シリーズハイブリッドとは何?ハイブリッド3種のメリット・デメリット&採用例まとめ

     2017/03/16

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日産が「ノート e-POWER」を発売したことで注目を集めている「シリーズハイブリッド」。どんな技術でどんなメリットがあるのかや、採用車種をまとめました。

シリーズハイブリッドを採用した「ノートe-POWER」の試乗レビューはこちら↓

ハイブリッドカーの方式は3種類

「ハイブリッドカー」といえば、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた車を指しますが、その方式には主に3通りあります。他の様々な機構がそうであるように、ハイブリッドの各方式にもそれぞれメリット・デメリットがあります。

スプリットハイブリッド

まずはトヨタ・プリウスに採用されている「スプリット(分割)ハイブリッド」です。「トヨタ式ハイブリッド」や「シリーズ・パラレル方式」、文脈によっては「ストロングハイブリッド」とも呼ばれています。自由度の高さ制御の難しさが特徴です。

エンジンの動力は発電用とと駆動用に分割(スプリット)されます。そしてエンジンの駆動力とモーターの駆動力を合成して走行します。

メリット

発電と駆動の配分、エンジンとモーターの合成割合を自由に制御できるので、効率が高いことがメリットです。回生(走行エネルギーによる充電)、エンジンによる充電のどちらも可能。エンジンを停止してのEV(電気自動車)走行も可能です。

エンジンとモーターの両方を駆動に用いることができるので、(熱損失などを考慮しても)エンジンのみよりも高い加速性能が得られます。

デメリット

自由度の高い反面、高効率に保つように制御することは難しいです。トヨタの規模だからできた技術とも言えます。その上特許でガチガチに固められているので、トヨタ式と同様の機構を他社が簡単にコピーすることはできません。

エンジンとモーターが一体となった機構なので、燃費と加速性能を両立する設計にしづらい(実際には燃費重視車ばかりになる)ことも欠点です。これを克服する技術も開発されていますが、広く採用されるには至っていません。

ガソリンエンジン車に不要だったモーターや大きなバッテリー、発電機を積んでいるため車体が重くなり、走る環境によっては燃費が悪化する可能性があります。

採用車種

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トヨタ・プリウストヨタ・アクアなどTHS(トヨタハイブリッドシステム)採用車。トヨタ/レクサスの現行ハイブリッド車はすべてこの方式です(かつてはパラレル式もありました)。

マツダ・アクセラはハイブリッド技術をトヨタからライセンス供与されていて、トヨタ製ハイブリッドシステムを搭載しています。ただ、制御プログラムはマツダが設計しているので、走行フィールはプリウスなどと大きく異なります。

シリーズハイブリッド

続いて「シリーズ(直列)ハイブリッド」です。最もシンプルな構造で、走行性能上は完全に電気自動車です。「エンジン発電式EV」とも言えます。

まず基本構造はEV(電気自動車)です。バッテリーを搭載し、その電力でモーターを駆動、モーターの力だけで走ります。

「ハイブリッド」なのは充電機構です。ただのEVではバッテリーの充電が必要です。EVを充電できるような設備はまだ限られていますし、充電には時間がかかります。一方ガソリンスタンドなら全国どこでもあり、補充はほんの数分です。なので発電専用にエンジンを搭載したのがシリーズハイブリッドです。

よく似た技術に「レンジエクステンダーEV」というものがあります。基本構成はほぼ同じですが、想定する使い方が異なります。

メリット

単純な構造なので、スプリットハイブリッドのような特許のからみや制御の問題がありません。

エンジンは完全に発電専用なので、発電効率だけを考えた設計にできます。最も効率の良い回転数・出力でのみ動かして発電機を動かします。エンジンとモーターは完全に切り離されているので、バッテリー残量があればエンジンを止めてのEV走行もできます。

