シビックタイプR着座レビュー!予想外に安価(428万円)なFFスポーツハッチ
東京モーターショーに日本初公開となるホンダ・シビック タイプRが展示されていました。
同時に日本での価格も発表され、スタート価格は428万円と予想外に安価(あくまで予想に対して)でした。価格を予想した記事↓
東京モーターショーで実際に見たデザインと、運転席・後部座席の着座レビューです。
ホンダ・シビック タイプRとは?
世界最速の量産FF車です。2015年3月に、ニュルブルクリンク北コースでタイム測定を行い7分50秒63を記録。2014年にルノーの「メガーヌRS.275トロフィーR」が記録したタイムを4秒程上回って、量産FF車におけるニュルブルクリンク北コースの最速タイムを更新しました。
生産するのは三重県鈴鹿市のホンダではなく、イギリスの「ホンダオブザユーケー」です。イギリスで生産する日本車を日本に逆輸入することになります。車検証に記載される車名(普通はトヨタやマツダなどのメーカー名が入る)もおそらく「ホンダオブザユーケー」になることでしょう。
新型シビックの標準モデルは日本で発売される予定がなく、スポーツグレードのタイプRのみが日本に入ってくることになります。
ホンダの「タイプR」
ホンダのスポーツカー/スポーティカーの最上位グレードとして設定されてきたのが「タイプR」です。普通の車におけるグレードの違いの枠を超えて、エンジンやボディ、サスペンション、ブレーキなどがスポーツ走行に適した専用のものが使われ、特別なグレードとして扱われています。カタログは別で用意されているので、日産における「スカイライン」と「スカイラインGT-R」のようにもはや別車種に近い扱いを受けています。(ちなみにWikipediaの項目もタイプRは別になっていたりします)
今まで設定されたのは、NSX、インテグラ、シビック、アコード(欧州のみ)の4車種です。現在販売されているのはこのシビックタイプRのみです。
エクステリアデザイン
実際に見てみるとかなり大柄でボテッとした印象を受けました。車体を形付けるラインがプリウスのようなワンモーションフォルムに近い形状になっており、さらに車幅が1,880mmとこのクラスの日本車としては随分幅広なので、どーんという重量感がありました。
特にリアはゴテゴテとしたパーツが多く、余計にボテボテした印象になっていました。大きなリアウイングは迫力があって良いんですが、リアハッチの折れ目(テールランプの上端)がかなり高いので、かなり腰高なデザインになってしまっています。実用車としてはこれでもいいんでしょうが、スポーツハッチとしてはややデザイン性に欠ける感じがしてしまいますね。5ドアボディを実用車である標準のシビックと共有する以上仕方なかったんでしょう。
FF最速におけるライバルたるルノー・メガーヌR.S.は、実用車たる5ドアハッチバックに対して、車幅を増やし車高を抑えた3ドアハッチバック版のボディを採用しています。スポーツハッチとして専用ボディが与えられることでデザイン的にも運動性能的にも利があることでしょう。3ドアの方が車重に対して剛性を確保しやすいというメリットもあります。
こうしてメガーヌR.S.と比べてみると、シビックRは随分ゴテゴテとしていますよね。
ホイール・タイヤサイズ
ホイールは前後ともに19インチで、タイヤサイズは235/35R19でした。扁平35とかペラペラ過ぎですね。タイプRなので推して知るべしって感じですが、乗り心地には期待しない方がいいでしょう。
インテリアデザイン
内装は歴代ホンダ車らしいデザインを踏襲しています。黒・赤・アルミ調がバランス良く配され、スポーティさと特別感をうまく醸し出しています。
マニュアルトランスミッションのシフトはかなりクイックです。シビックの6速MTのシフトパターンは右下に後退ギアがあるのですが、後退ギアに入れるための特別な操作(シフトノブを押し込むなど)が無いため、停車状態で普通に右に倒すとRのある位置まで倒れてしまいます。走行中にどうなるかは不明ですが、もしこうなるなら4→5や4→6でシフトミスしそうです。
展示してあったシビックRのシフトノブはなぜかノブ下のネジが見えていました。何かパーツを忘れたんでしょうか?
