新型シエンタ試乗記!内装の質感と3列シートの使い勝手
2016/08/29
先月発売されたばかりのトヨタの小型ミニバン、新型シエンタ。乗らずにデザインを批判するだけってわけにもいかないので、試乗してきました。乗ってみると色んな気づきがありますね!
まずは内装の質感と使い勝手をレビューします。
目次
エクステリア
ボディカラーは「ヴィンテージブラウンパールクリスタルシャイン」というブラウンメタリックでした。なかなか綺麗な色なんですが、ホワイトパールと同じくメーカーオプション費32,400円がかかってしまうのが痛いところ。それでもライト下の変なラインが目立たないのでこれならまだいいかなって感じがしました。
蛍光塗料かシリコンスチーマーかみたいなぶっ飛んだ色よりは遥かに良いと思います。
インテリア
インパネ
メーターしたの部分(画像での赤の水平ライン周辺)がレザー調のシボが綺麗に入っていて内装の質感向上に寄与していました。他はまぁコンパクトカーとして可もなく不可もなくのレベル。オートエアコンの液晶表示は綺麗でしたがあとは並み。
たくさんあるスイッチのデザインがバラバラで、位置も一貫性が無いのはもうちょっとどうにかしろよと言いたくなりますね。見えにくいところでも、よく触る場所は気になるものです。横滑り防止のスイッチなんかは触らなくても、スライドドアの操作なんかは(シエンタを買う人なら)誰でも使うでしょうに。
収納
助手席に収納が多いのは女性には嬉しいでしょうね。書いてある数字はすべて収納関係です。正直やりすぎなレベル。日本車、というかトヨタ(ダイハツ含む)らしいなぁ……。
メーター
メーター内部の表示部の液晶表示は美しく高級感があります。どことなくレクサスのメーターに通じる雰囲気を感じさせるのはトヨタらしいうまさ。ただし装備されるのは199万円~のGグレードか、223万円~のハイブリッド仕様。廉価グレードは安っぽいセグメント液晶止まりです。
メーターの位置に致命的欠点があるのは次回書きます。
シート
コンパクトカークラスの車体でありながら3列シートを実現しているのが小型ミニバン最大の特徴です。小さなクルマに無理矢理詰め込んだ感のあるシートは実用レベルなんでしょうか?
フロントシート
真っ平らなベンチです。座高が低い人や前が広く見えていないと不安な人は座面を上げないといけない(上げる機構があるだけ優秀です)と思います。座面を高くすると座面の前後方向がほぼ水平になるので、真っ平らなクッションと相まって「イスに座っている」というより「板に乗っている」という感覚が強くなってしまいます。着座質感を求めるクルマでないことは分かっています。分かっていますが、これでは急ブレーキで前に滑っていくこと請け合いです。
座面を下げても運転できる人は座面を最大限低くしましょう。座面を下げると前後方向に傾斜がついていくので、ある程度安定した姿勢で運転できるようになります。それでも前方視界は比較的悪くないので、軽トールワゴンしか運転したことない人でなければ問題ないと思います。
座面を下げると致命的な問題が生じるのですが、それは次回の走りのレビューに書きます。
セカンドシート
セカンドシートは完全に平面です。サイズや質感は軽自動車のリアシートを想像していただければほぼ合っています。フィット,ヴィッツ,デミオなどの2列コンパクトカーのリアシートよりは明らかに劣ります。畳む機構が必要ですし、3列目が2列目の下に入るためにシートの厚さは座面も背面もペラペラに仕上げる必要があったからですね。セカンドシートに頻繁に人が乗るなら2列シートの車にした方が賢明です。
横方向に3人乗るとかなりギュウギュウになります。中央にはシートの境目もあるので、2列目3人乗車はあくまで緊急用ですね。
2列目シートは左右独立して前後にスライドできます。この辺りも最近の軽自動車のリアシートと同様。一番後ろにすれば足元はそこそこ快適な空間になりますが、その位置では3列目の乗車はほぼ絶望的。3列乗車の際は、2列目の人もフロントシートに膝が当たる程度の苦しみを味わう必要があります。
