日産ノートが30年ぶりに月間販売首位になった理由・今まで獲れなかった理由
2016/12/15
日産・ノートが2016年11月の月間販売台数で首位になりました。
日産としてはなんと30年ぶり! なんでノートが1位になれたの? むしろなんで今まで1位獲れなかったの?
ノートe-POWERの試乗記はこちら↓
目次
車種別販売ランキングの推移
過去4ヶ月の車種別販売ランキングを見てみましょう(軽自動車除く)。
8月 | 9月 | 10月 | 11月 | |
---|---|---|---|---|
1位 | トヨタ・プリウス | トヨタ・プリウス | トヨタ・プリウス | 日産・ノート |
2位 | トヨタ・アクア | トヨタ・アクア | トヨタ・アクア | トヨタ・プリウス |
3位 | トヨタ・シエンタ | トヨタ・シエンタ | 日産・セレナ | トヨタ・アクア |
8位 日産・ノート |
14位 日産・ノート |
8位 日産・ノート |
ここに書かれているだけでなく、昨年12月の新型プリウス(4代目)発売以降、11ヶ月連続で[1位:プリウス、2位:アクア]で固定されていました。そこに日産が入り込んできました。しかもマイナーチェンジを受けただけのノートです。
車種別で上位に入れなかった日産
車種別の月間販売台数では、長らくプリウス・アクア・フィットが3強として君臨しています。短期的にはカローラやシエンタが上位に入ることもありましたが、多くの時期で3車が上位に入ってきました。
日産車は車種別の上位から長らく遠ざかっています。10月にセレナが3位に入ったのですら、2013年8月にノートが3位になって以来3年ぶりでした。日産の1位獲得となると、1986年9月の日産・サニー以来、実に30年ぶりの快挙となります。
サニーと言えば、1990年発売の7代目サニーがついに生産終了することになりました↓
日産が上位に入れなかった理由
国内で圧倒的シェアを持つトヨタはともかく、ホンダとの国内シェアの差はあまりありません。2015年の販売台数は、ホンダ73万台、日産62万台なので差は2割もありません。日産が全然首位を取れなかったのはなぜでしょうか?
日本向けに力を入れていない
ホンダのグローバル販売台数に占める日本の割合は13%、日産はわずか8%しかありません。ホンダでも十分低い数字ですが、日産はここ10年ほど日本を軽視している節があります。
軽が無い
現在日本では新車販売の約半数が軽自動車という状況です。ダイハツ(トヨタの子会社)、スズキ、ホンダがそれぞれ一通りの軽をラインナップしているのに対して、日産は三菱と共同開発したデイズ/デイズルークスのみ。後はスズキからOEM供給を受けています。
魅力的なコンパクトカーが無い
軽に次ぐ人気セグメントのコンパクトカー。日産はマーチ・キューブ・ノート・リーフの4車種がラインナップされています。
ですが、現行マーチはタイ生産で品質が悲惨、現行キューブは8年前からデザイン変更無し、リーフは電気自動車なので使い勝手も価格も別物。結局戦えるコンパクトカーはノートだけという状態です。シエンタやフリードのようなコンパクトミニバンもありません。
上位を取れる車種が無い
日産には上述のように日本で売れそうな車種はノートだけという状態。でもそのノートすら上位を取れるタイプの車種ではありませんでした。
アクアとプリウスはトヨタ式ハイブリッドによる低燃費と高出力が魅力です。ハイブリッド専用車種という所も日本人の見栄を刺激しました。
一方フィットはコンパクトカー随一の広さが魅力。フィットにもトヨタ式ほどではありませんが、ハイブリッドが用意されています。
ノートはというと、ハイブリッドが無いどころか、エンジンはなんと3気筒です。3気筒エンジンは構造上、4気筒エンジンより振動や騒音が確実に劣ります。BMWですら3気筒エンジンの悪いところを抑えられていません。
他にノートならではの特別な魅力もありませんし、何かの魅力を消費者にアピールできているわけでもありません。価格も特別安いわけでもありません。これでは上位を狙えるわけありませんよね。
ノートが首位になれた理由