基本はEVなので、プラグインハイブリッド(充電可能なハイブリッド車)との親和性も高いです。

デメリット

走行する動力はモーターのみなので、走行性能は完全にモーターに依存します。エンジンを使って動力を補うことはできません。

EVと比べた場合、走行性能は完全にEVなのに、EVには不要なエンジン・発電機・ガソリンタンクを積んでいる分、車両重量や車内空間が不利になります。

採用車種

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国産市販乗用車では日産・ノート e-POWERが唯一。世界的にはシボレー・ボルトが初の量産車です。大型バスではシャトルバスなどに採用例があります。

試作車では度々登場している方式で、国内では水素ロータリーエンジンと組み合わせた「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」が有名です。水素またはガソリンでロータリーエンジンを動かして発電、その電力でモーターを駆動して走行します。

パラレルハイブリッド

3つ目は「パラレル(並列)ハイブリッド」です。通常のガソリンエンジン車に、エンジンの苦手を補う発電機兼モーターを組み合わせた方式です。走行はエンジンがメインなので「モーターアシスト式ガソリンエンジン車」とも言えます。

小さなモーターでほんの一部だけモーター駆動する場合は「マイルドハイブリッド」とも呼ばれます。ただし「スズキのマイルドハイブリッド」は「車業界のマイルドハイブリッド」と異なります

エンジンとモーターのどちらでも走行可能な構造になっています。

メリット

走行用モーターは発電機を兼ねています。発電機(オルタネーター)とバッテリーは普通のガソリンエンジン車でも搭載されているので、モーター駆動できるようにするだけで「ハイブリッド」を名乗ることができます。ガソリンエンジン車を低コストでハイブリッド化できるのが大きな利点です。

デメリット

モーターが発電機を兼ねているので、モーター駆動と充電を同時に行えないことが欠点です。スプリット(トヨタ式)ではエンジンの駆動力で充電しながらモーターで走行なんてことができますが、パラレル式ではできません。

採用車種

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ホンダ・フィットハイブリッドや ホンダ・CR-Z などのホンダ IMAシステム採用車。

スズキの軽自動車の「S-エネチャージ」はパラレルハイブリッドの一種。搭載されるモーターは数馬力程度で、エンジンで最も効率の悪い発進時のみモーター駆動されます。

フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド「ゴルフGTE」もパラレルハイブリッドを採用しています。

採用車の比較

主な採用車を比較してみましょう。

車種 トヨタ
プリウス
日産
ノート e-POWER
ホンダ
フィットハイブリッド
日産
リーフ
方式 スプリットハイブリッド
(トヨタ式複雑制御)
シリーズハイブリッド
(エンジン発電式EV)
パラレルハイブリッド
(モーターアシストガソリン車)
電気自動車
エンジン 排気量 1,797 cc 1,198 cc 1,496 cc
最高出力 98 ps 79 ps 110 ps
最大トルク 14.5 kgm 10.5 kgm 13.7 kgm
モーター 最高出力 72 ps 109 ps 29.5 ps 109 ps
最大トルク 16.6 kgm 25.9 kgm 16.3 kgm 25.9 kgm
バッテリー リチウムイオン / ニッケル水素 リチウムイオン リチウムイオン リチウムイオン

まず特徴的なのはパラレル式です。モーターは29.5馬力で、モーター出力だけなら軽自動車のエンジン程もありません。

連続使用できる性能は、トヨタ式ハイブリッドではおよそエンジン+モーターになりますが、シリーズ式ではモーターのみ、パラレル式ではエンジンのみがおよその最大性能になります。つまり「ノート e-POWER」と「リーフ」の性能は同一だということですね。

まとめ

「ハイブリッド」という言葉が濫用されて、多くの人にとっては「なんか燃費良いらしい」という程度の認識になってしまっているかと思いますが、方式によって特徴は様々です。

今後は、エンジンを小さくしたシリーズハイブリッドが増えてくると思います。EVの充電が一般的になってくると、「普段は充電してEVとして使うけど、充電できないときはガソリンエンジンで発電する」という使い方がされていくことになると思います。

シリーズハイブリッドを採用した「ノートe-POWER」の試乗レビューはこちら↓

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