シートはもちろんバケットシートです。レカロかと思いましたがホンダオリジナルのシートだそうです。
着座感はかなり良く、上質な座り心地とホールド感が両立されています。あまり良くなかったアルトワークスのレカロとは違いますね。やはり車格と価格の違いでしょうか。
リアシートは普通です。5ドアハッチバックながら4人乗りなので中央が盛り上がった形状になっています。中途半端に横方向に体が動かないようにしたところでタイプRがスポーツ走行したらリアシートなんて乗れるもんじゃないでしょうからあまり意味が無いような気がします。
フロントシートがバケットシートなのでシート下に足を入れることができず、後部座席の足元は狭いです。実用車としては困りものですが、タイプRなので問題無いでしょうね。
トランクスペースはスポーツカーとして見れば広大です。まぁ普通のハッチバック車と同等ですね。この辺は完全に実用車です。
リアハッチはかなり高く開くので、天井の低い所では注意が必要です。
スペック
ライバルたるメガーヌR.S.と比較してみました。
車種 グレード |
ホンダオブザユーケー シビック タイプR |
ルノー メガーヌ ルノー スポール(R.S.) トロフィー |
---|---|---|
ボディ形状 | ハッチバック | |
ドア数 | 5ドア | 3ドア |
定員 | 4名 | 5名 |
全長 | 4,390 mm | 4,320 mm |
全幅 | 1,880 mm | 1,850 mm |
全高 | 1,460 mm | 1,435 mm |
ホイールベース | 2,600 mm | 2,640 mm |
車重 | 1,380 kg | 1,400 kg |
駆動方式 | FF | |
トランスミッション | 6MT | |
エンジン形式 | 直列4気筒 16バルブ | 直列4気筒 16バルブ |
排気量 | 1,995 cc ターボ | 1,998 cc ターボ |
最高出力 | 310ps / 6,500rpm | 273ps / 5,500rpm |
最大トルク | 40.8kgm / 2,500-4,500rpm | 36.7kgm / 3,000-5,000rpm |
フロントサス | マクファーソン | マクファーソン(ピボット独立式) |
リアサス | トーションビーム | トーションビーム |
燃費 | 13.0 km/L | - |
価格 | 428 万円~ | 426 万円~ |
価格はあまりにも意識しすぎで気持ち悪いくらいですね。でもイギリス価格が£30,000(約570万円)なのに、輸送費のかかる日本でこの価格で販売してくれるのは日本人としては嬉しいですね。むしろイギリス人が怒りそうな気がします。
メガーヌR.S.と比べると大きな違いはエンジン性能でしょうか。メガーヌに対して1割増しの最大トルクを500rpm下から出せて、最高出力は37psの差がついています。
実用車として比べれば、後部まで高い車高があり5ドアのシビックRの方が勝っているのは間違いないでしょう。タイプRは実用性を求める車ではないのかもしれませんが、そもそもシビックな時点で実用性を犠牲にしきれない貪欲さを感じてしまいます。
展示車のフロントガラスに貼ってあったスペック表もそのまま書いておきます。
車名・型式 | ホンダオブザユーケー シビック タイプR DBA-FK2 |
---|---|
全長 | 4,390 mm |
全幅 | 1,880 mm |
全高 | 1,460 mm |
車両重量 | 1,380 kg |
乗車定員 | 4 名 |
最小回転半径 | 5.9 m |
エンジン形式・種類 | K20C・水冷直列4気筒横置DOHC(ハイオク仕様) |
総排気量 | 1,995 cc |
最高出力 | 310ps / 6,500rpm |
最大トルク | 40.8kgm / 2,500-4,500rpm |
燃料供給装置形式 | 電子制御燃料噴射式(ホンダPGM-FI) |
燃費(JC08) | 13.0 km/L (7.69 L/100km) |
主要燃費向上対策 | 直噴エンジン 可変バルブタイミング 電動パワーステアリング アイドリングストップ装置 |
価格 | 428 万円~ |
まとめ
イギリス価格を考えればかなり安く出してきましたね。
先代の「タイプRユーロ」が300万円だったり、その前が284万円だったり、EK9の頃なんて200万円だったじゃないかとか考えてはいけません。「FF最速」の「最速」はどんどん向上していってるのですから、その時代の「最速」が高くなるのは当たり前です。
こんなに出したらFRのスポーツセダンが買えるじゃないかとかも考えてはいけません。「FF最速」だから価値があるんです。「FRでそこそこ速い」では意味が無いんです(たぶん)。
たしかにこの価格なら面白そうですね。外装はともかく内装と中身はちゃんとホンダスポーツカーでした。
高性能FFといえばマツダスピードアクセラの動向も気になるところですね。こちらは先代が270万円~でした。