マツダが国宝(仮)787Bを天空に打ち上げた!悲しいのはロータリーの現状
2015/07/03
マツダがイギリスで開催されるモータースポーツイベント「2015年グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」(2015 Goodwood Festival of Speed)に、伝説のレーシングカー「マツダ・787B」が天空に向かう巨大モニュメントを飾っています。
国宝級とも言われる「マツダ・787B」の栄光の歴史と、巨大モニュメントに飾られたもう一台のクルマを見ていきましょう。
目次
日本で唯一 ル・マン を制したマシン「787B」の歴史
「マツダ・787B」は日本メーカーで唯一 ル・マン を制したマシンです。レシプロ以外のエンジンとしても唯一の快挙です。
世界三大レース
世界三大レースは何か知っていますか?
- F1 モナコグランプリ
- ル・マン 24時間レース
- インディ500
このうちの一つ、「ル・マン 24時間レース」は、1923年から開催されている最も長い歴史をもつ耐久レースです。一周13kmの広大なサルト・サーキット(ほとんどは普段公道)をレーシングカーで24時間走り続けます。
パンプの激しく長い直線をもつサーキットを、レーシングカーで24時間延々と走り続ける。最高速度は300km/hを優に超え、24時間の平均速度ですら200km/h以上に達します。さらに787Bが走った当時は燃料規制もあったため、レーシングカーでありながら燃費の良さも求められていました。
ロータリーエンジンの凋落
マツダは世界の自動車メーカーで唯一ロータリーエンジンを実用化させました。小型軽量で部品点数が少なく、高出力で滑らかに回る。一時期は夢のエンジンとまで言われたこのエンジンですが、最大の欠点は燃費でした。
オイルショック以降ガソリン価格は上昇し、世間の省エネルギー化の流れと共に時代に取り残されてしまいました。
そこで、ロータリーエンジン搭載車でルマンに挑戦し、走行性能、信頼性、燃費性能を示して名誉回復を図ろうとしたわけですね。
マツダの挑戦と栄光
数々の苦難を乗り越えてルマン挑戦に至った「マツダ・787B」は1991年に日本メーカーとして、そしてレシプロ以外のメーカーとして初めてルマンを制しました。そのどちらも2015年現在唯一の記録になっています。
そのストーリーはNHK「プロジェクトX」にも取り上げられたほどの快挙で、それを成し遂げた名車「787B」は現在も走行可能な状態で保存されています。
世界一のロータリーサウンド
787Bに搭載されたエンジンは「R26B」という2616cc 4ローターのロータリーターボエンジンです。市販されたロータリーエンジン車は2ローターと3ローターで最大1962ccだったので、4ローターのロータリーサウンドを轟かせたのは787Bだけです。(個人ショップレベルでは4ローターの搭載実績が数件あります)
レシプロエンジンでは出すことのできない透き通った超高音は、栄光から20年以上経った現在でも聴く人を魅了します。
787Bは、輝かしい栄光とその素晴らしいサウンドを讃えて「国宝級」とも呼ばれています。
私はロータリーエンジンが大好きなので、本当に国宝にして欲しいですね!
マツダ・787Bが天空へ?
イギリスで1993年から毎年開催されているモータースポーツイベントに「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」というものがあります。イベントの内容もさることながら、面白いのが毎年作られる巨大オブジェ。
グッドウッドでは毎年特定の自動車メーカーを取り上げて、そのメーカーがイベントのホストを担います。メイン会場の庭には、メーカーが実車を使った巨大なオブジェを展示します。そして今年はマツダが担当したというわけ。
他の年は例えばこんな感じ。
マツダの作ったオブジェ
マツダが作ったのは、2台のレーシングカーが天空へ走って行く軌跡を描いた巨大オブジェです。
今年のモニュメントは、マツダの輝かしいモータースポーツの歴史と、マツダの飽くなき挑戦を支えるチャレンジ・スピリットと、スタイリッシュで生き生きと したマツダ車を象徴しています。ルマン24時間耐久レース総合優勝を果たした唯一の日本車「マツダ787B」(レプリカ)と、昨年ドライビングシミュレー ションゲーム「グランツーリスモ6」用に公開した「マツダ LM55 ビジョン グランツーリスモ」のフルスケールモデルを、高さ40mに及ぶ格子状に組まれた鋼鉄製のモニュメントの先端に配置しました。(マツダ プレスリリース)
そう、先端に飾られた1台は、栄光の787Bのレプリカだったのです。
もう1台は、プレイステーション1/2/3の人気カーレース(ドライブシミュレーションとも)ゲーム「グランツーリスモ」で企画された、夢のレーシングカー「LM55」(外部サイト)です。マツダに限らず色々な自動車メーカーがグランツーリスモの企画で夢のレーシングカーを考えましたが、マツダはそれをフルスケールモデルで作った上にモニュメントの先端に取り付けちゃいました!
さらにはグッドウッドで毎回行われる恒例のヒルクライムで、実車の787Bがデモ走行する予定だそうです。唯一無二のロータリーサウンドで人々を魅了してくれることでしょう。
寂しいのはロータリーエンジンの現在……
栄誉あるモニュメント制作にロータリーエンジンのレーシングカーを選んだマツダ。LM55はエンジンについて言及されていませんが、恐らくロータリーエンジンを意図しているでしょう。
そんなマツダは2012年にRX-8の販売を終了し、現在はロータリーエンジン車を販売していません。なのにロータリーエンジン車を高々と掲げたのは、「ロータリーエンジン開発への意欲」か「過去の栄光に縋る気持ち」か。
マツダはロータリーエンジンの開発を続けているようなので、いずれその時が来るのを待ちましょうか。こんな話もありますし → SKYACTIV-2から見えてくるロータリーエンジンの未来|次期RX-7はいつ登場するのか?