今回ノートが首位になった理由は明白です。それはノート e-POWER の登場です。ノート販売台数の8割近くがノートe-POWERだそうです。そこをもう少し掘り下げてみましょう。
ノートe-POWERは国内初となるシリーズハイブリッド採用車です。ノート本体はマイナーチェンジを受けただけであまり変わっていませんが、「e-POWER」についてはほとんど別車種と言うくらいに中身が違います。
初のシリーズハイブリッド車
「シリーズハイブリッド車」とは、シンプルに言えば「ガソリンエンジンで発電するEV(電気自動車)」です。要するに実態はEVなんです。充電をする代わりにガソリンを入れて走るタイプのEVです。
元々あったEV、日産・リーフは約300万円~と高額でした。高額な理由は間違いなくバッテリーです。シリーズハイブリッド車では小型のバッテリーしかいらないので、エンジンの搭載コストがかかってもEVよりかなり安く作れます。単純比較でノートe-POWERはリーフより約100万円も安くなりました。
ガソリン車並みの価格で買える、ガソリン車並みの使い勝手ができる、そんなEV。魅力的なんですよこれが。
元々あったEV需要を喚起
EVにはEV特有の魅力があります。電気モーターの特性を活かした加速感や、エンジンが無いことによる静粛性です。ノートe-POWERは走行性能上は完全にEVですから、加速感はEVそのものです。発電するのでエンジンを動かさないわけにはいきませんが、基本的に効率の良い領域で発電するのであまりうるさくなりません。バッテリー残量が十分あればエンジンを止めてEV走行もできます。
EVの価格や使い勝手(充電スポットの少なさや充電時間)の難点を克服しつつも、EVの美点を十分堪能できると言うことで、EVへの潜在需要を喚起できたのだと思います。
「ハイブリッド車」が欲しかった層
何らかの理由でノートを購入しようとしていた人からすれば、やっと出たハイブリッド仕様車です。シリーズなのかパラレルなのかなどには興味がなく、とりあえずハイブリッドだったらOKという人は確かに存在します。恐らくガソリン価格の損得勘定なんてできず、ハイブリッドだったらOKしか考えていません。
日産車を下取りに出したいとか、日産を愛しているとか、ノートのデザインが好みだとか、何らかの理由でノートが欲しい。でもハイブリッドじゃなきゃイヤという人にとってみれば、待ちに待ったハイブリッドです。e-POWER発売と同時に飛びついた人にはそういう人もいるでしょう。
まとめ
「ノート e-POWER」は新時代を切り開くとも呼べるほどに魅力的かつパイオニア(先駆者)精神溢れる車です。月間販売台数で首位になったのは、その魅力が十分に受け入れられたからでしょう。
ただ、今後も上位を維持できるかというと結構厳しいのではと思います。確かにシリーズハイブリッドの採用は大いに魅力的ですが、フルモデルチェンジしたわけでもありませんし、元々ノートはアクアやフィットに比べてあまり売れていなかった車です。それに今後他社からシリーズハイブリッド車が登場すれば、ノートe-POWER特有の魅力が薄れてしまいます。ノートならではの魅力を打ち出せるかが問題になってくるでしょう。
しかしこうして「ノートe-POWER」が売れているのを見ると、なんで「ノート」の一部にしちゃったんだろうと思ってしまいます。内部的にはノートというよりエンジン付きリーフですし、「ノート」のままではEVであることが伝わりづらいです。ほとんど同一車種でもアクア(=ヴィッツハイブリッド)とヴィッツのように別の名前にした方が売れる例もあります。
他の車種でも「e-POWER」を付けてシリーズハイブリッド化することを想定しての名付けなのでしょう。でもヴィッツハイブリッドをアクアにして大成功、クラウンやミニバン系はハイブリッドでも同名にしているトヨタの例を見ると、ノートe-POWERだけでも専用名にすれば良かったのにと思いますね。まぁ結局のところ日産は日本を軽視しているので名前なんか深く考えていないのですかね。
ノートe-POWERの試乗記はこちら↓ やっぱり名前は変えるべきだったよ!