ミラトコット発表!ゴテゴテじゃなくなった女性向けはミライースと何が違うのか
ダイハツが新型軽自動車「ミラ トコット」を発表しました。明確に女性をターゲットにしたトコットはどんなコンセプトなのでしょうか? ミライースとの棲み分けは?
目次
ミラ トコット発表
ダイハツの新型軽自動車「ミラ トコット」。ダイハツ自身としては2016年9月の「ムーブキャンバス」、2016年11月の「トール」(トヨタとスバルにOEM供給あり)以来久々となる新型車です。
ミラココアの後継
とはいえ、格安軽自動車「ミラ」をベースとした派生車種ですから、完全な新造とは異なります。3月に生産終了した女性向けの「ミラココア」の実質的後継車種です。
世の中的に「夫はミニバン、妻は軽」という世帯が多くあります。独身女性も軽自動車を買う人が多いですね。「家族用のクルマ」と違って「ほぼ女性しか乗らない」ことを前提に軽自動車を購入する場合も多いので、それに合わせたクルマを用意しているというわけです。同じ流れで作られた車だと、同じダイハツのムーヴキャンバスがありますね。
「ミラ」一族に親族が増えた
やたらと多い「ミラ」一族。ミラ自体は1989年発売で40年近いロングラン車種ですが、派生車種もやたらと多い。かつては「ミラ TR-XX」「ミラ モデルノ」があり、ミニクーパーをパクった「ミラ ジーノ」、他に「ミラ アヴィ」「ミラ カスタム」「ミラ ココア」と色々ありました。
一族が増えたとはいえ、創業者ともいえる本体「ミラ」が今年2月に生産終了してしまったので、現行は「ミラ イース」と、今回の「ミラ トコット」のみとなりました。まぁ燃費で良いイメージのついたミライースと比べると、単に安いだけで商用車のイメージすらある素のミラを残すメリットが無いと判断したのでしょう。MTを除けば81万円スタートのミラに対して、ミライースは84万円スタート。しかもミラは2013年以降CVTだと3ドアしか選べなかったので、乗用車目的で売る気はありませんでした。
商用車として考えても、価格差が無ければ3ドアにメリットは感じない人が多いと思います。ラインナップの整理による効率化(コストの圧縮)という観点でも、3ドアをやめてボディの種類を
軽自動車なんてサイズもエンジンも似たり寄ったりでバリエーションが限られますから、ミニ四駆のようにフタを載せ替えて見かけの車種を増やすわけですね。
ギョロっとした顔
ミラトコットは派生車種とはいえ、独自のフロントフェイスを与えられています。それがコレ。
目がギョロっとして見えませんか? ミラココアやムーヴキャンバスの流れを汲む大きめの丸型ヘッドライト自体は良いのですが、内部のLEDヘッドランプが小さすぎることと、その周りに10年前に流行ったイカリング状のパーツが付いたことで、出目金や爬虫類のような飛び出た目、あるいは仰天した目を連想させるような顔になっています。
ムーヴキャンバスも大概ですが、フロントのデザイン要素が多いのでそこまで気になりませんでした。ミラトコットはデザイン全体がシンプルなことで、ほとんど唯一のデザイン要素であるヘッドライトが目立ってしまっているように思います。
ヘッドライトを除けば、ミラトコットのデザインはスッキリしています。以前の女性向け軽自動車にありがちだった、「カワイイ」を強要するかのようなゴテゴテしたデザインがなく、良く言えばシンプル、悪くいえば安っぽいデザインになっています。女性向けと言えども好みが分かれそうですが、好みが分かれるのはどんなデザインにしても同じでしょう。ミラココアとは「狙いを変えた」といった所ですかね。
プロモーションカラーに使われている淡い緑のボディ(セラミックグリーンメタリック)、ナチュラル系のテイストを出そうとしたのは想像に難くないのですが、どうも軍用車っぽさが否めません。
ダイハツ内の立ち位置
軽自動車を購入する場合に、実際に乗る人(あるいは決定権を持つ人)が女性な場合が増えたこともあって、ダイハツのラインナップはターゲットとする性別が明確に分かれるようになりました。
女性的 | 中性的 | 男性的 | |
---|---|---|---|
スポーツ風 | コペン | ||
SUV風 | キャスト | ||
ミニバン風 | ウェイク | ||
実用 | ムーヴキャンバス | ムーヴ | ムーヴカスタム |
格安 | ミラトコット | ミライース | |
商用 | アトレーワゴン |
メーカーの「想定ターゲット」なんてものは架空のものなので、女性がムーヴカスタムに乗ろうが、男性がミラトコットに乗ろうが自由だとは思いますが、ダイハツは明確に区分することで、ほとんど同じ車を、さもユーザーにピッタリのように見せているわけです。軽なのでどれを選んでも走りや安全性は劣りますが、軽を買う人はそんなことまで深く考えません。
ミラトコットは元となったミラココアと同様、「車高が低く価格が安い軽自動車」というクラスにおける女性向け車種を担うわけです。
