トヨタが嫌われる理由を徹底分析。何が悪くてこんなに嫌われてるの?
2017/02/02
トヨタを嫌っている人って結構いますよね。ホンダや日産を名指しで嫌いだと言う人はあまりいませんが、「トヨタは嫌い」と言っている人は多いように感じます。そして特に車好きと呼ばれる人からは嫌われやすい傾向にあるようです。
なぜこんなにもトヨタは嫌われやすいのでしょうか? マジメに分析してみました。
目次
嫌われるトヨタ
トヨタが嫌いという人はたくさんいます。「トヨタは○○だから嫌だ」「トヨタ車には乗りたくない」そんなことをよく聞きます。
トヨタの豊田章男社長も、トヨタにアンチが多いこと認めています(出展:日経ビジネスの記事)。
もうトヨタだから嫌だ。トヨタというだけで嫌いという人が居るわけです。ウチの技術とか広報とかがいくら努力しても、「嫌い」の一言で片付けられちゃうことが結構多い。(豊田章男社長の発言から抜粋)
なるほど。社長も認める嫌われようだそうです。
大きい所は嫌われる
まずざっくりした話として、大きいもの・強いものは一般的に叩かれます。
分かりやすいのがプロ野球の巨人。ひいきのチーム以外にはあまり興味がない。応援するチームが勝ってくれればそれでいい。でも巨人が負けるとちょっと嬉しい。そんなやつです。細かい実績はさておき、プロ野球の長い歴史で巨人が勝つことが多かった。優秀な選手を獲得することも多かった。だから嫌い。
トヨタだってその傾向はあるでしょう。戦略とか車造りなんてことを語る以前に、大きな会社は叩かれるものです。パソコンでのマイクロソフトしかり、スマートフォンでのアップルしかり、マクドナルド、NTTドコモ、ヤマダ電機、フジテレビなどなどその業界でのトップ企業は相応に「アンチ」が多いものです。日本でのトヨタグループのシェアは50%に達していますからね。アンチトヨタが一定数いて当然です。
でもこれだけでは分析にならないので、他の要因:企業体質や車造りについても考えてみましょう。
つまらない車が多い
まずよく言われることとして、「トヨタ車はつまらない」ということがあります。これには2つのタイプがあります。
つまらない車種ばかり作る
一つは、トヨタが販売している車種に面白みが無いということです。
トヨタが販売している車種を見ると、コンパクトカー、各種ミニバン、セダン、ステーションワゴン、SUV、それにダイハツからOEM供給される軽&軽の延長というベーシックなラインナップ。ハイブリッドや燃料電池など中身には特徴がありますが、車のカタチという面で特徴的なのはスポーツカー「86」と大型SUV「FJクルーザー」の2台しかありません。
現行トヨタ車は(数え方にもよりますが)軽やOEMを除いて32車種。もちろんノア/ヴォクシー/エスクァイアなどを1車種と数えてです。しかもFJクルーザーは生産終了が決定していますから、31車種中、変わった車は86だけという状況なわけです(2017年1月現在)。さらにトヨタ系のレクサス・スバル・ダイハツを含めればトヨタ系の「つまらない率」はもっと高いことになります。
日産にはフェアレディZとGT-Rがあって24車種中2台。ホンダはNSX・S660・CR-Zで19車種中3台。マツダはロードスターで8車種中1台。トヨタのつまらない車種率97%は一番高いです。
資金も開発力も販売力も潤沢なのに、売れる車ばかりで面白い車を全然作らないから、総じて「トヨタはつまらない」と言われてしまうわけですね。
車作りに面白みが無い
もう一つは、トヨタが作った車が面白くないということです。
これはトヨタの車と他の車を乗り比べるとよく分かります。多くのトヨタ車はこれといって突出した特徴がなく、かといって特別悪いところも無い、「まぁよくできた車」なんです。悪くも無いけどスゴくも無い。
かつてトヨタ・カローラは「80点主義」という哲学で車作りをしました。どこにも欠点が無いように、すべてで80点以上を取れるようにする。それを実現できればそりゃ売れますよ。でも面白くない。
