アウディA1試乗レビュー!フロント優先のミニマルデザインは違いの分かる大人向け

     2015/08/25

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3気筒で1.0Lターボという思い切ったダウンサイジングに舵を切った、アウディ・A1を試乗してきました。「小さな高級車」を標榜したA1はエンジンも小さくなりました。これでもちゃんと「高級車」しているのでしょうか?

今回はA1のデザインと実用性をレビューします!

アウディ・A1とは?

アウディ・A1はアウディ最小のコンパクトハッチバックです。

フォルクスワーゲン・ポロとプラットフォームを共有するBセグメント車で、サイズ的には国産コンパクトカーのフィット,ヴィッツ,デミオなどと同一クラスに属します。ただ、サイズは小さいながらも「高級車」を名乗るプレミアムコンパクトとして造られていて、現状では直接のライバルは不在とも言える状況になっています。

A1は当初3ドアのみでしたが、後に同じ全長の5ドアモデルが追加されました。ヨーロッパでの販売は圧倒的に3ドアの方が多いそうですが、こういう車ですら実用性が重視されてしまう日本では5ドアの方が売れているのでしょうね。

A1
1.0 TFSI
A1 Sportback
1.0 TFSI
ドア数 3ドア 5ドア
定員 4名 5名
全長 3,985 mm
全幅 1,740 mm 1,745 mm
全高 1,425 mm 1,440 mm
車重 1,120 kg 1,140 kg
駆動方式 FF
トランスミッション 7DCT
エンジン 直3 1.0L ターボ
最高出力 95 PS / 5,000-5,500 rpm
最大トルク 16.3 kgm / 1,500-3,500 rpm
価格 249 万円~ 269 万円~

ミニクーパーはライバルではない?

車の性格が少し違うので直接のライバルではありませんが、A1買う人が比較するであろう車はBMWのミニクーパーです。どちらも全長4m程度で、3ドア・5ドア両方があり、ダウンサイジングターボを搭載しています。どちらも最近3気筒エンジンを搭載したという点も同じですね。

ただ、「プレミアム」「高級」「上質」といったA1に対して、「おしゃれ」「スポーティ」「かわいい/カッコいい」というミニクーパーは方向性が違っています。少なくともミニの3気筒エンジンにはプレミアム感はありませんでした

エクステリア

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エクステリアデザインは、アウディ共通のシングルフレームグリルでA3やA4と似たような顔でありながら、街中を走る小型車として整ったデザインになっています。現行のA1は2010年に発売(日本では2011年)された初代モデルですが、モデル末期でやや古さを感じるA4よりも新しさを感じさせます。

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リアもアウディらしさが漂っていていいですね。

同じBセグメントで日本では売れに売れてるキャノンのインクキャップ……いやいやトヨタ・アクア(前期型)とは比較にならないほどの上質さです。価格が違いますが。アクアはまともなグレードで189万円~、A1は3ドアで249万円~。アクアのテールランプはマイナーチェンジでマシになりましたしね。

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キャノンのプリンターのインクキャップ

トヨタ・アクア

トヨタ・アクア

全長が小さいので、詰め込み感があって所帯じみた5ドアより3ドアの方がデザイン的には美しいですね。ドアの長さにも余裕があってバランスが良いです。

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ちなみにアウディ・A1の大きな特徴でもある2トーンカラーは、3ドアと5ドアで塗り方が違います。3ドアではAピラーから延びる両側のラインだけが別色で、屋根はボディと同色です。一方5ドアではルーフを含む上半分全体が別色に塗られます。

VW・ポロとの比較

A1は同じフォルクスワーゲングループの「フォルクスワーゲン・ポロ」とプラットフォームを共有しています。実用車然として地味なポロとは、少なくともエクステリアデザイン上は共通点をほとんど見いだせません。

フォルクスワーゲン・ポロ

フォルクスワーゲン・ポロ

特にリアハッチは随分と寝かされていて、すっきり美しいシルエットにまとまっています。その分リアシートが犠牲になっているわけですが、それはデザインと実用性のバランスということで仕方ないところでしょうね。

 

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三面図で比べると、両車の目的の違いが見て取れます。ポロはコンパクトながらリアシートもちゃんと座れる5人乗りで設計されているのに対し、A1は3ドアが先に発売されたことからも分かるようにフロントシート優先で、リアシートはあくまでサブシートの扱いです。リアシートの着座位置が高めなので、(数値上は余裕があるように見えますが)高さも前後方向も結構狭いです。サスペンション形式は同じ(フロント:ストラット、リア:トーションビーム)でも結構違うものですね。

