
全車種に投入する新技術を次々完成させないといけない時期に、ロータリーエンジンのようにたった1車種のために多大な開発コストをかけることができるのでしょうか? いくらフラッグシップとはいえ、スポーツカーが売れないこの時代に完全専用設計の車種を開発するほどの余裕があるとは思えません。
ちなみにHCCIとロータリーエンジンを組み合わせるというアイディアもあるにはありますが、レシプロHCCIすら安定していない次期での投入はあり得ないでしょうね。
売れないロータリーよりもプレミアム化路線の方が現実的
件の記事では「RX-9」を800万円程度で発売しようとしているとのことでした。これでは多数売れる車種になるとは到底思えません。あくまでフラッグシップ、イメージリーダーとしての役割が中心になるでしょう。
それよりもマツダの業績を支える基幹車種を、より高くより多く売れる車種に仕立てていくこと、そしてマツダブランドをより高級路線に進めていく方が現実的に思います。
上の記事の情報源は日経、そして元をたどれば「2020年発売予定のFR車」との話でした。それがFRアテンザなのかRX-9なのか。
このニュース自体も信憑性がよく分かりませんが、マツダの路線としてはアテンザ・アクセラをFR化する方が可能性が高いと思います。国外でのマツダはBMWに比肩すると言われるほどのブランド力を獲得していますので、FR化とプレミアム路線は合っていると思います。
基幹車種のFR化が一段落してから、FRアテンザをベースにRX-9を開発する。さすがにそれじゃ遅すぎますかね。もう世の中は電気自動車ばかりになっているかもしれません。
まとめ
2017年、ロータリー50周年でプロトタイプ発表。2020年、マツダ100周年で市販モデル発表。とても美しいと思います。でも状況は厳しいと言わざるを得ません。
私はロータリーエンジンが大好きです。模型を部屋に飾ったりアニメーションを眺めるほど好きです。でもロータリーエンジン搭載車の復活可能性はまだあまり高くないと思っています。もちろん復活してくれればとても嬉しいですが、現状を冷静に分析する限り「本当にそうだったらいいなぁ」くらいに受け止めておくのが良いと思いますよ。