マツダの「魂動デザイン」とは一体なに? 好評なマツダデザインの根幹に迫ります
2017/01/22
マツダがスカイアクティブと同時に採用を進める「魂動デザイン」とは何なのかを解説します。
どんなデザインのことで、何のために採用しているのでしょうか?
目次
魂動デザインとは?
魂動デザインとは、マツダが2012年以降の新型モデルに採用している車体デザインの総称です。
左の列が上からアテンザ、アクセラ、デミオ。中央はSUVのCX-9、CX-5、CX-4、CX-3。右がロードスターです。オープンスポーツのロードスターについてはややデザインが異なりますが、他の7車種については非常によく似ていますね。
ちなみに「鼓動」(心臓の鼓動)ではなく「魂動」(魂の動き)です。マツダの造語なので漢字変換では出てきません。英語で「KODO : SOUL of MOTION」とも書かれます。
魂動デザインの特徴
魂動デザインでキーワードとされているのは「生命感」です。マツダは魂動デザインについてこう説明しています。
クルマは、単なる鉄の塊ではありません。それは「命あるもの」だとマツダは考えます。
ドライバーとクルマの関係を、まるで愛馬と心を通わせるかのように、エモーショナルなものにする。そのための造形を追い求めつづけるのが、マツダの「魂動デザイン」です。(マツダ公式サイトより)
つまり車に生き物のような生命感・躍動感をデザインとして与えようというわけです。
魂動を採用したの車のデザインでは、「獲物に飛びかかる一瞬」など実際の動物の動きをモチーフにしていると解説されたりもします。フェンダーやドアに描かれたプレスラインでは動物の筋肉の躍動感などが表現されています。
2015年に発表したコンセプトカー「RX-VISION」においても魂動デザインがデザインテーマとして使われています。
デザインの変化
パッと見はほとんど同じようなデザインになっていますが、細部を見ると細かく変化が付けられています。
例えばフロントグリル下部からヘッドライトに入り込むメッキライン(シグネチャーウイングと呼ばれる)を見てみましょう。
左下が最初の魂動デザイン採用車・初代CX-5。左上が最新の2代目CX-5です。全体で見ると似たようなデザインですが、細部を見ると結構異なっていますね。右に並べたアクセラ(マイナーチェンジ後)、CX-4もそれぞれ微妙に異なります。
マツダによれば、全体のデザインイメージは共通していても、各モデルごとに車体サイズや表現したいものが異なるので細部は変えているとのこと。中型セダンのアテンザに使うデザインを、そのままコンパクトカーのデミオに当てはめても良いデザインにはならないそうです。
ソウルレッド
魂動デザインに合わせて、特別色「ソウルレッドプレミアムメタリック」が用意されていることも特徴的ですね。特別色として別途料金が必要なのにも関わらず、街中で結構よく見かけます。
圧倒的な存在感を表現する「強烈な鮮やかさ」と「深みのある陰影感」を両立した全く新しい「赤」(マツダ公式ブログより)
と言っている通り、一目で特別な色だと分かる素晴らしい塗装色です。塗装にかなりの手間がかかるようで、別途料金が必要なのはそれが理由だそうです。
先ほどから出てくるマツダ車が赤色ばかりなのも、マツダがこの色をプロモーションカラー(宣伝に使うメインの塗装色)にしているからです。普通は車種ごとにイメージカラーをそれぞれ設定するものですが、マツダは全車種この色をメイン据えています。
マツダ公式サイトのラインナップもこの通り。CX-3の限定車とロードスターRFを除いてすべて赤色ですね。
2代目CX-5では新色「ソウルレッドクリスタルメタリック」を採用することが発表されています。さらに美しい塗装色になるらしいので、実際に見るのが楽しみです。
唯一の部分採用車
魂動デザインは基本的にフルモデルチェンジで採用されますが、唯一魂動デザインが部分的に採用された車がありました。
2007年に発売された初代CX-9は、魂動デザインを採用していませんでした。しかし、2012年に受けた二度目のマイナーチェンジで、部分的に魂動デザインの要素を取り入れました。
2012年と言えば、魂動デザインのスタートとなる初代CX-5が発売された年。バンパーやライト類の変更のみで魂動デザインの雰囲気を作り出したわけですね。とは言ってもマイナーチェンジレベルでできるデザイン変更は限られているので、魂動デザインなのは雰囲気だけ。魂動デザイン完全採用車ほどの「躍動感」「生命感」はやはり表現できていませんでした。
