ロータスエリーゼ試乗記!すべてをそぎ落としたデザインと実用性
2015/09/14
ブリティッシュ・スポーツカーの名門、ロータスのスポーツカー「エリーゼ」を試乗してきました。
島国イギリスで長い歴史を持つライトウェイトスポーツカーの中でも、顕著にライトウェイトスポーツを体現してきたエリーゼ。まずはデザインやシート、幌、使い勝手などをレビューします。
エクステリアはこれぞスポーツカー!
エクステリアデザインは純粋にスポーツカーそのものという佇まい。コンパクトながらもしっかり存在感のあるデザインになっています。
フロントデザイン
フロントマスクは2011年に発売された現行のフェーズ3でややおとなしくなりました。
先代のフェーズ2は爬虫類的で攻撃的なデザインだったので、目立ち度合いはやや低下してしまいましたね。綺麗にまとまった美しいデザインだと思います。
リアデザイン
リアもスポーツカー然といった雰囲気。
テールランプは丸形4灯式で、内部がウインカーとバックランプになっているので灯火はこれだけで完結しています。テールランプの先にはエンジンルームリッド。リアミッドシップらしくエンジンの存在感を主張しています。
ホイールは前後異径でリアタイヤが太いので、後輪駆動らしい力強いリアタイヤになっています。
インテリア
インテリアはよく言えばシンプル、悪く言えば何もありません。必要最低限(本当に最低限!)の装備だけが並んでいて、高級感や快適装備なんてものはありません。収納なんてもってのほか! あまりにシンプル過ぎるので、この車が600万円もすることを忘れてしまいます。
シート
シートは基本バケットシートです。調整は前後移動のみ。しかも運転席しか動かせません。他はリクライニングも含め固定です。助手席は何もかも固定です。
着座位置はかなり低いですが、前方は意外と見やすいです。走行中のレビューは後ほど。
助手席の前後移動が無くフットレストは結構奥に設置されているので、私(165cm)ではフットレストに足が届かず走行中に踏ん張ることができませんでした。なんだか車に「おめー足みじけーな」って言われているようで少し悲し……。
フルバケなので表面のクッション性に期待してはいけません。かなりゴツゴツしています。ガンガン攻めるならこの方がしっかりホールドされていいんですが、普通に走るとすぐに体が痛くなりそうです。連続乗車は1時間程度で定期的なストレッチが必要になりそうですね。ま、もし所有したら2、3時間は頑張って耐えますが。
エリーゼに乗る
まず試乗したのは直列4気筒1.8Lエンジンにスーパーチャージャーを組み合わせた「エリーゼS」。1.6L自然吸気で50kg軽い「エリーゼ」よりもこちらの方が売れているそうで、在庫車はすべてエリーゼSでした。
ドアに飛び出た鍵穴を指で押し込むとドアが開きます。ドアノブではないので開けやすくはありませんが、ユーノス・ロードスター(初代NA型)のように「非日常への入口」な感じがしていいですね。
分厚いサイドシルをまたいで乗り込むのは幌を閉じていると結構大変です。ロードスターなんて楽な方だったんだなぁと実感しました。幌を開けていればだいぶ楽ですが、運転席はステアリングが邪魔で結局大変です。
ドアを閉めるときはドア上端の溝に手をかけます。普通じゃないですねー。爪などで傷つきやすい素材なので注意。
幌
エリーゼは頭上部分のみが幌になっていて後方のフレームが残る「タルガトップ」という形態のオープンカーです。頭上部分のみだとほぼ長方形なので、マツダ・ロードスターのような複雑な機構は必要なく単に巻き取るだけの形式です。ホンダ・S660とまったく同じですね。
幌のロックは左右の2箇所なのでS660よりはマシです。ただ両手じゃないと外せない機構なので手軽ではないですね。
幌を丸めると2本の細い棒が残ります。手で簡単に外せますが、この棒を幌に一体化させられなかったんでしょうか? ホンダみたいな大企業とのクオリティの差を感じてしまいました。
エリーゼはリアミッドシップにエンジンが搭載されていますが、エンジンの後方に小さなトランクも用意されています。幌の収納先はココ。もちろんS660みたいなダンパーなんて無い(重くなるから)ので、ロッドを立てる必要があります。つまり幌を丸める前にトランクリッドを開けておかないと片手では収納できません。この辺はボンネットフードのロック機構を外さないといけないS660と大して変わりませんね。あっちはコスト、こっちは重さとの戦いです。
幌収納にかかる時間はS660と同じく頑張っても1分程度。降車を伴うので信号待ちでの開閉はできません。超絶簡単に開閉できるマツダ・ロードスターのように手軽にオープンとはいかず、気合いを入れてオープンにする車ですね。そもそもこのクルマは単に乗るだけでも気合いが必要なのでそれでもいいんでしょうかね。ポルシェ・ボクスターのように安楽に走ることは許されません。
実用性
スポーツカーに実用性は不要だって? いえいえそんなことはありません。サーキットしか走らないレーシングカーならともかく、公道を走る市販車にはレベルはともかく実用性も評価対象なのは事実です。
装備
必要ギリッギリの最低限です。
日本では付いてないと命の危険を感じる装備、エアコンは付いています。エリーゼの初期モデルはエアコンレスすらありましたからね。パワーウインドウも付いています。
パワステはありませんが走行上は問題ありませんでした。ABSやトラクションコントロールなどの電子制御は「CR(クラブレーサー)」グレード以外は装備されています。詳しくは次回の「走り」でレビューします。
安全装備はステアリングエアバッグと助手席エアバッグのみです。これだけでも装備されているだけ十分でしょうね。集中ドアロックが装備されていることすら装備表に記載されるあたりがエリーゼらしいですね。
かなり意外だったのは結構なサイズのスピーカーが装備されていたことです。アルパイン製のオーディオ(1DIN)と4スピーカーシステムが標準装備されています。フロントスピーカーはドアでなくダッシュボード両端に綺麗に埋まっています。このユニット何グラムあるんでしょうね。エリーゼなら簡素な2スピーカーにAUX端子だけのオーディオシステムを付けて「あとは31gのiPod nanoでも挿しな!」くらい言っても許される気がするんですけどね。
収納
車内の収納は皆無です。なーんにもありません。
結構足元は広いので助手席の足元に荷物を置くくらいはできますが、助手席の人と足が当たってしまう構造なので左コーナーで荷物が飛んでこないように対策しておかないと大惨事になりかねません。
トランクは広くはありませんがあるだけマシで、2人で1泊する程度の荷物なら入ります。同じミッドシップ小型オープンでも一切収納が存在しないトヨタ・MR-Sやホンダ・S660よりは実用性がありますね。開口部は広くないので長尺物は入りませんし、エンジンが目の前なので食品は入れられません。間違ってもアイスなどを入れないように。
まとめ
内装のクオリティや装備、実用性は実用車としては褒められたものではありませんが、本気で作られたライトウェイトスポーツカーとしては十分なレベルに達していると思います。ただそれと引き替えに900kg(1.6L NA)、950kg(1.8L スーパーチャージャー)と圧倒的な軽量ではなくなってしまったのは事実。もちろん衝突安全性能は進歩しているんでしょうけどね。
そぎ落とされた実用性がちゃんと走りに結びついているのかは次回レビューします。お楽しみに!