[ロードスターで考える] エンジントルクと加速力の関係を解説

  2016/10/24   

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エンジンの特性のひとつ、「トルク」が加速にどのように影響するかを解説します。

一般人向けにちゃんと解説されているものがあまりありませんからね。計算が多くて退屈かもしれませんがお付き合いください。

題材には、マツダ・ロードスター(4代目ND型)と、兄弟車のアバルト・124スパイダーを使います。同じ車体ながら性格がまるで違うのが見えてきますよ。

今回は「トルク」と「進む力」の関係を紐解いてみます。

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トルクカーブ

エンジントルクはエンジンの回転する力を示しています。エンジンの出力は回転だけなので、エンジンの基本性能はほぼトルクだけで示せます。(ターボラグのようなアクセルレスポンス、あるいは燃費や振動といった要素もありますが、この記事では取り上げません)

ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの場合、トルクの出方は回転数に大きく依存しているので、回転数に対する出力トルクの変化を示す「トルクカーブ」というグラフが使われます。トルクカーブは、フルアクセルにしたときにエンジンの出力軸が回転しようとする力を示したものです。

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データの出典元
データの出典について触れておきましょう。

ロードスターはマツダ技報からデータを得ました。数値を見てもかなり正確だと思われます。124スパイダーは公式のデータが見つかりませんでしたが、同じエンジンを積むアルファロメオ・ジュリエッタで実測したデータがあったのでそちらを使いました。最大トルク回転数に多少のズレが見られますが、他の実測などと比べても、カタログスペックに即した良いデータのようです。0-100km/h加速や最高速度の値とも矛盾はありません。

トルク特性の違い

ロードスターは1.5L自然吸気エンジン、124スパイダーは1.4Lターボエンジンを搭載しています。かなり特性が違いますね。

ロードスターは明確に「フラット」です。自然吸気エンジンの特性でもありますが、1,500rpmでも最大トルクの85%、レッドゾーン入口の7,200rpmでも最大トルクの84%を維持しています。特に最高回転数でもトルクが落ちないのは高回転の伸びを感じさせるので良く回ると感じさせます。

一方ターボエンジンの124スパイダーは大きな変動があります。ターボが効いていない1,500rpmでは排気量が小さい分ロードスターより小さなトルクしか出ませんが、2,000rpmを超えたあたりからググッとトルクが増してきています。比較的低回転からトルクが大きいのはダウンサイジングターボの特徴ですね。

レッドゾーンはロードスターより低い6,500rpmです。6,000rpm以上はトルクの落ちが大きいので、124スパイダーのエンジンではこれ以上回す意味はあまりありません。

トルクと駆動力の関係

トルクが駆動力(車を走らせようとする力)にどう関係しているのでしょうか。ロードスターが2速・3,000rpmでフルアクセルのときを考えてみましょう。

駆動力

トルク

エンジンが回転させようとする力であるトルクは、3,000rpmで約14.4kgmです。トルクはSI単位[N](ニュートン)を使って141[Nm]とも表されます。

トルクは、回転軸に長さ1mの棒を付けたときに先端を回転させる力です。141Nmでは、1mの棒の先は141Nの力で回ろうとします。トルクについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

ギア比

ロードスター6MTの2速のギア比は2.991、ファイナルギアは2.866です。

ギアを介して回転数を落とすと、回転速度は落ちますが回転させる力は増します。タイヤを回転させようとする力は1210[Nm]になります。

タイヤ半径

タイヤが回って実際にどれだけ進むかは、タイヤの大きさによって決まります。

ロードスターのタイヤサイズは「195/50R16」です。タイヤ幅は195mm、タイヤの厚さと幅の比(扁平率)は50%、ホイールサイズは16インチです。ホイール直径は16×25.4=406.4mm、タイヤの厚さは195×0.50=97.5mm。タイヤの半径は、406.4÷2+97.5=300.7mmです。

駆動力

エンジンの力によって、車を前に進めようとする力(実際に前に進む力ではありません)は以下のように計算されます。

1210[Nm]÷0.3007[m]=4,025[N]

つまり、エンジンによって車は 4,025N(ニュートン)の力で前に進もうとします。これがエンジンによる駆動力です。

「4,025N」じゃよく分からない? 分かりやすくするとこうです。

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411kgの重りで進むのと同じです。ロードスターは1トン以上ありますが、タイヤがコロコロ転がるので400kgの重りでも十分加速します。

速度

ギアと回転数が決まっていれば、速度も計算で求められます。こちらも一応計算しておきましょう。

1時間当たりのエンジン回転数は 3,000×60=180,000 [回転/h] です。ギアで減速されるので、1時間当たりのタイヤの回転数は 180,000÷2.991÷2.866=20,998 [回転/h]。

タイヤ周長は601.4×3.1416=1889mm。よって進む速度は、20,998[回転]×1.889[m]÷1000=39.7[km/h]。

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理想加速力

駆動力がそのまま100%が車を加速させるために使われた場合、車の加速力はどれほどでしょうか。実際には空気抵抗やタイヤの転がり抵抗がありますが、そられを無視したときの加速力をここでは「理想加速力」と呼ぶことにします。

ロードスターの車重は1,010kgです。ここに人間二人乗車すると仮定して110kg追加します。

物体に力をかけて加速するときは運動方程式 ma=F という式に従います(詳しくは高校物理の範囲ですが、ここではそういう式がある、程度で十分です)。力は 4,025N、車両全体の質量は 1,120kg。したがって加速度は 3.59 [m/s2]です。これを分かりやすくGで表すと 0.366 G(地球の引力による重力加速度の 0.366 倍)です。

まとめ

ここまでで、「エンジンによって車が進もうとする力」が計算できました。例としてマツダ・ロードスターは、2速・3,000rpmでフルアクセルのとき、抵抗が一切無ければ、3.59 [m/s2] で加速することが分かりました。

でも実際に走るときは空気抵抗やタイヤと路面の摩擦などの走行抵抗がかかります。次回はこの走行抵抗について解説します。

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