デザイン上一番差が出ているのがリアウインドウです。A1がしっかり寝かされてスモールクーペ風になっているのに対し、ポロは垂直部分が大きいためにボテっとした印象になっています。その分トランク容積が確保されている実用車ということですね。

インテリア

Farbe: Samoaorange

A1のインテリアモチーフは航空機だそうで、特にタービンをイメージしたというエアコンルーバーが印象的です。写真だとちょっと大きめの円形ルーバーという程度ですが、実際に見るとかなり存在感があります。インナードアハンドルにつけられた微妙なカーブやステアリング周りにアウディらしさを感じますね。

アウディ・A3

アウディ・A3

上位車種のA3とは、細かく見ればセンタートンネルの作り込みなどに差はあるものの、似たイメージで十分な上質さを得ています。

マツダ・デミオ(Lパッケージ仕様)

マツダ・デミオ(Lパッケージ仕様)

Bセグメントでこの内装に対抗できるのは、マツダ・デミオのLパッケージ(ホワイトレザー)くらいでしょうね。

フロントシート,ペダル

フロントシートの質感は高いです。ホールド感はやや不足していますが、フロントシート優先の設計になっているだけあって、フロントシートだけ見ればCセグメント並みの着座感を確保しています。後ろを見なければ小さな車なことを忘れるほど。2人以下で乗るならかなり快適に移動できるでしょうね。他の欧州Cセグメントと同じく、数時間の移動は余裕でできそうです。

アクセルペダルはオルガンではなく吊りです。DセグメントのA4ですら吊りペダルなので当然ですね。ドイツ車にはオルガンを期待したいところですが、A1(特に1.0Lモデル)は高速道路を何時間もという使われ方は少ないでしょうから、吊りでも問題ないでしょうね。

左足のフットレストは細いです。普通に足を置いているのになんだか不安な感じになります。本国が左ハンドルの車としては足元はそんなに狭くありませんが、なぜかフットレストが細くなっています。VW・ポロや格上のA3では気にならなかったので、A1のフットレストだけが良くないようです。

リアシート

はっきりとフロントシート優先で設計されているので、リアシートは正直狭いです。特に前後方向の余裕はほとんどないので、3人以上での長距離移動はできないと思った方がいいでしょう。あくまで駅までの送迎や子供専用シート、あるいは荷物置き場といった程度です。5ドアだからリアシートも普通に使えると思ったら痛い目を見ます。

リアシートの快適性を捨てたからこその、フロントシートの上質さです。両方にプレミアムを求めるなら格上のA3、あるいはA4にするしかありません。

実用性

普段2人以下で乗車することを前提とすれば、実用性は十分にあります。

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トランクはBセグメントとしては十分に広いです。こちらもリアシートの居住性を犠牲にして座面を薄くしているからか結構な容積を確保しています。リアシートを倒すこともできるので、日常で不足を感じることはまず無いでしょう。

高速道路を長距離走るにはパワートレインがやや物足りないところではありますが、居住性の点ではフロントシートの質感も足回りの安定感も長時間乗車に対応できる完成度になっています。

2人乗車メインのプレミアムコンパクトとしては十二分の実用性があると思いますよ。

まとめ

どうせ普段2人なのにしっかり5人乗りコンパクトカー、どうせ普段4人なのに「なんかあっかも」と7人乗りミニバン。そんな変な車選びではなく、2人以下で「本当に自分達が快適な車」を選ぶならこの車に行き着くでしょう。

小型車だからこその小回りや軽快な走り。それでいて1クラス上にも負けないフロントシートの居住性。リアシートを割り切るとこんなにも素晴らしい車になるんだと気付かせてくれます。

そんなスマートなクルマ選びをするなら、車重+20kg・価格+20万円をかけて5ドア・5人乗りにするより、よりミニマル(最小限)で見た目にも美しい3ドア・4人乗りを選んだ方が潔いように思います。リアシートなんて結局緊急用途なんですから、わざわざドアを用意する必要なんてないように思います。

プレミアムコンパクトの良さと、ミニマリズムの美しさが分かる大人向けコンパクトカーだと思います。

次回は3気筒999ccターボの走りをレビューします。お楽しみに。

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