教習車にアクセラが採用される3つの理由
2015/07/03
2014年度の日本の教習車販売台数は、マツダ車が実に49%を占めています。
2014年度(14年4月~15年2月)の自動車教習所の教習車販売台数は約3千台。そのうち、マツダのセダン車「アクセラ」が1433台を占め、国内シェアは実に49%! 2位のトヨタ「コンフォート」(522台)を突き放し、首位独走中なのだ。(教習車ひと筋、国内シェア首位独走のマツダに教習車開発のレジェンドが! こだわりの秘話とは?)
圧倒的ですね。最近は街中で現行アクセラの教習車を見かけることも増えてきました。
目次
なぜマツダの教習車がこんなに人気なのか
マツダ車のシェアが圧倒している理由。
1. 改造登録が不要
現在「メーカー製として」教習車を出しているのはマツダ・トヨタ・スバルの3社。メーカー製でない教習車は生産後に教習車用の改造を施して、「改造車」として登録する必要がある。
改造車登録は手間やお金がかかる上、メーカーからの十分な保証は受けられない。元々メーカー製であれば、一般販売車と同等のクオリティで保証も受けられる。
さらに言えば、教習車には不要なオーディオや横滑り防止、アイドリングストップ機能などを省ける分、改造登録よりは確実にコストを抑えられるだろう。
2. カッコイイ
教習車シェア上位2車種。自動車学校で多くを占める20歳前後の若者が乗りたいのはどっちだと思いますか?
考えるまでもありませんね。
タクシーと教習車のために作られたトヨタ・コンフォートは、1995年からモデルチェンジをしていません。1995年のデザインなんです。20年前ですよ!? 1995年の出来事といえば……
- 阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件
- 野茂がメジャーリーグで新人王、イチローのいたオリックスがリーグ優勝
- PHSサービス開始、Windows 95発売
時代が違いすぎます。むしろ今でも500台も採用されているのが不思議です。
免許を取った若者が実際に運転するのはどういう車でしょうか? 日本では若者にセダンはほとんど売れておらず、多くの人が軽やコンパクトカー、ハッチバックに乗るでしょう。教習車仕様のアクセラはセダンですが、ややハッチバックに近い形状なので、少なくともコンフォートよりは現実に乗る車に近いでしょう。
3. マツダの理念
マツダのキャッチコピーは「Be a driver.」。新たなドライバーを生み出す自動車学校は、まさに「ドライバーになる」そのものです。教習車仕様のアクセラの開発リーダーはこう言っています。
「アクセルを踏んだら期待通りに加速する。ハンドルを切ったらイメージ通りに動く。そんな『人馬一体』の条件を、教習車でも提供し、初めてハンドルを握るクルマ“教習車”を通じて、『走る歓び』を感じて欲しい!その一心で開発してきました。」(「アクセラ」が教習車に選ばれる理由とは?!その秘密にせまります!)
教習車に変なクセがあるようでは、正しい運転は身に付きません。運転を指導するプロである教官陣にはその開発理念が伝わっているのでしょう。
なんで他のメーカーが参入しないの?
教習車ビジネスは一朝一夕では成り立ちません。メーカーが認めるクオリティで世に出すためにはノウハウが必要です。
教習車仕様にするために一般仕様車から改造する箇所はいくつあるでしょうか? 補助ブレーキ、助手席用ドアミラー、助手席用ルームミラー、助手席用速度計、仮免プレートホルダー、大型サンバイザー、LPガス仕様車の設定などなど。メーカーの看板を背負って販売する以上、取って付ければ良いというものではないでしょうから、参入するだけでも相応の年数がかかります。
車格も足かせに
教習車で多く採用されている車種は、全長4.5m程度のセダンで、ヨーロッパで「Cセグメント(Wikipedia)」と呼ばれるサイズです。VW・ゴルフをはじめ、ヨーロッパでは人気のクラスですが、日本でこのクラスに該当する車種は、ほぼ以下の4車種のみです。
- トヨタ・プリウス
- トヨタ・オーリス
- マツダ・アクセラ
- スバル・インプレッサ
日本では1セグメント下のコンパクトカークラスが人気(フィット、ヴィッツ、デミオなど)で、このセグメントはあまり扱われていません。プリウス以外は3車種も、主にヨーロッパをターゲットに開発された車です。
トヨタ,マツダ,スバル以外のメーカーが参入しないのは、「自分のところにちょうどいいベース車が無いから」という事情もあるわけですね。
ちなみにトヨタ・プリウスは、販売台数も多く燃費がいいため向いてそうですが、運転感覚が普通のガソリン車と大きく異なるため教習車には向かないでしょう。MT車の設定が無いことも、ATとMTで同じ車種を採用したい教習所にとっては大きなマイナスでしょう。
教習車シェアという強み
運転があまり得意でない人は、車体サイズの変化を嫌います。普段乗っているサイズと大きく違うサイズの車は運転しづらいから乗りたくないと。教習車に慣れた状態で免許を取り、最初っから別のサイズの車には乗りたくないはずです。
免許を取るために最初に乗る車がマツダ車で、その車を乗りやすいと思ってもらえれば、マツダ的には狙い通りですね。「マツダ」というブランドとしても、「カッコ良くて運転しやすい」というイメージを抱いてもらいやすくなります。
マツダのイメージ
昔のマツダのイメージは最悪でした。90年代に「マツダ地獄」とまで言われた鬼値引きと下取りの安さで、ブランドは地に落ちました。当時を知るオジサン世代はそのイメージのままかもしれません。
しかし現在は違います。当時を知らない若者にとってマツダは「カッコ良くてスポーティな車を作るメーカー」というイメージになっています。そしてそのイメージに「運転が楽しいクルマ」を加えるべく、教習車開発に力を入れているわけですね。
最初にハンドルを握るクルマで若者の心をガッチリ掴み、ブランドイメージも転換する。素晴らしく真似のしにくい良い戦略ですね。