[ロードスターで考える] トルクとは何? 軸の回転を図解説明
2016/12/02
エンジンの特性のひとつ、「トルク」とは一体何なのかを解説します。
目次
ロードスターで考える
解説シリーズ「ロードスターで考える」は、マツダ・ロードスターのスペックを題材に、エンジンのトルクやパワー、ギヤ比、最高速度、0-100km/h加速などがどう関係しているかを解説していきます。
ロードスターとの比較対象としては、ほぼ同じ車体に性格の違うエンジンを搭載した兄弟車、アバルト・124スパイダーを取り上げます。ロードスターと共に日本でも発売されますので、迷っている方には比較の参考になるかと思います。
専門書のような難しい書き方ではなく、分かりやすい解説を心掛けますので、どうぞお付き合いください。
エンジントルク
エンジンの性能を示すデータは色々あります。
排気量、気筒数、形式、カム、バルブ、過給器、ボア・ストローク、圧縮比、最高出力、最大トルク、燃料噴射方式、燃料、最高回転数などなど。
そのうち、実際にエンジンがどれだけ力を出すのかを示すのがエンジントルクで、カタログではその最大値が最大トルクとして記載されます。
カタログにおける最大トルク
最大トルクはエンジン性能表記でもかなり重要な項目で、(ガソリン/ディーゼルエンジン車なら)どんな車でも必ず記載されています。
最大トルクと並んでほぼ確実に記載されるのが「直列4気筒」「V型6気筒」などのエンジン形式と排気量、過給器の有無、それに最高出力です。最高出力はエンジントルクと密接に関係しているので、別途紹介します。
エンジントルクとは何か?
エンジンの出力は回転です。軽自動車のエンジンもフェラーリのエンジンも、ロータリーエンジンも、それにモーターでも出力は回転です。
トルクは、エンジンが出力軸を回転させる力を示します。
※ 軸の太さが変わると色々面倒なので、軸は毎回同じとします。
模型用モーターに糸を巻き付けて物を持ち上げるのを考えてみましょう。トルクが小さければ軽い物しか持ち上げられませんが、トルクが大きければ軽い物も重たい物も持ち上げられます。
ここで大事なことが2点あります。
回転速度は関係ない
トルクの大小を考えるときに、回転速度は関係しません。
先ほどの例で言えば、高速で回転して重りをぐんぐん持ち上げようが、低速でちょっとずつ持ち上げようが、同じ重さの重りを持ち上げられるなら同じトルクです。
重たい物を高速で持ち上げられる方が性能が良さそうに思えますが、速度が関係するのは出力(パワー)という別の指標で評価されます。
トルクはあくまで力の大きさを示す物です。
大は小を兼ねる
大きいトルクであれば、重たい物だけでなく軽い物も持ち上げられます。大は小を兼ねるということですね。トラックは重たい荷物を積んでいても発進できますが、荷台が空でも同じように発進できますよね。
ただし、重いときと軽いときで加速度は変わりますが、それについては別記事で説明します。
トルクの大きさを表す
回転する力であるトルクはどう表現するのでしょうか?
軸の回転は、軸に取り付けた棒にかかる力で表現されます。
回転する軸(青)に、長さ1mの固い棒(赤)を取り付けたとき、棒の先端にかかる力の大きさでトルクが表されます。
単位は[Nm](ニュートンメートル)や[kgm](キログラムメートル)が使われます。国際単位系では[Nm]を使う方が正しいのですが、自動車業界では今でも[kgm]がよく使われます。換算は以下の通り。
$$1\,\mathrm{kg\cdot m}=9.8\,\mathrm{[N\cdot m]}$$
軸のトルクが9.8[Nm]のとき、棒の先端は9.8[N]の力が発生します。9.8[N]は、1kgの物を持ち上げる力に等しいので、棒が真横になった瞬間には1kgの物を持ち上げる力が生じています。
先ほど書いたとおり、トルクは回転速度によりません。軸が高速に回っていようが、ゆっくり回っていようが、棒の先に9.8[N]の力がかかるなら同じ9.8[Nm]です。
トルクカーブ と 最大トルク
ロードスターのスペックにおけるトルクを見てみましょう。
トルクカーブ
ガソリンエンジンの出力トルクは回転数に大きく依存しています。なので、ある回転数でどれだけトルクが出るかを表す「トルクカーブ」というグラフが使われます。ロードスターと124スパイダーのトルクカーブはこんな感じです。
ここで書かれているトルクは、アクセル全開にしたときにエンジン出力軸が回転する力です。
ロードスターは回転数が変わってもトルクはあまり変動しません。ほぼ同じ力で回転するようです。
124スパイダーは山型になっていますね。一部の回転数域では大きなトルクが発生しますが、低回転・高回転域ではトルクは低くなっています。これはターボエンジンの特徴で、効率良く過給できる領域ではトルクが増しますが、低回転では過給効果が発揮されません。昨今のダウンサイジングターボでは低回転域から過給効果が出るように設計されているので、高回転域での「伸び」はあまりありません。
最大トルク
エンジンの出力特性を示す目的にはトルクカーブがあれば十分です。ですが色んな事情でトルクカーブのうちの一点が比べられます。それはトルクの最大値です。
トルクカーブの頂点だけを見て、その時のトルクの値と回転数を「○○kgm / ○○rpm」という形式で表現します。他の部分がどんなカーブかは関係ありません。頂点だけです。
グラフで示させるトルクカーブと違って明確な数値になるので他のエンジンとの比較がしやすくなりますが、最大トルクはトルクカーブのほんの一点しか示せないことに注意してください。
最大トルクが使われる理由
最大トルクが使われる理由と、最大トルクが示す特徴は別記事にて解説します。
まとめ
トルク=軸の回転力 ということが分かっていただけましたか?
次回はトルクと加速力の関係を解説します。