ミライースとの違い
ミラトコットのベースであるはずの「ミラ」が無くなってしまいましたから、ダイハツの「車高が低く価格が安い軽自動車」というクラスはミライースとミラトコットのみです。ミラトコットはミライースから何を変えたのでしょうか? 最低限のグレード(リアパワーウインドウ、アルミホイールがあって、スマートアシスト3 装備)で比較してみましょう。
車種 | ダイハツ ミラトコット |
ダイハツ ミライース |
---|---|---|
グレード | L SAIII | L SAIII |
全長 | 3,395 mm | |
全幅 | 1,475 mm | |
全高 | 1,530 mm | 1,500 mm |
車重 | 720 kg | 650 kg |
駆動方式 | FF | |
トランスミッション | CVT | |
エンジン形式 / 排気量 | 直列3気筒 / 660cc ガソリン | |
最高出力 | 52ps / 6,800rpm | 49ps / 6,800rpm |
最大トルク | 6.1kgm / 5,200rpm | 5.8kgm / 5,200rpm |
燃費 | 28.6 km/L (3.5 L/100km) |
35.2 km/L (2.8 L/100km) |
年間燃料費 (10,000km, R:146.2円) |
5.1 万円 | 4.2 万円 |
価格 | 125 万円~ | 94 万円~ |
同じミラだからほとんど同じかと思いきや、同じなのはボディでエンジンは別のモノが載っています。(エンジン型式は同じ「KF型」ですが、出力特性が異なります。) ミラトコットのエンジン特性はムーヴやムーヴキャンバス、キャストなどと同じで、ミライース以外のダイハツの軽はほぼこのエンジン特性のみです。
軽自動車という一区画の中で微妙な差を付けてユーザーを獲得しようとしているわけですから、他社種との差別化が必要です。「燃費が良く装備も一通り選べて、デザインも良い上にスタート価格が安い」なんて全方向の車種も作ろうと思えば作れるはず(下位グレードの装備を引っぺがしてスタート価格を安くして、装備を揃えた上位車種はそこそこ高くする)ですが、そんなものを作ってもそんなに売れません。軽自動車を選ぶユーザー層は、なんとなく自分に合っていそうな車を選ぶ傾向が強いでしょう。
そんなユーザー層向けには、「燃費を重視するならコレ」「荷物たくさん載せるならコレ」「女性がメインで乗るならコレ」「カッコ良い系が良ければコレ」「老人はコレ」とターゲットを明確に区分してあげる必要があります。ミライースは「燃費重視層と老人」、ミラトコットは「女性の買い物用」とメーカー側が区分しています。この区分に乗っかるかはユーザー次第ですが、多くの軽自動車ユーザーはこの想定にそのまんま乗っかっちゃうのでしょうね。
燃費の数値に騙されるな
エンジン以外に顕著に異なるのは燃費です。元々ミライースは燃費の良さをウリにした車。同じミラ派生でもミラトコットはそれほど良い燃費特性にはしませんでした。おそらく原因は車重が1割ほど重い(むしろミライースが軽量化を徹底している)ことでしょう。
燃費が違うとはいっても、一般的な年間1万キロでの年間燃料費の違いは、カタログ燃費で計算しても1万円足らず。ミライースに限らず実質燃費の違いは数千円でしょうから、見かけの燃費だけで優劣を比較するのはほぼ無意味です。地球環境のために燃費の良い車に乗るんだ!という高尚な人は別ですが、そういう人はそもそも軽自動車なんて買わずに公共交通機関を利用してください。
まとめ
結局のところ、ターゲットはミラココアそのままで、デザインと雰囲気を変えたから「ミラトコット」という別の名前を与えた、ということでした。ギョロっとした目と軍用車っぽい雰囲気(緑の場合)に耐えられるなら、という車ですね。
まさかの偽キャンバストップ+ちょびヒゲ
ちなみに、メーカーオプションに面白い選択肢が用意されています。
まさかの偽物のキャンバストップです。キャンバストップとは本来、天井部分だけが開放される、布製の幌を指しますが、ミラトコットの場合はただのフィルムです(もちろんタダではなく43,000円もします)。開くわけでもないのに布状のデザインを入れるなんて、貧乏くさくてなかなか勇気がいる装備だと思いませんか? トヨタ車にレクサスエンブレムを貼ったり、Windowsパソコンにアップルのシールを貼ったり、ターボ車でもないのにボンネットに穴開けちゃうのと同類ですよ。「キャンバストップのオシャレな車に憧れてるけど、実際には買えないから見た目だけで我慢するね!」みたいな。しかもフロントバンパーのフィルムも抱き合わせになっていて、それがどうしてもちょびヒゲにしか見えません。微妙すぎます。
あぁ、そういえば同じダイハツに、外車を買えない人向けにミニクーパーをパクった車やワーバスをパクった車がありましたね。ダイハツはそういう会社でした。本物のキャンバストップが欲しい方はこちら↓