軽さ以外全部捨てた車、軽さ以外のほとんどを捨てた車とそれを真似た車、エンジン後ろにしたり、後席を諦めたり、特徴ある車っていっぱいあるんですよ。多くは売れないけど一部の人に愛される、そんな車。トヨタはそんなのは全然作ってくれません。そこそこ広くて、それなりに走って、内装がちょっと良くて、燃費もまぁまぁで、価格も特別高くない。そんなのばかりです。
対照的なマツダの戦略
トヨタの戦略と対照的なのがマツダです。マツダは2%戦略というものをやっています。マツダの世界シェアは約2%。みんなに買ってもらえるような最大公約数的車作りをやめて、一部の人に強く愛される車を作ろうという戦略です。世界の2%の人に「絶対マツダ車が良い」と言ってもらえれば経営が成り立つわけです。
トヨタにはアンチが多いだけでなく、熱狂的ファンが少ないという側面もあります。マツダにはマツダのファン、スバル(今はトヨタグループですが)にはスバルのファン=スバリスト、ホンダにも、BMWにも、ポルシェにも、それぞれ熱狂的ファンが一定数います。でもトヨタにはあまり聞きませんね。
日本でトヨタ車を乗り続ける人の多くは「トヨタだから安心」という盲目的信仰心をベースにしている人が多いと思います。今までトヨタ車に乗ってきて何も困らなかった、だから今度もトヨタにしよう。それはそれで顧客としては問題ありませんが、「トヨタ車ってココが○○で素晴らしいからオススメだよ!」と他者に勧めるほどのファンが付いていないのも事実です。
トヨタのやり方の汚さ
トヨタ車ではなくトヨタ自体が嫌われる理由としては、やり方の汚さが挙げられると思います。
他社からパクって、しかも売れる
トヨタは他社から戦略や車造り、デザインなどを模倣することがよくあります。しかもトヨタの強大な販売力によってパクリ元の車よりも売れるということも多いです。トヨタは企業規模も販売網も圧倒的ですからね。
例えばトヨタ・ルーミー/タンク。ダイハツ・トールのOEMモデルですが、ダイハツはトヨタの子会社なのでトヨタ車とも言えます。元になったのはスズキ・ソリオ。軽トールワゴンをほぼそのまま拡大したようなデザイン、1.0~1.2L程度の軽よりやや大きいエンジン、軽自動車のパーツを流用したコスト削減はそのまま真似ただけです。
こんな例は他にもたくさんあります。[日産・エルグランド → トヨタ・アルファード][マツダ・ロードスター → トヨタ・MR-S][]
子会社のダイハツも凄まじいモロパクリをやってくれています↓
軽トールワゴンのワゴンR(1993年発売)が売れれば、2年後にムーヴを発売。軽SUVのスズキ・ハスラーが売れれば、翌年ダイハツ・キャストを発売。
トヨタは他社の売れる車はパクって潰せが信条なのかな、と思ってしまいます。
特定車種潰し
国産車同士の場合は価格もドンピシャでぶつけてくることもよくあります。
有名なのが2009年のホンダ・インサイト(2代目)対 トヨタ・プリウス。どちらもハイブリッド専用のCセグメント車で、直接のライバル関係にありました。2009年2月に発売された2代目インサイトは徹底したコストカットにより、当時のハイブリッド車としては破格のスタート価格189万円で登場しました。当時販売中の2代目プリウスは233万円~。3代目へのフルモデルチェンジを間近に控えていました。
価格差は40万円以上。排気量拡大や大型化が決まっている3代目プリウスをここまで安くすることはできません。だからといって40万円の価格差のままではハイブリッド需要がインサイトに流れてしまいます。そこでトヨタが取ったのは2代目併売によるインサイト潰しです。
3代目プリウスを新型モデルとして販売する一方で、2代目プリウスも最小限の装備にしてまさしく189万円で併売してきました。価格ならウチも同じですよと。しかも3代目プリウスでは、それまでの最下位グレード「S」の下に装備引っぺがしグレードの「L」を設定してスタート価格205万円にしてきました。
価格でライバル車に対抗することはよくありますし、競争に勝つためには当然のことだと思いますが、古い車種を併売してまでもインサイト潰しを仕掛けたわけです。トヨタの施策だけが原因ではないでしょうが、その後プリウスが販売を続ける一方で、ホンダ・インサイトは2014年に2代目を最後にひっそりと幕を閉じました。