そんなCX-9も2016年にフルモデルチェンジを受けて2代目になったので、魂動デザインを完全採用することができました。
魂動デザインの背景
どうしてマツダが急に魂動デザインばかりにしていったのでしょうか? マツダが魂動デザインを採用した背景には2つの要素があります。
メーカー内デザインの統一
まず一つは、メーカー内で使われるデザインの統一です。すべてのマツダ車が統一したデザインを採用するだけで、「このデザインはマツダ車だ」と思ってもらえるようにすることを目指します。
BMWでのデザイン統一
ヨーロッパの自動車メーカーにはこの手法を採用するところが多いです。最も分かりやすいのがBMW。
BMWでは数字を使って「○シリーズ」という車種名を使っています。上に示した1~7シリーズはいずれも、サイズやディテールは違えど似たようなデザインですね。BMWには他にX○(SUV)、M○(高性能スポーツモデル)、i○(EV)がありますが、どれも顔を見ただけでBMWだと分かるデザインになっています。
BMWで特徴的なのは、キドニー(腎臓)グリルと呼ばれるフロントグリルです。1930年代以降のほぼすべてのBMW車が採用しています。時代や車格が変わっても、これを見れば「BMWだ」と認識してもらえるわけですね。
統一したデザインを採用することは、ブランドイメージの確立にとって魅力となります。特に高級ブランドでは顕著で、見た人には羨望を感じさせ、乗る人には誇りと満足感(≒自慢)を与えます。
マツダ:5ポイントグリル
魂動デザインが採用される前から、マツダ車に共通するデザイン要素として採用されているのがファイブ・ポイント・グリル(五角形グリル)です。
フロントグリルを五角形にすることを、マツダ車の共通デザインにしようということです。2000年頃から採用を始め、それ以降のすべてのマツダ車(OEM車の一部を含む)に使われています。
「ファイブポイントグリル」は魂動デザインよりもずっと広い話で、魂動デザインの次なるデザインが登場したとしても、ファイブポイントグリル自体はずっと採用し続けるつもりのようです。BMWのキドニーグリルやアルファロメオの盾型グリルと同じ様なポジションにしたいということですね。
マツダにとって魂動デザインは、ファイブポイントグリルよりもっと強力に自社製品のデザインイメージを統一することを目指したものということです。
スカイアクティブ・テクノロジー
もう一つ、魂動デザインの原動力となったのはスカイアクティブ・テクノロジーです。
スカイアクティブとは、一言で言えば「車のいろんな技術をいっぺんにゼロから新規開発することで、今までできなかった理想の追求を実現した技術群」のことです。以下の記事で詳しく解説しています↓
魂動デザインとスカイアクティブ技術は直接の関係はありません。ですが、せっかく新規開発した技術群はボディやエンジン、トランスミッションなど外から見えないものばかり。今までの車との違いをアピールする手段として、外装デザインは大きな役割を果たします。
スカイアクティブの要素技術(エンジン・トランスミッション・ボディ・シャシー)を全面的に採用した車と、魂動デザインを採用する車は完全に一致しています。マツダの新世代技術は魂動デザインによってアピールされています。
まとめ & 今後の魂動デザイン
マツダの魂動デザインがどんなものなのか、分かっていただけましたか? マツダのデザイン統一はBMWに次ぐか、BMWすらも超えるレベルになっていますね。
魂動デザインの今後
スカイアクティブ技術&魂動デザインは新型CX-5から2周目に突入しました。2代目CX-5は細部こそ変化しているものの、基本は当初の魂動デザインからあまり変わっていません。
スカイアクティブは今後徐々に第二世代へ移行、2018年から第二世代が本格投入されることになっています。スカイアクティブが第二世代になるのであれば、スカイアクティブのアピールという責務も担う魂動デザインも第二世代に駒を進めることが予想されますね。
特に第二世代では「HCCIエンジン」という超重大技術が投入されるので、それをデザインの面で表現するのは必須になるでしょう。
どんなデザインで投入してくるのか、発表が楽しみですね!