ルノールーテシアRS試乗記!デザイン・走り編 パワー以外には不満あり
ルノー・ルーテシアのハイパフォーマンスモデル、ルーテシアR.S.を試乗してきました。
今回はデザインと走りをレビューしていきますね。グレードやスペックはこちら↓
デザイン
エクステリア
外観は基本的に標準のルーテシアと同じです。格上のメガーヌR.S.はメガーヌと別のボディを与えられていますが、ルーテシアは同じボディです。
フロントバンパーやサイドのデザインは微妙に変えられていて、インテンス/ゼン→GT→R.S.と上級になっていくと、よりアグレッシブなデザインになっています。
メガーヌR.S.と並ぶと、メガーヌR.S.が2ドアでルーテシアR.S.が4ドアだからか、どちらが大きいのかあまり分かりません。ルーテシアR.S.は4,105×1,750、メガーヌR.S.は4,320x1,850なので結構違いますけどね。
インテリア
内装はフランス車らしく、分かりやすくカッコイイのではなく「オシャレだけどどこかクセがある」といった造りです。センターのディスプレイ周りは安っぽくも見えてしまうのが少し残念なところ。
内装の所々に赤(オレンジに近い朱色のような色)が配されているのがルノーらしさなのでしょうか。スピードメーターはデジタルです。最近では珍しくもなくなりましたが、一瞬ではおよその速度を把握しにくいので私は好みません。
中央のディスプレイはオーディオ用で、ナビ機能はありません。純正オプションでナビ(2DIN)を付ける場合には、パネル全体が少し手前に張り出す感じに加工されます。
シート
メガーヌと共に目を引いたのがシートベルトが赤色なことです。車内の目立つ領域を占めていながら、シートベルトに標準で色をつけている車はほとんどなく、黒か灰色ばかりです。大衆車でこの色のベルトは奇抜すぎますが、ルノースポールでやるなら良いと思います。
シートはあまり前方には出せません。シートの高さを上げればステアリングが近くはなりますが、前後方向の可動範囲にはもう少し余裕が欲しいです。165cmの私がシートを最低位置にすると一番前でちょうど良かったです。
シート形状は普通です。スポーツシートではないので、あまりホールド感はありません。
ステアリング
ステアリングはフランス・イタリア系らしく立ち気味(ロゴが上を向いている)です。チルト(上下移動),テレスコピック(前後移動)はできますが、チルトしても場所が変わるだけで角度は変わらない印象です。背が高くなかったり低い着座位置を好む人にはやや持ちづらいでしょうね。それでもアルファロメオよりは低めにできますが。
日本車(特にマツダ)やドイツ車(特にBMW)は可動範囲が広く、日本人の標準的な体型でも比較的運転しやすい寝たステアリング(ロゴが手前を向いている)なので、それに慣れていると運転しづらく感じるかもしれません。フランス/イタリア車からの乗り換えなら違和感は少ないでしょう。
走り
正直通常のルーテシアとの差が小さすぎました。エンジンだけ、といった感じ。
もちろん踏めば速いです。220馬力ありますからね。ハーフアクセルでもBセグメントとしては破格の加速を見せてくれます。
ただ、エンジン出力以外のアップグレードをあまり感じませんでした。サスペンションはよくあるBセグメントのレベルであまり踏ん張りが効かず、エンジン出力をうまく捉えられているとは感じられません。
メガーヌのように専用のボディを用意することが難しいことは分かっていますが、せめて足回りのセッティングをもっとスポーツ方向に振るくらいはして欲しかったですね。「ルノースポール」を名乗っているのに中途半端な感じがしてしまいました。
トランスミッション
セレクトレバーを倒すとマニュアルシフトモードになります。パドルシフトも装備しているのでそちらでのシフトも可能です。
オートモード中にパドルシフトを操作すると一時的にマニュアルシフトモードになり、10秒ほど操作せずに走行しているとオートモードに戻ります。アルファロメオなどと同じ分かりやすい形式ですね。上り坂や追い越しなどでシフトダウンして一時的にパワーを得たいときに便利です。ダウンサイジングターボが低回転からトルクが得られるとは言っても回転数を上げた方がパワーが得られます(パワー=トルク×回転数)し、最近のATは燃費向上のためにどんどんシフトアップしていきますからね。
自動変速・ノーマルモードでのシフトアップは最近の車としては比較的引っ張りますが、それでもどんどんシフトしていくことに変わりはありません。せっかくのスポーツエンジンなのに、オートモードでは結構踏まないと1.2Lターボのノーマルルーテシアとあまり代わり映えしません。このエンジンならもっと余裕のある走りをして欲しいです。
モード切替
最近の車は厳しい燃費要求とキビキビとした走りという相反する要素を両立するために、モード切替システムがよく搭載されています。ルーテシアR.S.にもノーマル・スポーツ・レースというモード切替があり、エンジン出力セッティングとシフトチェンジが変化します。
特にトランスミッションでは変速速度自体が速くなるので、DCTらしい瞬間的な変速になります。ただ、変速が速いことにはあまりデメリットがないはずなので、ノーマルモードでも瞬間的な変速にしてくれれば良かったのにと思います。実際フォルクスワーゲン・ゴルフのDCT「DSC」の変速速度は結構速いですが、不便さを感じません。ルーテシアで変速速度を変えているのは単にモード切替の効果を感じやすくするためのギミックなのかもしれませんね。
モード切替が万能だとは思っていませんが、ATの制御を複数用意して燃費重視と走り重視を切り替えるのは良いアイディアだと思います。ただ、モード切替でもボディ剛性や足回りのセッティングまでは(普通は)変えられません。どのモードにもバランス良く対応できるようにするとどうしても中途半端になりがちです。ルーテシアの足はどっちかというとノーマルモードの方が似合っていて、むしろハイパワーすぎるエンジンの方が浮いている感じです。むしろ足回りをスポーツ/レースモードに合わせてくれれば、R.S.を購入する人の走り方には合っていると思います。
まとめ
せっかく1.6Lターボという高出力エンジンを搭載してハイパフォーマンスコンパクトカーの要素を得ているのにも関わらず、MTが無いことと、サスペンションのスポーツ性能が欠けていることで「パワーがあるだけの実用車」になってしまっていました。
実用車であるノーマルルーテシアがスポーツ走行を重視する必要はありませんが、「ルノースポール」を名乗るルーテシアR.S.は、エンジン出力だけでなくちゃんと「スポーツ」を感じられる車になっていて欲しいですね。
一方のメガーヌR.S.はガッツリ「スポーツ」な車に仕上がっていましたよ。メガーヌの方は専用ボディですし、コストも気合いも差があるんでしょうかね。