サードシート
サードシートの質感は最低レベル。バスの補助席みたいな造りです。
セカンドシートを一番後ろにスライドしたときの足元です。ちょっとでも足が大きい人なら「狭い」じゃなく「痛い」のレベルです。
セカンドシートを前にスライドすればいいじゃないかって? そんなことはありません。セカンドシートは最後端でないと畳めません。そしてサードシートに乗り込むには(6人乗り/7人乗り共に)セカンドシートを畳むしかありません。サードシートに乗ったら最後端にスライドしたセカンドシートが後ろに倒されます。つまりサードシートに乗る人は(一時的ではあっても)「痛い」を体験しないと乗車できない!ということになります。これは普通に設計上の欠点でしょう。
ホンダ・フリードのようにセカンドシートを左右分割にして、セカンドシートを畳まなくてもサードシートに行けるようにしないとダメですよね。
新型シエンタの他の欠点は我慢すればなんとかなるレベルですが、この欠点は人によっては「痛みに耐えないと乗れない」とかいう乗り物として失格なレベルに陥っています。
乗り込む時の問題を除けば優・良・可・不可の「可」のレベル。30分以内に降りたいですね。(ちなみに「不可」レベルはマツダ・RX-7やポルシェ・911などの2+2のリアシート)
3列目に1時間以上人を乗せるなら、別の車を検討しましょう。1クラス上のミニバンか、普段は2列車にして必要なときだけレンタカーか、2台に分乗するか。コレに乗るのは苦行です。
シートアレンジ
シエンタといえばサードシートのたたみ方が特殊な点も注目です。
セカンドシートを前方に畳み、背面を畳んだサードシートがセカンドシートの下に埋まるように収納できます。なかなか凝った造りで面白いのですが、気になるポイントが2点。
シートアレンジの手間
サードシートを畳む手順を見てみましょう。
- セカンドシートを最前端へ。
- セカンドシートの背面を倒す。
- セカンドシート自体を前へ倒す。
- サードシートの背面を倒す。
- サードシート自体をセカンドシート下へ入れる。
手順1~3はセカンドシート前方、つまりスライドドアからでないとできません。一方、手順5はテールゲート側からでないとできません。操作ベルトがトランク側に出ているためです。サードシートを取り出す手順も同様です。つまり2箇所に移動しないとサードシートをたたむ/取り出すができないということです。しかもどちらも車外から手を伸ばしてやる操作です。
シエンタに乗る多くの人はサードシートは畳みっぱなしで必要な時に引き出すという使い方だと思います。そうしないとトランクがほとんど無くなってしまいますからね。でもサードシートが必要になったときに雨が降っていたら嫌ですねぇ。傘を持ちながらは不可能なので、こんな操作を雨に濡れながらやることになります。普段サードシートを出しっぱなしで、荷物が多いからサードシートを畳みたいって場合も同様です。
シエンタのサードシートはあくまで緊急用という意図がはっきりと見て取れます。
シートアレンジの操作性
シートアレンジのために少々アクロバティックな機構を使っているために、操作性はさほど良くありません。この機構の割にはよくできているとは思いますが、シートアレンジの動きに滑らかさはありませんし、機構自体もやや剛性感に欠ける不安な動きをします。170万円から買える車に複雑な機構を入れると「質感」にシワ寄せが来るなぁと感じました。
まとめ
やっぱりこのサイズに3列を詰め込むのは無理があるなぁと思ったのが正直なところ。こんな簡易シートですら3列目が欲しい人にはいいのでしょうが、2列コンパクトカー+レンタカーか、ミドルサイズミニバンにした方がいいんじゃないかと思います。3列目に乗せることが稀なら、燃費が良くて安い2列コンパクトカー(+必要に応じてレンタカー)にした方が満足度が高いというのが私の意見です。
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