マツダロータリー復活!でも期待とは違うよ

   

マツダがロータリーエンジンの復活を発表しました! ビッグニュース!!

でもみんなが期待しているのは違いますよ?

ロータリーエンジン復活を発表!

マツダは以下のように発表しました。

電気自動車は、バッテリーのみで駆動するモデルと、これにマツダ独自の小型・軽量で静粛性に優れたロータリーエンジン(以下、RE)を組み合わせ、バッテリーが一定レベルに減ると発電し航続距離を延ばす新開発のロータリーエンジンレンジエクステンダーを搭載したモデルを開発。

ロータリーエンジンが復活! という重大なことが発表されました。2012年にRX-8が生産終了して以降、ロータリーエンジン不在の時代が6年も続いています。その間にも「16X」という新型エンジンや「RX-VISION」というロータリーエンジン搭載を前提としたコンセプトカーの発表などがあったものの、具体的な市販化については何も示されてきませんでした。

それがここに来てついに具体的な搭載車種と搭載方法が発表されたのですから、ロータリー好きとしては内容がとても気になります。

レンジエクステンダーとしての搭載

発表された内容をよく読んでみましょう。

バッテリーが一定レベルに減ると発電し航続距離を延ばす新開発のロータリーエンジンレンジエクステンダーを搭載したモデルを開発。

と書かれています。重要なのは「レンジエクステンダー」という部分。これは、「電気自動車(EV)をベースに、航続距離を伸ばすためにエンジンを搭載して発電を行う」という機能を指します。レンジエクステンダー式のEVについては以下の記事に詳しく書いてあります。

つまり、搭載されるエンジンは発電専用で、基本的には電気自動車として走行するということです。ロータリーエンジンはタダの発電専用!なんです。

ロータリーエンジンを搭載する意味は!!?

ロータリーエンジンに魅力を感じる人(技術者除く)は、ロータリーエンジンの「走り」を好んでいるのだと思います。だからこそ、RX-7 や RX-8 といったスポーツカーに搭載されてきたわけで、ロータリーエンジンの未来を描いた RX-VISION も明確にスポーツカー(むしろスーパーカーやレーシングカーを想起させる)として作られました。

それがここにきて発電機として使おうという話ですよ。いや、それでもロータリーが生き残れるのだから歓迎すべきことなんでしょうけど、なんだかガッカリです。

ロータリーエンジンを搭載する理由

ロータリーエンジンを搭載する理由をこう述べています。

ロータリーエンジンレンジエクステンダーは、REのコンパクトかつ出力の高さを活用し、共通のパッケージングでも電動化技術のマルチソリューション化を可能とする将来構想をもとに開発。

ロータリーエンジンの長所・短所を簡単に挙げるとこんな感じです。

長所 短所
軽量・コンパクト・高出力 部品点数が少ない
燃費が悪い

最大の長所は同クラスのレシプロエンジンに比べてコンパクトなことです。コンパクトだからこそ、RX-7はあんなにもボンネットの高さを抑えられたのだと言われています。

マツダ・RX-7

一方、最大の問題点は燃費の悪さです。これはロータリーエンジンの構造上の問題もあり、(RX-8では大幅に改善されたものの)根本的に解消されることなくロータリーエンジンが消滅してしまう直接の原因になりました。

EVのレンジエクステンダーは、発電専用な上にあくまで付加機能。普段は充電池によるピュアEVとして走行し、どうしても充電が足りないときにはエンジンで発電するという使い方です。なので、搭載されるエンジンは小型で十分。ロータリーエンジンの軽量・コンパクトというメリットが活かされます。

ロータリーエンジンの振動

もう一つ、ロータリーエンジンならではのメリットがあります。それは振動です。ロータリーエンジンは2ローター(レシプロエンジンでいう2気筒)でも、直列6気筒エンジンと同等の低振動を実現します。これはロータリーエンジンの構造に由来していて、ローターが2つあるだけでエンジンの振動を打ち消しあい、レシプロエンジンでは6気筒無いと実現しない「一次振動ゼロ・二次振動ゼロ」を成立させます。これはレシプロエンジンにあるカムが不要であることとも関係します。

レンジエクステンダーのような小排気量エンジンで、6気筒のような複雑かつ大掛かり(排気量の割に大きくなる)な機構は使えません。小排気量では振動が大きいものの構造が単純な2気筒や3気筒を採用することになります。実際、660ccの軽自動車では現在全メーカー・全車種が直列3気筒を採用しています。

ロータリーエンジンであれば、小排気量であっても振動の少ない2ローターを採用しやすく、「発電していてもそれをあまり感じさせない」というEV特有の要求に応えることができます。

燃費の問題は?

ロータリーエンジン最大の問題である燃費は、レンジエクステンダーでは大きく回避することができます。

ロータリーエンジンの燃費の悪さは、より正確には「低回転時のトルクの薄さと、それに起因する加速時の燃費の悪さ」が主原因であるといえます。これはRX-7を運転したことのある人ならよく分かるかと思います。高回転時はターボの影響もさることながら、スポーツカーらしい高出力を出す一方、低回転時はアクセルを大きく開けても驚くほど加速しません。ロータリーエンジンの燃焼室形状という物理的要因と、バルブタイミング調整が(レシプロのような方法では)できないことなどが原因です。

一方、レンジエクステンダーの場合の目的は発電。走行用エンジンのように車速やアクセル操作に合わせてエンジン回転数を変動させる必要はなく、ロータリーエンジンにとって最も効率的な回転数を維持し続けることができます。

これがレシプロエンジンによるレンジエクステンダーを凌駕するほどであるかは未知数ですが、少なくとも「燃費が悪いから使い物にならない」ということは無さそうです。

さらに発展的機能も

ここまではロータリーエンジンのレンジエクステンダーの方が「やや優れている」という話でした。でももう一つ、ロータリーエンジンだけのメリットがあります。

ロータリーエンジンレンジエクステンダーは、REと気体燃料との親和性をいかし、LPG(液化石油ガス)を利用した災害時における緊急給電も想定して開発。

ロータリーエンジンは、1つのエンジンで複数の燃料に対応することができます。これはロータリーエンジンでないと難しいことで、過去には水素とガソリン、今回は天然ガスとガソリンをどちらも使えるようにするそうです。

天然ガスエンジンはガソリンエンジンに比べて(車に補充するという意味での)入手性が悪いので役に立ちません。しかし、こと災害における停電時では、「ガスボンベをトラックで運搬できるLPガス」で「車で発電した電気を利用」という組み合わせが可能になります。大災害では停電だけでなく、被災地でのガソリン不足も顕著に起こりますから、レンジエクステンダーに特異な役割を見出せることになります。

まとめ

「ロータリーエンジン搭載車」というよりも「ロータリーエンジンを活かしたEV」の発表なのであって、RX-7やRX-8を知る人が期待するようなロータリーではありません。

しかし内容をよく見れば、ロータリーエンジンのデメリットを抑えつつメリットを生かし、ロータリーの火を消さぬよう編み出した秘策なのでしょう。(このアイディアは何年も前から試作されてきたものですが。)

これで部分的にでも復権し、ピュアな走行用ロータリーエンジン搭載車の復活を望みますが、現実はなかなか厳しいのでしょうね。

どうでもいいですが、「Rotary Range Extender」だとRE (Rotary Engine)ならぬRREになるんですね。レンジエクステンダーは普通のエンジンじゃないので、SKYACTIV-Rと付けてスカイアクティブの一員にするのはお預けかな。

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