似たような車がたくさん
トヨタにはほとんど同じ車なのに顔だけ微妙に変えて別の車として売ることがよくあります。現行車種でも[ヴィッツ=アクア][ポルテ=スペイド][ルーミー=タンク][アルファード=ヴェルファイア][ノア=ヴォクシー=エスクァイア][SAI=レクサスHS]などがほぼ同一車です。
顔を変えたり内装を少し変えただけなのに別の車種名を付けるあたりは、フタを載せ替えると別の車になるミニ四駆のようです。
それに売れそうなクラスにはどんどん車種を追加します。世界的にはセダンが売れるので、国内で変えるものだけでもトヨタは[センチュリー、クラウン、カムリ、アリオン、プレミオ、マークX、アクシオ、SAI]、レクサスは[LS、GS、IS、HS]と大量に車種があります。
国内では(やや下火になってきたものの)ミニバンが人気です。トヨタには[アルファード=ヴェルファイア、ノア=ヴォクシー=エスクァイア、エスティマ、アイシス、ウィッシュ、シエンタ]とやたらめったら車種があります。何が違うかちゃんと分かって買っている消費者がどれだけいるのでしょうか? おそらく今後は人気のSUVがやたらめったら車種数を増やしていくことでしょう。
トヨタには販売チャンネルがある(トヨタ店、トヨペット店、ネッツ店、カローラ店)ので差別化のために車種が増えているのかもしれません。各セグメントを単一車種に絞るほどの自信も無いし、車種数が増えてもトヨタならたくさん売れるから量産効果は十分得られます。前述の他車潰し戦略も相まって整理されない車種がどんどん増えていったのだと思います。
トヨタの生み出した悪
最後はトヨタが生んだ悪い側面です。これを理由にトヨタを嫌いだと言う人もいるでしょう。
トヨタは徹底して売れる車を優先してきました。売れるジャンルは車種を増やして強化、売れないジャンルはスッパリやめる。そしてそれは車の造りにも反映されています。
ハッキリ言って日本には「車にこだわる」人が少ないと思います。動けばいい、違いなんて分からないし興味もない、分かるのは目に見えるものと数字だけ。そんな人が多いです。展示車にちょこんと座るだけで試乗もせずに何百万も払う人は、一体何を持ってその車が良いと思ったのでしょうか?
だから「高級内装」「豪華装備」「便利」「広い」「燃費」「価格」といった要件を満たしてしまえば売れます。たとえ中身が酷かろうが、走りが悪かろうが売れます。そしてそれをトヨタは是としてきました。みんなが気にする内装は無駄に豪華に、装備も潤沢。でも見えない部分は徹底的にコストカット。多くの日本人は見た目が同じなら安い方を買いますからね。
広くて重たい車に非力なエンジンでも、消費者がそれを求めるなら作る。「乗り心地が良い」と勘違いする人がいるから、ふにゃふにゃの足回りにする。他社が新しいジャンルを開拓したら、プライドなくそのままパクる。一貫して売れることが正義。半分正しいのでしょうが、エンジニアリングとしての信念を感じません。
日本の半分を占めるメーカーがコレなんです。結果としてみんな車の中身がどうでも良くなってしまって、軽自動車のような「安かろう悪かろう」の車にどんどん流れてしまいました。今や新車販売の半数が軽自動車です。軽で平気で高速道路に乗るし、軽の安全性の低さからは目を背けます(軽の安全性についてはいずれ記事にします)。
まとめ
マツダが「2%の人に愛されるなら、他の多くの人に嫌われたって構わない」という趣旨の戦略を取っているのに対して、トヨタは「50%の人がトヨタ車を買ってくれるなら、一部の人に嫌われようが構わない」という戦略を取っているようですね。そしてトヨタ自身は「トヨタの熱狂的ファン」を作ろうとは思っていないように感じます。
トヨタの好調に現れるように、この戦略が間違っているわけではないのでしょう。ただ、こういう側面があることを知っておいて損は無いと思います。トヨタ車に乗っていると、一部の人からは「なんとなくで車を選んだんだろうなぁ」と思われる可能性があるということです。本人はちゃんとこだわった上でトヨタ車を選んでいたとしても、世間の一定数の人からはそう判断されがちです。